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被検体記録σμΩETΩ

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世界は滅びの一途を辿っていた。

数少ない人類は

異能という奇跡のような力を発現させた
神核を宿した子供達を


次世代の子供セカンド・チルドレンとして研究している。

研究実験施設、エデン



子供部屋のような空間で二人の少女が出会い
全てが変わっていく。



この物語はとある少女の記憶。

被検体、NO、T‐000

(モルドレッド・ドゥームズ・フォールンブラッド)






大人は信用できない。


他人なんかあてにならない。


物も………人も………

ぜんぶ………ぜんぶ……



私の能力のせいで触れたそばから壊れていってしまう。

ここにきてから妹と会えたことは一度もない。

孤独だった。




あの狭い世界の中で


あの子だけが………私を受け入れてくれた。






壁にもたれかかり
何も信じられなくなって世界の全てを睨んでいるような
私に白髪の幼い少女が私の瞳に怯むことなく向かってきた。



「あなたっていつも一人だよね?」


「ねえねえお名前はなんていうの?」


「被検体……T……」


「ここにいるってことは………あなたも
わたしとおんなじなんでしょ?」

「それで、あなたの……ナンバーは…なに?」




「ん~?ミュウはあんまりその呼び方は好きじゃないな~
元の名前の方がもっと可愛かった気がするし」


「しょうがないでしょ…私達の元の名前は
ここに来たら消されて分からなくなるんだから
元の名前なんて知った所で……」



「私は被検体、μΩ-999って言われてるけど
親しみやすくミオミオって呼んでもいいよー」

「呼ばないわよ……」


「そっけないなぁ
じゃあ、私が勝手に付けてあげるよモルちゃん」



「モル………なにそれ?」


「なんか雰囲気がもる~~んってしてたから」


「被検体なんて可愛くない名前より良くない~?」

「今日から君はモルちゃん、ハイこれで決まりなのです!」


「はあ……まあ……なんでもいいわ」


それから私は被検体μΩ-999と出会うことが増えていった。




「やっほー!モルちゃん遊びに来たぞー!」

「………またきたの?被検体μ」


「もう~!ミュウかミオミオって呼んでよ~!」


「今日はね積み木持ってきたんだ~!
一緒にあそぼうよ!」


「まあ…いいけど……暇だったし」














「ねえねえモルちゃんみてみて!」

「……なにそれ?」

「ついんてーる…?っていう髪型可愛いでしょ?」

「………そう」

「モルちゃんには、ついんてーるが似合うと思うんだ~!

ほら、こうして…こうすれば……」

被検体μΩは私の伸びきったボサボサな髪を弄る。

「ほら~やっぱりついんてーる似合うじゃん」


「……ほんとう?」

「うん、とっても可愛いよモルちゃん」

「そ……そう……嬉しいわ……。」



「……やっと笑ってくれたね…」


被検体μΩ-999は妹のように私に懐いている。

理由は分からない。


でも、この子だけは、信じていいのかもしれない。

なんて、思い始めた。



だけど、私の力は呪われている。

この子もいつか私から離れていくに決まっている。









大人はやっぱり信用出来ない。


あの日、忘れもしない。

生まれて初めて友達が出来たあの日に
大人達はわたしのたった一人の友達さえも奪っていってしまったのだから。


ミオとも出会わなくなって
一人になってから三年の月日が経過した。

あれから、私は世界を滅ぼす為の戦略兵器として

毎日のように戦場に駆り出されている。

私のいた研究所は、最悪だった。

兵器運用を目的とした研究、人体実験をしていた。

どんな兵器も次世代型の子供である、私には通用しない。
睨んだだけでどんな兵器も壊れていく。


そんなある日、被検体μΩの目撃情報が入ってきた。


嬉しくてたまらなかった。


わたしは久しぶりに感情というものが芽生え

飛行機に乗り、被検体μΩがいる国に飛ぶ。


「フンフフンフフ~ン」

「あなたに~あいた~い~」



鼻歌まじりに再会に胸を踊らせ想いを馳せていると

チョーカー型の発信器にエデンの奴らから無線が入る。

『被検体T‐000、そろそろ
先刻、被検体μΩ999の目撃情報があった市街地に到着する。

わかっていると思うが

くれぐれも勝手な行動は取るなよ?』



「もーうるさいなーわかってるわよー!」

「いちいち指図しないでよ」

「わたしは別にアンタ達のモノになった訳じゃないんだから」


『だが、おまえの目的に協力してやっているのは
誰だと思っている。』



「あーあーあー!聞こえない聞こえないー!」

「そんなにいうならもうここで降ろしていいわよ」


『……大丈夫なのか?おまえは方向音--』


「えいっ★」


わたしは跳躍し飛行機から飛び降りる。
踏み台にした飛行機は爆発し鉄屑になる。





「待っててね………わたしの……友達……ミオ」











一方、被検体μΩ-999は

「それで、ここが最近爆発事故があった研究所か」

「こんな可愛くない所になにしにいくんすか~
ラキューロ博士」


『被検体μΩ‐999、最近ここでは怪物の目撃情報が』


「怪物って…どうせ正体は異能が暴走した

次世代の子供セカンド・チルドレンってオチなんじゃないっすか?」


『…… とにかく、私達の指示を守ってほしい。

君のその力は人類の希望となりえるのだから』

「へいへい、それ聞き飽きました~!」








その頃、地上に降り立った被検体T-000はーーーー


「あーもう……だめ………疲れた!」

『なにをしているいい加減目的地に迎え』


「う…うるさいわねっ!私だってはやく
あの子に会いたいわよっ!」


「でも、しょうがないじゃないっ!
迷っちゃったんだからっ!」


被検体T-000が降り立った場所にはクレーターが出来ていた。

それを目印になんとか元の場所まで迷いながらも戻ってきた



「はー……服も汚れちゃったしこのままじゃ
あの子に笑われちゃうわ。」


『おい…本当に分かってるんだろうなぁ自分の任務を』

『被検体μΩ-999を回収する。』

『お前には、被検体μΩ-999が必要なのだろう?』

「そんなの……当たり前じゃない。 」


ここに来るまでの事は覚えていない。
覚えているのは物心付いた時から
私のこの能力が不安定なことだけだった。

そのせいで、私はいつも一人ぼっちだった。

知ってか知らずかあの子は
いつも私の所に遊びに来ていた。

今でも、あの時のことが鮮明に思い出せる。


「モル…ちゃん……モルちゃん……」

「ふふ…あはは……あはははははははッ!」


「ああ、早くアナタに会いたいわ……」





色々と妄想している彼女の背後に
雪のように白い体に美しい銀色の鱗を持った
白銀蒼眼の竜のような怪物が現れーーーー








一方その頃










「ぜえ……ぜえ……はあ……はあ……」


「もー大人なのに情けないな~ラキューロ博士」

「俺も……もう……年だからな………」



「……むぅ…?あれは……」




森から爆発音が聞こえ火柱が上がり
森の動物達が逃げている。


「あらま、博士はここで休んでおいた方が良さそう?」

「いや…いい………この先にターゲットがいるかもしれない。
気をつけろよ…被検体μΩ-999」

「了解しやした、博士も無茶するんじゃあないぞ?」



森の奥に進むと美しい金髪ツインテールの美少女を発見した。


「ふースッキリした。」



え……嘘……まさか…こんな所で出会うなんて……!?


これって……やっぱり……運命っ!?


あの子は変わらず記憶の中の三年前の姿と全く同じままで
私は嬉しくなって思わず抱きしめたくなる。


「ミオーーーーー!!!!」

「おわっ!?」


「ああ、懐かしい、この匂い……
アナタが居なくなって今まで、どんな思いだったか」

嬉しすぎて涙を流している私の背中を
ミオは優しく撫でてくれる。



「久しぶりだね…モルちゃん」









「ラキューロ博士は水を刺さずに下がってて。」


「むう……仕方がない。俺は向こうにでも行ってるよ。」






「ねえ、ミオ、大事な話があるの」



「なーに?」

「ねえ、ミオ、わたしと一緒にここから逃げよ?」

「ん~?やだ。」


「えっ………!?」


「ど……どうしてよ……!?」

「うーん、行くアテが無いのもあるけど

やっぱり、たすーーーー」


「そっか……やっぱりアイツの………大人の仕業か……」

「わたしの…ミオに……なにしたのよ……?」


被検体T-000の瞳から光が消えて殺気が漏れ出る。
瞳孔が竜のように変貌し
真祖の吸血鬼であることの証である色
真紅に瞳が染まる。

「わたしのミオを洗脳でもしてるのかしら…?」

「え…?いや別に博士はそういうーーーー」



「返しなさいよ……わたしのミオを返してよっ!」


強力な斥力が発生し彼女に赤雷が走ると
周囲の空間が壊れ、被検体T-000を中心に地面が消失していく。

「待っててね……ミオ…?」

「今、元に戻してあげるからねっ!」



「その気持ちは嬉しいけど……やだ。」


「こ……これは…一体何事だっ!?被検体μΩ」


「博士は下がってて。死にたいの?」


「くっ…おおおおおわああああああ…!?」


ラキューロ博士は
被検体T-000から発生した強力な斥力に吹き飛ばされた。


「ほら、言わんこっちゃない。」


「……やれやれ……世界を思いのままに作り変えひっくり返せる
神核の力を使ってやることが物の投げ合い……

これでは、ただの子供の喧嘩ではないか……。」


「とりゃああああーー!」

「うおりゃああああああっ!!!」


破壊神と創世神、対極にある二つの
凄まじい力の奔流が渦巻き


破壊神の異能から自然に発生する斥力
創世の異能がそれを相殺する為に引力を発生させ

光速で瓦礫に核力を衝突させてブラックホールを発生させる。

被検体μΩ-999は発生させたブラックホールと
自分を中心に円を描くように
物体に見えない紐を付けて振り回すように瓦礫を投げ飛ばす。

被検体T-000は磁石の反発のように
ありとあらゆる物質を弾くように瓦礫を飛ばしている。
弾かれ飛ばされた物体はレールガンのように加速し威力が増している。


「このままでは…決着がつかないな……」


しかし、対極の力が渦を巻いている状況…それなら


「被検体μΩ-999ッッッ!!!」


「んあ?なんだ博士?」


「なんでもいいとにかく、被検体T-000に抱きつくのだっ!!!」

「は?」

「えっ♡!?」



抱きーーーー!?


ミオとモルちゃんが全裸で抱き合い
キャッキャッウフフな光景が浮かび上がる。
それは、被検体μΩ-999と被検体T-000の
脳内に溢れ出した存在しないはずの記憶。



うーーーん…?博士が見てる時にこれをやるの…?


「うーーん……それはやだな。」




「なんでよ…昔はそんなこと言わなかったのに……!」


「なんでなのよーーー!!!!!」



被検体T-000は強いストレスから逃避する為の防衛本能が働き
異能が暴走しはじめ、彼女達の服が塵になっていく。

一糸纏わぬ姿となった被検体T-000は
右腕が徐々に終焉の獣になっていく。



「モルちゃん……その姿…まさか!?」


「もしかして……モルちゃん」

「力が制御できないの…?」

「うるさいうるさいうるさいっ!」


「大人なんかに……言い様にされてるんじゃないわよっ!」


ミオがツインテールを褒めてくれたあの日
わたしの目の前から大人はミオを攫っていった。


「大人なんかに……」

「もう…二度と…わたしのミオを……」


「わたしの…大切な友達は……奪わせないんだからっ!」


赤雷がレールガンのように直進し大規模な空間が破壊される。

その先にはラキューロ博士がいた。


「あっ……ヤバーーーー」


「隙ありっ!」

死角から被検体T-000の大河を砕く蹴りが
被検体μΩ-999に直前し地面にクレーターが出来る。


そこで、少しだけ、大人しくしててね……

あとは…アイツさえ…いなくなればっ!!




そのまま赤雷を纏った電磁砲の如く加速する斥力は

直撃する寸前に鐘の音が鳴り響く。

するとその赤雷は弾けて

クレーターから被検体μΩの姿が消えていた。


被検体μΩ-999は遥か上空に存在して

片腕を天に上げていた。


「……どいてて、博士、邪魔……!」

「え……エエエエエエエ!?」



「なん……だと……人工衛星の残骸と共に浮かび上がっている
あれは…探していた研究所ではないかっ!?
おいまて被検体μΩ-999ッッッ!!
やめーーーーーーーーーーーー!!!!」


被検体μΩ-999は大量の人工衛星の残骸を宇宙から墜としてきた。

人工衛星の残骸は巨大な隕石のように迫り
この大規模攻撃によって、一つの国が滅んだ。



「キャアアアアアーー!?」

人工衛星の残骸が被検体T-000に当たる瞬間

被検体μΩ-999が残骸より速く動き、抱きつき庇った。


被検体T-000の異能の暴走は収まり
腕も人間のモノに戻っている。



「………わたしなら…別に平気なのに……」

「なんで…攻撃したアンタがわたしを庇ってるのよ……」


「えへへ…モルちゃんが泣いてたから…体が勝手に動いちゃった……。」




「……私はモルちゃんが他の大人にどんな酷い目に遭わされて

どうしてそんなに大人を怨んでいるのか分からないけど……」


「あの日、私は攫われた後に新しい研究所に移ったの」

「そして、この良い人……叔父さんに死にかけの所を救われた。」


「私も、モルちゃんと会えなくなって悲しかったけど
ずっとずっと…また会いたかった。」


「ミオも……ずっと同じ気持ちだったんだ……」


「そうだよ。」


「だって…私達って…大切な友達……なんでしょ?」

「うん……ごめんね……ミオ…」



あの子は…何も変わってなかった。


ミオは…ミオのままだった。



「わたしは……まだ、大人のことは信じられない……」


「でも……ミオのことなら……信じられるわ……」


「だから……これからもまた…一緒に居てくれる…?」


「うん……いいよ。モルちゃん」


私とミオは握手を交わした。



『……なにをしている?早く被検体μΩ-999を連れてこい。
被検体T-000、そこにいる限り
貴様は戦場を生きる兵器として生きる運命なのだ。
貴様ら二人に自由などーーーー』

「あーもー!さっきから被検体被検体うるさいのよっ!
この幼女趣味のロリコン博士がっ!」


『なっおいなにをする被検体T-000……やめっ !?』

破壊の異能で首のチェーカーを壊した。


自由なんてない………か………。

でも…それでもいいわ……。

また……あの子と一緒にいられるなら……








「……今の声はロリーコン・タンデ博士か……?」

「変な名前の博士がいるんだね~」


「………結局、目的の研究所は粉々か………。」

「あはは、マジすんません。」


「  次世代の子供達セカンド・チルドレン

何故、異能が発現し出したのか

重要な機密資料があったのに全部水の泡か……。」




「わははっ大人って大変ねー ミオ?」

「ねー」


「お前達のせいだろうが……はあ……まあいいだろう。」

「仲直りしたのは良いのだが…」

「被検体T-000、またあの施設に戻るつもりなのか?」

「当然じゃないっ!」

「私はミオが大人達に苦しめられないか見張る必要があるんだからっ!

見張る為にずっと一緒にいるわよっ!」


「そっか~これからずっと一緒だねーモルちゃん」





こうして

わたしとあの子は再会を果たした。























あれからミオのおかげで私にも知り合いが出来た。 

私以外にも1000人の被検体の少女が存在している。


その中でも目立つ被検体がいた。


床まで垂れる程伸びまくって
片目が隠れているのが特徴の 白髪に赤い瞳をした
終焉の異能に目覚めた被検体の少女


被検体Ω-000は被検体μΩ-999の妹だった。

彼女は恋愛を題材とした小説や漫画を愛して
いつか普通の恋をしてみたいといつも言っていた。



被検体σ-310は猛毒と殺戮と読心の異能に目覚めた
希少な異能を持っている少女

シグマは
毒々しいチェーンソーをいつも持ち歩いてる
ピンク色の髪が特徴的な
幼女好きのバイオレンスガールだ。

その妹である被検体E-939は
幻想の異能に目覚めた
緑色の髪をしている少女


この二人は発育が良いのかこの年で胸が膨らんでいる。

わたしとミオはぺったんこなのに……羨ましい



被検体E-939、イプシロンは
いつもボーっとしていて
フラフラと研究所内を彷徨っている不思議な子。


被検体μΩはいつもこの二人と遊んでいた。

最近は、わたしも混ざることが増えた。


被検体Ω-000はいつも離れた所で恋愛漫画を読んでいる。


「なにしてるのーゼロっち」

「ぴゃッ!?」

ビクッと肩が揺れて本を閉じるΩ-000

「もーまたひとりでこんなところにいるー」


「お…お姉ちゃん……」


「新しいお友達連れてきたからゼロっちも遊ぼうぜー!」

そうして、わたしはみんなの前に連れてこられた。



「は……はじめまして……かしら…?」

「被検体、T-000。よ……よろしく」



「ティーたんよろしくなのー!」

天真爛漫で元気よく話しかける被検体E

「ティーたん……?」

「T-000だからティーたんだよ!」


「…わたしのことはモルちゃんって呼んでほしい…かな?」

「わかったー!」


「あらあらあらあらあら~
ミュウちゃんに負けず劣らずの美少女じゃあないですかー!」

涎を垂らしながら撫で回してくる美少女好きの
被検体σ-310

「ぎゃあああああああーー!?」

「ぐへへへへへへへへへ」

「あうっ!?」

「はいはい、シグマっち、そこまでにしとこ。」





「みんなでかくれんぼするから一緒にあそぼうよ~!」

「………わたしは………いい……。」

プイっとそっぽを向かれてしまった。


「……そっか。」


「でもやりたくなったらいつでもきてね~!
まってるからな~!」

「…………」



ぽつんと一人になってしまったけどいいもん。



「あーもー!わたしのバカバカバカバカ!」

「ぜったいみんなから変な子っておもわれたー!」


「でも…これでいいの…だって……」

「ヒロインはいつもみんなから
こりつする者なのだから。」


被検体Ω-000は漫画を開く。


そこには一人ぼっちになったヒロインを慰める主人公と
良い雰囲気になっていき最終的に
ヒロインとのキスシーンまで描かれていた。 


「キャー♡キャー♡」

「はあ…はあ…いいなあ……」


「わたしも……いつか…こんなふうに………
……れんあい…出来るのかな?」

















被検体Ω-000の元に被検体T-000がやってきた。


「アンタってミオの妹…なんだ?」

「……そう…だけと……なに?」

「わ…わたしにも…その本見せてくれない…かな?」


「わっ……わあ……っ!?」

被検体Ω-000が愛読しているジャンルは
生命の誕生について詳しく描かれている
いわゆる、Hな本だった。

「わたし…この本…好きかも……」


「こんな大人な本を読んでるんだ…」

「う……うん……おかしい……よね……」

「そんなことないわよっ!」


「ぴゃうっ!」

わたしの秘密の趣味と同じ趣味を愛していた
この子に思わず抱きついてしまった。


「わたしも…実は…こういうHな本には興味があるの…」


「だから…わたしにも…その本貸してくれないかしら?」

「えっ……?いい…の…?」

「うんっ!」

こうして、二人はHな本を通して友達となった。





そんなある日のこと。


なにもすることがなく退屈していた
被検体Ω-000はボーっと天井を眺めていると


(まってるからね~!)

(わたし……この本…好きかも……)






「……………」


ふと、被検体Ω-000は被検体μΩ-999と
被検体T-000のことが気になった。


「……おさんぼでもしようかしら?」



私は物心ついた時からこの施設にいて
この研究所を探検するのが大好きで
研究所の偉い叔父さんが私のパパで
この漫画もパパの部屋から偶然見つけたの。


外の世界に出られない私にとって
この本が世界の全てだったわ。 


「いつか…この漫画みたいに王子様が
私のことを連れ出してくれるといいのになぁ……」


どうしよう。
色々と妄想していたら迷ってしまったわ。


「でもおっちょこちょいな所もヒロインっぽくて良いわよね」


侵入禁止区域とされているエリアに迷い込んだ
彼女は光が漏れていた部屋を覗き込んでしまった。




被検体Ω-000はそこで、外の世界の真実を知る。


人類がほとんど存在しない終末世界になってしまって
子供も大人も1000人以下となったことを知った

被検体Ω-000は恋愛が出来ないと理解してしまうと
強いストレスが原因で異能が暴走させてしまう。


ブラックホールのような物が弾丸のように射出され

研究員達は穴だらけとなり
研究所は一瞬にして死屍累々となる。



『被検体、Ω-000が暴走した。』



『このままでは……うわああああーーーーーーーー』











「あれれ~?ゼロっちどこいった?」


「もしかしてあの子のことが気になるの?」

「一人が好きなら放っておいてもいいんじゃないですかー?」


「うーーん?やっぱり探してくるぜ~!」


「まったくもー、相変わらず
あの子はお節介焼きなんですから~」


「でも、それがミオちゃんの良い所なんだけどね~」

「たしかにそうですね」

「モルちゃんも一緒に誘ってまた遊びたいな~」














最高責任者でエデンの創始者である

アルテミス・ラキューロ


彼はドサッドサッと人が倒れる音とむせ返る血の匂い
研究所が燃えている光景を目の当たりにし死期を悟っていた。




「ねえ…パパ……どうして…うそをついてたの…?」


「わたし…知っちゃったんだ……この世界って
子供も大人もいなくなってて
あと5年も経てば終わっちゃうんだよね……?」


「でも……そんなの……うそ…だよね…?」


「ほんとうは……ここみたいな所がいっぱいあって……
男の子も女の子も…みんな…暮らしてるんだよね…?」

「ねえ……パパ………?」

「わたしにも……普通の…恋愛……出来るよね……?」

髪をどかし、顔を見せた
被検体Ω-000から涙と愛読していた漫画が溢れ落ちている。






「オメガゼロ……そ…それは……無理……なのだ……」


「お前達は……人類の…希望なのだ……
何も知らないまま、純粋に育って
新世界を創造する為の新人類創世計画を実現させる。
その為には…真実を隠蔽するしかなかった。」


被検体Ω-000から殺気を感じ取る。


「………やっぱり……ウソだったんだ……」


「本当に……すまなかった…お前達のことを……
実の娘のように愛しているが故に
お前達にだけは…そのような真実を知られたくは無かった……」



「パパの………嘘つきッッッ!!!!」



「ぐ ッ!?」


ブラックホールの弾丸がラキューロに迫るが


創世の異能を持つ被検体μΩ-999によって

ラキューロは間一髪の所で死を免れた。


「被検体μΩ-999……助けてくれたのか………?」



「まあ……アンタは一応育ての親だからな……」




「お姉ちゃん…どいて………邪魔……しないでっ!!」

「同情するけどこんなことしちゃいけない。」


「悪いことをする妹を止めるのが
お姉ちゃんの役目だから…ごめんね」


「そっか……お姉ちゃん……敵…なんだね……」

「そんなヤツを庇うなら……
お姉ちゃんでも…許さないからッッッ!」


被検体μΩは青白い光の盾を生成し
弾丸を防ぐが円球型に抉れている。


創世の異能と終焉の異能が激しくぶつかり合い




「落ち着いて…このまま力を使い続けたら…
暴走してゼロっちが死んじゃうよっ!?」


「うるさいっ!うるさいっ!うるさいっ!」

「お姉ちゃんには私のことをなんて………
私の気持ちなんて分からないよっ!!!」


「うん、わたしには
ゼロっちの気持ちなんてぜんぜんわからないよ。」

「だから…ちゃんと教えてほしいなぁって思ってる。」


「来ないで……来ないでよッッッ!!」



その瞬間、研究所と周囲の空間が崩壊し
彼女の周囲が赤黒いノイズに覆われる。

「わあっ!?」

「なに……こ……れ………!?」



「い……いかんっ!?被検体Ω-000が…暴走する。」



被検体Ω-000の異能が暴走し
研究所は火の海となりガラガラと崩壊する。



被検体μΩ-999が被検体Ω-000を止めようとするが

被検体Ω-000の暴走は止まらない。



異能が暴走した次世代の子供セカンド・チルドレン
怪物のような姿へと変貌してしまう。



異能が暴走し、終焉の獣となった
被検体Ω-000によってこの世界は滅ぼされた。



世界が滅ぶ瞬間。
被検体μΩ-999の創世の異能が
異能に目覚めた少女達の魂を別世界に移し転生させる。





ここで、世界の記録が途切れる。

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