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・第四十六話「会戦の事(前編)」
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「今帰ったど! 勝利じゃ!」
「アルキリーレ! 無事でうわあああああああ!?」
「レオルロ、お主ん武器ば役ん立ったど! 見事! よか少年じゃ!」
「本当!? ありがうわああああ!?」
「何ちさっきからわあわあと!」
「アルキリーレ! お疲れ様です、これはレオルロの調合した栄養飲料に単神教の神秘を付与した回復飲料でうわああ!?」
「だからさっきからわあわあとどぎゃんしとっとじゃ!」
騎兵戦を勝利しレーマリア軍本隊に合流したアルキリーレ、早速本陣でカエストゥス、レオルロ、ペルロの三人が出迎え口々に無事を喜び発明の貢献を確かめ疲労の回復に努めようとするが皆驚き慄き叫ぶ。アルキリーレはきょとんとして首を傾げやがて訝しんで問い叫んだ。
「いや、そりゃあな、あれだよ、首級と返り血が理由だよ」
漸く、まだ比較的慣れている方のチェレンティが突っ込みを入れた。
そう、アルキリーレ、息せき切って帰ってきただけあって、金髪が赤毛に見える程戦場で派手に叩き切りまくった結果の返り血塗れの上、手にした鉈薙刀の切っ先にまだ仮面の奥で無念そうに目を剥いた敵将シディナンの首が突き刺さっている。この首を掲げてお前等の将は討たれたぞと敵兵共の士気を砕いて追い回していたからなのだが、さっきからカエストゥス、レオルロ、ペルロと向き直る度にアルキリーレの自慢げな笑顔より先に生首がドンである。
「そ、それは返り血なんだな!? 怪我は無いんだな!? それなら良かっ」
「おう、無傷じゃ。大勝利じゃど! それ見い! 俺ん手柄首じゃっど!」
「ひゃああああ!?」
元気で帰ってきたから無事かと思ったら血塗れで驚き心配していたカエストゥスだが、怪我は無い事を知って安心……した所でアルキリーレが摘んだ花かもいだ果実でも見せるように笑顔で生首をずいと突きつけてくる。カエストゥスはとうとう尻餅を突いた。
「何ぞ、褒めんとか!? 勝利じゃっど!?」
しまいにはちょっとむくれるアルキリーレ。北摩では敵将の首は誉れの証なのだ。喜んで貰えると思って差し出していたのである。
「俺も一緒になって暴れて、痛快な大活躍だったと思うとはいえ、闘技場で死者が出た時も流石にここまではやらんわ……」
だが皆の反応もやむを得まい。一緒に戦った北摩混血のアントニクスすらレーマリア育ち故にちょっと引いているのだ。レーマリアでは誰もこんな事はしない。
「あれだ、文化の違いだ。釣った魚とか優勝トロフィーとか、猫が捕まえたネズミを飼い主に持ってくるくらいの感覚なんだ、アルキリーレとしては」
「何ぞ、レーマリアでん首は喜ばれんとか。じゃあ耳か鼻ば削いで」
「ぶ、武器か鎧の一部でも持ってきてくれればいい!」
「そんで良かとか、少しく本人特定ばしにくか気もすっが、まあよかど」
威迫者を率いる過程である程度血腥い行為をした事もあるチェレンティが何とか説明し諭し抑えバランスを取る。
尚も感覚が殺伐でやっっぱりレーマリア人であれば怖くて出来ないような手柄の確認方法を提案するのを抑える。何とかアルキリーレも文化の違いは認識したようで。
「ともあれ次の戦じゃ。まず俺に従った騎兵共と馬共にもこん回復飲料ば飲ませちくいやったんし、こいは中々効くど、良か! ペルロ、レオルロ、かたじけない! そいと、今ん状況は!?」
「敵第一軍と睨み合っている所だ。もうじき会敵する」
馬を降りて床几に腰掛け、回復飲料を飲みながら陣幕の内に設えられた卓の上に広げられた地図と、その上に並べられた敵味方戦力を示すコマを睨むアルキリーレ。カエストゥスが、本来彼が主将だが傍らに立ち、アルキリーレに説明する。
「ん、分かった。そうそうレオルロ、良か鎧じゃったど。合戦用の奴も頼むど。あ、騎兵隊にも約束しちょるから陣羽織や新品の鎧ば返しちゃれ」
そしてどかっと床几に腰掛けたアルキリーレの鎧を小姓めいてレオルロが返り血に表情を引き攣らせながらも脱がし、合戦用の新しい金で飾った鎧を着せていく。
そしてその間誰にもやれる奴がいないので、硬い表情をしながらチェレンティが敵将の首をかたづけた。ペルロがその首に、異教の祈りですいませんが、と、弔いの儀式を行う中、アルキリーレは彼我の戦力を数え、地形を見、軍勢の配置を見、策を巡らせた。
幸い、先の戦いは奇襲が決まった快勝故に味方の犠牲は負傷者込みでもごく少数だった。合流してこの戦場の戦力は、首都ルームに待機させてもしもの守りと後方の供えにしている第三国家軍団残存戦力である三千を除いて二万五千五百、的は二万一千から大体一万九千程には減った筈……
「ん?」
と、早速軍略を巡らせ始めたアルキリーレがふと気づくと、カエストゥス、ペルロ、レオルロの三人が神妙な顔で並んでいた。傍らには促した様子のチェレンティとアントニクスも。
「ごめんね、まず言わなきゃならない事があった」
「慣れない習慣に少し動揺してしまい、すいませんでした」
「その通りだ。無事で良かった。よく戦ってくれた。勝ってくれてありがとう」
ペルロ、レオルロ、カエストゥスが、揃って深々と腰を折り礼をする。うん、とチェレンティが頷き。
「えい、えい、おーっ!」
タイミングを読んで、アントニクスが改めて勝鬨を上げさせた。
「「「えい、えい、おーっ!!」」」
長らく戦からも勝利からも遠ざかっていたレーマリア男等からの、拙い勝鬨がそれに同調する。
「……うむ! 良かど! 祝着至極ぞ!」
その声に、アルキリーレが心底嬉しげににっかりと笑って応え。
「兵子の配置じゃがの、こうせよ。それと、さっき言うた陣羽織と鎧じゃがな、予備があったじゃろ……」
そして会戦の準備を開始した。立ち上がり、地図に広げられた駒を動かすと、陣幕から出て遠くを眺めながら。
「アルキリーレ! 無事でうわあああああああ!?」
「レオルロ、お主ん武器ば役ん立ったど! 見事! よか少年じゃ!」
「本当!? ありがうわああああ!?」
「何ちさっきからわあわあと!」
「アルキリーレ! お疲れ様です、これはレオルロの調合した栄養飲料に単神教の神秘を付与した回復飲料でうわああ!?」
「だからさっきからわあわあとどぎゃんしとっとじゃ!」
騎兵戦を勝利しレーマリア軍本隊に合流したアルキリーレ、早速本陣でカエストゥス、レオルロ、ペルロの三人が出迎え口々に無事を喜び発明の貢献を確かめ疲労の回復に努めようとするが皆驚き慄き叫ぶ。アルキリーレはきょとんとして首を傾げやがて訝しんで問い叫んだ。
「いや、そりゃあな、あれだよ、首級と返り血が理由だよ」
漸く、まだ比較的慣れている方のチェレンティが突っ込みを入れた。
そう、アルキリーレ、息せき切って帰ってきただけあって、金髪が赤毛に見える程戦場で派手に叩き切りまくった結果の返り血塗れの上、手にした鉈薙刀の切っ先にまだ仮面の奥で無念そうに目を剥いた敵将シディナンの首が突き刺さっている。この首を掲げてお前等の将は討たれたぞと敵兵共の士気を砕いて追い回していたからなのだが、さっきからカエストゥス、レオルロ、ペルロと向き直る度にアルキリーレの自慢げな笑顔より先に生首がドンである。
「そ、それは返り血なんだな!? 怪我は無いんだな!? それなら良かっ」
「おう、無傷じゃ。大勝利じゃど! それ見い! 俺ん手柄首じゃっど!」
「ひゃああああ!?」
元気で帰ってきたから無事かと思ったら血塗れで驚き心配していたカエストゥスだが、怪我は無い事を知って安心……した所でアルキリーレが摘んだ花かもいだ果実でも見せるように笑顔で生首をずいと突きつけてくる。カエストゥスはとうとう尻餅を突いた。
「何ぞ、褒めんとか!? 勝利じゃっど!?」
しまいにはちょっとむくれるアルキリーレ。北摩では敵将の首は誉れの証なのだ。喜んで貰えると思って差し出していたのである。
「俺も一緒になって暴れて、痛快な大活躍だったと思うとはいえ、闘技場で死者が出た時も流石にここまではやらんわ……」
だが皆の反応もやむを得まい。一緒に戦った北摩混血のアントニクスすらレーマリア育ち故にちょっと引いているのだ。レーマリアでは誰もこんな事はしない。
「あれだ、文化の違いだ。釣った魚とか優勝トロフィーとか、猫が捕まえたネズミを飼い主に持ってくるくらいの感覚なんだ、アルキリーレとしては」
「何ぞ、レーマリアでん首は喜ばれんとか。じゃあ耳か鼻ば削いで」
「ぶ、武器か鎧の一部でも持ってきてくれればいい!」
「そんで良かとか、少しく本人特定ばしにくか気もすっが、まあよかど」
威迫者を率いる過程である程度血腥い行為をした事もあるチェレンティが何とか説明し諭し抑えバランスを取る。
尚も感覚が殺伐でやっっぱりレーマリア人であれば怖くて出来ないような手柄の確認方法を提案するのを抑える。何とかアルキリーレも文化の違いは認識したようで。
「ともあれ次の戦じゃ。まず俺に従った騎兵共と馬共にもこん回復飲料ば飲ませちくいやったんし、こいは中々効くど、良か! ペルロ、レオルロ、かたじけない! そいと、今ん状況は!?」
「敵第一軍と睨み合っている所だ。もうじき会敵する」
馬を降りて床几に腰掛け、回復飲料を飲みながら陣幕の内に設えられた卓の上に広げられた地図と、その上に並べられた敵味方戦力を示すコマを睨むアルキリーレ。カエストゥスが、本来彼が主将だが傍らに立ち、アルキリーレに説明する。
「ん、分かった。そうそうレオルロ、良か鎧じゃったど。合戦用の奴も頼むど。あ、騎兵隊にも約束しちょるから陣羽織や新品の鎧ば返しちゃれ」
そしてどかっと床几に腰掛けたアルキリーレの鎧を小姓めいてレオルロが返り血に表情を引き攣らせながらも脱がし、合戦用の新しい金で飾った鎧を着せていく。
そしてその間誰にもやれる奴がいないので、硬い表情をしながらチェレンティが敵将の首をかたづけた。ペルロがその首に、異教の祈りですいませんが、と、弔いの儀式を行う中、アルキリーレは彼我の戦力を数え、地形を見、軍勢の配置を見、策を巡らせた。
幸い、先の戦いは奇襲が決まった快勝故に味方の犠牲は負傷者込みでもごく少数だった。合流してこの戦場の戦力は、首都ルームに待機させてもしもの守りと後方の供えにしている第三国家軍団残存戦力である三千を除いて二万五千五百、的は二万一千から大体一万九千程には減った筈……
「ん?」
と、早速軍略を巡らせ始めたアルキリーレがふと気づくと、カエストゥス、ペルロ、レオルロの三人が神妙な顔で並んでいた。傍らには促した様子のチェレンティとアントニクスも。
「ごめんね、まず言わなきゃならない事があった」
「慣れない習慣に少し動揺してしまい、すいませんでした」
「その通りだ。無事で良かった。よく戦ってくれた。勝ってくれてありがとう」
ペルロ、レオルロ、カエストゥスが、揃って深々と腰を折り礼をする。うん、とチェレンティが頷き。
「えい、えい、おーっ!」
タイミングを読んで、アントニクスが改めて勝鬨を上げさせた。
「「「えい、えい、おーっ!!」」」
長らく戦からも勝利からも遠ざかっていたレーマリア男等からの、拙い勝鬨がそれに同調する。
「……うむ! 良かど! 祝着至極ぞ!」
その声に、アルキリーレが心底嬉しげににっかりと笑って応え。
「兵子の配置じゃがの、こうせよ。それと、さっき言うた陣羽織と鎧じゃがな、予備があったじゃろ……」
そして会戦の準備を開始した。立ち上がり、地図に広げられた駒を動かすと、陣幕から出て遠くを眺めながら。
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