異界冒険譚シリーズ【ミラ編】-少女たちの冒険譚-

とーふ(代理カナタ)

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第5話『お前、子供は好きか?』(天霧瞬視点) 3/3

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「焼け落ちる塔の中で、おそらく少女の母親であろう人が持っていた物だ。もはや目もよく見えていなかったのだろうな。俺をヤマトの侍だと勘違いしていた。そしてあの子に渡してくれとな」

「先代様が……」

俺は受け取った御守りを握り締め、目を閉じる。

いつだって俺は力が足りず、失ってばかりだ。

「それと、すまなかったな」

「……何がだ」

「俺が侵入したから、お前たちはレッドドラゴンの対処が遅れたんだろう?」

「レッド……あぁ、火吹き竜か。いや、それはどうかな。別にお前のせいだとは思わん。どの道、俺に力が無かっただけの話だ。力さえあれば先代様が犠牲になる事も無かったし、巫女様が悲しむ事も無かった。ただそれだけだ」

「力が……ね」

「だから過去の事については何も思わん。だが……未来は別だ」

俺は神刀『島風』を握り、その鯉口を切りながら、やや離れた場所に座っているオーロを睨みつけた。

天霧家当主が伝えた技、神速抜刀術。

その鋭さで、国を狙う敵を消す為に。

「……言葉で、どこまで信用出来るか分からんが、俺はもう巫女様とやらに用はない」

「そうか」

「信じるのか」

「いや、信じてはいない。だが、お前が意味も無く子供を傷つける様には見えんし。こうして共にいる内は、何かあれば斬る。それだけだ」

「……そうか」

俺は腕を組み、木に寄りかかって目を閉じた。

意識は周囲の気配を常に探っているが、体は休ませなくてはいけない。

明日は歩き回る事になるのだろうから。

「……なぁ、シュン」

「なんだ」

「お前、子供は好きか?」

「……苦手だ」

巫女様も、ミラも、弱く護らねばならぬ存在だと言うのに、危険に向かって飛び込んでしまう。

傷つき泣きながらも、大丈夫だと虚勢を張る。

それを止めたいが、彼女たちの望みはその危険の先にあるのだ。

であるならば、俺が止められるはずもない。

「そうか。それは気が合うな」

俺はオーロの言葉に、僅か目を開きながらオーロが居るであろう場所を見た。

しかしオーロの表情は闇の中に居り、詳しくは分からない。

「俺もそろそろ眠るとしよう。では、また明日だな。シュン」

「あぁ、そうだな」

俺はオーロに向けていた目を閉じて、意識だけ張り詰めたまま眠りの世界に落ちた。

小さな休息の為に。
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