16 / 25
街の散策
しおりを挟む
―――時は夕刻、フェイに別れを告げた俺は商業区域に向かっていた。
家に帰るとは言ったものの、よくよく考えれば食べ物の類が家にないことに気付いたため夕食を買いに来たわけだ。それとは別に異世界での初給料祝いに何かうまいものでも買おうかと思ったというのもある。
……昼と比べて屋台の数も少なくなり、客もまばらになっている。相変わらず辺りから良い匂いが漂ってくるが、昼間と比べて匂いが薄い。
"薄い"と言うと分かりにくいかもしれないが……複雑さが無いという感じか? うまく言い表す言葉が出てこないが何となくそんな気がした。
その中をのんびりと見て回っていると一つの店が目に入った。見る限り野菜と果物が売られているが、食材に関しては元の世界と大差ないみたいだ。名称に関してもほとんど同じで気をつける程のことはない。
少し店内を見て回っていると、店員らしき男が話しかけてきた。
「おう、いらっしゃい! 何が欲しいんだ?」
「いや、これといって決めてないんですよ。夕食に何を食べようか考えてたらたまたまここを見つけたので色々見てました。果物とかを食いたいと思いまして」
「なるほど。外にある屋台の匂いにつられて肉ばっか
食ってる奴が多いから、アンタみたいな客は大歓迎だ!」
そう言うと男は 「ゆっくり見ていってくれ」 と言いながら店の奥の方へと歩いて行った。こういった類の店は防犯はどうしてるんだろうと思ったが、俺が気にすることではないなと思って考えるのをやめた。
……取り敢えず目に入った林檎みたいな果物を手に取る。
と言っても見た目や匂いからして完璧に林檎なんだがな。もし名前が違った場合に備えて俺は名前を出さないことにしよう。ちょうど店員が奥から出て来たため、林檎を持ったまま話しかける。
「すみません、コレを2つ買いたいんですけど」
「おう、リゴの実か。ならニつで半銅貨二枚だな」
「それじゃあこれで」
そう言って銅貨を差し出し、半銅貨八枚を受け取った。見た目は同じでも名前が違うってのはやっぱあるんだな、慣れるまで暫く混乱しそうだ。
「確かに。では失礼します」
「おう。また来てくれや!」
取り敢えずこれといって買いたいものもないし、店をあとにする。野菜は金に余裕ができたら買いに来よう。あとは肉かな?
これといって行く場所を決めていないため、昼間にフェイと来た屋台に足を運ぶ。
奢ってもらった時は確認していなかったが、一本あたり半銅貨三枚だったようだ。取り敢えず二本買っておこう。
一応買い物はこれで終了だな。家に帰ってのんびり食事にしようか。
――家に帰る道を歩んでいると、男の子が蹲っているのを見かけた。元の世界の時と同じように優しく話しかける。
「こんなとこで蹲ってどうしたの?」
「えへへ。おなかすいちゃって……」
「……これ食べる?」
「いいの?! やったぁ!」
そう言って串焼きを差し出すと、目を輝かせて貪るように食べ始めた。警戒心というものが無いのだろうか? まぁ話しかけた俺が言うのもアレだがな。
「ありがとうお兄ちゃん!」
「どういたしまして。それにしても何でこんな所にいたの?」
「えっとね、お父さんが怪我しちゃったからぼくのお金で薬草を買いに来たんだ! だから薬草に全部使っちゃって食べ物が買えなかったの」
「怪我? ……どのくらい酷いの?」
「よくわかんない。見ようとするとおかあさんが隠すんだ。でもいつも辛そうにしてるからぼくが治してあげたいなって」
……この子めちゃくちゃいい子じゃないか! なんとかしてあげたいな。
でも治療院ってのがあったよな。そんなに大きな怪我なら行くのが筋じゃないか? 取り敢えずこの子に聞いてみようか。
「……治療院とかには行かないの?」
「うん。治療院で見てもらったんだけど、全部治すとお金がたくさんかかるんだって。あまりぼくの家お金ないから……」
「そうか……」
ここまで聞いたのにさよならは出来ないな。俺には治せる力があるし、治療院の代わりに治してあげよう。ヒール以上は使ったことが無いけど俺には出来るはずだ。
「……よし! よかったらお父さんの怪我を見せてくれないかな? お兄ちゃんは回復魔法が使えるからお父さんを治せるかもしれない」
「ほんと?! じゃあこっちだよ!!」
そう言うと男の子は俺の手を掴んで走り始めた。回復魔法の実験みたいで少し後ろめたいが、いい機会だし全力で治してみよう。
人助けは気持ちが良いことだしな!
家に帰るとは言ったものの、よくよく考えれば食べ物の類が家にないことに気付いたため夕食を買いに来たわけだ。それとは別に異世界での初給料祝いに何かうまいものでも買おうかと思ったというのもある。
……昼と比べて屋台の数も少なくなり、客もまばらになっている。相変わらず辺りから良い匂いが漂ってくるが、昼間と比べて匂いが薄い。
"薄い"と言うと分かりにくいかもしれないが……複雑さが無いという感じか? うまく言い表す言葉が出てこないが何となくそんな気がした。
その中をのんびりと見て回っていると一つの店が目に入った。見る限り野菜と果物が売られているが、食材に関しては元の世界と大差ないみたいだ。名称に関してもほとんど同じで気をつける程のことはない。
少し店内を見て回っていると、店員らしき男が話しかけてきた。
「おう、いらっしゃい! 何が欲しいんだ?」
「いや、これといって決めてないんですよ。夕食に何を食べようか考えてたらたまたまここを見つけたので色々見てました。果物とかを食いたいと思いまして」
「なるほど。外にある屋台の匂いにつられて肉ばっか
食ってる奴が多いから、アンタみたいな客は大歓迎だ!」
そう言うと男は 「ゆっくり見ていってくれ」 と言いながら店の奥の方へと歩いて行った。こういった類の店は防犯はどうしてるんだろうと思ったが、俺が気にすることではないなと思って考えるのをやめた。
……取り敢えず目に入った林檎みたいな果物を手に取る。
と言っても見た目や匂いからして完璧に林檎なんだがな。もし名前が違った場合に備えて俺は名前を出さないことにしよう。ちょうど店員が奥から出て来たため、林檎を持ったまま話しかける。
「すみません、コレを2つ買いたいんですけど」
「おう、リゴの実か。ならニつで半銅貨二枚だな」
「それじゃあこれで」
そう言って銅貨を差し出し、半銅貨八枚を受け取った。見た目は同じでも名前が違うってのはやっぱあるんだな、慣れるまで暫く混乱しそうだ。
「確かに。では失礼します」
「おう。また来てくれや!」
取り敢えずこれといって買いたいものもないし、店をあとにする。野菜は金に余裕ができたら買いに来よう。あとは肉かな?
これといって行く場所を決めていないため、昼間にフェイと来た屋台に足を運ぶ。
奢ってもらった時は確認していなかったが、一本あたり半銅貨三枚だったようだ。取り敢えず二本買っておこう。
一応買い物はこれで終了だな。家に帰ってのんびり食事にしようか。
――家に帰る道を歩んでいると、男の子が蹲っているのを見かけた。元の世界の時と同じように優しく話しかける。
「こんなとこで蹲ってどうしたの?」
「えへへ。おなかすいちゃって……」
「……これ食べる?」
「いいの?! やったぁ!」
そう言って串焼きを差し出すと、目を輝かせて貪るように食べ始めた。警戒心というものが無いのだろうか? まぁ話しかけた俺が言うのもアレだがな。
「ありがとうお兄ちゃん!」
「どういたしまして。それにしても何でこんな所にいたの?」
「えっとね、お父さんが怪我しちゃったからぼくのお金で薬草を買いに来たんだ! だから薬草に全部使っちゃって食べ物が買えなかったの」
「怪我? ……どのくらい酷いの?」
「よくわかんない。見ようとするとおかあさんが隠すんだ。でもいつも辛そうにしてるからぼくが治してあげたいなって」
……この子めちゃくちゃいい子じゃないか! なんとかしてあげたいな。
でも治療院ってのがあったよな。そんなに大きな怪我なら行くのが筋じゃないか? 取り敢えずこの子に聞いてみようか。
「……治療院とかには行かないの?」
「うん。治療院で見てもらったんだけど、全部治すとお金がたくさんかかるんだって。あまりぼくの家お金ないから……」
「そうか……」
ここまで聞いたのにさよならは出来ないな。俺には治せる力があるし、治療院の代わりに治してあげよう。ヒール以上は使ったことが無いけど俺には出来るはずだ。
「……よし! よかったらお父さんの怪我を見せてくれないかな? お兄ちゃんは回復魔法が使えるからお父さんを治せるかもしれない」
「ほんと?! じゃあこっちだよ!!」
そう言うと男の子は俺の手を掴んで走り始めた。回復魔法の実験みたいで少し後ろめたいが、いい機会だし全力で治してみよう。
人助けは気持ちが良いことだしな!
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発
ハーフのクロエ
ファンタジー
アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。
無能妃候補は辞退したい
水綴(ミツヅリ)
ファンタジー
貴族の嗜み・教養がとにかく身に付かず、社交会にも出してもらえない無能侯爵令嬢メイヴィス・ラングラーは、死んだ姉の代わりに15歳で王太子妃候補として王宮へ迎え入れられる。
しかし王太子サイラスには周囲から正妃最有力候補と囁かれる公爵令嬢クリスタがおり、王太子妃候補とは名ばかりの茶番レース。
帰る場所のないメイヴィスは、サイラスとクリスタが正式に婚約を発表する3年後までひっそりと王宮で過ごすことに。
誰もが不出来な自分を見下す中、誰とも関わりたくないメイヴィスはサイラスとも他の王太子妃候補たちとも距離を取るが……。
果たしてメイヴィスは王宮を出られるのか?
誰にも愛されないひとりぼっちの無気力令嬢が愛を得るまでの話。
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」にも掲載しています。
出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜
シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。
起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。
その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。
絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。
役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。
ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜
KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞
ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。
諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。
そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。
捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。
腕には、守るべきメイドの少女。
眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。
―――それは、ただの不運な落下のはずだった。
崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。
その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。
死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。
だが、その力の代償は、あまりにも大きい。
彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”――
つまり平和で自堕落な生活そのものだった。
これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、
守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、
いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。
―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる