396 / 554
第7章 未来への一歩
第374話 息子と彼氏
しおりを挟む『お前、今、ミサさんに、小5から、男と付き合ってる息子だと思われてるぞ』
「!?」
その隆臣の言葉に飛鳥は唖然とする。
男と付き合ってる!?
しかも、小5から!?
だが、そのとんでもない事実と同時に、飛鳥は、昼間のミサとの会話を思いだした。
ミサはあの時、確かに飛鳥の恋を応援すると言っていた。
だが、今の話を総合すると、その恋の相手は、あかりではなく──隆臣!
「あ゛ぁぁぁぁぁ、ちょっと待って!!」
瞬間、飛鳥は盛大に崩れ落ちた。顔を真っ青にし、頭を抱えた飛鳥は、今までにないくらい動揺していた。
無理もない。今、やっと16年の時を経て歩み寄り始めたというのに、そのミサに、男と付き合っていると、勘違いされているのだから!
『飛鳥、大丈夫か?』
「大丈夫じゃないよ! なんで、よりにもよって……っ」
そう、よりにもよって相手は、あのミサ。もはや、あかり以上のダメージを食らった気がした。
だが、恐ろしいのは、これから、その|産みの母親に、彼氏がいるという誤解を、しっかりとかなくてはならないということ!
だが、なんと伝えればいいのだろうか!?
電話をするのは、まだ、ちょっと緊張する。
しかも、その電話をしたあと「俺、隆ちゃんとは、付き合っていません」と、わざわざ説明しなくてはならないなんて──
「うわ、もう……最悪……っ」
『すまん、飛鳥。俺もまさか、ミサさんがそんな勘違いをしているとは思わなくて』
「そりゃ、思わないよね。隆ちゃんも、ある意味、被害者みたいなものだよ」
『そうかもな。でも案外、いい人かもしれないぞ、ミサさん』
「え?」
『実は、あの時「飛鳥のことを、宜しくお願いします」って頼まれた』
「なに、宜しくされてんだよ!?」
『多分、可愛い息子を嫁にやる心境だったんだろ』
「嫁!?」
『まぁ、男との恋を応援してくれるって、なかなか懐広い人だと思うぞ。それに『もう、お前の幸せを壊したくない』って言ってた』
「え?」
『彼女なりに、反省してるんだろうな。お前を傷つけてきたこと』
「…………」
その隆臣の言葉に、ふと先程のミサの姿を思い出した。
ただ、お弁当を届けに来ただけなのに、涙を流すほど、息子が来たことを喜んでいた。
あの姿には、確かに少しだけ、胸を打つものがあった。
もう、あの頃とは違うのだと。
柔らかな雰囲気を宿す母の姿に
少なからず、安心した──
「うん、確かに変わった気はするよ。でも……」
だが、16年──その歳月は、あまりにも長すぎて、まだ、少しだけ疑う気持ちも残っていた。
今はよくても、また変わってしまうかもしれない。
歩み寄りたい自分と、近寄りたくない自分。
天秤にかけられた自分の感情が、未だにグラグラと揺れている。
それでも、今日会えたのは、きっと、歩み寄るための、大きな一歩だった。
それなのに……
「飛鳥兄ぃ、ラーメンのびちゃうよー?」
「……あ」
瞬間、華が声をかけてきて、飛鳥は我に返った。見れば、テーブルの上には、先程作ったラーメンがあって、双子は先に食べ始めていた。
確かに、伸び始めたラーメンほど、不味いものはない!
「ごめん、隆ちゃん、そろそろ切る」
『あぁ、俺もそろそろ、バイト戻る。でも、ミサさんの誤解は早く解いとけよ。他に広まる前に』
「他に?」
『あぁ、特に侑斗さんに知られたら、また親バカが加速して、暴走しそうだ』
「うわ……!」
なんだか、軽く想像出来てしまった。
隆臣への親友としての信頼が厚い父のことだ。もし、息子に手を出された(出てない)となったら、裏切られたとすら思うかもしれない!!
「はぁ、父さんに知られたら、マジで厄介。でも、電話するのは……ちょっと気が重い」
『頑張れ』
「軽!? 元はと言えば、隆ちゃんのせいだろ!」
『いや、だから、俺は普通に答えただけだって! それに、ミサさんが、そう思ってたってことは、まだ他に、俺たちの仲が怪しいって、吹き込んだ奴がいるってことだろ!』
「まだ、いるの!?」
一体、この噂は、どこからはじまったのだろうか?
飛鳥は、酷く頭を抱えたまま、その後、ラーメンを食べたのだった。
◇
◇
◇
「もしもし、お母さん?」
その後、自宅に戻ったあかりは、実家に住む母親に連絡していた。
あかりの母である倉色 稜子は、ふわふわのボブヘアーをした、品のあるお母さんだ。
その穏やかで優しい雰囲気は、あかりともよく似といて、だからか、あかり自身も、稜子には何かと相談しやすかった。
『え? アルバイトを?』
「うん、どうしても、そのお店で働いてみたいの」
稜子と話しながら、あかりは切実に訴える。勿論、その相談の内容は、アルバイトのこと。
だが、初めは、反対されると思っていたが、稜子は、頭ごなしには反対しなかった。
『そうねぇ、喫茶店なら、私は別に構わないと思うけど』
「ホント?」
『えぇ……でも、お父さんと理久は、反対するんじゃないかしら?』
「あー、やっぱり?」
あの親バカ、姉バカの父と弟ならば、きっと反対するだろう。だが、それは想定内のことだった。だからこそ、あかりは、先に稜子への説得を試みたのだから!
「お願い、お母さん! 私の難聴のことも理解してくれたし、店長の美里さんは、とても素敵な方だし、私、あのお店で、働いてみたい!」
『うーん、そうね……確かに、アルバイトはいい経験になるし。わかったわ!あかりが、そこまで言うなら、お父さん達は、私から説得してあげる! でも、あまり無理はしちゃダメよ、あくまでも学業優先でね』
「うん! ありがとう!」
稜子の言葉に、あかりはほっと胸を撫で下ろした。母の言葉になら、父と弟は、きっと納得するだろう。
すると、あかりは、面接時に渡された書類の話をいくつかした後、稜子との電話を切ると、小さく息をついたあと、改めて、スマホを見つめた。
(どうしよう。一応、許しては貰えたけど)
電話帳をスクロールして、履歴の中から『神木 飛鳥』と書かれた名前を探しだす。
すると、その名前を見つめ、あかりは無意識に頬を赤らめた。
「どうしよう。連絡して……いいかな?」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
少しの間、家から追い出されたら芸能界デビューしてハーレム作ってました。コスプレのせいで。
昼寝部
キャラ文芸
俺、日向真白は義妹と幼馴染の策略により、10月31日のハロウィンの日にコスプレをすることとなった。
その日、コスプレの格好をしたまま少しの間、家を追い出された俺は、仕方なく街を歩いていると読者モデルの出版社で働く人に声をかけられる。
とても困っているようだったので、俺の写真を一枚だけ『読者モデル』に掲載することを了承する。
まさか、その写真がキッカケで芸能界デビューすることになるとは思いもせず……。
これは真白が芸能活動をしながら、義妹や幼馴染、アイドル、女優etcからモテモテとなり、全国の女性たちを魅了するだけのお話し。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる