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青の村にて 葛藤とさらなる鍛錬
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イーリリスさんの水弾の中に僕の界気化した魔力が浸透していく。……やっぱり頭の芯がズキズキするね。
「ヤート殿、何の情報を知りたいかを頭の中にはっきりと思い浮かべてください。これを怠ると全ての情報を受け取る事になります」
僕がやりにくそうに見えたのか、イーリリスさんが助言をしてくれた。自分の中で知りたい情報を取捨選択する事で界気化した魔力が触れる範囲を制限できるのかな? 今知りたいのはイーリリスさんの水弾の中の動きだね。…………お、頭の芯に響くズキズキが弱くなった。それに僕の頭の中に水弾の中の動きがくっきりと浮かんでくる。
「水弾の中の動きは、僕から見て左回転、次に停止、その次は上半分が停止したままで下半分が右回転、その次は上半分が左回転で下半分が停止、これが一巡であとはその繰り返しかな……」
僕は目を開けてイーリリスさんを見ると、イーリリスさんは嬉しそうに笑っていた。
「正解です。これでヤート殿は流れを知る基本を修めました。あとはより正確に、より大量に、より素早く、より安全に情報を受け取れるように鍛錬を重ねるだけとなります。今が緊急時で鍛錬の段階を大幅に省きましたが、それでも私が知る限りここまで短時間でものにできた歴代の水添えや候補者はいません。……ヤート殿には正式な鍛錬の過程を踏んでほしかったですよ。誠に残念です」
イーリリスさんは水弾を消して今度は口惜しそうな表情になる。
「そこはまあ、しょうがないって事で諦めて」
「本当に残念です……」
「ところで僕は基本ができたって事は、兄さんと姉さんの意識に挑戦してみても良い?」
「…………まだヤート殿は情報を受け取る負担を完全には消せてないので、もう二刻(前世でいう二時間)は鍛錬に当ててほしいところですね。私の予想が正しいければヤート殿なら、それぐらいの時間で基本を完全にする事ができるはずです」
僕が眠っている兄さんと姉さんの顔を見て思う事は、できるだけ早く意識の奥底にある異常を無くして目覚めさせたいって事だ。今の段階で兄さんと姉さんに試してダメだったら鍛錬を再開すれば良い気がする。
……うん、これでいこうと僕が兄さんと姉さんに手を向けると、身を乗り出してきたラカムタさんに手をつかまれた。
「ラカムタさん?」
「ヤート、おまえのガルとマイネを早く目覚めさせたいという気持ちはわかるが、初めて体験する異常事態だぞ。安全を重視しろ」
「でも、二人をこのままにしておいて悪くなったら……」
「この場には当代水添えのイーリリス殿がいるんだ。今は頼るべき時だ」
「…………」
ラカムタさんの言ってる事もわかる。だけど……。
「ヤート君、鍛錬を私が手伝えば短くできるはずだから、今はお祖母様にガルとマイネを任せてくれないかな?」
「私も微力ですがガル君とマイネさんを見守りますので、ヤート君は基本の習熟に専念してください」
イリュキンとリンリーも安全を重視する立場か。危険にさらされるのが僕だけだったら、いくらでも時間をかけて安全性を高めるんだけど、対象が兄さんと姉さんだからな……。僕が迷っているとラカムタさんが話しかけてくる。
「ヤート、例えガルとマイネは助かっても、ヤートに何か問題が起こってたら悲しむ。……いや、悲しむどころじゃ済まないな。確実に暴走するぞ」
「…………ラカムタさん、その言い方は卑怯だよ」
「それなら素直に鍛錬に励んで危険の芽を無くせ」
「……わかった。イーリリスさん、ラカムタさん、リンリー、兄さんと姉さんをお願い。イリュキン、鍛錬を手伝って」
「二人の事は、お任せください」
「おう、今だけはガルとマイネの事は気にするな」
「何かあればすぐに知らせます」
「私も鍛錬の手伝いに全力を尽くすよ。まずはこっちに来てくれるかい」
イリュキンと共に、いろんな器が収められている棚の前に移った。どんな内容の鍛錬なんだろ? 僕が見ているとイリュキンは棚から一つの器を取り出して床に置き、魔法で出した水で満たすと蓋を閉じた。
「ヤート君、これから行う鍛錬は、お祖母様の水弾でしていたものと同じような事で、私が器の中の水をどんな風に動かしてるかを界気化した魔力で探ってほしい」
「聞いてる限りだと同じに聞こえるけど、僕がイーリリスさんの水弾の中を知ろうとしてた時と鍛錬内容に違いがあるの?」
「始めは徐々に後の方ははっきりと器の中の水を動かす魔力の量を変化させていくから、ヤート君はその変化にできるだけ早く対応して自分への負担を減らすように心がけてほしいんだ」
「なるほど、界気化した魔力を放つだけでも吐くような負担があるんだから、界気化した魔力を放ってる時に対象が不意の変化が起こしても自滅しないための鍛錬か」
「その通り。界気化した魔力を放って対象を知るという行為は荒野を目標もなく歩いていくのに似ていて、対象に起こる変化というのは自分が歩いている荒野に地割れや崖が突然現れるのに等しい。とっさに反応できなければ地割れに落ちたり崖から落ちるものさ」
「…………界気化した魔力を放つ対象が異常な状態の兄さんと姉さんだから、何かが起こってもおかしくないし危険度も跳ね上がるって事だね」
「真剣に聞いて、しかも深く考えてくれて良かった。それじゃあ始めるよ」
イリュキンが言うと同時に空気がピンッと張り詰める。これを乗り越えれば兄さんと姉さんを助けられるんだ。油断も弛緩もなくして真剣に鍛錬をこなしていこう。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
◎後書き
最後まで読んでいただきありがとうございます。
注意はしていますが誤字・脱字がありましたら教えてもらえるとうれしいです。
感想や評価もお待ちしています。
「ヤート殿、何の情報を知りたいかを頭の中にはっきりと思い浮かべてください。これを怠ると全ての情報を受け取る事になります」
僕がやりにくそうに見えたのか、イーリリスさんが助言をしてくれた。自分の中で知りたい情報を取捨選択する事で界気化した魔力が触れる範囲を制限できるのかな? 今知りたいのはイーリリスさんの水弾の中の動きだね。…………お、頭の芯に響くズキズキが弱くなった。それに僕の頭の中に水弾の中の動きがくっきりと浮かんでくる。
「水弾の中の動きは、僕から見て左回転、次に停止、その次は上半分が停止したままで下半分が右回転、その次は上半分が左回転で下半分が停止、これが一巡であとはその繰り返しかな……」
僕は目を開けてイーリリスさんを見ると、イーリリスさんは嬉しそうに笑っていた。
「正解です。これでヤート殿は流れを知る基本を修めました。あとはより正確に、より大量に、より素早く、より安全に情報を受け取れるように鍛錬を重ねるだけとなります。今が緊急時で鍛錬の段階を大幅に省きましたが、それでも私が知る限りここまで短時間でものにできた歴代の水添えや候補者はいません。……ヤート殿には正式な鍛錬の過程を踏んでほしかったですよ。誠に残念です」
イーリリスさんは水弾を消して今度は口惜しそうな表情になる。
「そこはまあ、しょうがないって事で諦めて」
「本当に残念です……」
「ところで僕は基本ができたって事は、兄さんと姉さんの意識に挑戦してみても良い?」
「…………まだヤート殿は情報を受け取る負担を完全には消せてないので、もう二刻(前世でいう二時間)は鍛錬に当ててほしいところですね。私の予想が正しいければヤート殿なら、それぐらいの時間で基本を完全にする事ができるはずです」
僕が眠っている兄さんと姉さんの顔を見て思う事は、できるだけ早く意識の奥底にある異常を無くして目覚めさせたいって事だ。今の段階で兄さんと姉さんに試してダメだったら鍛錬を再開すれば良い気がする。
……うん、これでいこうと僕が兄さんと姉さんに手を向けると、身を乗り出してきたラカムタさんに手をつかまれた。
「ラカムタさん?」
「ヤート、おまえのガルとマイネを早く目覚めさせたいという気持ちはわかるが、初めて体験する異常事態だぞ。安全を重視しろ」
「でも、二人をこのままにしておいて悪くなったら……」
「この場には当代水添えのイーリリス殿がいるんだ。今は頼るべき時だ」
「…………」
ラカムタさんの言ってる事もわかる。だけど……。
「ヤート君、鍛錬を私が手伝えば短くできるはずだから、今はお祖母様にガルとマイネを任せてくれないかな?」
「私も微力ですがガル君とマイネさんを見守りますので、ヤート君は基本の習熟に専念してください」
イリュキンとリンリーも安全を重視する立場か。危険にさらされるのが僕だけだったら、いくらでも時間をかけて安全性を高めるんだけど、対象が兄さんと姉さんだからな……。僕が迷っているとラカムタさんが話しかけてくる。
「ヤート、例えガルとマイネは助かっても、ヤートに何か問題が起こってたら悲しむ。……いや、悲しむどころじゃ済まないな。確実に暴走するぞ」
「…………ラカムタさん、その言い方は卑怯だよ」
「それなら素直に鍛錬に励んで危険の芽を無くせ」
「……わかった。イーリリスさん、ラカムタさん、リンリー、兄さんと姉さんをお願い。イリュキン、鍛錬を手伝って」
「二人の事は、お任せください」
「おう、今だけはガルとマイネの事は気にするな」
「何かあればすぐに知らせます」
「私も鍛錬の手伝いに全力を尽くすよ。まずはこっちに来てくれるかい」
イリュキンと共に、いろんな器が収められている棚の前に移った。どんな内容の鍛錬なんだろ? 僕が見ているとイリュキンは棚から一つの器を取り出して床に置き、魔法で出した水で満たすと蓋を閉じた。
「ヤート君、これから行う鍛錬は、お祖母様の水弾でしていたものと同じような事で、私が器の中の水をどんな風に動かしてるかを界気化した魔力で探ってほしい」
「聞いてる限りだと同じに聞こえるけど、僕がイーリリスさんの水弾の中を知ろうとしてた時と鍛錬内容に違いがあるの?」
「始めは徐々に後の方ははっきりと器の中の水を動かす魔力の量を変化させていくから、ヤート君はその変化にできるだけ早く対応して自分への負担を減らすように心がけてほしいんだ」
「なるほど、界気化した魔力を放つだけでも吐くような負担があるんだから、界気化した魔力を放ってる時に対象が不意の変化が起こしても自滅しないための鍛錬か」
「その通り。界気化した魔力を放って対象を知るという行為は荒野を目標もなく歩いていくのに似ていて、対象に起こる変化というのは自分が歩いている荒野に地割れや崖が突然現れるのに等しい。とっさに反応できなければ地割れに落ちたり崖から落ちるものさ」
「…………界気化した魔力を放つ対象が異常な状態の兄さんと姉さんだから、何かが起こってもおかしくないし危険度も跳ね上がるって事だね」
「真剣に聞いて、しかも深く考えてくれて良かった。それじゃあ始めるよ」
イリュキンが言うと同時に空気がピンッと張り詰める。これを乗り越えれば兄さんと姉さんを助けられるんだ。油断も弛緩もなくして真剣に鍛錬をこなしていこう。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
◎後書き
最後まで読んでいただきありがとうございます。
注意はしていますが誤字・脱字がありましたら教えてもらえるとうれしいです。
感想や評価もお待ちしています。
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