269 / 318
王城への旅にて 嫌な事実と存在感
しおりを挟む
父さんとラカムタさんが叩き潰した異常な集団を、みんなが集めてくれた。一応、死なないように最低限の治療をした後に、界気化した魔力を浸透させ記憶を探っていく。…………見るからに普通じゃない人の記憶だから連続したものではなかったけど、断片的に嫌な事がわかった。
「ヤート殿、何かわかっただろうか?」
「この人達は犠牲者だよ」
「…………犠牲者?」
「さらわれた後に過度の麻薬や拷問なんかで精神と思考が壊されて、さらに肉体改造もされてる。いや、これは改造とは言わないか。いろんな人体実験の結果、たまたま生き残ってしまった人達だね」
「それは……」
「感情の薄い僕でも本当に気持ち悪くなる実験ばっかりだったよ」
「……ヤート君、この人達は治りますか?」
「身体は治せるけど精神は無理。壊されてからの時間が経ち過ぎてる」
僕の断言に、みんなどう反応して良いのかわからないようだ。でも、そんな中、サムゼンさんは深刻さがまさっている。
「ヤート殿、さらわれたと言っていたな。このもの達は…………この国のものか?」
「ギリギリ読み取れた一番古い記憶の風景にあった植生が、この国かもしくは周辺のものだったから可能性はあるね」
「クッ……、この国にまだ残っていたのか‼︎」
サムゼンさんの握りしめた掌から血が滴り落ちた。…………もっと嫌な事実があって言い辛いけど、重要な情報だから伝えておかないとな。
「サムゼンさん、王都に教団の所属者か支援者がいるよ」
「…………やはり、そうか」
「うん、まず僕達を待ち伏せできるのは、少数精鋭の中に入れて僕達が来る事を知れる人は限られる。それにこれだけの人数を誘拐できて、実験のために抱え込むには場所も資金も大規模に必要。表、裏、どっちに属してる奴かはわからないけど、もしかしたら王城の中枢に食い込んでる奴かもしれないね」
「ヤート殿、徹底的に調べてもらう事は可能だろうか……?」
「そのつもりだよ。潰すって決めてるから」
「感謝する」
「それは王都にいる奴らを排除してからで良いよ」
サムゼンさんは僕の返答を聞いて噛み締めるようにうなずく。僕達もそんなサムゼンさんを見て気合を入れ直した後、王都への移動を再開するために準備を進めた。
「鎮める青と深眠粉も効いてるし、これで良しと」
「ヤート、厳重に囲んでるな」
「状況が状況だから、この人達を王都には連れて行けないでしょ? だから、こうやって街道から逸れたところに寝かせて周りを荊棘と高さのある草で囲めば、誰かに見つからずに済む。今の僕にはこの人達を治せないから、せめてゆっくり眠ってほしいなって思ったんだ」
「そうか……」
僕が説明すると父さんが優しく笑いながら頭を撫でてきて、その後にラカムタさんもグリグリ頭を撫でてくる。嫌じゃないんだけど首が痛くなるからラカムタさんには力加減を覚えてほしいなと思いつつ、移動前にやり残した事があるかを考える。…………そうだ。サムゼンさんに、これからの事を聞いておこう。
「サムゼンさん、僕達はこのまま王都に向かって良いの?」
「できれば目立たずに王のもとへと行きたいのだが…………」
サムゼンさんが僕達を見回しながら悩んでいる。うん、僕達は客観的に見て、欠色の僕・竜人族のみんなと竜人族に化けてるミック・存在感の塊の三体・騎士として有名なサムゼンさんに変わった経歴のヨナさんという目立つとしか言いようのない集団だからサムゼンさんが悩むのも当たり前だ。
僕は腰の小袋から黒影草の黒く細い葉を乾燥させた細い束を取り出し魔法を唱える。
「緑盛魔法・黒影衣」
魔法の発動とともに僕がつかんでいた黒影草の束は、ほとんど黒に見える濃い紫色の光の粒に変化し広がってから僕達の身体に降り注ぎ身体の表面を覆っていく。
「ヤート、これは何だ?」
「黒影草の魔力を借りて対象を認識されなくなる魔法だよ」
「あいかわらずお前の魔法は何でもありだな。効果の強さと持続時間を教えてくれ」
「相手から直接触られるとか本当に真剣に意識を集中されない限りわからないはずだよ。持続時間は効果が切れそうになったら僕がかけ直すから気にしないで。あ、でも、みんなが強く魔力や威圧を出したらバレるから、その点だけは気を付けてほしいな」
「つまり、静かにすばやく移動しろっていう事ね。サムゼン殿?」
「うむ、これなら大丈夫だろう。移動を開始する。目的地は王都の北にある門だ。そこで手引きをしてもらい王城へ入る事になっている」
「よし、身の回りの最終確認をした後に出発するぞ」
少ししてから僕達は移動を再開した。王都へ行き王城に入って王様と話して対教団の対応策を練る。…………言葉で言うだけなら簡単だけど、ここからは何が起きるかわからないから絶対に気を緩めない。それと僕にできる事なら全部やって必ず目的を達成してみせる。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
◎後書き
最後まで読んでいただきありがとうございます。
注意はしていますが誤字・脱字がありましたら教えてもらえるとうれしいです。
感想や評価もお待ちしています。
「ヤート殿、何かわかっただろうか?」
「この人達は犠牲者だよ」
「…………犠牲者?」
「さらわれた後に過度の麻薬や拷問なんかで精神と思考が壊されて、さらに肉体改造もされてる。いや、これは改造とは言わないか。いろんな人体実験の結果、たまたま生き残ってしまった人達だね」
「それは……」
「感情の薄い僕でも本当に気持ち悪くなる実験ばっかりだったよ」
「……ヤート君、この人達は治りますか?」
「身体は治せるけど精神は無理。壊されてからの時間が経ち過ぎてる」
僕の断言に、みんなどう反応して良いのかわからないようだ。でも、そんな中、サムゼンさんは深刻さがまさっている。
「ヤート殿、さらわれたと言っていたな。このもの達は…………この国のものか?」
「ギリギリ読み取れた一番古い記憶の風景にあった植生が、この国かもしくは周辺のものだったから可能性はあるね」
「クッ……、この国にまだ残っていたのか‼︎」
サムゼンさんの握りしめた掌から血が滴り落ちた。…………もっと嫌な事実があって言い辛いけど、重要な情報だから伝えておかないとな。
「サムゼンさん、王都に教団の所属者か支援者がいるよ」
「…………やはり、そうか」
「うん、まず僕達を待ち伏せできるのは、少数精鋭の中に入れて僕達が来る事を知れる人は限られる。それにこれだけの人数を誘拐できて、実験のために抱え込むには場所も資金も大規模に必要。表、裏、どっちに属してる奴かはわからないけど、もしかしたら王城の中枢に食い込んでる奴かもしれないね」
「ヤート殿、徹底的に調べてもらう事は可能だろうか……?」
「そのつもりだよ。潰すって決めてるから」
「感謝する」
「それは王都にいる奴らを排除してからで良いよ」
サムゼンさんは僕の返答を聞いて噛み締めるようにうなずく。僕達もそんなサムゼンさんを見て気合を入れ直した後、王都への移動を再開するために準備を進めた。
「鎮める青と深眠粉も効いてるし、これで良しと」
「ヤート、厳重に囲んでるな」
「状況が状況だから、この人達を王都には連れて行けないでしょ? だから、こうやって街道から逸れたところに寝かせて周りを荊棘と高さのある草で囲めば、誰かに見つからずに済む。今の僕にはこの人達を治せないから、せめてゆっくり眠ってほしいなって思ったんだ」
「そうか……」
僕が説明すると父さんが優しく笑いながら頭を撫でてきて、その後にラカムタさんもグリグリ頭を撫でてくる。嫌じゃないんだけど首が痛くなるからラカムタさんには力加減を覚えてほしいなと思いつつ、移動前にやり残した事があるかを考える。…………そうだ。サムゼンさんに、これからの事を聞いておこう。
「サムゼンさん、僕達はこのまま王都に向かって良いの?」
「できれば目立たずに王のもとへと行きたいのだが…………」
サムゼンさんが僕達を見回しながら悩んでいる。うん、僕達は客観的に見て、欠色の僕・竜人族のみんなと竜人族に化けてるミック・存在感の塊の三体・騎士として有名なサムゼンさんに変わった経歴のヨナさんという目立つとしか言いようのない集団だからサムゼンさんが悩むのも当たり前だ。
僕は腰の小袋から黒影草の黒く細い葉を乾燥させた細い束を取り出し魔法を唱える。
「緑盛魔法・黒影衣」
魔法の発動とともに僕がつかんでいた黒影草の束は、ほとんど黒に見える濃い紫色の光の粒に変化し広がってから僕達の身体に降り注ぎ身体の表面を覆っていく。
「ヤート、これは何だ?」
「黒影草の魔力を借りて対象を認識されなくなる魔法だよ」
「あいかわらずお前の魔法は何でもありだな。効果の強さと持続時間を教えてくれ」
「相手から直接触られるとか本当に真剣に意識を集中されない限りわからないはずだよ。持続時間は効果が切れそうになったら僕がかけ直すから気にしないで。あ、でも、みんなが強く魔力や威圧を出したらバレるから、その点だけは気を付けてほしいな」
「つまり、静かにすばやく移動しろっていう事ね。サムゼン殿?」
「うむ、これなら大丈夫だろう。移動を開始する。目的地は王都の北にある門だ。そこで手引きをしてもらい王城へ入る事になっている」
「よし、身の回りの最終確認をした後に出発するぞ」
少ししてから僕達は移動を再開した。王都へ行き王城に入って王様と話して対教団の対応策を練る。…………言葉で言うだけなら簡単だけど、ここからは何が起きるかわからないから絶対に気を緩めない。それと僕にできる事なら全部やって必ず目的を達成してみせる。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
◎後書き
最後まで読んでいただきありがとうございます。
注意はしていますが誤字・脱字がありましたら教えてもらえるとうれしいです。
感想や評価もお待ちしています。
13
あなたにおすすめの小説
病弱少年が怪我した小鳥を偶然テイムして、冒険者ギルドの採取系クエストをやらせていたら、知らないうちにLV99になってました。
もう書かないって言ったよね?
ファンタジー
ベッドで寝たきりだった少年が、ある日、家の外で怪我している青い小鳥『ピーちゃん』を助けたことから二人の大冒険の日々が始まった。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。
石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。
実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。
そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。
血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。
この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。
扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。
転生したので好きに生きよう!
ゆっけ
ファンタジー
前世では妹によって全てを奪われ続けていた少女。そんな少女はある日、事故にあい亡くなってしまう。
不思議な場所で目覚める少女は女神と出会う。その女神は全く人の話を聞かないで少女を地上へと送る。
奪われ続けた少女が異世界で周囲から愛される話。…にしようと思います。
※見切り発車感が凄い。
※マイペースに更新する予定なのでいつ次話が更新するか作者も不明。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
不倫されて離婚した社畜OLが幼女転生して聖女になりましたが、王国が揉めてて大事にしてもらえないので好きに生きます
天田れおぽん
ファンタジー
ブラック企業に勤める社畜OL沙羅(サラ)は、結婚したものの不倫されて離婚した。スッキリした気分で明るい未来に期待を馳せるも、公園から飛び出てきた子どもを助けたことで、弱っていた心臓が止まってしまい死亡。同情した女神が、黒髪黒目中肉中背バツイチの沙羅を、銀髪碧眼3歳児の聖女として異世界へと転生させてくれた。
ところが王国内で聖女の処遇で揉めていて、転生先は草原だった。
サラは女神がくれた山盛りてんこ盛りのスキルを使い、異世界で知り合ったモフモフたちと暮らし始める――――
※第16話 あつまれ聖獣の森 6 が抜けていましたので2025/07/30に追加しました。
【完結】巻き込まれたけど私が本物 ~転移したら体がモフモフ化してて、公爵家のペットになりました~
千堂みくま
ファンタジー
異世界に幼なじみと一緒に召喚された17歳の莉乃。なぜか体がペンギンの雛(?)になっており、変な鳥だと城から追い出されてしまう。しかし森の中でイケメン公爵様に拾われ、ペットとして大切に飼われる事になった。公爵家でイケメン兄弟と一緒に暮らしていたが、魔物が減ったり、瘴気が薄くなったりと不思議な事件が次々と起こる。どうやら謎のペンギンもどきには重大な秘密があるようで……? ※恋愛要素あるけど進行はゆっくり目。※ファンタジーなので冒険したりします。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる