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第10章 お兄ちゃんの失恋
第430話 ストーカーと少女漫画
しおりを挟む「それに、俺の方が、神木くんの何倍も、あかりちゃんを愛してる!!」
「「…………」」
これまた、恥ずかしくなるくらいの愛の言葉を投げかけられ、あかりと飛鳥が、ゾクリと背筋を凍らせる。
なんか、怖い。
思っていた以上に、怖い!
「あかり……お前、盗聴とかされてないよね?」
「と、盗聴……!?」
すると、あかりの耳元で、飛鳥がこっそり話しかけてきた。だが、さすがに盗聴は──
「そ、それはないと思います……それに、もし、そんなことされてたら、神木さんが女装してたのもバレバレですよ……っ」
「うわ、それ最悪」
本当に、色んな意味で最悪だ!
だが、さすがにその線はないと仮定する。
仮に、盗聴されていたら、自分たちが付き合ってないのはバレバレだろうし、きっと大野さんは、たまたま、あかりが出た瞬間を目撃にし、問い質しただけなのだろう。
だが、仮にそうだとしても、壁越しに聞き耳くらいはたてていそうで、飛鳥は、不安がるあかりの胸中を、これでもかと察した。
これは、真面目に怖いと思う。特に一人暮らしのあかりにとっては、恐怖以外の何物でもない。
だって、彼氏(偽)がいる目の前で、愛の告白なんてしてくる人なのだから──
「大野さん。ソレ真面目にヤバイと思う」
「え? ヤバイ?」
「うん。今の発言、めちゃくちゃ怖いよ。そのまま行ったら、ストーカーになりそうだから、踏み外す前に戻ってきて」
「踏み外す!?」
飛鳥が、単刀直入にそう告げれば、大野は、鳩が豆鉄砲でも食らったような顔をして困惑する。
(お、オレ、そんなにヤバい??)
あまりのことに、酷く狼狽えてしまった。
だが、大野にとっては、切実な告白だったのだ。
それを、まさかストーカーみたいに言われるなんて!?
「な、なんだよ、神木くん! 俺の一世一代の告白を、まるで危ない人みたいに!?」
「いや、危ないよ。彼氏がいる相手に、それ言っちゃダメだって」
「そ、それは、そうかもしれないけど……っ」
「それに、あかり怯えてるし。泣いてるのを見て心配してくれたのは分かるけどさ。あまりしつこいと嫌われるよ」
「き、嫌われ……っ」
さすがに嫌わるのは嫌らしい。
大野が、ちょっとだけ大人しくなる。
そして、そんな大野を見て、飛鳥は少しだけ安心する。
前にも思ったが、一応、聞く耳は持ってるらしい。
だが、あかりのことを『運命の人』などと言っていたくらいだ。大野の気持ちは、それだけ本気なのかもしれない。
(あの頃は、大野さんの気持ちを、よく理解できてなかったけど、もし本気だとしたら、簡単に諦められるわけないよな)
諦めが悪いのは、自分だって同じ。
あかりを困らせてるのは分かってるのに、手放すことができないのだから。
でも、仮に大野さんの気持ちを理解できたとしても、あかりが困ってるのを見過ごす訳にはいかない。
「大野さん、はっきり言うけど、俺とあかりが別れることは絶対にないよ。だから、早く諦めて」
「いやいや、それは神木くんの意見だろ! 実際に、あかりちゃんは、泣いてたんだ! もしかしたら言わないだけで、あかりちゃんは、別れたいと思ってるかもしれない!」
「思ってないよ」
「君、顔がいいからって、自信持ちすぎ!」
「顔は関係ないだろ」
あかりを挟み、飛鳥と大野の言葉が飛び交う。
そして、目の前で繰り広げられるバトルのせいか、あかりは生きた心地がしなかった。
というか、なぜこんな少女漫画みたいな展開になっているのか!?
恋も結婚もノーサンキューなあかりにとって、これは、とんでもない事案だ!
だが、あろう事かその話は、あかりを巻き込む形で、どんどん膨れ上がっていく。
「わかった! じゃぁ、あかりちゃんに聞こう! あかりちゃんは、神木くんのこと、どう思ってるの!? 2回も泣かされたのに、まだ好きなの!?」
「え!?」
いきなり大野にふられ、あかりは慌てふためく。
なにそれ!?
そんなこと、このタイミングで聞く!?
「わ、私は……っ」
だが『好き』なんて、言えるわけがなかった。
突き放さなきゃいけない相手に、演技だとしても、その言葉だけは、絶対に言えない。
だけど、はっきり『好き』と肯定しなければ、大野さんは、諦めてくれないだろうし……
(と、どうしよう……神木さんに、これ以上、頼りたくないのに……っ)
そう、もう甘えたくないのだ。
だが、別れる気があると思われたら、それこそ、大野さんがストーカーになりかねない。
(ど、どうしよう、怖い……っ)
不安は更に増殖し、だが、どうすることも出来ず、あかりは途方にくれる。すると、渋るあかりを見て、飛鳥は
「あかり。このままじゃ、大野さん、もっと、あかりに付きまとうようになるよ。だから、演技でもいいから、好きって言って」
「……っ」
こっそりと、甘めの声が鼓膜から奥へと侵食する。
「あ、私は……っ」
身体が自然と熱を持って、唇ですら熱くなる。
「飛鳥さんの……ことが……っ」
すると、その優しい声に導かれるように、あかりは、小さく声を紡ぎ出した。
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