エロゲのNTR竿役に転生したので抗う。

雨だれ

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第二章 抗う種付けおじさん

12 竜

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 石造りの闘技場のような場所。
 隠れるような場所が何一つとしてない、その空間の奥に。
 緑色の鱗で身を纏う竜が体を丸めて、静かに眠りについている。
 巨大なビルが横に倒れている、そんな印象を持った。
 だが。
(ビルはこんなに威圧感など放たない――!!)
 そこいるだけで気が触れてしまいそうな程だった。
 概念兵装を持っているからこそ保てることのできる正気のおかげか、あるいはせいか。
 まっとうに対峙できてしまう自分が恐ろしい。
 息を整える。
 騒いで目を覚ましてしまっては、今のアドバンテージ、準備期間をなくしてしまう。
(……扉に入る前のバフは消される仕様を覚えていてよかった)
 慌てずポーションを飲む。
 筋力増加、速度上昇、耐久力増加……持てるだけのポーションを流し込んだ。
 一息つく……この威圧感は慣れることなどなさそうだ。
 武器を構える。
 俺はこの時、大きなことを見落としていた。
 あまりにも威圧感の放つ巨大な竜と対峙することで、頭から抜け落ちていた。
 そう。
 そこにいるだけで、気が触れてしまう……俺ですらそうなら。
(……しまった!)
 気が付いた時には遅かった。

「――いやああああああああああああああああああああ!!!!!」

 あかりの正気は一気になくなり、叫ぶ。
 竜の威圧感が恐怖が、幼い彼女を満たし犯したことは語らずともわかる。
 あかりを抱きかかえ状態異常回復のポーションをかけた。
 叫びは収まり恐怖にひきつった顔は穏やかな眠り、いや気絶をした。
(最悪な口火だ……)
 竜が目を覚ます。
 あからさまに不機嫌だ。
 その体躯を起き上がらせれば、ビルが建ったというしかあるまい。
 俺は、幾度もくくり続け、もう既に切断されるんじゃないかと思えるほど、腹を括った。
 彼女を入り口近くに寝かせて、盾を置く。
 盾にありったけの力を込めて今出せる最高の結界を貼った。
 これで、彼女はかなり安全に……いや気休めにはなったくらいだろう。
 竜がどれほどの強さを持っているのかは定かではないが、一瞬で壊れるほどじゃないことを祈るしかない。
 斧を持つ。
 なけなしの、先ほど見つけることのできた皮鎧の頼りなさに笑いながら、構える。

 竜が、ゆらいだ。

 瞬間。
 巨躯がこちらに向けて走ってくる。
 相打つように斧を振り――。



 何が起きたか、わからなかった。



 気が付けば全身の痛みを知覚し、いや激痛が思考を皮肉にもクリアにする。
 俺は、吹き飛ばされて、壁に叩きつけられて、死にかけている。
 呼吸がしづらい。
 ああ、腕が折れるってこんな痛みなのか。
 肺が血に埋まるってのはこういうことなのか。
 内臓がぐちゃぐちゃになる感覚は、こんな感じなのか。
 目が見えないってのは、こういうことなのか。
 片腕がないというのはこんな感じだったのか。
 他人事のような、しかし己に渦巻く命の危機に、思わず笑みがこぼれる。
 笑うたびに激痛が走る。
 その痛みも、どこか胡乱げで。
 本当は夢なんじゃないかと錯覚したくなる。
 現実だ。
 俺は、死ぬ。
 ごめん、あかり。
 君をここで死なせてしまう。
 本当の道筋すら歩かせてあげられない。
 すまない、本当のジオ。
 君の人生を無駄にさせてしまった。
 せめて平凡な人生に送って捧げたかった。

 俺は……。
 
 おれは……。

 オレ、ハ……。



「――そんな強さで緑竜に挑むのは愚かだと思ったけど、なるほど、女の子を守るために頑張ってたか」



 声が、聞こえた。
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