神木さんちのお兄ちゃん!

雪桜 あやめ

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第10章 お兄ちゃんの失恋

第423話 双子とあかり

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「お久しぶりです、あかりさん」
「今日は、どうしたんですかー!」

 そういって、双子に話しかけられた瞬間、あかりはじわりと汗をかいた。

 なんというタイミング!?
 しかも、相手は、神木さんのご妹弟!!

「こ、こんにちは。華ちゃん、蓮くん」

 苦笑いを浮かべつつも、あかりは、あくまでも普段通り話しかけた。すると双子は、そんなあかりの前までくると、嬉しそうに話し始める。

「珍しいですね! こんな時間に、あかりさんが、うちを訪ねてくるなんて! もしかして、バイト帰りですか?」

「う、うん。さっき終わって、その足でここにきたの。華ちゃんたちは、どこかに出かけてたの?」

「はい。私たちは、買い出しに! 今夜は、お好み焼きしようと思ったのに、ソースがあまり残ってなくて。ついでに、お餅とチーズも買い足してきました!」

 満面の笑みで華が、そう言えば、横にいた蓮が、ソースやお餅が入ったエコバックを掲げた。

 なるほど。つまり、買い出しから帰宅したタイミングで、‪バッタリ鉢合わせしてしまったと!

(まさか、華ちゃんたちに会うなんて……っ)

 できれば、誰にも会わずに立ち去りたかった。

 だが、こうなった以上、ポストに入れるという選択肢を実行していいものか?

 いや、いけないだろう。すると、あかりは、仕方ないとばかりに、華たちに事情を話すことにした。

「あのね、華ちゃん。私、神木さんに、忘れ物を届けに来たの。良かったら、これ渡しといて貰えないかな?」

 そう言って、華に髪ゴムの入った袋を差し出す。すると、華は、その袋を受け取り、その後、蓮と顔を見合わせた。

 無言のまま、何かを語りあうように、目だけで意思疎通を繰り返す華と蓮。それは、まさに双子だった。

 だが、その後、二人は、あらためて、あかりを見つめると

「あかりさん。無理です!」

「俺たちが渡したら、兄貴、絶対嫌な顔するから、これは、あかりさんが、直接渡してください」

(え!? なんか、朝と全く同じことを言われたんけど!?)

 まさか、まさかの隆臣と同じ理由!
 しかも、双子たちにも言われるって、どんだけ!?

「ちょ、ちょっと待って! 本当に渡すだけでいいの!」

「ムリですって! 機嫌の悪い飛鳥兄ぃは、すごくめんどくさいんですから!」

「そうですよ。兄貴の機嫌は損ねない方がいいです。それに、兄貴なら、今家にいるし、このまま上にいけば、すぐですよ。ついでに、ウチで夕飯、食ってけば?」

「あ!それいいね、蓮!」

「え!? なにいってるの!?」

 すると、蓮から放たれた、まさかの提案に、あかりは、さらに慌てふためく!

 渡すのも避けたいくらいなのに、まさかの、夕飯まで一緒!?

「いや、あの、それは悪いし、すぐに帰るわ……!」

「遠慮しなくていいですよ。バイトから帰って、疲れてる中、夕飯作るって大変だし。それに、お好み焼きなら、人数が増えても大丈夫ですから、せっかくだし、一緒に食べましょうよ!」

「わ、ちょっと、華ちゃん!?」

 すると、華は、あかりの腕を掴み、にっこりとほほえんだ。まるで、親戚の子供がじゃれつくような無邪気な姿だ。

 それに、確かに、帰ってから、一人分の夕食を準備するのは億劫。だからこその気遣いなのは、よくわかる!

 だが、このままでは、あの神木さんと夕飯を共にすることになってしまう!!

 そして、それだけは、絶対に避けたいことだった。

 先日の、大学での光景を思いだす。
 だって、あんなに近い距離で、尚且つ、真剣な瞳で見つめられ、しかも──

『俺のこと、好き?』

 なんて言われたのだ。
 しかも、あかりは、逃げるも同然で立ち去ってしまったのだ。

 それなのに、今から、どんな顔で会えと!?

「ほら、いきますよ、あかりさん!」
「や、ちょっと、待って!?」

 だが、あれよあれよという間に、背中を押されたあかりは、あっさりエレベーターの中に連れこまれた。

 そして、そのエレベーターは、あっという間に7階につき、双子に連れられるまま、あかりは神木家へ!

 ──ガチャ!

「飛鳥兄ぃ、ただいま~。下であかりさんに、会ったよー!」

 そして、華が玄関を開け、高らかに叫べば、その後、奥のリビングから、あかりが最も会いたくない人物がでてきた。

 双子の兄である──神木 飛鳥だ。

 そして、今日の飛鳥は、長い髪を無造作にお団子状にまとめ、ピンク色のエプロンをしていた。

 それは、なんとも可愛らしい姿。

 だが、可愛らしいはずなのに、妙に色っぽくも感じて、しかも、飛鳥は、あかりが来たとわかるなり、これまた綺麗な笑みをうかべ、妖艶に微笑む。

「いらっしゃい」

 ただ一言、そう言われただけなのに、あかりの身体は、不覚にも熱くなった。

 どうしよう、逃げたい!
 今すぐ、ここから、逃げだしたい!!

 だが、あかりの手は華に掴まれていて、背後には蓮がいるため、全く逃げられる状況ではなかった。

 しかも──

「あかりさん、髪ゴム返しに来たんだって!」

「せっかくだから、夕飯にさそったよ」 

「そっか。じゃぁ、しっかり、しなきゃね?」

「……っ」

 双子と話した後、飛鳥は、見透かすように、すっと瞳を細めて、あかりをじっくり見つめた。

 柔らかく微笑む姿は、まるで天使のよう。

 たが、あかりにとって今の飛鳥は、非常~~に恐ろしく手強い魔王にしか見えなかった。
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