ひ弱な竜人 ~周りより弱い身体に転生して、たまに面倒くさい事にも出会うけど家族・仲間・植物に囲まれて二度目の人生を楽しんでます~

白黒 キリン

文字の大きさ
77 / 318

大神林の奥にて 驚愕とため息

しおりを挟む
「ギィイイイィィィ!!!!!」

 硬金樹メタルツリーの特徴的な黒光りする幹に魔樹の顔があり、僕を憎々しげな目で見て叫んでいる。魔石――見た目は魔樹に戻ったけどややこしいから魔石って呼ぶ――に硬金樹メタルツリーの身体を与える事になったのは僕の判断ミスだし、ここで逃げるのもなんか違う。身体の状態を確認したらそれなりに回復してるから、やれるだけとことん戦おうと立ち上がって前を向けば、三体が僕の前に立ち魔石に対して戦闘態勢になっていた。……あれ?

「気ニ入リマセンネ」
「……ガア」
「ブオ」
「…………ギィィィイイイ」

 魔石の方も完全に戦闘態勢になってる。さっきまで常に視線は僕を見てたのに、今は三体を見てた。ディグリがイラだちながらも背中越しに僕へ声をかけてくる。

「アア、コノ身ノ程知ラズヲ殲滅スルノデ下ガッテテクダサイ」
「「……」」

 そう言えば鬼熊オーガベア破壊猪ハンマーボアは初めて出会った時はケンカになった。ディグリともケンカになってる。それに王国の軍馬の黒曜馬オブシダンホース六足馬デミ・スレイプニル大神林だいしんりんの外で対面した時もケンカになった。もしかして魔獣は別の魔獣と初めて出会った時は、どっちが格上かみたいなのを決めるために本能的に戦うの? そうだとしたら迷惑極まりないぞ。

「あのさ、魔石とは僕が戦ってたんだけど……」
「「「「…………」」」」

 僕は完全に蚊帳の外なってる。……とりあえず下がろう。一応魔石から視線を外さないようにジリジリ下がって、うわ!! 突然ディグリが振り返り僕を抱えて跳んだ。その理由はさっきまで僕が立っていた地面から根が三本突き出していたからで、どうやら魔石は視線を三体に向けつつも、やっぱり僕を狙っていたようだ。その後もディグリに抱えられた僕を何度も狙って魔石の根が地面から突き出てくる。それにしても本能で襲いかかってくるだけかと思ってたけど、魔石はけっこう策士だな。

 …………地面から突き出てくる魔石の根を避ける度に、ディグリの表情と気配が鋭くなっていく。そして何度目かわからない根を避けた時に、ディグリが右手を一瞬で鞭にして魔石を攻撃する。それを魔石は触手で防ごうとしたけど、鬼熊オーガベアの魔力を溜めた前足から放たれる魔力刃と、破壊猪ハンマーボアの鼻から放たれる魔力を込めた鼻息弾ノーズブレスが魔石の触手を切り裂き破壊されて、ディグリの鞭が魔石の右目にくらった。ガンッという金属同士がぶつかった音と共に空気が一気に張り詰めていく。

「本当ニ気ニ入リマセンネ。コノ期ニ及ヨンデ、マダ執拗ニ狙ウトハ…………虫唾ガ走ル」
「ディグリ?」
「「…………」」
「ギィィィイイイイイイ!!!!!!!」

 今度こそお互いを敵だと確信したみたいで、三体の身体から魔力が吹き上がり魔石は全身から触手を生やした。ウグゥ、抱えられて真近で魔力を放たれると弱ってる今の僕にはキツイ。

「ディグリ、魔力の圧がキツイから、せめて半分くらいにできない?」
「ア、モウシワケアリマセン」

 ディグリが魔力の放出を抑えてくれたからマシになった。ただディグリが魔力の放出を弱めた代わりに鬼熊オーガベア破壊猪ハンマーボアの魔力が増した。……あの二体の近くにいたら魔力の圧に耐えれなくて、僕は絶対吐いてたな。ディグリが離れてくれて良かった。

「ガ?」
「ブオ」

 二体はうなずき合うと一瞬身体を沈めて魔石に突撃していく。魔石はすぐに触手で突き刺しにかかる。僕は二体が向かってくる触手を、避けるなり迎撃すると思ったら二体は迷う事なく突撃する。当然顔や身体に触手が突き刺さるから、僕はすぐ治療しようと魔法を準備したけど、ガキンという音と共に二体に刺さったはずの触手が弾かれたのを見て唖然とした。

「うそ……、あの触手はかなり鋭くて硬いはずなのに」
「当然デス。オフタカタト戦ッタ事ガアルノデワカリマスガ、戦闘態勢ニハイッタオフタカタニハ生半可ナ攻撃ハ通用シマセン。…………私ハ、ドウトデモデキマスガ」
「ガア!!」
「ブオ!!」
「事実ヲ言ッタダケデス」

 なんで魔石が目の前にいるこの状況でケンカできるんだろ? 魔石に突進していく二体が反論してチラッとディグリを見る。けれど、特に表情が変わらないディグリを見て小さくうなると、突進の速さが上がった。……魔石との戦いが終わった後がさらに騒がしくなる気がする。

 鬼熊オーガベアの振り下ろしと破壊猪ハンマーボアの突進が同時にガッと魔石に当たった音で僕は現実逃避から戻される。そんな僕の目に入ってきたのは鬼熊オーガベアの爪と破壊猪ハンマーボアの牙は魔石に刺さっただけで破壊する事できず受け止められたという驚きの光景だった。二体も魔石の硬金樹メタルツリーの身体の硬さに驚いて目を見開いている。そんな中、ディグリのつぶやきがポツリともれた。

「フン、情ケナイデスネ」
「いや、今の魔石の身体は硬金樹メタルツリーなんだからしょうがないよ。ディグリも同じ植物なら硬金樹メタルツリーのスゴさはわかるでしょ?」
硬金樹メタルツリーノ、スゴサハワカリマス。デスガ、私ガ言ッテイルノハ、敵ヲ下ニ見テ全力ヲ出サズ、攻撃ヲ止メラレラタ事ガ情ケナイト言ッタノデス」
「そう……なの?」
「エエ、少ナクトモ、貴方ガ苦戦シタ相手ヲ下ニ見テイル時点デ最低デスネ。…………ハァ」

 ディグリが言葉を発する度に二体の身体がピクッと震える。そしてディグリがため息をすると二体の身体がふた回りくらい大きくなる。

「ガアアア!!!」
「ブオオオ!!!」

 二体が叫ぶとガゴンッ!!!! って魔石の硬金樹メタルツリーの身体が砕かれる。硬金樹メタルツリーを助走なしの状態から強引に砕いた? 今度は魔石が目を見開く。

「マッタク始メカラソウスレバ良イモノヲ……」

 僕は二体が魔石の身体になってる硬金樹メタルツリーを強引に砕いた事に驚いていたけど、ディグリは二体が破壊できる事が当たり前のようにつぶやいてる。…………二体との付き合いで言えば、僕の方が長いのにディグリの方がよくわかってるのが、なんか悔しい。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
◎後書き
 最後まで読んでいただきありがとうございます。

 注意はしていますが誤字・脱字がありましたら教えてもらえるとうれしいです。

 感想や評価もお待ちしています。
しおりを挟む
感想 73

あなたにおすすめの小説

病弱少年が怪我した小鳥を偶然テイムして、冒険者ギルドの採取系クエストをやらせていたら、知らないうちにLV99になってました。

もう書かないって言ったよね?
ファンタジー
 ベッドで寝たきりだった少年が、ある日、家の外で怪我している青い小鳥『ピーちゃん』を助けたことから二人の大冒険の日々が始まった。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。

石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。 実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。 そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。 血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。 この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。 扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。

転生したので好きに生きよう!

ゆっけ
ファンタジー
前世では妹によって全てを奪われ続けていた少女。そんな少女はある日、事故にあい亡くなってしまう。 不思議な場所で目覚める少女は女神と出会う。その女神は全く人の話を聞かないで少女を地上へと送る。 奪われ続けた少女が異世界で周囲から愛される話。…にしようと思います。 ※見切り発車感が凄い。 ※マイペースに更新する予定なのでいつ次話が更新するか作者も不明。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

不倫されて離婚した社畜OLが幼女転生して聖女になりましたが、王国が揉めてて大事にしてもらえないので好きに生きます

天田れおぽん
ファンタジー
 ブラック企業に勤める社畜OL沙羅(サラ)は、結婚したものの不倫されて離婚した。スッキリした気分で明るい未来に期待を馳せるも、公園から飛び出てきた子どもを助けたことで、弱っていた心臓が止まってしまい死亡。同情した女神が、黒髪黒目中肉中背バツイチの沙羅を、銀髪碧眼3歳児の聖女として異世界へと転生させてくれた。  ところが王国内で聖女の処遇で揉めていて、転生先は草原だった。  サラは女神がくれた山盛りてんこ盛りのスキルを使い、異世界で知り合ったモフモフたちと暮らし始める―――― ※第16話 あつまれ聖獣の森 6 が抜けていましたので2025/07/30に追加しました。

【完結】巻き込まれたけど私が本物 ~転移したら体がモフモフ化してて、公爵家のペットになりました~

千堂みくま
ファンタジー
異世界に幼なじみと一緒に召喚された17歳の莉乃。なぜか体がペンギンの雛(?)になっており、変な鳥だと城から追い出されてしまう。しかし森の中でイケメン公爵様に拾われ、ペットとして大切に飼われる事になった。公爵家でイケメン兄弟と一緒に暮らしていたが、魔物が減ったり、瘴気が薄くなったりと不思議な事件が次々と起こる。どうやら謎のペンギンもどきには重大な秘密があるようで……? ※恋愛要素あるけど進行はゆっくり目。※ファンタジーなので冒険したりします。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

処理中です...