神木さんちのお兄ちゃん!

雪桜 あやめ

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第17章 華の憂鬱

第234話 紅茶と好きな人

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 その後、あかりと別れて帰宅した華は、蓮が部活で不在のため、兄と2人だけで過ごしていた。

 昼食をとった後、兄は「課題をやる」と言って自室にこもり、華も宿題を終わらせるため部屋に戻ったが、それからしばらく経った3時過ぎ、華はまたリビングに戻ってきた。

 シンと静まり返ったリビングを歩き、キッチンの中に入る。

 一息つこうとポットにお湯を沸かし、華は食器棚から紅茶の缶を取り出した。

 アンティーク調のオシャレなブリキの缶。

 その紅茶缶を見て、華は朝、偶然出会った「倉色 あかり」さんのことを思い出す。

(……この紅茶、本を貸したお礼に、後輩からもらったって言ってたよね?)

 前に、兄がそんなことを言っていた。

 なら、この紅茶は、あの「倉色さん」からもらったものなのだろう。

(なんか可愛い感じの、お姉さんだったなー)

 前に兄が言っていた、好みのタイプ(レスラー系)とはかけ離れてはいるが

 きっと、あの倉色さんと兄は
 本を貸し借りするような仲で

 差し入れを届けにいったり
 相談にものったりする仲で

 その上、お互いの家を行き来するくらい
 親しい仲なのだろう。

(飛鳥兄ぃに、そこまで深い異性の友達なんて…今までいたかな?)

 昔から、女の子から良く話しかけられていたから、異性の友達もいたはずだ。

 だが、いつも当たり障りない付き合いばかりしていた気がする。

 煩わしいのも、揉め事も嫌いだから、基本的に一緒にいるのは男友達ばかりで、その中でも兄が家にあげるほど気を許しているのは、隆臣さんくらいだ。

 それなのに──

「あー、つかれたー」
「!」

 すると、ちょうどお湯が湧いたタイミングで、リビングに兄がやってきた。

 ずっと課題をするため、パソコンにでも向かっていたのか、肩をならしながらやってきた飛鳥は、キッチンにいる華に気づくと

「華、それなに?」

「紅茶」

「俺にも、ちょうだい」

 そう言って、ダイニングのテーブルにつくと、兄はうーんと猫のように背伸びをする。

「飛鳥兄ぃ、課題は?」

「もうすぐ終わるよ」

 カウンター越しに兄を見ると、休憩するためにリビングに来たことが伺えた。

 その後、寛ぎはじめた兄と雑談しながら、華は二人分の紅茶を入れると、その一つを兄の前に差し出し、ティーカップを手に、その向かいの席についた。

 二人だけのリビングは、とても静かだった。

 だが、あの倉色さんに貰った紅茶を飲み始めた兄をみて、華の心の中には、またなんともいえない感情が渦巻きはじめる。

「ねぇ、飛鳥兄ぃ」

「ただいまー」

「……!」

 だが、華が飛鳥に話しかけた瞬間、蓮の声が聞こえてきた。

 部活を終えて帰って来たのだろう。

 玄関から、蓮がそのままリビングに入ってくると、飛鳥はいつものように、声をかける。

「おかえりー」

「ただいま、疲れた~」

「だろうね。そう言えば、もうすぐ試合とか言ってたけど、お前出るの?」

「出ないよ。俺、1年だし、まだ補欠」

 荷物をおきキッチンに行くと、蓮は冷蔵庫から麦茶を取り出しながら、飛鳥と会話をする。

 そんな弾むような声を聞きながら、華は依然、無言のまま考え事をしていた。

『それでも私は、絶対に彼を好きになったりしないから……』

 その言葉は、とても深く胸に付き刺さっていた。

(……絶対にって)

 どうして、あんなにハッキリ、断言できるんだろう。

 きっと、あの倉色さんは、本当に兄のことを、友達としか思ってない。

 でも───








 お兄ちゃんは?







「ねぇ……お兄ちゃん」

「「?」」

 すると、再度問いかけられ、飛鳥が華に視線を向けると、麦茶を飲んでいた蓮も、同時にその手を止めた。

 すると、華は──

「もしかして、お兄ちゃん。倉色さんのことが好きなの?」

「……え?」

 瞬間、リビングが静まり返る。
 蓮と飛鳥は、ただただ呆然と華を見つめると

(く……くらしき?)

 全く聞き覚えのない名前が飛び出してきて、飛鳥と蓮は困惑する。

 蓮はもちろんだが、未だに、あかりの苗字を知らない飛鳥が、その名を理解出来るわけもなく、二人の頭の中には、同時に?マークが飛び交う。

「え? 誰それ?」

「え!?」

 すると、率直に返した飛鳥の言葉に、今度は華が仰天する。

(ちょ、まさか名前知らないの!?)

 本を貸しといて?
 家に上げといて!?

 だが、その瞬間、華は前に、その後輩の名前を聞いた際に

『そういえば、アイツ名前なんて言うんだろう? 聞くの忘れてた』

 なんて、兄が言っていたのを思い出した。

「はぁ!? あかりさんだよ! あかりさん!! 倉色あかりさん!! この前、部屋に連れ込んでたでしょ!?」

「え? あかり? あー、アイツ『倉色』って苗字だったんだ」

「……っ」

 だが、特に取り乱しもせず、平然と「あかり」などと呼び捨てにする兄。

 そんな兄に、華の苛立ちは更に増していく。

「何それ、信じらんない!? 好きな女の子の名前、知らないとかありえる!?」

「はぁ? てか、なんで俺があかりのこと好きみたいな話になってんの? この前、言っただろ。あかりは友達だって」

 なに、誤解してんの──と軽くあしらいつつ、飛鳥はまた平然と紅茶を飲み始めた。

 まるで相手にしない兄に、華はグッと奥歯を噛みしめると

(ッ……友達って)

 確かに、あかりさんも、そう言ってた。

 でも、お兄ちゃんは?
 本当に、そうなの?

 『あかり』だなんて、簡単に呼び捨てにしといて?

 まるで守ってるみたいに、大学で話しかけないようにしといて?

 本を貸したのも、差し入れ持って行ったのも、家に上げたのも、明らかに他の女の子とは対応が違うのに

 それで、ただの友達だなんて───

「ッ──そんなの信じられるわけない!!」

「!?」

 すると華は、バン!とテーブルを叩き、その場から立ち上がると

「どうしても友達だっていうなら、この前、なんであかりさんを抱きしめてたのか、ちゃんと説明してよ!」

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