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レスクへいざ行かん!

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――突然の暗転の後、視界が変わった。

あの白い空間は瞬く間に消え失せ、目に映るのは清々しいほどの晴天。燦々と降りそそぐ光には仄かな暖かさを感じ、このままなにもしたくないと思うほどの魅力を覚えた。


俺は寝転がったまま目を閉じる。

なんと心地よいことか。そして辺りは見渡す限りの草原……実に開放感に満ち溢れている。小さい頃、草むらへ寝転がって日向ぼっこをしていた時のような感覚だ。


――どうやら無事に転移できたみたいだな。

神様だし間違うことは無いと思うが、いかんせん魔法の類はよく分からないから不安だった。転移に失敗して空中から地面に投げ出されたりするかもしれない……てな感じでな。


……心地よい風が優しく頬を撫でる。

俺は、風で運ばれた緑の香りを胸いっぱいに吸い込んだ。

まるで優しい空気が俺を包み込むような感覚がする……ついつい時間を忘れてしまうほどの心地よさだ。このまま眠ってしまいそうなほどの抗えない魅力が……そこにはあった。



暫く経って、このままではいけないと俺はゆっくりと立ち上がる。名残惜しさもあるが、いまは行動せねばならない。このままだらだらとしていたところで、何も得るものはないからな。

ただ、心の安らぎと言う一点を除いて。

「――さて、のんびりするのはそろそろ止めにするか!」

そうやって声に出して言わないと立ち上がれないほどの、凄まじい魅力がここにはあった。立ち上がった俺は、何か目印のようなものがないか探す。


――辺りを見渡すと、遠くに国らしきものが見えた。

あれがレスク王国とやらだろう。随分と小さく見えるのはここからかなり離れてるってことだよな……到着するまで長そうだ。

そう思うと同時に、近くに何かが落ちる音がした。そこまで重そうな音ではないが、俺の耳に入るには十分な音だ。


――地面を見ると、やはり何かが落ちていた。

どうやらバッグの様だな。茶色の些か小さいバッグだ。辺りが緑で埋め尽くされているため、余計に目立って見える。当然その状況に疑問を覚えるわけで……

「ん? なんだこりゃ。 何でこんなとこにバッグが落ちてるんだ?」


よく見ると、バッグの側には手紙らしきもの置いてあった。ご丁寧に俺の名前が書かれている上、差出人は……神様から?

「俺宛か。何が書かれてんだ?」


 =シア様へ=


"どうやら転移が無事成功したようですね。


この手紙の直ぐ近くにあるバッグにはこの周辺地域の地図、及びレスク王国内の地図が入っています。

その他には、護身用のナイフ、及びレスク王国での身分証と家へ行くために簡易地図が同梱してあります。

入国する際には身分証を提示することが求められるため、身分証に関してはこちらで用意させていただきました。「身分証の作成後、暫く近隣の村に出向いていた」ということになっております。

それと、言語理解のスキルも付与しましたのでこちらでの会話や読み書きに関してはご安心ください。意識的に使用する言語を変えることも出来るようにしてあります。


なお、このバッグは空間拡張魔法が施されているため、制限なしに物を入れることが可能です。取り出す際には、対象物を念じながら手を入れると取り出すことができます。ただし、生きているものは入れることができないので注意してください

では、二度目の人生を存分にお過ごしください。"




「――地図と身分証だって? どれどれ?」

書かれていた通りに、"身分証"と念じながら手を入れると、手のひらサイズのカードのようなものが出てきた。名前と性別、それに犯罪歴? の記述があり、カードの右上に小さな鉱石のようなものが埋め込まれている。


一通り見た後にカードをしまった俺は、次に地図を取り出した。

王国の形はどうやら円形に近いようだ。周りは全て城壁で囲まれており、正面に門がある。どうやらそこからしか入れないらしい。

物流を考えると少し効率が悪い気もするが、もし外部から攻められたときには役に立つだろうな。もし空から敵が来たらどうするかは解らないが。


地図も一通り見た後、バッグにしまう。あとは……ナイフか。


「あとはナイフだが……これ日本だったら持ち歩いていると
 確実に捕まる大きさだな。護身用にしては随分大きくないか?」

見た目はサバイバルナイフのようで、かなり鋭利に見える。試しにそこらに生えていた高めの草を切ってみると、引っかかる感じもなくスパッと切れた。

間違って刃が指にでも触れたら切り落としてしまいそうなレベルに鋭い。これはかなり注意して扱わないといけないな……

「……うん、危ないからもうバックに入れとこう」


取り敢えず確認は一通り終わりだが、次に体を調べてみる。

あっちと比べ格段に身体能力は向上されたのであろう。現時点で体がとても軽い気がする。これはギフトのなかにあった物の一つだな。

「なんかすっげぇ体が軽いな。――よっと!」


……全力でジャンプしたら垂直にかなり飛んだ。そう、跳ぶではなくかなり”飛ん”だ。

「うおっ?! 高い高い高い!」

着地をしたが、5mという高さにもかかわらず足の痛みは全くなかった。ただ、宙に体が浮いてる感覚はあまり良くなかったな……



ともかく、凄えどころじゃねえなこの体。それに、全力で走ってみたらオリンピック選手も真っ青な速さで走れた。この体はどうやら想像以上なものらしい。

ただ、身体能力が高すぎてむしろ振り回されている気がする。意識して力を抑えることに慣れるまで少し時間がかかったのが少し辛かったな。

……そんな感じでいろいろ検証したが、流石にもう飽きてきた。

「そろそろ飽きてきたし、取り敢えずレスクに行くか!」


俺はしっかりと大地を踏みしめ、レスクに向かって走り始めた。

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