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第10章 お兄ちゃんの失恋
第424話 お好み焼きとアピール
しおりを挟むどうして、こんなことになっちゃったんだろう?
あの後、髪ゴムだけ渡して、とっとと帰ろうと試みたが、あかりは全く逃げられなかった。
なぜなら、玄関は蓮が塞いでいて、背後から華に背中を押されれば、否応なしに、リビングに強制連行されたから。
そして、あれよあれよという間に、夕食が始まってしまって、4人がけのテーブルの上には、ホットプレートと、お好み焼きの具材。
そして、あかりの向かいの席には、華と蓮が仲良さげに座っていた。
そりゃ、双子だ。
隣にいるのが落ち着くだろう。
だが、そうなると、あかりの隣に座る人物が、自ずと決まってくるわけで……
(近い……めちゃくちゃ近い!!)
左隣の座る飛鳥との距離は、ほんの数十センチほどだった。手を伸ばせば、簡単に触れられる距離。
(どうしよう。すごく、居ずらい……っ)
できるなら、早く帰りたい。
なにより、華ちゃん達はしってるの?
私が、神木さんを振ったこと──
(いや、知ってたら、家に招いたりしないよね? じゃぁ、神木さんは、話してないのかな?)
目の前で、わいわいと会話をする神木兄妹弟の様子を伺いながら、あかりは、ぐるぐると考え込む。
だが、あかりは、知らないと思っているが、もちろん、双子は知っていた。
先日、隆臣に『兄がフラれて落ち込んでる!』と泣きついたくらいだ。そして、その後の飛鳥の決意も、しっかり聞いていた。
そう、お兄ちゃんは、確かにフラれた!
だが、まだ諦めていない!
ならば、大好きな兄の幸せのため、できることをやろうではないか!!
「あかりさん、飛鳥兄ぃのお好み焼き、ふわふわで、すごく美味しいんですよ~」
「料理上手な男って、いいですよね?」
「え? そ、そうね?」
(なんか、すごくわざとらしいな……っ)
あからさまに兄をヨイショする双子を見て、飛鳥は、お好み焼きをひっくり返しながら、眉をひそめた。
自分の恋を応援してくれるのは嬉しいが、あかりの前で、あまり余計なことは言わないで欲しい。
だが、そんな飛鳥の気持ちには一先そぐわず、双子のヨイショは、更にエスカレートする。
「飛鳥兄ぃ、小2からお料理してるんですよ~。それに、クッキーとかチーズケーキとかも作れて、おやつのレパートリーも豊富なんです!」
「あと、裁縫もできますよ。体操服のゼッケンとか綺麗に縫ってくれますし、ピアノだって弾けます」
「そうなんです! 歌も上手いし! よく、童謡とか歌ってるから、結婚したあとは、完璧なお母さんになれます!」
「あのさ、ちょっと黙って」
何故、お母さんとしてアピールされてるのか、それは、よくわからないが、流石に、しびれを切らしたのか、飛鳥が、ついに突っ込んだ。
なんか聞いてるのすら、恥ずかしくなってきた!
しかし、その双子の言動を聞いて、あかりはあかりで、ある確信を得ていた。
(これ絶対、知ってるわ……っ)
だって、ものすごいプレゼンされる!
『うちの兄は、いかがですか?』と、これでもかと優良物件アピールをしてくる!!
(つまり、華ちゃんと蓮くんは、私が神木さんを振ったのを知ってて、ここにつれてきたってことよね?)
もしかして、くっつける気満々?
だが、それは困る!
しかし、そんなあかりとは裏腹に、双子は双子で必死だった。
(少しでもあかりさんに、お兄ちゃんの良さをしってもらわなきゃ!)
そう、顔以外のいい所をアピールしなくてはならない!
なぜなら、あかりさんは、兄のこの美しすぎる顔には、一切なびかなかったから!
ならば、顔以外のいい所を、伝えておかねばなるまい! 兄は決して、顔だけの男ではないのだから!
「うちのお兄ちゃん、性格は難アリですが、それなりに、スキルは持ち合わせてます!」
「そうです! 兄貴は、性格さえ目をつぶれば、いい男です。きっと幸せな人生をおくれます」
「だから、黙ってって言ってるんだけど?」
飛鳥が、にっこり悪魔的なスマイルを浮かべた。
というか『性格に目をつぶれば』ってなに?
性格って、一番大事な部分だろ!
「ほら、お好み焼きできたよ。無駄口叩いてないで、食べて。あかりもどうぞ」
「あ、ありがとうございます」
双子とは対照的に、飛鳥が、優しくあかりに声をかければ、あかりの前のお皿には、アツアツのお好み焼きが、一枚盛り付けられた。
外はカリッと、それでいて、中はふんわり。
まさに見本みたいなお好み焼きだ。
確かに、神木さんの料理の腕前は、なかなかのものだろう。そして、そのできる兄が振られたことに、華たちが納得いかないことも、あかりには、よくわかった。
だが──
(ごめんね、華ちゃん、蓮くん。神木さんに問題があるわけじゃないの……)
そう、これは全部、あかり側の問題。
だが、その問題──つまり、ふった理由を、この家族に話すわけにはいかない。
「あかりさん! どうぞ、食べてください」
「あ、うん」
華にうながされ、あかりは改めて、お好み焼きを見つめた。
悩んでる場合じゃない。
ここは、早く食べて、神木家を去ってしまおう!
すると、あかりは、斜め前に置かれたソースに手を伸ばした。
「「あ──」」
だが、その瞬間、あかりの手の上に、飛鳥の手が重なった。
どうやら二人は、同じタイミングで、ソースを取ってしまったようで……?
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