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・第四十一話「海戦の事(前編)」
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かくして始まった、第二次レーマリア・東吼戦争。
東吼の大軍が大地を揺らしてレーマリア首都ルームを目指して攻め上がり、レーマリア軍が迎撃態勢を取る中、一足早く始まったのは海での戦いだった。
かつては遊牧騎馬民族であった東吼帝国ではあるが、休戦前の先の戦いでは海賊や傭兵の中でも精鋭の者や志願兵を徴募して数こそ多く無いが剽悍な海軍を編成してレーマリアと海戦を繰り返していた。
今の戦争においてはそれに加え、旧レーマリア西東吼属州や戦間期に制圧した西南黒でレーマリア系住民や海に慣れた西東吼人、レーマリアと交易していた西南黒人をかき集め、レーマリアに勝る規模の二段櫂投船・三段櫂衝船・五段櫂投船を備えた過去より更に多い、レーマリアに勝る物量の海軍を構築していた。
この時代、あくまで主な戦争は陸で行われるが、勿論海戦にもそれを支える重要な意義があった。
制海権の確保は、揚陸による港町の征服や兵力の展開による敵の包囲を容易ならしめるだけでなく、自軍物資の補給を助け敵軍物資の補給を断ち、更に相手国家の交易を妨害する事で戦時経済そのものにダメージを与える事が出来る。
決戦は陸で、海は第二戦線ではあるが、主戦場の情勢を占う大事な前哨戦だ。
「準備は万全です。軟弱者達を襲ってあげなさい。この海に浮かぶ積み荷は皆私達のものですよぉ!」
東吼帝国海軍長官バルリアはそう配下将兵を鼓舞し、艦隊を出撃させた。
雑兵揃いのレーマリア軍ではあるが、海軍は陸軍より少しだけましであった。レーマリアはそもそも教帝たるペルロ十八世が船乗司祭上がりであるように、海上交易や豊かな食文化を支える為の漁業に関しては一日の長がある為、船乗りの人材は比較的多いのだ。加えて東吼には無い投火機がある。
……尤も、沖合では船を捨てて逃げる事が容易ではないからだ、という情けない理由もあるが。
故に前回の戦争ではレーマリア海軍は比較的沖合で艦隊決戦を行おうとする傾向があった。だがそれでも尚、地方艦隊が国家海軍を見捨てて勝手に逃げた、という艦単位や艦隊単位の敗走が発生する事はあり、レーマリア海軍は勝利を掴む事が出来なかった。
とはいえ、逃げ出した地方艦隊があっちに散らばりこっちに散らばり、追いかけっこ状態になって決定的な勝敗はつかず、陸ほどの惨敗にはならなかった。広い海、風と海流の影響を受けながら天測と磁石と初歩的な時計を頼りに的確に会敵するのは容易ではない。
故に海軍長官バルリアは海軍を増強し、今度はきっちり艦隊決戦で決定的勝利をものにすべく周辺海域を探り回ったのだが……
「……レーマリア艦隊が見えない? 商船隊もですか?」
予想に反しレーマリア艦隊は艦隊決戦を挑んでこなかった。更に商業があまり停滞した形跡も無いのに商船隊も見当たらなくなった。おかげで、最初の幾らかの日数を空回りする事になる東吼海軍。
「こしゃくですね、細かく分かれてこそこそと」
商戦も襲えず偵察し回った結果、レーマリア艦隊は分散して商戦護衛に徹し、また商船隊も夜間や沿岸と襲われにくい、襲われても地上脱出や沿岸からの支援など対処しやすい勝手知ったる海域を選んで動き回っているとの事だった。
「逃げ隠れしているのが分かればこっちのもの。沿岸用の小型船に投火機は詰めません。襲ってやりなさい!」
かくして漸く見つけた相手の居場所に、遺産で探し回りながら東吼艦隊は隠れ散らばる商船隊とそれを守るべく分散したレーマリア艦隊を捕捉撃破すべく、効率を考えて自分達も想定される散開した相手の規模には確実に有利を取れる程度の数に分散して乗り込んでいったのだが……
コレに対抗する為の手を、レーマリア帝国将軍アルキリーレは、レオルロに作らせた新兵器と己の考えた新戦術、カエストゥスが用意した要素とチェレンティの情報力、ペルロの威光を束ねて力として、地方海軍と国家艦隊に授けていた。
その結果は、夜の海に炎となって現れる事になる。
東吼の大軍が大地を揺らしてレーマリア首都ルームを目指して攻め上がり、レーマリア軍が迎撃態勢を取る中、一足早く始まったのは海での戦いだった。
かつては遊牧騎馬民族であった東吼帝国ではあるが、休戦前の先の戦いでは海賊や傭兵の中でも精鋭の者や志願兵を徴募して数こそ多く無いが剽悍な海軍を編成してレーマリアと海戦を繰り返していた。
今の戦争においてはそれに加え、旧レーマリア西東吼属州や戦間期に制圧した西南黒でレーマリア系住民や海に慣れた西東吼人、レーマリアと交易していた西南黒人をかき集め、レーマリアに勝る規模の二段櫂投船・三段櫂衝船・五段櫂投船を備えた過去より更に多い、レーマリアに勝る物量の海軍を構築していた。
この時代、あくまで主な戦争は陸で行われるが、勿論海戦にもそれを支える重要な意義があった。
制海権の確保は、揚陸による港町の征服や兵力の展開による敵の包囲を容易ならしめるだけでなく、自軍物資の補給を助け敵軍物資の補給を断ち、更に相手国家の交易を妨害する事で戦時経済そのものにダメージを与える事が出来る。
決戦は陸で、海は第二戦線ではあるが、主戦場の情勢を占う大事な前哨戦だ。
「準備は万全です。軟弱者達を襲ってあげなさい。この海に浮かぶ積み荷は皆私達のものですよぉ!」
東吼帝国海軍長官バルリアはそう配下将兵を鼓舞し、艦隊を出撃させた。
雑兵揃いのレーマリア軍ではあるが、海軍は陸軍より少しだけましであった。レーマリアはそもそも教帝たるペルロ十八世が船乗司祭上がりであるように、海上交易や豊かな食文化を支える為の漁業に関しては一日の長がある為、船乗りの人材は比較的多いのだ。加えて東吼には無い投火機がある。
……尤も、沖合では船を捨てて逃げる事が容易ではないからだ、という情けない理由もあるが。
故に前回の戦争ではレーマリア海軍は比較的沖合で艦隊決戦を行おうとする傾向があった。だがそれでも尚、地方艦隊が国家海軍を見捨てて勝手に逃げた、という艦単位や艦隊単位の敗走が発生する事はあり、レーマリア海軍は勝利を掴む事が出来なかった。
とはいえ、逃げ出した地方艦隊があっちに散らばりこっちに散らばり、追いかけっこ状態になって決定的な勝敗はつかず、陸ほどの惨敗にはならなかった。広い海、風と海流の影響を受けながら天測と磁石と初歩的な時計を頼りに的確に会敵するのは容易ではない。
故に海軍長官バルリアは海軍を増強し、今度はきっちり艦隊決戦で決定的勝利をものにすべく周辺海域を探り回ったのだが……
「……レーマリア艦隊が見えない? 商船隊もですか?」
予想に反しレーマリア艦隊は艦隊決戦を挑んでこなかった。更に商業があまり停滞した形跡も無いのに商船隊も見当たらなくなった。おかげで、最初の幾らかの日数を空回りする事になる東吼海軍。
「こしゃくですね、細かく分かれてこそこそと」
商戦も襲えず偵察し回った結果、レーマリア艦隊は分散して商戦護衛に徹し、また商船隊も夜間や沿岸と襲われにくい、襲われても地上脱出や沿岸からの支援など対処しやすい勝手知ったる海域を選んで動き回っているとの事だった。
「逃げ隠れしているのが分かればこっちのもの。沿岸用の小型船に投火機は詰めません。襲ってやりなさい!」
かくして漸く見つけた相手の居場所に、遺産で探し回りながら東吼艦隊は隠れ散らばる商船隊とそれを守るべく分散したレーマリア艦隊を捕捉撃破すべく、効率を考えて自分達も想定される散開した相手の規模には確実に有利を取れる程度の数に分散して乗り込んでいったのだが……
コレに対抗する為の手を、レーマリア帝国将軍アルキリーレは、レオルロに作らせた新兵器と己の考えた新戦術、カエストゥスが用意した要素とチェレンティの情報力、ペルロの威光を束ねて力として、地方海軍と国家艦隊に授けていた。
その結果は、夜の海に炎となって現れる事になる。
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