神様とツンデレ吸血鬼と恥ずかしがり魔皇のトリニティデスティニー 〜神様と吸血鬼の姉妹が転生して、気まぐれに世界を救います〜

ネコトーニャ

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六天魔皇と星海の少女編 真紅の覚醒

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ルミナは紅い瞳を光らせ、洗脳した部下達に、こう命じた。



「……標的はラミレス・ブラティー。」

「捕まえて、彼女の首を私の前に差し出せ。」



オルガンティア宮殿にて、皇帝とバラン・レガリア

二人は部屋の中央に設置されたテーブルの上に転がっている

水晶玉を通して遠視魔法で古戦場の様子をリアルタイムで観戦していた。


オルガンティア帝国の皇帝

ジルグニール・オルガンティア・デスタメント・カンダルフは

そのルミナスの様子を見てニヤリと笑う。


「やはりな、ボクの帝国を荒らし回っていた賊鼠がいるようだ。


見たかレガリア卿、ルミナス・メモティック・フォールンナイトの

あの紅く染まった吸血鬼のような瞳を

あれは、間違いなく神核に宿した異能の光だ

ルミナスはどうやら、現実の改竄だけでなく大規模な洗脳も出来るようだ。

まさしくあの支配の異能は、神核覚醒の領域を超えている

アレは、魔王の権能に他ならない。

あれが『星命流転アストラル』の本当の能力だ。」


「そんなの見れば分かります!一刻も早く彼女を捕縛しましょう!」


バラン・レガリアは大声で皇帝陛下に進言するが

皇帝は鼻で笑ってバラン・レガリアを流し見た。




「捕まえるといってもどうするんだ?

今は、六天魔大神魔戦争ラグナロクの最中だぞ?」



「そんなものは中止にさせればいいのです!

このままルミナス・メモティック・フォールンナイトに好き勝手させられたら大変なことになりかねません。

娘のシャルロットやモルドレッドにも危害が及びます。」


「いいや、まだ駄目だ。まだ静観を貫く必要がある。

ここで我々が介入してしまえば、蜥蜴の尻尾しか手に入らないだろうさ」


「……?陛下、何を仰っているんですか!?」


「…君は相変わらず、鈍いな、レガリア卿」

「ルミナス・メモティック・フォールンナイト

彼女は何者かに操り人形のように操られているということだよ。」


わけがわからないと言いたげなバラン・レガリアは

ストレスのあまり頭が痛くなる。


思えば、彼はここ数日感は死ぬほど忙しかった。

何者かに殺されて復活したと思えば

そのすぐに赫神華の捜索に追われ

かと思えば溺愛している娘のモルドレッドが

六天魔皇のラミレス・ブラティーに喧嘩を吹っかけて

六天魔大神魔戦争ラグナロクにまで事態が大きくなり殺し合いをすることになっていた。


挙句の果てにはあのような暗殺者と友達になったとまで言うのだ。



娘の安否と自分を殺した暗殺者の正体。

この二つの悩みのせいで夜も眠れない毎日を過ごしていた。


その片方、暗殺者の正体はたった今判明したも同然。

これ以上、娘を危険な目に遭わせるわけにはいかない。


「アレはどう見ても精神操作系の異能です。

彼女の配下も娘も殺された百名の被害者も

彼女に洗脳されていたのです。

あんなことが出来る者が他にいるとは思えません!

連続殺人事件の犯人もルミナス・メモティック・フォールンナイトで間違いないでしょうに!!」


「うむ、そうであるな。」


あっさりと肯定されてバラン・レガリアはたじろぐ

「でしたら、なぜ皇帝陛下は行動に移さないのですか!?」


「まだ動く時ではない、ということだよ。」


「それに、ボク達が出る幕はないよ。

なぜなら、あの場には、シャルロットくんと

モルドレッドくんがいるのだから

何も心配することはないさ。」


「…また、娘達に苦難の道を往かせるつもりですか?」

「ボクが、じゃないよ、運命だ。

運命が彼女達をそうなるように導いているのさ。」



「…そもそも、なぜルミナス・メモティック・フォールンナイト

彼女を六天魔皇に任命したのですか?

彼女の経歴を粗方調べましたが

六天魔皇に相応しいと言えるほどの功績をあげたとは思えません。

空席が空いたのだって前任の六天魔皇の不慮の事故によるものですよ?」


「ルミナスを選んだ理由は四つある。」


「ありすぎです。」



「一つ目の理由は、ルミナスの容姿が優れていたからだ。

彼女のあの美しい容姿はまさしく

一兆年に一度の美少女と言っても過言ではないからな

二つ目の理由は、ルミナスが

モルドレッドくんと友達になってくれそうだなあと思ったからだよ。」


「は…?」

「モルドレッドくんとルミナス

二人は趣味も性格も似た者同士だ。

まるで生き別れた姉妹のようにな。

そのうえ、協力されて親睦を深めれてしまえば

あとはもう親友になるしかないだろう?

まあ、実際の所はルミナスのモルドレッドに対する

尊敬が強すぎて友達というより…

アイドルとファン…いやもっと軟らかい言い方をすれば

先輩と後輩のようになってしまったがね。」



「そ…それは…!」


「モルドレッドくんにもルミナスにも

お互いを高め合えて成長出来るような

同世代の友人が必要なのだと思ったのさ。」


「犯罪者をモルドレッドの友達にするなど言語道断です。」


「犯罪者、だから…だよ。

ルミナスを六天魔皇に選んだ理由

三つ目の理由は彼女が赫神華で
最も多くの者を殺し、死者を蘇生させている暗殺者であったから。

そして、四つ目は彼女が魔王に到達した神核をもっていたからだ。」


「はあっ!?」


思わず白目を剥いてしまったが

皇帝陛下は淡々と続ける。



「密かに調査させていたのだよ。

あの子は幼少の頃から赫神華の一員で

しかも一兆人に一人の確率でしか発現しない

超絶希少な神核を持っているらしい。

オルガンティア帝国騎士団の全員がこぞって

ルミナスの狂信者になってしまったのは

オルガンティア宮殿内では有名な話だぞ?


お前の予想通り、此度の連続殺人事件の犯人もルミナスだ。


事件を起こす前から色々と帝国の情報を探っていたらしいな?

それと、お前にだけは話しておこう


ルミナスの出身地である北極連邦

北方の雪国は確かに存在していたが


そこに国や村が存在したのは5年前の話だ。

理由は不明とされているが

その理由は帝国ではボクしか知り得ない、国家機密情報だからだ。

その国があった大陸は跡形もなく消滅している。

その真相は、ルミナスが原因だ。

家族を赫神華に皆殺しにされ、脅され、傀儡となり


殺人を繰り返す生活を送ることで精神が擦り減り

極度のストレスに犯され、力を暴走させた

ルミナスの虚空さえ消し去る消滅の異能によって

かつては六つ存在した大陸の内の一つが跡形もなく消し飛んだのだ。



それに、ルミナスの先代の六天魔皇の死因だが

世間では喧嘩の最中に転げて頭を打ち死んだ

間抜けな魔皇と言われているが、そんな事実は存在しない。

先代の六天魔皇、厄災の魔皇

『エクリム・カタルダ・ストロフィー』

彼女の本当の死因は

まるで空間ごと抉り取られたような魔法で

上半身を何者かに消し飛ばされていたのだよ。


しかし、世間は滑って転んで死んだ等という

馬鹿げた理由が真実だとそれを一切信じて疑わない。


何故なら、殺した本人であるルミナスによって

そのように真実と認識が改竄されたからだ。」



「そこまで知っているなら、なぜ……」


「あえて、彼女の犯行を見なかったことにして泳がせて

あの子を味方に引き入れれば、赫神華の情報が手に入ると思ったから。

これは帝国の利益になるとは思わないか?」

「…赫神華の一員を懐柔できるとは思えません。」


「そうか?彼女は赫神華によって運命を歪められてしまい

殺戮の限りを尽くしているが、根は心優しい少女だ。

それに、ルミナスは好き好んで赫神華に所属しているわけではないのだ。

可能性は零ではないはずだぞ?」


「だからといって…連続殺人事件の犯人を

六天魔皇にするなんて…いくらなんでも…」


「お前は頭が硬いな、レガリア卿

モルドレッドくんの為にもなると言うのに」

くそっ…俺が娘の為…なんて言われたら

反論出来なくなるのを知っているくせに…



「…ようするに、ルミナスを我々の味方にするには

たった一つの障害を取り除いてやればいいのだよ。

あの内向的な少女が自発的に殺人などするはずもない。

先程も言ったが、ルミナスは誰かに操られている可能性が高い。

その何者かを見つけ出す必要があるわけだ。」


「その操っている者は何処にいるというんですか?」



「そうだな、ボクの長年の勘だと

そいつは、あの戦場にいると睨んでいる。」


「戦場に……」


「おおーーっ!」

皇帝陛下が子供のように目を輝かせて水晶玉に顔を近づけた。




「見てみろレガリア卿!面白い物が見れるぞ!

お前の大好きな愛娘達が襲われておるぞ!」


「な…なんだってええええええええ!?」


バラン・レガリアは慌てて水晶玉が表示させている

スクリーンの映像を覗き込んだ。

閃光の魔皇率いる軍勢に追い掛け回されている。

バラン・レガリアは卒倒しそうになった。

しかし皇帝陛下はそんな彼のことなど知ったことではないと言わんばかりに

ニヤニヤと笑っていたが

バラン・レガリアには微塵も理解出来なかった。





閃光の魔皇シャイニスが率いている

五百人の軍勢はその全員が憤怒の表情を浮かべていた。


そして、 その五百人の部下はまるで

獲物を見つけた空腹の肉食獣のような勢いで

私達の方に襲いかかってくる。


ヒュンヒュンと飛んできた光の矢の嵐が

私の服を掠めては地面にドスドスと突き刺さった。

私はシャルロットにしがみついて震えることしか出来ない。

シャルロットは光の矢から私を庇って血まみれだ。

出血が酷くシャルロットの瞳から光が消えかけていた。


「シャルロット……もうダメだよ……死んじゃうよ……」


ああ…久しぶりに聞いたな…

お姉ちゃんらしく振る舞ってない

お姉ちゃんの優しい口調での泣いた声

視界が霞んで前も何も見えなくなってくる。

急所を何箇所も貫かれてしまったらしい。


「大丈夫だよ…お姉ちゃん…私は……死なないから」


集中砲火を受けても、シャルロットは

懸命に私のことを護ってくれている。

私も…力になりたい…でも…どうすれば…いいの?





マズイな…流石に私でもお姉ちゃんを護りながら

あの軍勢を突破するのは骨が折れる。

確か、古城では、クルルがミューリアムとサンドと交戦しているはずだ。

このまま逃げながら三人の戦闘にこいつらを巻き込もう。

どさくさに紛れてラミレスの所にでも向かうのもアリかな?

確か、近くにルミナもいるはずだし

ルミナと合流して、ラミレスを蹴散らし

四人の六天魔皇が消耗した所をルミナと協力して叩く。

これが今やれる最善の手だと思った。



思考を巡らせていると背後で

巨大な魔力を感知し、シャルロットは空高く飛び上がった。


次の瞬間、さっきまでシャルロットがいた場所に

巨大な火炎魔法が着弾して大爆発を起こした。


膨大な魔力を感じ取った方向に目をやると

遥か遠くの森林の奥地に一人の男が立っていた


筋骨隆々と筋肉質な大男で

身の丈を大きく超えた黒色の大剣を持っている。


先程の感じた膨大な魔力はあの男からだ。

彼からは六天魔皇を遥かに超えた力を視た。

そして、幾つかの未来予知で最悪な結末を辿った

分岐点では、私達はアイツに殺されている。


彼は、火炎魔法を放った一瞬だけ魔力を解放し

普段は放出している魔力量を制限しているのか

他の六天魔皇の部隊の奴らと大差ないような魔力しか確認出来ない。

そして、彼は転移の魔法を使うと

ラミレスの部隊の奴らの中に混ざり

武器をただの片手剣に持ち替えて

何事もなかったかのように戦い始めた。



アイツは、超危険な要注意人物だ。

常にアイツを警戒するに越したことはないだろうな。


謎の人物を目撃し、長考していると




空に逃走したシャルロットとモルドレッドは

火炎魔法や光の槍や矢の雨が四方八方から浴びせられて


集中砲火を受けながら、シャルロットは一か八か古城に突っ込んだ。



その様子を激しい戦闘によって

古城から離れた荒野までやってきていた

クルルは遠目にだがシャルロットとモルドレッドを目撃していた。



「おおーっ!あれは我が友のモルドレッドではないか!

凄まじい軍勢をたった一人で引きつけているとは

なかなかやるではないか!

流石は我が友に認めた者なのじゃ!」


クルルの足元には死体となって転がっているミューリアム

そして、アイアンクローのように顔面を鷲掴みされ

頭蓋を粉砕されて息絶えている砂塵の魔皇の姿があった。

二人の六天魔皇を相手にしたにも関わらず

クルルには、ほとんど外傷は見当たらなかった。


クルルは、はじめて出来た友達であり、同盟を結んだ

ルミナスとモルドレッドの元に加勢しようと駆け出した。


「ま……ま…て……クルル…ヘル…ルシファー……!」

「まだ…負けて……な……い…よ…!」


クルルはボロ雑巾のように二人の六天魔皇を捨て

古城に向かい、満身創痍の二人の六天魔皇も

クルルを追いかけて古城に向かっていった。










一方、 古城に突っ込んだ

シャルロットとモルドレッドは、どうなったかというと




「……逃がすと思ったか?」


二人は神速で動いていたシャイニスに追いつかれて

光の剣を無数に出現、ソレは高速で射出され壁に突き刺さった。

ただの光剣ではない、そのその一本一本全てが

神殺しの魔剣に匹敵する神滅の聖光剣なのだ。


私はそれに気づいて言葉を失った。

あれで刺されたら確実に死んでしまう。


しかし、シャイニスは容赦しなかった。

私達が辛うじて回避したと見るや

今度は豪雨のように光の剣を連射してきたのである。



「あの小僧…めちゃくちゃしやがって…逃げるよ!」


「見りゃ分かるわよ!どうするつも…

うわああああああああああああ!!!!?」



シャルロットに手を引かれて引きずり回されるようにして逃げる。

高速で飛来してくる神滅の光剣は

さっきまで私達がいた場所を抉るように破壊し尽くす。


「い…ッ!?」

「お姉ちゃん…!?」

当然、焼けるような痛みが走った。

私は呆然と痛みが走った場所を見下ろす。

すると手首を光剣が掠めたようで薄肌が裂けてうっすらと血が滲んでいた。

シャルロットは私を古城の柱の後ろに下ろす。

その目には、殺意が宿っていた。 


そして、シャルロットはシャイニスと対峙した。




「……よくも、私のお姉ちゃんを傷つけたな?」


「もう、逃げ回るのは止めたのか? 」



「ああ、でもそんなことはどうでもいいんだ。

よくも、私の可愛いお姉ちゃんに傷をつけやがったな?

殺してやるぞ、金髪野郎。」


シャルロットは、恐ろしい程の殺気をシャイニスに向ける。

大気を揺らす程の魔力を発露されながら、魔王の剣を顕現させる。

魔王剣から発せられる膨大な魔力が空間を引き裂いて

古城の外壁は魔力の解放の余波だけで豆腐のようにズタズタに切り刻まれた 。




「……どうやら僕は君の実力を見誤ったようだ。」


シャイニスから黄金の魔力が放出され、瞳が真紅に染まる。


「ここからは、こちらも本気で行かせてもらうぞ。」

究極閃瞬輝光極星煌神速シャイニングオーバードライブ


金色の凄まじい魔力を纏ったシャイニス

その速度は、光速を遥かに上回り

神の領域にまで達する速度、神速だ。


そして、勝負は一瞬で呆気なく終わりを告げる。


地に伏せて倒れていたのは、シャルロットだった。

体中に無数の神滅の光剣が突き刺さっており

噴き出した血液が噴水のように宙を舞い、水溜まりを作っていく。

そして、飛沫のような僅かな量だが

モルドレッドの口内にシャルロットの血液が入った。

その未来を知っていたシャルロットは死に際に

不気味な笑みを浮かべながら絶命していった。



「…言ってなかったが僕の固有魔法

究極閃瞬輝光極星煌神速シャイニングオーバードライブ

これは、武器や他者にもこの金色の魔力を分け与えることで

同様に神速のスピードを得られるのさ。」


「さあ、次は僕に生意気な口を聞いたモルドレッドを……!?」


「なん……だ…この…魔力…は…!?」

その瞬間、世界の色が紅く染まった。










そして同時刻、ルミナが洗脳し操ることで

まるで一流の暗殺部隊のようにさせられている

五百人の部隊に奇襲されてしまったラミレスは


ルミナスの部隊の隊長格と剣を交えながら

怒り心頭といった表情で激しく剣を振るい

暗黒の炎で暗殺者のような動きをしながら

急所を的確に狙ってくる輩を燃やし尽くす。




「くっ、この…!鬱陶しいですわねっ!」

しぶとい、異様にしぶといのだ。

確実に致命傷を負わせているというのに

どいつもこいつも何度でも立ち向かってくる。

まるで砂塵の魔皇が率いている不死の軍勢のようだ。

彼らの瞳には生気が無く、死体になっても関係なく

操られて襲い掛かってきているような気がしないでもない。


ラミレスの放った黒炎を纏った斬撃が

ルミナス隊のリーダー格の男の腕を切り裂いた。


しかし彼らは一瞬たりとも怯まなかった

まるで痛覚が存在していないマリオネットのようだ。

男はすぐさま体勢を立て直すとラミレスの首筋へ剣を振るう。

ラミレスはそれを躱すと反撃に男の首を切り裂こうと

剣を横薙ぎに振るうが、男は転移魔法で撤退していき剣は空を切った。






霹靂千嵐聖雨天神矢サウザンド・サンクチュアリアローレイン。」


上空から光り輝く弓矢と神槍の大群が降り注いだ。



ラミレスは手にした闇色のレイピアに


終焉焔獄炎滅黒陽ブレイズ・ロアを纏わせて

神槍と光矢の雨を打ち消していった。

しかし、周囲の部下の幾らかは

予期せぬ奇襲に狼狽えるばかりで何もすることが出来ずに

一人、また一人と頭と心臓と急所を貫かれてその場に倒れてしまう。


ようやく魔法が止まった。

ラミレスは瞳に憎悪の炎を宿らせ、魔力の発生源を睨みつける。



古城を背にしながら天高く杖を掲げていた

右の瞳を紅く染めた気弱そうな小娘

ルミナス・メモティック・フォールンナイト。


瞳に光が宿っておらず、冷酷な殺戮者のような

無表情のような顔をしていたかと思えば

ラミレスの視線に気がついた途端、豹変して

オドオドとした内気で恥ずかしがり屋なルミナに戻った気がした。




「ご、ごめんなさいラミレスさん!

でも、攻撃しなくちゃ、いけないんです…!

だから、もう一回、貴女を殺ります。」



ラミレスは舌打ちをする。

こんな六天魔皇最弱の雑魚相手に

自分がここまで苦戦させられていることに


ラミレスはルミナスに対する苛立ちを隠せなかった。

「……いいでしょう。貴女諸共、葬り去ってさしあげますわ。」



終焉焔獄ブレイズ…………!?」


ラミレスは魔法を詠唱しようとしたが


ゾクッ、と全身を包み込むような悪寒に襲われた。



「なん……です……の……?」


それは、恐ろしい程の膨大な魔力の奔流であった。

生きとし生きる全ての者が恐怖せざるを得ない程の

絶対的な破壊の力を感じる。


「いったい…なにが起こっているというのですの…!?」















理解出来なかった。

飛沫のような血液を飲み込んだ瞬間

モルドレッドの瞳が真紅の輝きを灯して

膨大な真紅の魔力を纏っていたからだ。




無表情のまま、不気味に輝く瞳だけが

閃光の魔皇を咎めるように見つめている。


「お…お…お、お前、何を……した……!?」


声が震えてしまった、魔力量からして格が違いすぎる


こいつは…自分如きでは敵わない化け物だと分からせられてしまった。

少なく見積もっても、魔力量だけでも

あの皇帝陛下に匹敵…いや、それ以上の強者だと思った。




モルドレッドは足元に倒れているシャルロットを見下ろした。

力尽きているのであろう。

人体の急所全てに打ち込んでやったのだから当然であろう。




「……お前が、やったのか?」

感情のこもっていない無機質な声。

彼女に殺到していた六天魔皇達は

殺戮の覇者のような真紅の魔力に圧倒されてしまい

すっかり身動きがとれなくなっていた。

尋常ではない魔力に魂の根源から細胞から

始原的な恐怖を感じて足が竦んで動かないのだ。


「お前が、これを、殺ったのか…?」


再び低い声が発せられた。

その問いが自分に向けられているものだと気づくのに

しばらく時間を要した。


これ…とはシャルロット・レガリアの傷のことだろう



モルドレッドは妹の体を抱きかかえた。

すると、少女の体がふわりと浮き上がる。

天空まで浮き上がった血まみれの妹は真紅の結晶のような防壁に護られる

その光景を呆然と立ち尽くす周囲の有象無象をよそに

そうしてモルドレッドは手を虚空にかざす。


禍々しい赤黒い禁忌とされる魔法陣が現れた。

これは、普通の魔法ではない。

滞留する真紅の魔力は質も量も何もかもが次元が違う

この世界の魔法とは思えない物だった。

空気が激しく振動し、壁や床に罅が入り

あまりの重圧に耐えられなかった有象無象が泡を吹いて倒れていく。



「あれは…まさか……あ…あり得ない…そんなはずは!?」


あれは、上級魔法でも、世界破滅級魔法でもない。



太古に失われたとされる世界を本当に滅亡させたとされる禁忌の大魔法に酷似していた。

神が新たな宇宙を創造をする際に

宇宙を壊す時に使用されたと言われる

破壊神の権能がもたらす最高位の秘奥義だ。


「皆、速く逃げろッ!!!」


シャイニスは五百人の部下に

神速を与える金色の魔力を纏わせて撤退させようとしたが無駄だった。

その瞬間、魔力が爆発した。


魔法陣から射出された真紅の極光は

古城は言うまでもなく、古戦場全土を焼き尽くし

ありとあらゆる全てを焼き滅ぼした。


その魔法の名は

真紅灼獄焔焉覇星激爆覇スカーレット・ノヴァ













その様子を見ていたジルグニールは大笑いしながら


生きた心地がしないと顔に書いてある表情をしている

バラン・レガリアの肩を叩いている。




「はっはっはっはっ!見たかバランよ!

あれは太古に失われた禁断魔法だぞ!!

モルドレッド独自のアレンジが加えられているが

まさか生きてる間に実物を二度も見られるとは思わなかったぞ!」



あの世界の終焉のような真紅の大爆発の余波で

スクリーンの映像には砂嵐が吹き荒れてしまい

映像が見えなくなってしまったが

それを見たジルグニールはご満悦といった表情だ


「見たまえ、ボクの遠視魔法を妨害する程の

絶大な魔力の残滓が古戦場に降り注いだのだ!!

こんな事は一万年生きてて初めてのことだぞ!!」


「ど…どうするんですか!このままでは俺の娘達が……」



「心配する必要はないさ、あの子達も親離れの時期に入ったということだ

彼女達に君やボクが割って入れる隙間は無いぞ?」




「……この後、モルドレッドはどうするのでしょうか?」

「さあな、どうなるかはボクにもわからんな。

そろそろボクの見ているスクリーンの魔力だけは

修復するし、大人しく見守っていたらどうだ?」


バラン・レガリアは拳を握って祈ることしか出来ないが

娘達の無事を心から神に祈った。








この世の終焉が訪れたのかと思った。

それほどまでに凄まじい大激震が古戦場を襲った。


辺りは真紅の極光に包まれて、目を灼かれたような感覚に陥り


目を開けることさえも叶わず

その場に縮こまって厄災が通り過ぎるのを待つしかなかった。

天が裂けて、大地が割れて、衝撃の余波で何もかもが滅んでいき

ラミレスは、誰かが悲鳴をあげながら

肉体が砕けて死んでいく音を震えながら聞いていた。


ラミレス・ブラティーは目を開けると


そこに広がっていたのは


シャイニス・シャイン・レジェルス


ミューリアム・デスメリュカーン


サンド・デス・ミーラハカーン


クルル・ヘル・ルシファー

真紅の爆風に体をバラバラにされて息絶えている

自分以外の六天魔皇の惨殺死体であった。


古城は瓦礫の山と化していた。

外壁は空間ごと抉り取られたように丸ごと消え失せ

中の様子が丸見えとなってしまっていた。


それだけではない、古城周辺の市街地や草原だけでなく

ミューリアムの本陣がある廃都市も

サンドの力の根源である広大な砂漠も

大陸の二割の広さを誇る鉱山や山岳地帯も

戦神の神核もあの真紅の魔力の爆発の余波で粉々に砕け散り

聖域も何もかも全てが跡形もなく消え失せており

古戦場全土が更地と化している。

背筋がゾッとした。

誰がどんな魔法を使えばこうなるのか?



「ラ、ラミレス様っ!」


運良く唯一爆発や爆風から逃れて無事だった部下が

血相を変えて叫んだ。

安堵したのも束の間、報告を聞いた

ラミレスは血の気が引いてしまった。

「ただ今確認したところ、六天魔皇五名と

シャイニス隊およびサンド隊、ミューリアム隊

二千五百名は消滅したようです!

ルミナス隊も壊滅したようで…ご覧ください。」




私達の部隊も壊滅している

唯一生き残ったのはこの部下だけ。

今、この古戦場に残っているのは

自分とモルドレッドだけだろう。



そして、部下が指を指して示した場所には

ルミナスの部下達の無数のバラバラ死体が転がっていた。

恐らく、先程の爆発に巻き込まれて死んだのだろう。



何故か肝心のルミナス・メモティック・フォールンナイトの姿が見当たらないが



あの、六天魔皇に相応しくない六天魔皇の恥晒しで

分不相応な屑木偶でクソ雑魚な劣等生のことだ。

骨も残らず消滅したに違いない。


いや、それよりも




「あの、私に楯突いてきたクゾ生意気な吸血鬼…

モルドレッド・レガリアはどうなりましたの!?」




「そ、それが…この爆発を引き起こしたのは

モルドレッド・レガリア…らしいのです。

彼女が現在何処にいるかは不明ですが

恐らく、爆心地である古城かと…」



なんだそれは、訳がわからなかった。

この爆発を…たかが11年しか生きていない

あのクソ生意気な吸血鬼が起こしたというのか?




「そ…それで、ラミレス様…いったいどうしましょう…」

「くっ……!!」

やってくれましたわね…!!!

モルドレッド・レガリア!!!!


もはや、戦争どころの騒ぎではありませんわ。

いったいどうすれば


「……あれは?」


そこでラミレスは目撃した。

破壊し尽くされた古城の中心で呆然と立ち尽くす

モルドレッド・レガリアの姿を

いてもたってもいられなかった。

気づけばラミレスは歯軋りをして駆け出していた。




先程の大爆発を起こせる魔法なんか存在するはずがない

もし存在していたとしても、あんな小娘に扱えるはずがない

どうせ、卑怯な手段を用いたに違いない。

モルドレッドが古戦場に事前に仕掛けられていた

単なる大量の爆弾の可能性も考えられる。

とにもかくにも、私はあの小生意気な吸血鬼に

お話をしてやらないといけないようですわね?


…ラミレスは気がつかなかった。

唯一生き残った部下も、たった今、殺されたことを


右目を真祖の吸血鬼のような真紅に染めながら

ラミレスの部下の吸血鬼を片手で絞め殺した

血濡れた白銀の少女が、古城に向かうラミレスを見据えていた。

  


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