22 / 318
赤の山にて 青と猪
しおりを挟む
赤の村に来て随分経つけど、やってる事は散歩したり本を読んだりと黒の村にいる時と変わらない。ラカムタさんに聞いても、黒の村に帰る正確な日程は決めてないって言ってた。こんな感じで過ごしてたら、いざ黒の村に戻った時にちゃんと働けるのか心配だ。とはいえ、どれだけ心配してても最終的に、まあ良いか、その時に考えようっていう結論になる。自分の事だけど、のんびりしたものだ。さて、一応の結論が出たところで散歩に行きますか。
それから今日の散歩の予定を考えていると赤の村の門に着く。交流会に来てから何度も散歩に出ている内に、赤の門番の人達とはいつの間にかあいさつして少し話すくらい親しくなっていた。他の赤の竜人には相変わらず身構えられるけど、何にでも例外はできるものなんだね。
「こんにちは」
「おっ、今日も散歩か?」
「はい。通っても良いですか?」
「あーとな、ちょっと時間もらいたい」
「何か問題ありました?」
「いや、坊主に問題はない。ただな、お前に用がある奴がいる」
「……誰でしょう?」
「今、呼ぶ。おい、お目当ての相手が来たぞ!!」
「感謝します」
門番は休憩所になっている小屋に向かって呼びかけた。すると中から、一人の青の竜人の子供が出てきた。
「お前は……」
「すぐにでも本題に入りたいところだけど、その前に自己紹介して良いかな?」
「……どうぞ」
「それじゃあ遠慮なく、私は青のイリュキン。青の中じゃ、次の水添えの第一候補だ」
「ふーん、水添えね」
「聞いた事がないだろうから説明すると、我ら青の竜人族は巨大な湖である大霊湖の湖畔に村を作り、そこで暮らしている。我らにとって水は、すぐ側にあるものであり信仰の対象なんだ。そして水添えとは大霊湖の中央にある水源の島に立ち入りが許され、その島の管理を任された唯一人のものを指す」
「そう、僕は黒のヤーヴェルト。周りからはヤートって呼ばれてる。見ての通り欠色だよ」
「私もヤートと呼んで良いかな?」
「うん良いよ。それで、なんか用?」
「単刀直入に言わせてもらうと、君の魔法について問題のない範囲で構わないから教えてもらえないだろうか」
「決闘の時に言ったけど、僕が自分の手の内を教えると思う?」
「無理を言ってるのは自覚している。けれど、頼みたい」
「質問に質問を返して悪いけど、なんで知りたいの?」
「……そうだね。そこから話さないといけないか。少し話が長くけど構わないかな?」
「特に気にしない。でも、散歩には出たい」
「ああ、私も歩きながらでも構わないよ」
「じゃあ、行こう」
イリュキンと二人で散歩に行く事になった。あっと、一応聞いとかないとダメな事があった。
「一応聞いときたいんだけど、イリュキンは破壊猪が居ても平気?」
「…………おそらく大丈夫だと思う」
そこそこの間が、すごい心配だ。
イリュキンと二人で森の中に入ると、すぐに巨体が目に入りその流れでチラッとイリュキンの顔を見たら完全に引きつっていた。物静かな良い奴なのに、なんでみんな怖がるんだろ? それに始めから、この調子で大丈夫か不安だ。
「本当に大丈夫? なんなら今日は破壊猪に遠慮してもらうけど?」
「いっ、いや、私の方が頼んだ側なのだから、君達に何かしら我慢する事はしてほしくない。いつもの感じでいてくれ。すぐに慣れてみせるさ!!」
「……イリュキンがいる時点で、いつもの感じじゃない。それと散歩の途中で体調崩されても面倒くさい」
「大丈夫だ。私の事は気にしないでくれ」
「お前がそれで良いならそうするけど体調崩したらすぐに言ってよ。ひどくなるまで我慢されるとより面倒くさいからね」
「……わかった」
そんな決死の覚悟を込めるなって言いたいけど、なんか気を使うのもバカバカしくなってきたからイリュキンが言ったようにいつもの感じでいきますか。
「今日も散歩に付き合ってくれる?」
「ブオ!!」
「そうか、ありがと。お前がいると安心して遠出ができるから嬉しい」
「ブッ、ブオ!!」
「うん、頼りにしてる。ああ、今日はもう一人いるけど大丈夫?」
「ブ?」
「あそこにいる奴、イリュキンって言うんだ。おーい、あいさつして」
「わかった。初めまして、私は青の竜人のイリュキンと言います。今日は散歩に同行させてもらいます」
「……固くなりすぎだよ。こいつはイギギさんと同じで、あんまり堅苦しいのは好きじゃないよ」
僕がイリュキンのあいさつに呆れていると、徐々に破壊猪がイリュキンに近づいていく。イリュキンは反射的に下がりそうになったけど、自分で慣れてみせると言ったせいかグッと我慢していた。必死にじっとしているイリュキンに近づくと破壊猪は、イリュキンの匂いを嗅ぎ始める。なんか遠くの方でガサガサ音がするけど……無視しよう。だいたい十秒匂いを嗅ぐと破壊猪はイリュキンから離れて戻ってきた。
「ブオ」
「そう、それなら問題ないね。イリュキン、移動して良いか?」
「…………ああ、大丈夫だ」
絶対に痩せ我慢だなって確信ができるくらい声が震えてるけど、言わない方が良さそうだ。まあ、気にしてもしょうがないから行こう。
「なんか食べ頃の物があるところって知ってる?」
「ブ」
「それじゃあ、そこに行きたい」
「ブオ!!」
破壊猪と散歩の予定を決めて歩き出すと、少し遅れてイリュキンが歩き出した。何度も思ったけど、初めからこの調子で無事に帰って来れるのか心配だ。 ……まあ、成るように成るか。できれば良い感じになってほしいけどね。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
◎後書き
最後まで読んでいただきありがとうございます。
注意はしていますが誤字・脱字がありましたら教えてもらえるとうれしいです。
感想や評価もお待ちしています。
それから今日の散歩の予定を考えていると赤の村の門に着く。交流会に来てから何度も散歩に出ている内に、赤の門番の人達とはいつの間にかあいさつして少し話すくらい親しくなっていた。他の赤の竜人には相変わらず身構えられるけど、何にでも例外はできるものなんだね。
「こんにちは」
「おっ、今日も散歩か?」
「はい。通っても良いですか?」
「あーとな、ちょっと時間もらいたい」
「何か問題ありました?」
「いや、坊主に問題はない。ただな、お前に用がある奴がいる」
「……誰でしょう?」
「今、呼ぶ。おい、お目当ての相手が来たぞ!!」
「感謝します」
門番は休憩所になっている小屋に向かって呼びかけた。すると中から、一人の青の竜人の子供が出てきた。
「お前は……」
「すぐにでも本題に入りたいところだけど、その前に自己紹介して良いかな?」
「……どうぞ」
「それじゃあ遠慮なく、私は青のイリュキン。青の中じゃ、次の水添えの第一候補だ」
「ふーん、水添えね」
「聞いた事がないだろうから説明すると、我ら青の竜人族は巨大な湖である大霊湖の湖畔に村を作り、そこで暮らしている。我らにとって水は、すぐ側にあるものであり信仰の対象なんだ。そして水添えとは大霊湖の中央にある水源の島に立ち入りが許され、その島の管理を任された唯一人のものを指す」
「そう、僕は黒のヤーヴェルト。周りからはヤートって呼ばれてる。見ての通り欠色だよ」
「私もヤートと呼んで良いかな?」
「うん良いよ。それで、なんか用?」
「単刀直入に言わせてもらうと、君の魔法について問題のない範囲で構わないから教えてもらえないだろうか」
「決闘の時に言ったけど、僕が自分の手の内を教えると思う?」
「無理を言ってるのは自覚している。けれど、頼みたい」
「質問に質問を返して悪いけど、なんで知りたいの?」
「……そうだね。そこから話さないといけないか。少し話が長くけど構わないかな?」
「特に気にしない。でも、散歩には出たい」
「ああ、私も歩きながらでも構わないよ」
「じゃあ、行こう」
イリュキンと二人で散歩に行く事になった。あっと、一応聞いとかないとダメな事があった。
「一応聞いときたいんだけど、イリュキンは破壊猪が居ても平気?」
「…………おそらく大丈夫だと思う」
そこそこの間が、すごい心配だ。
イリュキンと二人で森の中に入ると、すぐに巨体が目に入りその流れでチラッとイリュキンの顔を見たら完全に引きつっていた。物静かな良い奴なのに、なんでみんな怖がるんだろ? それに始めから、この調子で大丈夫か不安だ。
「本当に大丈夫? なんなら今日は破壊猪に遠慮してもらうけど?」
「いっ、いや、私の方が頼んだ側なのだから、君達に何かしら我慢する事はしてほしくない。いつもの感じでいてくれ。すぐに慣れてみせるさ!!」
「……イリュキンがいる時点で、いつもの感じじゃない。それと散歩の途中で体調崩されても面倒くさい」
「大丈夫だ。私の事は気にしないでくれ」
「お前がそれで良いならそうするけど体調崩したらすぐに言ってよ。ひどくなるまで我慢されるとより面倒くさいからね」
「……わかった」
そんな決死の覚悟を込めるなって言いたいけど、なんか気を使うのもバカバカしくなってきたからイリュキンが言ったようにいつもの感じでいきますか。
「今日も散歩に付き合ってくれる?」
「ブオ!!」
「そうか、ありがと。お前がいると安心して遠出ができるから嬉しい」
「ブッ、ブオ!!」
「うん、頼りにしてる。ああ、今日はもう一人いるけど大丈夫?」
「ブ?」
「あそこにいる奴、イリュキンって言うんだ。おーい、あいさつして」
「わかった。初めまして、私は青の竜人のイリュキンと言います。今日は散歩に同行させてもらいます」
「……固くなりすぎだよ。こいつはイギギさんと同じで、あんまり堅苦しいのは好きじゃないよ」
僕がイリュキンのあいさつに呆れていると、徐々に破壊猪がイリュキンに近づいていく。イリュキンは反射的に下がりそうになったけど、自分で慣れてみせると言ったせいかグッと我慢していた。必死にじっとしているイリュキンに近づくと破壊猪は、イリュキンの匂いを嗅ぎ始める。なんか遠くの方でガサガサ音がするけど……無視しよう。だいたい十秒匂いを嗅ぐと破壊猪はイリュキンから離れて戻ってきた。
「ブオ」
「そう、それなら問題ないね。イリュキン、移動して良いか?」
「…………ああ、大丈夫だ」
絶対に痩せ我慢だなって確信ができるくらい声が震えてるけど、言わない方が良さそうだ。まあ、気にしてもしょうがないから行こう。
「なんか食べ頃の物があるところって知ってる?」
「ブ」
「それじゃあ、そこに行きたい」
「ブオ!!」
破壊猪と散歩の予定を決めて歩き出すと、少し遅れてイリュキンが歩き出した。何度も思ったけど、初めからこの調子で無事に帰って来れるのか心配だ。 ……まあ、成るように成るか。できれば良い感じになってほしいけどね。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
◎後書き
最後まで読んでいただきありがとうございます。
注意はしていますが誤字・脱字がありましたら教えてもらえるとうれしいです。
感想や評価もお待ちしています。
86
あなたにおすすめの小説
病弱少年が怪我した小鳥を偶然テイムして、冒険者ギルドの採取系クエストをやらせていたら、知らないうちにLV99になってました。
もう書かないって言ったよね?
ファンタジー
ベッドで寝たきりだった少年が、ある日、家の外で怪我している青い小鳥『ピーちゃん』を助けたことから二人の大冒険の日々が始まった。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。
石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。
実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。
そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。
血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。
この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。
扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。
転生したので好きに生きよう!
ゆっけ
ファンタジー
前世では妹によって全てを奪われ続けていた少女。そんな少女はある日、事故にあい亡くなってしまう。
不思議な場所で目覚める少女は女神と出会う。その女神は全く人の話を聞かないで少女を地上へと送る。
奪われ続けた少女が異世界で周囲から愛される話。…にしようと思います。
※見切り発車感が凄い。
※マイペースに更新する予定なのでいつ次話が更新するか作者も不明。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
不倫されて離婚した社畜OLが幼女転生して聖女になりましたが、王国が揉めてて大事にしてもらえないので好きに生きます
天田れおぽん
ファンタジー
ブラック企業に勤める社畜OL沙羅(サラ)は、結婚したものの不倫されて離婚した。スッキリした気分で明るい未来に期待を馳せるも、公園から飛び出てきた子どもを助けたことで、弱っていた心臓が止まってしまい死亡。同情した女神が、黒髪黒目中肉中背バツイチの沙羅を、銀髪碧眼3歳児の聖女として異世界へと転生させてくれた。
ところが王国内で聖女の処遇で揉めていて、転生先は草原だった。
サラは女神がくれた山盛りてんこ盛りのスキルを使い、異世界で知り合ったモフモフたちと暮らし始める――――
※第16話 あつまれ聖獣の森 6 が抜けていましたので2025/07/30に追加しました。
【完結】巻き込まれたけど私が本物 ~転移したら体がモフモフ化してて、公爵家のペットになりました~
千堂みくま
ファンタジー
異世界に幼なじみと一緒に召喚された17歳の莉乃。なぜか体がペンギンの雛(?)になっており、変な鳥だと城から追い出されてしまう。しかし森の中でイケメン公爵様に拾われ、ペットとして大切に飼われる事になった。公爵家でイケメン兄弟と一緒に暮らしていたが、魔物が減ったり、瘴気が薄くなったりと不思議な事件が次々と起こる。どうやら謎のペンギンもどきには重大な秘密があるようで……? ※恋愛要素あるけど進行はゆっくり目。※ファンタジーなので冒険したりします。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる