╂AVALON-ROAD╂外伝《リョウ編》【奪還!シュヴェルト城】

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リョウ外伝1【赤月】

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ヒュウゥゥゥ ゥ ゥ


生暖かい夜風が闇を斬る

枯れ葉は宙を舞い、戯れながら湖畔を走る

満月は赤く染まり水面みなもも赤く煌めき、まるで命の息吹を感じるがごとくうごめいていた

〈巨大な満月が赤く染まるのは4年に一度、更にはあざぎりの月の一夜でしかないのだ〉


それをたしかに見つめる一団がそこにはいる


ある者は腕を組み目をギラつかせながら またある者はこれから起こり得る一抹の不安を打ち消すように拳を握っている

その中でも初老であるが特に岩山のような屈強の体格にして、白髪を後ろに束ねている漢が口火を切った

「湖面を見るがよい。今宵は赤月、我々には限られた特別な夜である」

静かに語る漢は弥勒菩薩下生兜率天掌みろくぼさつげしょうとそつてんしょうの開祖シュウトウである

「お師様、城はどこに?何も有りませぬが....」
若き弟子が口を開けた

「たわけっ!リョウよ。お主の心の眼を見開いてみよ。」

「申し訳ございませぬ」
リョウは頭を下げながら後ろへ下がった

「皆の者もよく聞くがよい。シュヴェルト城が消滅して今宵まで、なぜ故に誰にも発見されなかったのか‥
その理由が分かる者はいるか?」

もう一人の弟子ランガが尋ねた
「お師様、言い伝えではシュヴェルト城は2000年前、一夜にして滅ぼされ消滅したと聞いております。発見?されなかったとはどのような意味でございますか?」
周りの者達もそのとおりだと顔を見合わせた

シュウトウは深く息を吐き、周りを見渡した
「確かに古文書にはそう書かれてはいる…が真実は異なる。

エルトワの拠点であったシュヴェルト城は天人族に攻め入られてはいるが、落とされる寸前結界をはり城を護ったのだ」

周りはざわめいた

「当時、古文書にエルトワの歴史を残すことは禁句であり死を意味していた。故にその歴史はほとんどが伝われずいつしか忘れ去られてしまった。

しかし、それを残すためにこの周辺の者達は子守唄として、その真実は受け継がれてきたのだ」


―エルトワの血で染まるその城は‥
まるで涙を流しているかのごとく‥
悲しき音色をひびかせながら‥
やがてはうねりとなりて‥
まだ来ぬ主を待ちわびている―
(エンダール地方:エルシュトワ湖周辺の子守唄ブラッディ・ムーンより抜粋)



腕を組み湖畔の先を見つめながら、間を置いてシュウトウは続きを語り始めた

「その姿は雄大であった‥
城肌をつたう雫は、月の灯りを浴び‥
まるで血の涙を流して泣いているかのようであった」

「ねぇ、シュート!!まるで一度来たことがあるような言い方ね~」

〈この女の子の名はレイナリア
エステリオスの次女にして今年12才になったばかりだ〉

「わしの名はシュ・ウ・ト・ウ!!姫、何度言ったわかるかのう‥わしは、わしは」
「はーい!わかったからもういいよー
だってシュートうるさいんだもん」

ぷいっと後ろを振り向く

ぐぬぬぬ‥

(ねーどう思う~
すぐ怒るからあなた達も大変よねー)という声を後ろで聞きながら、肩が震えていた

その姿を目にしたリョウは不覚にも笑ってしまう

その瞬間!
◆ガンっ!!
Σ痛てっ
◆ゴンっ!!
Σ…
シュウトウの大きなげんこつが2人を打つ

「お師様、笑ったのはリョウで私ではないです…」
「五月蠅いわい!それは2人の責任だ!出来の悪い弟子を叱って何が悪い」

「‥はい」
ランガはリョウを睨みつけた
リョウは苦笑いしながら両手を合わせた


シュウトウはまた湖畔を見つめ直す
その肩は未だ止まらず震えていた

誰もが先程の叱責におさまらぬと思っていたが、今の開祖の顔を見ることが出来るのであればそうは思わなかったであろう‥

シュウトウの心は泣いていた…
それを悟られまいと皆に背を向けていたのだ


「‥わしは前に一度ここに来たことがある。姫の父君、エステリオス王と共にな」

「えっ!?おとうさまもここへ‥」

「そうである。まだ時刻まで時間がある故、少し話をしよう」

◆ビユウウ=
突然、突風が吹き荒れシュウトウの髪は後ろにたなびかれ
目を細めこう語り始めた



―20年前―
エンダール地方


ワーワー
◆ズバッ
ぐはっ!?
◆ガキン
恐れるなー!!前へ進めぃ!

地響きと共に漢達の魂が吼口し、交合う剣、誰もが我を忘れ誇りと国を賭けて合いまみれていた

戦況はエステリオス王率いる【赤き獅子団】が優勢に押していたが、あと一歩で踏みとどまるカスターナ国に攻めきれぬ状況で戦いは深夜にも及んだ


―レダ国赤き獅子団本陣―


「申し上げます!」
息を切らし兵士が入ってきた


「報告せよ」
王は身を乗り出した

「はっ!我が軍を足止めしている部隊は、湖畔近くに陣取り前線を死守せんがごとく立ちふさがっております!」

「何、湖畔か…」

王は膝を叩き明らかに焦っていた

「その部隊は海を渡り、遥か遠い火の鳥の国よりやってきた暗殺の猛者達だとの噂を耳にしております」
1人の側近が付け加えた

「むぅ‥」
王は腕を組み目を閉じる

続けて兵は声を荒立て放った
「その中にも特に勇猛果敢な、身の丈2メートルを超える敵武将あり!
囲まれながらも幾十の我が兵士をなぎ倒しております!

その名はシュウトウ!!」

「たわけっっ!!」
王はその兵士を睨み付け憤怒した

「いかに敵の武将であろうが、我が軍とそこまでやり合うとは武人の中の武人。呼び捨てにするとは誠に失礼であろう!
口を慎め!!」

「ははっ、申し訳ありませぬ。シュウトウ殿にございまする」

「うむ‥
さて、どうするかな」
王は唸った

その時、羅針盤より声がする
「エステリオス王よ、もう時が迫っておる。時間がないぞよ」
「わかっておるよ、アル婆さん」

王はにわかに椅子から立ち上がり
「馬を引けーっ!!馬を!!私が直接行く!」
陣から勢いよく飛び出した!

「我が王よ、それはなりませぬ」と周りの側近達が止めに入ったが それを振り払った

「心配するな、私の死に場所はここではない。それにこの闘いを終わらせに行くのだ」
馬上よりニヤリと笑う

「マートン!ミナク!私についてまいれ!
行くぞっ!!」
馬の横腹を蹴り走り出した

「はっ!」
「はい!」
それに続き2頭が追いかける

3頭の馬はいななう激戦の中へと消えていった




―エルシュトワ湖周辺―

◆ドカッ
ぐわー‥

「ふあははっは!!あの百戦錬磨と唄う赤き獅子団には骨のある奴はおらんのかー!
俺を仕留めてみよ!このシュウトウをな!!」

「赤き獅子団の意地を見せろー!!我が隊は不滅なり!!」
うおーーーー!

うわっはっはっは~

丸太のような腕を振り回し、その拳を打ちつける
◆ブオオオーン
うわーーー


弾き倒した兵士を睨みつけながら、シュウトウは叫んだ!

ふう ふう ハァ
「皆、生きておるかぁ!?」

「イチハッ!」
「お頭~!まだまだやれますぜ」

「アカシ!」
「ふぅ。敵には不自由しておりませぬ」

「カンナギ!」
「…」
「カンナギッ!!」
「……」

「カンナギはやられたか‥
よいか、カスターナとの同盟の義、最後まで命を賭けて漢の意地を通せ!!!

死しても仲間たちとまた逢えるのだ!!」

おーーー!!

そのギラつかせる目の奥にある揺るぎない闘志が、赤き獅子団を圧倒的に威圧していた

しかし、レダ軍の内より1人の兵士が飛び出した

「我の名は赤き獅子団鳳凰部隊隊長ローエン マッシュバルカン!!

サシでの死合いを所望する!!」
剣を抜き立ちはだかる

「良かろう、相手に取って不足はなし!」
シュウトウは両手を回しながら構えた


沈黙の中‥
ジリジリと間合いを計りお互いの剣技範囲へといざなっていく

◆ばっ!
両者一瞬にして、間合いが詰まった

ぬりゃゃあー
ローエンが一振りを放つ!!

◆ズバッ

シュウトウを一刀両断した!

しかしシュウトウは残像を残しゆるりと消えていく
「な‥なにぃ!?」


§暗殺極意【まほろば】
激流の中に流るる葉を誰も捉えることは出来ぬ」

不気味な声が背中から聞こえる

「ぐくっ‥」
◆チャッ
柄を握り直す

「おっと!動くな。お主の命は既に俺の手のひらにある。
どうだ、レダ王に退くよう伝えれば生かして帰してやるぞ」

「愚弄するな!!
元々カスターナ国の私利私欲に始まったこと、我が王の意思は遥か天よりも高いところにあり!
我が王はいずれこの人間界を統一されるお方だ」

「どういう意味だ?ちょっかいを出したのはレダであろう」
「問答無用!チェストーーっ!!」

◆ブォオー
振り向き様剣を振るった

†金剛掌【不動輪】!
回した左手でそれを受け止める!
◆バキーンッ
「け、剣が折れ‥うっ!!?」

◆ドシッ!!
そのままローエンの右肩を撃ち抜いた

ぐふっあぁ‥

そのまま飛ばされ意識が遠のきそうになる

「な、なんのこれしき‥」

起きようとするが激痛により身体は動かない
骨が砕けていたのだ

目の前には大男の影が覆う

「クソッタレ!好きにしろ。俺の負けだ、殺せ」

「ひと思いにやるのが人の情け。成仏するがよい」
シュウトウは拳を振りかぶった
その時

◆ヒュン
足元に一矢が刺さる

「待たれい!!その死合い、しばし待たれよ!!」
女の貫く声が響き、蹄の音と共に騎士が現れた

騎士は馬を降り駆け寄った
「ローエン息はあるか」
「ミナク様、何故ここへ‥?」

「心配するな、お前が生きていてよかった」
ミナクは微笑む

シュウトウは立ち上がり
「これはこれはどうしたことか、
漢の死合いに割り入るとは‥
まさか、おなごの相手をせんと悪いのかぁ!?
レダにはもうおなごしか残っておらんとみえるわっ」
仲間と共に大声で笑い出した


「な‥んだとぉ!?」
ミナクは睨みつけた



「では、私では不足かな?」

ざわざわざわざわざわ

群集が見事に割れ、深紅のマントを羽織る騎士が姿を現した

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