神様とツンデレ吸血鬼と恥ずかしがり魔皇のトリニティデスティニー 〜神様と吸血鬼の姉妹が転生して、気まぐれに世界を救います〜

ネコトーニャ

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六天魔皇と星海の少女編 ルミナの激情

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赫神華の首領、シュバルツ・ドラゴニス

突如、現れた彼は

私の事など眼中にもないとでも言いたいのか

ルミナの方へ歩みを進めた。

彼が歩く度に巨大な足音が鳴り、ドスドスと大地が振動する。




「ルミナス、連絡はしたはずであろう?

どんな手段を使ってでも

モルドレッド・レガリアとアルビオン

そして、六天魔皇を皆殺しにしろと?

それがこの様か?アルビオンも他の六天魔皇を皆殺しにしたのも

全て、そこで呆けているモルドレッドの功績ではないか?

貴様は……!!!いったい何をしていたんだ!!!」


鼓膜が破れるかと思う程の大声で男はルミナを叱責した。 


ルミナは恐怖で震えて頭を抱えていた。


「わ…わかって…いま……す……」


「分かっている?分かっているだと…!!!!!」



シュバルツは恐ろしい目でルミナを睨みつけた。



「では何故、モルドレッドは無傷のままなんだ!!!

何故貴様は役目を果たさず突っ立っているんだ!!!

その様子だと俺が刻んでやった

破滅の刻印も使っていないではないか…!!!!!」



「ち…違います…これは…その……」


「やかましいわ!恥を知れこの役立たずがっ!!」


シュバルツの容赦のない蹴りがルミナの腹部に突き刺さり

ルミナの小さな体はぶっ飛んで派手に転がっていった。

ルミナは激しく咳きこみながら、唾液と大量の血を吐いてしまった。


「死に損ないが!!お前は何をやっているんだ!!

さっさと奴を殺せばいいものを!!!!

まさか、絆されたとでも言うのか!?あの小娘にっ!!!」


「ごめんなさい…ごめんなさい…ごめんなさ……」



「鬱陶しいわ!!!」


「異能だけしか能がない能無しが肝心の異能を使わずどうする!!

そんなことではお前をわざわざ殺さず

今日この日まで生かした意味が無いではないか!!!!」


怒りのままに男はルミナを殴り飛ばした。



恐怖に震えているルミナに容赦のない暴力を振るい

思いつく限りの暴言を吐きながら

ルミナを執拗に痛めつけている男の姿を見て



モルドレッドは理解した。 

ああ、こいつか、こいつが…

ルミナの人生を狂わせた元凶なんだな……


頭が沸騰しそうな程、彼に対して憎悪の感情を顕にしながら

モルドレッドは、シュバルツを睨みつけた。



「……やめろ。」

自分でも驚く程低い声を出しながら

気がついたらルミナの前に立ち、この男に立ち塞がっていた。

これ以上、ルミナがボロボロになっていくのを見ていられなかった。


怒りが神核に影響を及ぼし、私は無意識に

異能の力を覚醒させてしまっていた。

意識を保ったまま、真祖の吸血鬼の力を扱えるが

半ば暴走状態のようなもので力が不完全な状態だ。

雀の涙程しかなかったモルドレッド魔力が

爆発的に増大したことにより

魔王剣ヴォルディスノアールが顕現する。 





私は、そんなことは構わずに

彼の眼力にも負けない程、強く睨みつけながら

私は、この男に魔剣の刃を向けた。 

この男を殺さなければ気が済まない。


「ルミナから離れろ。

もう彼女はアンタの仲間じゃなくなったんだから。」


シュバルツは鼻で笑った。

「ふはははは!面白い事を言うではないか吸血鬼。

ルミナスが、赫神華を抜けた?

そんなわけがなかろうが!!!!!

この小娘は死ぬまで我々から逃れられぬ運命だ!!

見ろ、こいつの魂に刻まれた赫神華の紋章をっ!」


シュバルツは大剣を凄まじい速さで振り回し

ルミナに斬撃を放った。 

ルミナの衣服が裂け、その下の下着も裂けて

白い肌に刻まれた赫神華の紋章が顕になってしまう。

シュバルツはルミナの胸を掴んで胸元を

私に見せつけるようにして笑った。


「これこそが、組織に服従を誓った印なのだ!」


シュバルツは下品な笑い声をあげている。

「さあ、死に損ないの役立たず!!!

地に伏せている場合ではないぞ!!!

死力を尽くしてモルドレッドを殺してこいっ!!!」


アイツがルミナに叫んだ所で我慢の限界が訪れた。


「やめろって言ってるだろうがああああああ!!」



私は策もなしにシュバルツに突貫した。

真祖の吸血鬼の圧倒的な身体能力と魔力任せで

我武者羅に凄まじいスピードで向かっていくだけ

我ながら短絡的で愚かな行動だと思う。



モルドレッドの魔王剣ヴォルディスノアールと

シュバルツの邪竜漆殺虐魔大剣ニーズヘッグがぶつかり合う。

鍔迫り合いになったが、力の解放が不完全の状態で

シュバルツの圧倒的な腕力に敵うわけもなく

あっさりと押し負けてしまうが

ぶっ飛んだモルドレッドは空を蹴って

シュバルツの腕を斬りつけた。



しかし、万物を両断する刃は通らなかった。


「……なんで通らないの ?」



「ふんっ!!!!!!!」


シュバルツは邪竜漆殺虐魔大剣ニーズヘッグを大振りで振るい

魔剣を弾き飛ばし、私の腕を掴んできた。



シュバルツはニヤリと笑って私を見下ろした。


「悲しいな、実に悲しいな

力なき者の無駄な抵抗ほど見るに堪えないものはないからな!!」



「や、めろ……はなして……よ……」

腕を握る力が徐々に強くなっていく。

痛い、痛い痛い痛い痛い!!

必死で逃れようとするが無駄だった。

次の瞬間、骨が粉々になる音が戦場に響いた。


腕が完全に折られて、壊されてしまった。

遅れて脳を揺さぶるような激痛がやってきた。

あまりの苦痛に悲鳴をあげることすら出来ずに

視界が真っ赤に染まってそのまま倒れ込む。


「脆い、脆すぎるぞ!!これほど脆いのならば

ルミナスを使うまでもないな!

貴様をこれからたっぷりと痛めつけてやる!!」



全身を叩きつけられ、切り刻まれ、全身の骨を砕かれ

激痛で身体がとっくに悲鳴をあげている。

だけど、絶対に負けるわけにはいかないんだ……!!


ルミナのことを散々虐めた悪魔のようなやつに…

絶対に負けてたまるもんかっ!!!!!!


何度も倒れてもルミナを守る為に立ち上がる。

何度、身体をボロボロに壊されても

ルミナを守れるなら構わなかった。


最後の死力を尽くして全ての魔力を込めた

破壊神の瞳でシュバルツを睨みつけてやった。


しかし、それさえ彼には通じず

思いっきり腹部を踏みつけられた。

体が壊れて胴体から上下に裂けて分かれたような感覚がした。

痛みすら感じなくなり意識が霧散していく。


霞んでいく視界に、シュバルツが剣を振り上げる姿が映った。








ルミナは目の前で

モルドレッドが痛めつけている様子を見ながら震えていた。

けれど、自分を守るために死力を尽くして

決死の覚悟で立ち向かって

ボロボロになっても心が折れる気配が少しもない。

実力差を理解しているのにそれでも立ち上がる

勇敢とも無謀とも取れるモルドレッドの行動は

彼女にほんの少しの勇気を与えた。 


私は、何度もボロボロになっても

力を振り絞って立ち上がり、足掻き続ける
モルドレッドさんの必死な姿を見て


私とモルドレッドさんの何が違うのかを
ようやく理解し、思い出した。




お姉ちゃんは、昔からそうだった。

普段はすっごく弱いけど、それでも

相手が自分よりずっと強くたって、敵わなくたって
何度倒れたって諦めずに何度も立ち上がって立ち向かっていく…


お姉ちゃんは、心が強いんだ。

心が弱くて、あんな奴らの言いなりになっていた
私なんかとは…全然違う



私も、あんな風に強い心を持てていたら

こんな目に逢うこともなかったのだろうか…?





シュバルツが剣を構えた。

私のためにあそこまで頑張って死力を尽くしてくれた

少女が無惨にも殺されようとしている。


……そうだ、まだ遅くはない。


やれることはまだ残ってる。

自分の運命くらい、最期は自分で決めてやらないと

最期に、アイツを殺さなければ、死んでも死にきれない。


ルミナは、ふらふらと立ち上がる。

ゆっくりと呼吸を荒くしながら

地面に這いつくばっている体を起き上がらせて

何度も倒れそうになるが、それでも再び立ち上がった。


シュバルツは気づかない。

ルミナは今まで出したことがない程の大声で叫んだ。


「やめろ!!!モルドレッドさんから……

お姉ちゃんから離れろっ!!!!!!!!」




「…何を言っているんだ、道具の分際で?」



シュバルツは憤怒の悪魔のような恐ろしい顔をしながら

ルミナへゆっくりと近づいてくる。



ルミナは意を決したように、破滅の刻印に魔力を流し込む。


「私は、もうお前に従わない……!!

赫神華だって辞めてやるんだ……!!!!

お前のことだって…ぶっ殺してやるんだ……!!!」




「道具の分際で巫山戯たことを抜かすなッ!

お前に逃げ場など存在しない!!!

貴様は俺に使い倒されて廃棄される運命なのだ!」



「それこそ……ふざけんなああ!!!

私は…もう絶対に………!!!!

お前の操り人形にはならないって決めたんだ!!」



「おい、まさか貴様……!?」


自暴自棄とも言える捨て身の覚悟がルミナを突き動かした。


モルドレッドさんを救えるなら


自分の命なんか惜しくないと思った。


だから、ルミナは死ぬつもりで彼に挑んだ。


身体の奥底から燃え上がるような熱が湧き上がった

それは、純粋な高密度の魔力

ルミナの身体から溢れ出した白銀の魔力


それは、ルミナの命、神核を燃やして発せられたものだった。

天地が割れるような凄まじい魔力の奔流が起こった。

膨大な魔力に耐えきれずこの星が悲鳴をあげている


これなら、勝てるかもしれない。



「……なんだその目は?俺に逆らうつもりか?」


「そうだ!これは、今までの弱かった私との決別だ。

後悔しろよ…この…最低なクソ野郎…!!!」



感情が高まり過ぎて普段なら絶対使わない

強い口調で話すルミナは、激情に身を委ねて暴れている。


ルミナが地を蹴っただけで白銀の暴風が発生した。


神核を直接燃やしたことで強制的に

神核の力を醒めさせたことにより

ルミナの真祖の吸血鬼の力が呼応するように覚醒し

身体能力が格段と強化されているのだ。

気づけば、シュバルツの驚愕した表情が視界に映った。 

「なッ!?」



ルミナはシュバルツに向かって力任せに杖を振り下ろした。

シュバルツが咄嗟に構えた大剣とぶつかり

凄まじい衝撃が発生し、地殻変動が起こった。

ルミナの腕力が星を割れるまで増大していた。

シュバルツは殺気を放ち

黒龍の龍炎を纏わせた必殺の蹴りを放つが

咄嗟に防御魔法を展開して防いだ。

ルミナの展開した防御魔法は

防御魔法の最大の弱点である

物理攻撃への脆さを完全に克服していたのだ 。 


シュバルツが舌打ちして距離を取ったのを好機と見た

ルミナは即座に膨大な魔力を練り上げて

背後に巨大な白銀氷の魔法陣を展開させて無数の

星命流転覇星激爆覇アストラル・ノヴァの魔法陣を展開させ

星命流転星氷滅流星覇氷星激爆覇アストラル・スターダスト・ノヴァを射出した。

眩いばかりの白銀の魔力の光を振り撒きながら

氷を纏った白銀の星々が滅茶苦茶な軌道で

シュバルツに襲いかかった。



「小癪な……なにッッッ!?」





シュバルツは邪竜漆殺虐魔大剣ニーズヘッグを大振りで振るい


星命流転星氷滅流星覇氷星激爆覇アストラル・スターダスト・ノヴァを撃ち落とすが

二発目は無茶だった。



ルミナの髪飾りの力により氷系統の魔法の威力が

信じられないほど増大し、それはシュバルツの

万物を滅ぼす魔王の剣すら通さない絶対防御の異能のような硬さを誇る

黒龍の鱗のような鋼の肉体をいとも簡単に引き裂いた。

白銀の極光に貫かれシュバルツの巨体がよろめいた。

その隙を狙って次々と白銀氷の星々が着弾して

星を消滅させる程の白銀の大爆発を引き起こした。


辺りを覆い尽くす白銀の極光と砂塵。


その砂塵を突っ切るようにシュバルツは突っ込んできた。



「道具の分際で、調子に乗りやがってッ!!

もはや貴様に利用価値は無い処分してやる!!!」


軽々と大剣を掲げたシュバルツは


そのままルミナに向かって必殺の一撃を繰り出す。


強化された脚力で空に逃げて回避する。

シュバルツは転移魔法でルミナの上を取り

全重量を乗せて振り下ろされた大剣の一撃を

ルミナに全力で叩き込んだ。

ルミナは防御魔法の障壁を展開するが

あまりの衝撃に押されてしまい

防御魔法でも威力を相殺しきれず

地面に墜落し地上に巨大なクレーターが出来る。

杖を遠くの方まで落としてしまい

ルミナの全身に凄まじい激痛が走り血を吐きながらよろめいた。


だけど、まだ倒れるわけにはいかないんだ。

アイツをこの手で倒すまでには…絶対に…!!!





「……哀れだな、ルミナス。

大人しく従っていれば処分されることもなかったろうに。

…思えば、貴様は最初から欠陥品だったな。

全く、貴様に割いてやった労力と結果が釣り合わんぞ?

そこらに吐いて捨てる程いる一般家庭とはいえ

お前の改竄魔法があったとしても

いちいち皆殺しにすれば隠蔽するのも苦労するのだぞ?

貴様はこの苦労に見合った対価をお前はもたらさなかった。

それどころか、貴様は我々の崇拝している

神を冒涜するどころか殺そうなどという

反吐が出るほど愚かな禁忌を犯した屑だ。

これが、欠陥品でなくてなんだと言うのだ…!!」




「お前の……お前の……せいで……!!!」


「何を泣いているのだ?

今更になって家族を殺されたことを恨んでいるのか?

お前の家族はこの俺に抵抗出来るだけの力を有してなかった

存在価値も無い雑魚だった。

弱い者から死んでいくのは自然の摂理ではないか?」


「それ以上…喋るなあああああああああ!!!!」


ルミナの魔力が感情と共に爆発した。



シュバルツが大剣を構えて待ち受ける。

再び、ルミナは白銀と蓮氷の魔法陣を展開させて

星命流転星氷滅流星覇氷星激爆覇アストラル・スターダスト・ノヴァを発射。

激情に任せた滅茶苦茶な軌道で飛んでいく。


一つ、二つ、三つとシュバルツは

虚空を宿した邪竜漆殺虐魔大剣ニーズヘッグを振るい

白銀の星を次々と破壊していく。


しかし、神核を魔王の域まで到達させ覚醒した

ルミナの魔力は魔力切れが存在せず永遠に尽きることがない

まさに無限の魔力とも言える力を発現させていた。


次々と放たれる魔法を打ち落としていくが

終わりは見えず、ついにシュバルツが片膝を付いた。

疲労が溜まり動きが鈍った所に白銀の光がシュバルツの急所を貫いた。



「ぐっ……この……!!!」


シュバルツは弧を描くように大剣を振るい

黒龍の力を込めた全力の一撃を叩き込むが

ルミナに大剣を片手で受け止められてしまう。


ルミナに弾き飛ばされた邪竜漆殺虐魔大剣ニーズヘッグが塵となって消滅する。




「馬鹿な………!?」



ルミナはシュバルツの息の根を止める為に


星命流転星氷滅流星覇氷星激爆覇アストラル・スターダスト・ノヴァの魔法陣を展開する。

狙うは、魂が宿してある心臓。


一撃で、確実に仕留めてやる

しかし。



ドクンッ


「……え?」



急に身体が動かなくなった。

全身から急激に魔力が無くなっていく。

凄まじい倦怠感と吐き気に襲われる。

次に全身を襲ったのは神経を焼き尽くす程の激しい痛み


口から大量の血が漏れた。

身体の中で大切な何かが壊れてしまった。

魔力の源でもある魂、その核とも言える

神核が完全に燃え尽きる寸前なのだ。


ルミナは我慢出来ずに倒れ込んでしまう。



「とうとう使用期限が来てしまったようだな

この間抜けがあああああああああ!!!!」


強烈な蹴りが腹部に突き刺さった。


それだけで、ルミナの体は枯れ草のように呆気なくぶっ飛んだ。


感覚が無くなっていき、痛みを感じなくなり

視界も霞んで体温が無くなり体が凍てつく。


すぐそこまで死が迫ってきていた。


「それでも……私は、まだ…諦めないっ!!」


「いい加減諦めろ!貴様は俺に殺される運命なんだ!」


ルミナは嗚咽を漏らした。

モルドレッドさんに勇気を貰って

せめて最期ぐらいは変われると思ったのに

境遇から抜け出そうとした途端にこの様だ。

私はやっぱり、弱くて、ダメダメな欠陥品だったんだな……


殺されることを覚悟したルミナは目を瞑った

しかし、いつまで経っても痛みがやってこない。

とうとう、痛覚さえも機能しなくなったのか…?

不思議に思い目を開けると

そこには衝撃的な光景が広がっていた。

先程まで気絶していたモルドレッドさんが立ち上がって

真紅の魔力を全身に纏わせながら

シュバルツの拳を受け止めていたのだ。 



「な…なんだとっ!?」

「………殺す。」



機械のように無機質な低い声を発した


モルドレッドは片手でシュバルツの巨体を軽く持ち上げると

シュバルツの腹に強烈な蹴りを入れると

天地を揺るがす程の赤黒い衝撃波が発生し

シュバルツをボールのように遠くまで蹴飛ばした。


今のが、完全に覚醒したモルドレッドさんの力なの…!?


あのシュバルツを子供でも相手にするように

あんな、アッサリと…!?



モルドレッドさんは無機質な真紅の瞳を

私に向けて、ゆっくりと歩いてくる。

ルミナは驚愕してモルドレッドの顔を見つめた。


いったい彼女に何が起こったのだろう


モルドレッドは這いつくばって仰向けに倒れている


ルミナの肩に優しく手を置き

羽のように軽い身体でルミナを優しく押し倒すと


モルドレッドはルミナに馬乗りになっていた。

「モルドレッド……さん…………?」


彼女の顔がゆっくりと近づいてくる。

生気がないどこか魅惑的な真紅の瞳

ルミナの視線はモルドレッドの服がはだけて

顕になった肌と唇に釘付けになってしまった。

ルミナは死に際でありながらも

顔を真っ赤にさせながら狼狽していた。



これって、これってもしかして………!?


モルドレッドはルミナの血に濡れた唇に口づけをし

舌を口内に入れながら舐め回すように

ルミナの口内の血液を吸い取る。



「…ん……うぅ…お姉ちゃん……私も……好き…です。」

涙を流しながら恍惚とした表情を浮かべて

ルミナはモルドレッドを受け入れて何度もキスをした


「……んっ……ちゅっ……」


ふわっと唇が離れたルミナを追い掛けて

モルドレッドがルミナの唇をもう一度塞ぐ。


首に手を回して引き戻し何度もキスをした。

「ん……はっ、ぅ………んっ………」

 

「お姉……ちゃん………んんっ!?」

 

モルドレッドさんの舌が、私の口を抉じ開けて舌を更に絡ませてくる。



くちゃ、という水音が静かな古戦場に響き、艶かしい吐息が漏れる。




「足りない、もっと…もっと…血が…欲しい………」



ルミナの首筋に小さな痛みが走った。


モルドレッドがルミナの首筋に歯を立てていた。

噛まれた所から血が溢れて、溢れた血を吸われていく感覚。


「え…だ、だめですよ……モルドレッド…さん……」


吸血鬼が吸血鬼に対して吸血行為を行うのは

最上級の親愛の証でもあり

貴女と恋仲になりたい、家族になりたいという

愛情や告白、求愛の意味が含まれた行動である。

首筋を舐められる度に途方も無い快楽が全身を貫いていく

ああ、私はもう既に死んでいて

ここは、もしかしたら天国なのだろうか?


ルミナは痛みも忘れてモルドレッドにされるがままになっていた。


好きな人に血を吸われて一つになっていくことが

こんなに幸せなことだったなんて知らなかった。

全身の快楽は唐突に終わりを告げる。

青空を眺めている内に行為が終わってしまった。


モルドレッドさんの口は私の血で真っ赤に染まっていた。

それだけで、幸せな気持ちになってしまった。


こんな、汚れた殺人鬼の血を飲んでくれる人がいるなんて

それだけで、胸がいっぱいになってしまった。

もう、思い残すことはない。

ルミナはこのまま目を閉じようとしたが

まだ、やるべき事が残っていた。


ルミナの右目が真紅に染まり、その瞳は彼女を見据えて

命を燃やして最期の魔法を発動させた。


星命流転アストラル





その時、モルドレッドの雰囲気が大きく変わった。


モルドレッドの髪がルミナのような白銀に染まって

左目が蒼白く輝く白銀に染まっていき

まるで神話に登場する伝説の魔王のような風貌に変わっていく。 


ルミナの魔王因子と白銀の魔力が混ざったことで

一時的にだが、モルドレッドの神核は昇華され

最終段階である『魔王顕現』まで到達した。



それは、全ての生命を奪っていき凍てつかせる

氷と星滅の概念を支配している魔王の力だった。

白銀の魔力を解放した余波だけで、古戦場は一瞬で凍りつき

世界を凍てつく白銀の世界に塗り変えていく。





「貴様、ここまで凄まじい切り札を隠していたとはな…!」



モルドレッドは答えない。

足元に倒れているルミナスを見下ろしている。


ルミナスの神核は完全に燃え尽きており、跡形も無く消えていた。

ルミナスの肉体が消滅するのも時間の問題であろう。



モルドレッドは優しく、そっとルミナに触れると

ルミナの背後に魔法陣が浮かび上がった。


次の瞬間、何が壊れた音がした。


シュバルツは驚愕した。


彼女を赫神華に縛り付けていた枷が

赫神華の証である紅い蛇の紋章と
自壊の秘術である破滅の刻印が跡形も無く消し飛んでいた。


破滅の刻印を消滅させたということは

モルドレッドは我々が崇拝している

終焉の破壊神の力を超えているということになる。

そんなことは……あり得ない事はずだ。


そして、それ以上にあり得ない事が起こった。

淡い白銀の優しい光に包まれた

ルミナスの傷が凄まじい速度で再生していくのである。

傷が治るのは理解できる。

しかし、消滅したはずの神核まで再生するのは 

シュバルツの理解の範疇を超えていた。



神核の消滅とはどんな手段や異能を使ったとしても

絶対に覆らない絶対の死を意味する。


しかし、破片どころか砂粒一つすら無く燃え尽き

完全に消滅し、無に還ってしまった神核を再生してしまえるなど

規格外にも程がある。


なんなのだ…!あの回復魔法は…!!!!

異能にしたって、異能の範疇を遥かに超えている…!


異能を超越した異能…これが、魔王の異能だというのか…!?



ルミナの治療を終えたモルドレッドは

ふわりとした動作でシュバルツに振り返った。


モルドレッドの瞳は

まるでシュバルツをゴミでも見るかのような視線をしており

『あっ、まだ生きてたんだ、君』とでも言いたげな表情をしている。


モルドレッドがゆっくりとシュバルツに歩を進める。

シュバルツは本能的に危険を察知して黒龍の炎を射出する。


しかし、それがモルドレッドに届くことはなく

モルドレッドに近づいた炎は凍てつき

一瞬で蒼氷のように凍ってしまった。



「おのれ……貴様ああああああ!!!!!」


シュバルツは魔力を練り上げて黒龍の牙を顕現させて

モルドレッドを切り裂こうとするが

モルドレッドには牙が刺さらなかった。

それどころか黒龍の牙が粉々に砕け散ったのである。



モルドレッドの皮膚は黒龍の鱗を遥かに上回る

あらゆる攻撃を通さない鉄壁の身体に変質していた。


「馬鹿な…………こんな…ことが……!?」


シュバルツは再び邪竜漆殺虐魔大剣ニーズヘッグを顕現させ

モルドレッドに向かって大剣を振り上げるが

モルドレッドの指に大剣が触れた瞬間

シュバルツの巨体は紙切れのように吹き飛んだ。


「ぐおおおおおおおおおおおっ!!???」



凄まじい衝撃波が発生し地殻変動が起こる。


なんとか命があることに安堵していると



視線の先にモルドレッドの姿が見えないことに気づいたシュバルツの背中に冷や汗が流れる。

「ぐッッ!どこへ行った!!!!!」



「ここ」




すぐ隣から無機質な声が響いた。

その声を聞いてゾッとする。

モルドレッドはシュバルツの大木のような腕を掴んでいた

手を添えているような小さな手に摘まれたような

シュバルツの腕に万力で潰されたような激痛が走る。


「ああああああああああああ!!!!!」


シュバルツは思わず野太い悲鳴をあげる。



不意に強烈な冷気がシュバルツを襲った。

それは、霊界のような魂さえも凍てつかせる

寒気がシュバルツの全身を駆け巡り

彼女の指が触れた所から腕が凍りついていき

バキッという嫌な音が鳴った瞬間

シュバルツの腕が跡形も無く消し飛んでいた。



「ぐっああああああああああああ!!!!」


シュバルツの腕から血がどばどばと溢れ出した



「この、小娘がああああああッッッ!!!!」


シュバルツは激昂しながら黒龍の炎を纏わせた

邪竜漆殺虐魔大剣ニーズヘッグを全力で振りかざした。

やつは動く気配がまるで無かった


勝利を確信し、 モルドレッドの脳天に


邪竜漆殺虐魔大剣ニーズヘッグをそのまま叩き込んだ


その瞬間、金属を叩いたような衝撃が伝わった

「なん……だと…!?」


邪竜漆殺虐魔大剣ニーズヘッグは、確かにモルドレッドの頭に直撃した


しかし、髪の毛一本すら切れず刃が止まっている。

硬い…あまりにも硬すぎる。


モルドレッドが邪竜漆殺虐魔大剣ニーズヘッグに指を軽く添えると


邪竜漆殺虐魔大剣ニーズヘッグが真っ白に染まっていき

雪のように凍てつき、バラバラに砕け散った。



そして、ようやくシュバルツは己の立場が

劣勢に追い詰められていることに気がついた

捕食者側から、狩られる側に変わってしまった事を悟った。


古戦場を中心に、全ての大陸は凍りついていき

この星が氷の惑星と化してしまってから

僅かな時間しか経過していないが


周囲の温度が摂氏マイナス一万度に突入し

視線の先に映る世界を凍土に変えられていた。


命の危機を察したシュバルツは全力で逃走を試すが無駄だった。

魔王が支配している白銀の凍てつく世界で

魔王以外の存在が魔法を満足に使えるはずがなく


転移魔法の魔法陣を展開した瞬間

シュバルツの魔法陣が氷のように凍てつき霧散した。


「馬鹿な…そんな…ことが……ありえるというのか!?」






そして、モルドレッドは

シュバルツに向けてゆっくりと手を向けた。


その瞬間、シュバルツの全身が凍りつき

シュバルツの全身を覆った氷は粉々に砕け散り

シュバルツは断末魔の一つもあげることなく

ブラックホールのような虚空に消えていき消滅した。


シュバルツの絶命の瞬間を見届けると

モルドレッドの姿は転移魔法を使い、虚空に姿を消えていった。



モルドレッドが転移したのは 


赫神華、組織の総本山であり

赫神華の世界中に散らばっていた全ての構成員をここに転移させた。


何が起こったのか理解できずに狼狽えている間に


モルドレッドは絶大な魔力を解放する。


次の瞬間、白銀の猛吹雪が吹き荒れる。

赫神華の連中が悲鳴をあげながら凍りついていく。



「な…なんだこいつ…!」

「冗談じゃねえぞ…!!」


逃げ出そうとした竜人の土手っ腹に氷柱が突き刺さる。

次々と氷柱が襲いかかり、真っ赤な血が飛び散った。


辺りは一瞬にして死屍累々。


このままでは殺されてしまう事を理解した奴らが

蜘蛛の子を散らしたように逃げ出していく。

転移魔法を使おうとしても魔法陣を展開した瞬間に

空間と魔力そのものが凍てつき魔法陣が霧散する。




モルドレッドはそんな有象無象の蟻さえも逃がさんと

氷柱で奴らの急所を的確に撃ち抜いていく。

ふわりと、モルドレッドの体が宙に浮かぶと

モルドレッドは途方もない白銀の魔力を爆発させ

背中に巨大な魔法陣が展開される。




「…………くたばれ」


そう、呟いた瞬間、世界が真っ白に染まった。


赫神華を永久に溶けることがない蒼氷によって氷漬けにしてしまった後

虚空に飲み込まれ、半径九百メートルは

空間ごと大地を抉り取られたように跡形も無くなってしまった。


モルドレッドの超越を超えた力によって

呆気なく、赫神華は壊滅してしまった。





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