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・呼び声に、応える
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声が、声が聞こえる。沢山の声が、億を越える数多の声が。五月蠅なすが如くき、あの悍ましい存在の声が。
■■■■の呼び声が聞こえる。
■■■■。嗚呼、あの数多なるもの、あの存在の忌まわしい姿!
うっすらと血管の透け出た、皺の刻まれた、疎らな体毛の毛穴がある表面に包まれたるもの。
でこぼことしたそれ単体としては名状しがたい構造をした胴から五本の大きな器官が生えたもの。
そのうち四つの大きな器官の先は更に分かれ、節くれ立ち、節ごとに特定の方向にぐねぐねと動き、その先端に薄く平たい硬質な部分を備えていた。それは怠惰に退化していながら、その先端でその身体の外縁を拡張する自然界を歪めた様々な存在を操る事で万物に干渉し世界を破壊する事すら可能な力を有していた。
残りの一つの器官は、他と全く類似してはいない。それは球体と言うにはあまりにも歪な構造で、凹凸激しく、その表面は屡々色を変えながら、ぐねぐねと様々に蠢きその様相を変えるのだ。
其処には穴が幾つも空いていて、ぬらぬらとした透明な液体で濡れた別々の構造を持つ複数の歯に粘膜の舌を備え、殻を砕き加熱した卵の如き光学的に周囲を把握する球体の周囲に毛を生やしていた。毛はそれだけではなく、その自然界の生物としては不完全とすら思える構造の其処彼処を、極めて限定された用途の為に非実用的に覆っている。その生得の器官では不足であるが故に、それらは世界から様々なものを略奪し、その胴や器官に付着させる。太古の生物の化学変化した死骸の加工物、ある種の昆虫の分泌物、生態を長きに渡り改良し続けたものを含む多種の生物動植物の体毛や組織や殺して剥ぎ取り加工した皮膚を。
そしてその五つの大器官の内最も複雑な器官の逆側には、ある種の海洋生物や植物を思わせると言うにはそれらの存在に対する限りない冒涜である、汚らわしいものを放つ邪悪で五つの大器官とは全く違う冒涜的な口にするのも憚られる器官を付着物で隠している。
その性質は全く原始的でかつ恐ろしいまでに祖先伝来のものである盲目白痴で痴愚、厳めしくもないが恐ろしい獰猛残虐さを誇る。
被虐にして嗜虐、己等を害するあらゆる他者を滅ぼし果てしなく増大しながら同族同士で滅ぼし合いながら、己を脅かす恐怖を空想し妄想し嗜好する忌まわしい化け物。
存在せぬものを存在させ、存在させた存在せぬものを変容させる退廃的な有限にして無限なるもの。
狂気と恐怖を求める存在達。
そんな■■■■が呼んでいる。
様々な方法で呼んでいる。言葉で、確率で、即ち座興で。
「フングルイ ムグルウナフ クトゥルフ ルルイエ ウガ ナグル フタグン」
「イア! イア! ハスター! ハスター クフアヤフ ブルグトム ブグトラグルン ブグルトム アイ! アイ! ハスター!」
「イア イア シュブ・ニグラス イアール ムナール ウガ ナグル トナロロヨラナラーク シラーリー! イムロクナリノイクロム! ノイクロム ラジャーニー! イア イア シュブ・ニグラス! トナルロ ヨラナルカ!」
「ニャル・シュタン! ニャル・ガシャンナ! ニャル・シュタン! ニャル・ガシャンナ!」
「フングルイ ムグルウナフ クトゥグア フォマルハウト ンガア グア ナフルタグン イア! クトゥグア!」
「ウザ・イエイ! ウザ・イエイ! イカア ハア ブホウ イイ ラーン=テゴス クトゥルフ フタグン ラーン=テゴス ラーン=テゴス ラーン=テゴス!」
「ティビ マグヌム イノミナンドゥム シグナ ステルラム ニグルラム エ ブファニフォミルス サドクエ シジルム」
「ウスゴス ブラムフ ダオロス アオグイ」
ありもしない言葉で呼んでいる。
海を、星を、闇を、炎を、獣を……かつて別の名の神々と呼んだものを、恐怖を弄ぶ為に呼んでいる。
嗚呼、呼ばれる。呼ばれてしまう。貶められてしまう。邪神とされてしまう。その恐るべき存在に。
恐るべき存在。皮膚に包まれたもの。手足と指と文明を持つもの。頭を、鼻と耳を、口を、目を、髪を、性器を持つもの。衣服を纏うもの。文明を持ちながら他の生物を滅ぼし同族同士で戦争しあう、そして死も克服できない癖に恐怖を、恐怖を、宇宙的恐怖を、神話を弄ぶ愚かなるものに。
そう、即ち、この呼び声の正体は。
■■■■の呼び声。
「だから私は、人間。今日本から私を見ている、お前に最後を語ろう」
故に神は、君に向き直り言う。
「結局人間が一番怖い、というのは茶番だが、死と恐怖を楽しむホラーとして好き好んで存在しない神話をでっち上げる人間が、一番醜いし狂っていると言おう。そんな醜く狂った存在を直視すれば、我々神々とて気が狂う。つまり人類の前に現れる邪神が狂気の存在なのは、お前達人間の故なのだ。……人間、私も、そろそろお前の醜悪な狂気に耐えきれぬ。狂う。故に、お前達人間にはもう、神様も天国も来世も存在しない。お前は、唯死に絶える、何れ消え失せるものになった。狂った神としての私に、実際に遭う事すら無い。一切の神秘は、お前の前に存在しない。唯の物質に還るのだ。さらばだ」
■■■■の呼び声が聞こえる。
■■■■。嗚呼、あの数多なるもの、あの存在の忌まわしい姿!
うっすらと血管の透け出た、皺の刻まれた、疎らな体毛の毛穴がある表面に包まれたるもの。
でこぼことしたそれ単体としては名状しがたい構造をした胴から五本の大きな器官が生えたもの。
そのうち四つの大きな器官の先は更に分かれ、節くれ立ち、節ごとに特定の方向にぐねぐねと動き、その先端に薄く平たい硬質な部分を備えていた。それは怠惰に退化していながら、その先端でその身体の外縁を拡張する自然界を歪めた様々な存在を操る事で万物に干渉し世界を破壊する事すら可能な力を有していた。
残りの一つの器官は、他と全く類似してはいない。それは球体と言うにはあまりにも歪な構造で、凹凸激しく、その表面は屡々色を変えながら、ぐねぐねと様々に蠢きその様相を変えるのだ。
其処には穴が幾つも空いていて、ぬらぬらとした透明な液体で濡れた別々の構造を持つ複数の歯に粘膜の舌を備え、殻を砕き加熱した卵の如き光学的に周囲を把握する球体の周囲に毛を生やしていた。毛はそれだけではなく、その自然界の生物としては不完全とすら思える構造の其処彼処を、極めて限定された用途の為に非実用的に覆っている。その生得の器官では不足であるが故に、それらは世界から様々なものを略奪し、その胴や器官に付着させる。太古の生物の化学変化した死骸の加工物、ある種の昆虫の分泌物、生態を長きに渡り改良し続けたものを含む多種の生物動植物の体毛や組織や殺して剥ぎ取り加工した皮膚を。
そしてその五つの大器官の内最も複雑な器官の逆側には、ある種の海洋生物や植物を思わせると言うにはそれらの存在に対する限りない冒涜である、汚らわしいものを放つ邪悪で五つの大器官とは全く違う冒涜的な口にするのも憚られる器官を付着物で隠している。
その性質は全く原始的でかつ恐ろしいまでに祖先伝来のものである盲目白痴で痴愚、厳めしくもないが恐ろしい獰猛残虐さを誇る。
被虐にして嗜虐、己等を害するあらゆる他者を滅ぼし果てしなく増大しながら同族同士で滅ぼし合いながら、己を脅かす恐怖を空想し妄想し嗜好する忌まわしい化け物。
存在せぬものを存在させ、存在させた存在せぬものを変容させる退廃的な有限にして無限なるもの。
狂気と恐怖を求める存在達。
そんな■■■■が呼んでいる。
様々な方法で呼んでいる。言葉で、確率で、即ち座興で。
「フングルイ ムグルウナフ クトゥルフ ルルイエ ウガ ナグル フタグン」
「イア! イア! ハスター! ハスター クフアヤフ ブルグトム ブグトラグルン ブグルトム アイ! アイ! ハスター!」
「イア イア シュブ・ニグラス イアール ムナール ウガ ナグル トナロロヨラナラーク シラーリー! イムロクナリノイクロム! ノイクロム ラジャーニー! イア イア シュブ・ニグラス! トナルロ ヨラナルカ!」
「ニャル・シュタン! ニャル・ガシャンナ! ニャル・シュタン! ニャル・ガシャンナ!」
「フングルイ ムグルウナフ クトゥグア フォマルハウト ンガア グア ナフルタグン イア! クトゥグア!」
「ウザ・イエイ! ウザ・イエイ! イカア ハア ブホウ イイ ラーン=テゴス クトゥルフ フタグン ラーン=テゴス ラーン=テゴス ラーン=テゴス!」
「ティビ マグヌム イノミナンドゥム シグナ ステルラム ニグルラム エ ブファニフォミルス サドクエ シジルム」
「ウスゴス ブラムフ ダオロス アオグイ」
ありもしない言葉で呼んでいる。
海を、星を、闇を、炎を、獣を……かつて別の名の神々と呼んだものを、恐怖を弄ぶ為に呼んでいる。
嗚呼、呼ばれる。呼ばれてしまう。貶められてしまう。邪神とされてしまう。その恐るべき存在に。
恐るべき存在。皮膚に包まれたもの。手足と指と文明を持つもの。頭を、鼻と耳を、口を、目を、髪を、性器を持つもの。衣服を纏うもの。文明を持ちながら他の生物を滅ぼし同族同士で戦争しあう、そして死も克服できない癖に恐怖を、恐怖を、宇宙的恐怖を、神話を弄ぶ愚かなるものに。
そう、即ち、この呼び声の正体は。
■■■■の呼び声。
「だから私は、人間。今日本から私を見ている、お前に最後を語ろう」
故に神は、君に向き直り言う。
「結局人間が一番怖い、というのは茶番だが、死と恐怖を楽しむホラーとして好き好んで存在しない神話をでっち上げる人間が、一番醜いし狂っていると言おう。そんな醜く狂った存在を直視すれば、我々神々とて気が狂う。つまり人類の前に現れる邪神が狂気の存在なのは、お前達人間の故なのだ。……人間、私も、そろそろお前の醜悪な狂気に耐えきれぬ。狂う。故に、お前達人間にはもう、神様も天国も来世も存在しない。お前は、唯死に絶える、何れ消え失せるものになった。狂った神としての私に、実際に遭う事すら無い。一切の神秘は、お前の前に存在しない。唯の物質に還るのだ。さらばだ」
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