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六天魔皇と星海の少女編 閃光と白銀の魔皇

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私達は今、なんか偉そうな態度をした


ギンギラギンに輝く金髪の青年に絡まれている。


「僕は六天魔皇の一人、聖帝国最強、閃光の魔皇

シャイニス・シャイン・レジェルス

僕のことを知らないなんてなんて不遜者なんだ!」



「えっと……ごめんね?」


「…直接会うのは、はじめまして…ですね

えっと……シャイニスさん。」


「まあいいだろう、単刀直入に言おう。

帝国の強者達を百名殺害した犯人

そいつはまだ捕まっていない。」


「え…?そうなんですか?」


「それって確か前にミューリアムに話してたやつ?」

「確か、魔王の後継者とかいう少年が引き起こした

帝国屍腐竜襲撃事件によって

その犯罪者組織ということで

跡形もなく消滅したサタンとその下っ端の構成員達が

百人殺害された事件の犯人ということにされ

この事件や犯人の事が有耶無耶にされてしまい

何故か国民にも事件のことを忘れ去られ

魔王の後継者だかのせいでカモフラージュされたんだ。 」



「僕はその事件の真犯人は、近くにいると睨んでいるのさ」


「そうなんですか?」


「君だよ、ルミナス。

僕は君が犯人だと思っているよ。」


「えっと…なんのことでしょうか?」



「竜族との混血は人の姿をしていながら

オリハルオンさえ容易く引きちぎる凄まじい怪力と

生半可な攻撃では傷一つ付かない

竜鱗や鋼のように頑丈な肉体を持つという特徴がある。」



「へえー!ルミナって凄いんだね~!」


「いえいえそんなことは……」


「お母さんもお父さんも他のみんなも

普通にこのぐらいの物なら握り潰せていましたよ?

故郷の皆さんは、 オリハルコンの千倍は硬い

ブラック・オリハルコンを普通に

砕いて採掘したり加工したりするのが当たり前に出来て

私の住んでいた所では力比べで

どれだけ大きく硬いブラックオリハルコンを壊せるか

皆さんでよく競ってるんですけど

同い年の女の子でも壊したり握り潰せたのに

私だけは、ヒビも入れられなくて…

私は周りの皆と比べたら一番非力な存在でして……

皆さんは高度な魔法を沢山使えるんですが


私は氷結魔法と回復魔法しかまともに使えなくて

固有魔法を持ってることしか取り柄がなくて」



「そう、それだ。」


「えっと…なにが、それ…なんですか?」

「貴様は…息をするように嘘をつけるのか?

それとも、あからさまな嘘に違和感を持たせない

天性の才能があるのか?」


「え?」


「犯人はどれも人体を粘土の人形でも引きちぎるかのように

人体を容易くバラバラにしている。

そして、この帝国に存在する中で

そんなことが可能なのはルミナス

貴様しかいないと、僕は思っているのさ」



「確かに君は家族を幼い頃に殺されている。

その復讐心も間違いなく本物だろう。

そして、そんな奴の仲間な訳がないだろう。

確かに君が犯人候補になることは

僕さえも、これまでは無かった。」


「なら…どうして…私が犯人だと?」


「僕はね、たまたま見かけてしまったんだよ。

百名が殺されたあの日の夜の犯行時刻の一時間前

夜遅くに宮殿を抜け出して外出していた

ルミナス、君の姿をね。いったい何をしていたんだい?」


「それに、君しか使えない固有の魔法

どんな効果かは知らないが

死者が蘇り記憶を失っているのは

その魔法の力なんじゃないのか?

君の前の六天魔皇が死んだのも君のせいなんじゃないのか?」


「えっと……それは……」


「そんなわけないよ!

ルミナはとっても優しくて良い子なんだよ!」


「部外者は黙っててくれないか?」


「ぶがいしゃじゃないよ!私の名前はルクシアだよ!」



「そういうわけじゃない……あーもう!」


「とにかく!僕は君に決闘を申し込む!

ルミナス・メモティック・フォールンナイト!!

僕は君のことを六天魔皇だなんて認めてないからな!」



雷鳴が轟いたと思ったら、そこに彼の姿はもうなかった。




「えっと…どうしましょうか?」




「私、あの嫌な人のこと嫌い!」

「ルミナが悪い事なんかするわけないもん!」


「えっと…ありがとうございますルクシアちゃん。」



翌日、オルガンティア帝国の闘技場にて





「ルミナー!頑張れー!」


「どうしてこうなったのかは分からないけど 
そんな奴なんかやっつけちゃいなさい!」


「まさか散歩してただけで喧嘩売られるなんて
ルミナたんも不運だねえ」




闘技場の入口から二人が登場する。


「えっと…よ…よろしくお願いします。」


「ふん!貴様が何故、ジルグニール様は

何故貴様のようなオドオドしている弱者を

六天魔皇に認められたのかずっと理解出来なかったよ。」


「でも、それも今日までさ。

帝国全員の目の前で無様に敗北させる様子を見られたら

六天魔皇じゃなくなるかもしれないな~!」


シャイニスは光の聖剣を取り出し

閃光のような光の魔力を纏い加速

音速を超えた速さで迫りながら

ルミナに接近し抜剣と共に斬りつける。


しかし、 次の瞬間、飛んだのはルミナの首ではなく

シャイニスの腕が宙を舞っていたのである。





「は…?」


「ああああああああああああ…!!!!」


「僕の……僕の腕がああああああ!?」




シャルロットは案の定こうなったか…という顔をしていた。


まあ、そりゃそうだろうな。

ルミナの魔法を発射させた初速は光より速い

そして、その速さを目で追えて即座に反応して

激しい攻撃を迎撃させることが可能だからね。

最速で魔法を撃っちゃえば光の速さ程度

なんてことはないからね。




「あっ!…えっと…ごめんなさい!

腕を飛ばすつもりはなかったんです…!?」


「今すぐ治しますね!」


ルミナの杖の先端から淡い光が溢れて

うっかり消し飛ばしてしまったシャイニスの腕を再生させる。




「ルミナス…貴様ッ!情けなど不要だっ!!」


「えっと…魔皇なのに情けなくてすみません!」


「違うそうじゃあないっ!?」


なんなんだこいつは…?

本気で自分が強き存在であることを理解していないのか!?

僕の速度に当然のように反応して

僕の腕を消し飛ばして、一秒で腕を生やせる

練度の高い回復魔法を使える時点で

弱者なわけがないだろう!?



……もしかして、ルミナスは 

何者かによって洗脳か暗示の類を受けているのではないか?



自身の実力をルミナス自身も周囲にも
自覚させず、自身を弱者として偽らせる為の暗示


そして、嘘を本気で真実だと思い込んでいるのか?


オリハルコンは現在は存在しなくなった

おとぎ話に出てくるような伝説の鉱石だ

そして、そんな物がたかが力比べのような

余興に使われるほど採り放題だとか

そんな集落や街は存在しない。

ルミナの出身地である北方の雪国は確かに存在するが


そこに国や村が存在したのは5年前の話だ。

理由は不明だがその国があった大陸は

跡形もなく消滅しているのだ。


それに、ルミナスの先代の六天魔皇の死因だが

世間では喧嘩の最中に転げて頭を打ち死んだ

間抜けな魔皇と言われているが

そんな事実は存在しない。

先代の六天魔皇

『エクリム・カタルダ・ストロフィー』

彼女の本当の死因は

まるで空間ごと抉り取られたような魔法で

上半身を何者かに消し飛ばされていたのだ。


しかし、世間は僕以外の六天魔皇や皇帝陛下は

滑って転んで死んだ等という馬鹿げた理由が真実だと

それを一切信じて疑わないのだ。

そのことついて皇帝陛下に話したら

そんなわけないだろと、皇帝陛下に笑われた。




その事から、詳細不明な部分や謎が多かった彼女だが

彼女に対する認識に関しては僕も違和感を持たなかった

だが、異常な程に違和感を感じないのが違和感となり

徐々にルミナスを疑い始めた。

そして、彼女のことを調べようとすればするほど

謎の大いなる意志でも働いているのか

彼女の謎に近づこうとすればするほど

真相が遠のき、彼女に関する記録が全て消失する

記録や記憶が跡形もなく無くなっていってるのだ。

彼女に近づき、真相を暴くのは危険なことだと理解していたのに

彼女の裏の顔が知りたくて堪らなくなってしまった




だが、その推理が間違いという可能性も零ではない。

僕は彼女の動向をずっと監視していたが

そのような素振りを見せたことなど一度も無かったのだ。

彼女は恥ずかしがりで小心者のようだが

心優しい普通の少女だった。

実際に握り潰せるのは果物程度だった。

とても、僕の推理通りのような

最低最悪な凶悪犯罪者なんかではなかったのだ。


そして、僕自信も信じられなかったんだ。


僕は今でこそ、全身に豪華な装飾を身に纏っているが

それは、六天魔皇になってからだ。


幼い頃、僕は孤児院にいた。



ルミナスに出会ったんだ。

ルミナスは僕のことなんて憶えていなかった

まあ、当然だろう。

僕が彼女に対して一方的な片想いをしていただけ

まともに話したことだって無かった。

だけど、あの美しい白銀の髪は

僕の幼い恋心を射止めて離さなかった。

ルミナスが僕と同じ六天魔皇になったのは

運命の悪戯なのかと思い、ずっと恋焦がれていた。


僕のことを憶えていなかったのは

彼女は僕の記憶の中にあるままで

内気で引っ込み思案だが優しい女の子だった。 


だから、ルミナスがそんな事をしているという

自分の憶測を信じたくないんだ。



真犯人は…ルミナス……に見せかけて

ルミナスにそのような暗示をかけている存在がいるのか?

もし、そのような奴がいるなら、そいつが黒幕なのか?



しかし、なんの為だ…?全然分からない…


だが、今理解していることは

ルミナスはとんでもない強さの魔法使いだってことだけだ。




「……どうやら僕は君の実力を見誤ったようだ。」


シャイニスから黄金の魔力が放出され、瞳が真紅に染まる。


「ここからは、本気で行かせてもらうぞ。」

究極閃瞬輝光極星煌神速シャイニングオーバードライブ


金色の凄まじい魔力を纏ったシャイニス

その速度は、光速を遥かに上回り

神の領域にまで達する速度、神速だ。





星命流転覇星激爆覇アストラル・ノヴァ!!」



ルミナが放った星座の魔法陣から放たれた

超新星爆発のような白銀の輝きにも見える

究極の極大消滅魔法の力は

星の最期の煌きを彷彿とさせる、淡く美しい輝き。

その魔法陣を自身の周囲に五つ程展開し

マルチロックレーザーのように

神速でコロシアムを駆け回るシャイニスを

追尾するように軌道が変わり

即死の光線が全方位に向けて発射された。



それは神速で動いて世界の動きの全てが

スローモーションのように見える領域にいる

シャイニスの動体視力や反射神経でも避けられず

ギリギリの所で掠ってしまいそうになる。


星命流転覇星激爆覇アストラル・ノヴァ。」


神速の六天魔皇の動体視力でもほとんど見えなかった

光より遥かに速く撃ち出された究極の消滅魔法は

シャイニスの動きを先読みするように
彼の動きを制限させるように動きを変えていき
彼を確実に追い詰めていく。




「こいつ…!?なんて異常な速射能力だ…!?

魔力を溜めるそぶりも予備動作も一切無かったぞ!?」




ルミナは殺戮兵器のように冷静に

消滅魔法を最速で的確に撃ち込み続けて


シャイニスを徐々に追い詰めていく。

星命流転覇星激爆覇アストラル・ノヴァ。」

全方位にマシンガンのように放たれた

数十発の追尾型の星命流転覇星激爆覇アストラル・ノヴァ


コロシアムを駆け回り直撃はなんとか避けるが

シャイニスの魔力を徐々に削っていく。



煌輝光金神滅壊光線シャイニングブラスター


シャイニスは神速で迫る数十発の金色の神滅光線を放つが

ルミナの死角となる場所にも歪曲した軌道で

煌輝光金神滅壊光線シャイニングブラスターが迫るが



ルミナは必要最小限の動作で杖を背中や腰辺りまで持っていき

星命流転覇星激爆覇アストラル・ノヴァの魔法陣を展開し

煌輝光金神滅壊光線シャイニングブラスターを撃ち落とす。


数十発の煌輝光金神滅壊光線シャイニングブラスター

円球状に防御魔法を展開させて全て防ぐ。

ルミナが金色の光を防いだ瞬間


金色の煌輝光金神滅壊光線シャイニングブラスターの輝きは


星命流転覇星激爆覇アストラル・ノヴァの白銀の輝きに塗り潰された。


シャイニスに迫りくる無数の極光は

シャイニスを確実に捉えて一箇所に収束するが

紙一重でシャイニスは避け続け

彼を追いかけるように光は

まるで蕾から花が咲いた瞬間のように大きく広がり

彼の進行方向と逃げ場を潰して

確実に回避行動を取れなくした後に

一際強力な星命流転覇星激爆覇アストラル・ノヴァが撃ち込まれた。



シャイニスは咄嗟に片腕を切り落として

全力で僅かな隙間に向けて跳躍した。



片腕を直撃前に落とさなければ

腕があった部分に究極消滅魔法に直撃し

その部分から肉体が消失し始め

回復魔法が使えず死を回避することが出来なかった。




「まずいな…」
 
「速さは僕が圧倒的な差で勝っている…

だが………ただ魔法の発動や射出の速度が…圧倒的に速い。

ただそれだけで僕は奴に一切近づけない…!!」



「魔力が切れるまで逃げに徹して避け続けるか…!?」

「いや…それは絶対にダメだ…!

その前に殺されてしまう…!

いや…それより前に僕の魔力が尽きるか。」

最高速度の神速で動き回っているのにも関わらず

こんな無様な姿を晒してしまっているのだ

魔力が尽きた瞬間に待っているものは、死だ。






「バカな…!?あり得ない…!?

一ヶ月前に、皇帝の気まぐれで魔皇にされた

魔皇に不相応な弱い少女という話は偽りだったのか!?

新米の魔皇如きに

この僕が追い詰められているっていうのか…!?」





こいつ……!気配が大きく変わっている…!?


恥ずかしがり屋でオドオドしてる腰抜けかと思ったら

別人のように魔力が増大した…!?





それとも、これがルミナスの真の実力…なのか?

ルミナスの意識を奪って殺しをさせている存在

ルミナスに暗示をかけている存在なのか!?


これが…ルミナスの…白銀の魔皇の本性だとでもいうのか…!?

いや違う。そんなはすはない。

僕が見たルミナスは…ルミナスは…心優しい…少女だ




ルミナは僕に氷のように冷たい眼差しを向けているように見えたが

実際には、そうだ。

彼女は極度の恥ずかしがり屋の魔皇として有名ではないか。


ただ緊張して顔が強張っているだけなのだ。


きっとそうだ。そうに違いない。

僕が憶測だけでルミナスを不信に思ってしまって

先入観が働き、勝手に悪い方へ

そのように思い込んでいるだけなのかもしれない。




思考している間にも

ルミナはシャイニスを確実に追い詰めていく。


ありとあらゆる能力はシャイニスの方が上だが

ルミナの魔法の才能は魔力操作に魔法構築の精密さと多彩だが

魔法を撃ち出せる速度も尋常ではない。


ルミナは速射能力と星命流転覇星激爆覇アストラル・ノヴァ

初速から撃ち終わりまで変わらない光のように速い射出速度が合わさり

光を視ることが出来た瞬間には当たっている

撃たれたらほぼ回避不能の必殺魔法になっている。


「あり得ない…あり得ない…!?

僕がこんなにあっさり負けるというのか…!?」


「いや…まだだ…僕は魔皇だ!

こんな所で終わってやるかああああああ!!」


シャイニスは星命流転覇星激爆覇アストラル・ノヴァの回避のみに

全神経を集中させて
百発同時に撃たれた追尾型の星命流転覇星激爆覇アストラル・ノヴァを掻い潜り


ルミナに接近する。




しかし、そこで、勝敗が決した。


絶対零度アブソリュート・ゼロ


「な……んだと……!?」


星命流転覇星激爆覇アストラル・ノヴァを避けることに

集中し過ぎたせいで他の魔法の存在を失念していた

無数の星命流転覇星激爆覇アストラル・ノヴァの魔法の中に
他の魔法も混ざっていたことに気づかなかった

シャイニスは絶対零度の氷結魔法で全身が凍りついたのだ。





「シャイニスさん、私の勝ちです…よね?」


ああ、僕の見たルミナスに間違いない

優しい天使のような純真の少女の笑顔だ。

彼女に悪意のような邪悪な物など存在しない。

僕に勝てたことに本気で安堵して安心している表情をしている。



「ああ、悔しいけど、僕の完敗だよ。」





「ルミナス、その……疑って……悪かった。」



「それで、あの夜に何をしていたのか、聞いてもいいか?」



「えっと…その……実は

モルドレッドさんに出逢ったあの日に

モルドレッドさんの家までこっそりついて行っちゃいました!

モルドレッドさんのお屋敷はとっても大きくて立派で


いつか私も招待してもらえるくらい仲良くなりたいなぁ…

なんて思ってたことがありまして…

その…恥ずかしいから内緒にしてほしかったんです。」



「そうか……信じるよ。」


シャイニスはそう言い残すと、雷鳴と共に聖帝国に帰っていった。




「やったー!ルミナが勝ったよー!」



「やるじゃない!流石はわたし達の妹ねっ!」


「凄いな~ルミナたん」



「うおおおおおおおおーー!!!」


「ルミナス様が勝ったああああああ!!!」

「ルミナ様こそ最強なんだああああああー!!」

「ルミナス様こそがジャスティスーーー!!!」

「ルミナ様バンザーイ!!!!!!!!」

「ルミナ様バンザーイ!!!!!!!!」

「ルミナ様バンザーイ!!!!!!!!」




「わあっ!物凄く喜んでる人がいっぱいいる!」


「……なんだあいつら?」


「もしかして、前に言ってたルミナの部下じゃないかしら?」



こうして、白銀の少女は疑いが一応晴れて?

安心したような表情を浮かべるのであった。




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