異界冒険譚シリーズ【ミラ編】-少女たちの冒険譚-

とーふ(代理カナタ)

文字の大きさ
59 / 66

第19話『さぁ、始めよう。闇の時代を!』 1/3

しおりを挟む
歴史上、最も有名な魔物は何だろうかと問われた時、様々な答えが出るだろう。

しかしヴェルクモント王国の歴史を調べてきた私にとって、この問いに対する答えは一つしかない。

そう『ドラゴン』である。

さて。大いなる災害を起こす事で知られるドラゴンであるが、意外な事にこのドラゴンが、人間の生活を脅かした回数はそう多くはない。

無論たった一回でも起これば甚大な被害を起こす為、規格外の脅威である危険度Sランクに位置しているが、それはそれとしてドラゴンの姿を見た事がある人間もそれほど多くないのだ。

かくいう私も知識としてのドラゴンは知っていても、実際に見た事は無い。

だが、そんな伝説上の魔物である所のドラゴンを、何故私はヴェルクモント王国で最も有名だと言ったかといえば……このヴェルクモント王国において、ドラゴンは二度人里を襲っているからである。

「一度目は、ドラゴンによって以前存在していたヴェルクモント王国の周辺国が二国ほど消滅し、多くの犠牲を払いながらも、ヘイムブル領の初代当主様がこれを撃退。討伐までは出来なかったものの、これ以降長きにわたりドラゴンは姿を消していました。そして二度目の襲来は聖女様がこれを撃退されるのですが、重要なのはこちらではありません。一度目の襲来についてです」

私は白い雪が積もったヘイムブル領を歩きながら、ドラゴンが最初に現れたという山へと向かって、歴史の話をしつつオーロさんやシュンさんと歩いていた。

「一度目の襲来の際、ヘイムブル領初代当主様は細長く湾曲した異国の剣を使い、魔力に覆われたドラゴンの厚い皮膚を容易く貫いて、中心にある核を傷つけたとされています。この特徴。どこかで聞いた物と一致しませんか?」

「……神刀か」

「はい。そうです。本来は魔力の壁によって届かないハズの攻撃を届かせ、更には細長く湾曲した異国の剣。これはどう考えても神刀であると私も考えます」

「しかしヤマトの侍がヴェルクモント王国までわざわざ来たって?」

「そこについては資料が無いので、なんとも言えないのですが……」

私はオーロさんの質問に困りながらシュンさんを見ると、シュンさんはやや考えた後、口を開いた。

「いや、あり得る話だ。それに……恐らくだが、そのヘイムブル領初代当主というのは、天霧家の初代かもしれん」

「えぇー!? そんな偶然が!?」

「まぁ、ただの勘だがな。ヤマトを出た者はそれなりに居る。しかし、神刀を持ち出し、なおかつ歴史に残るほどの強さを持った者はそう多くは居ないし。その初代当主はその後も、ヴェルクモント王国に留まっていたのではないか?」

「それは、はい。そうですね。当時、その方は怪我も酷く、祖国へ帰る事は出来ないからと、この土地に留まる選択をされた様で、それを哀れに思った王家の姫君が、英雄を支えたいとその方の元に嫁いだそうです。そして、王家より土地を頂き、ヘイムブル領としたと」

「なるほど。という事はそいつは間違いなく天霧家の当主だろうな。ここまで一致する者は他に居ない」

「お、おぉぉおおおお! す、凄い! 歴史が、一つの歴史が、謎が解き明かされています! まだ仮説ですが、ヤマトにもお邪魔して、この仮説を立証すれば……!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

アリエッタ幼女、スラムからの華麗なる転身

にゃんすき
ファンタジー
冒頭からいきなり主人公のアリエッタが大きな男に攫われて、前世の記憶を思い出し、逃げる所から物語が始まります。  姉妹で力を合わせて幸せを掴み取るストーリーになる、予定です。

老聖女の政略結婚

那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。 六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。 しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。 相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。 子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。 穏やかな余生か、嵐の老後か―― 四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~

シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。 主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。 追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。 さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。 疫病? これ飲めば治りますよ? これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから

渡里あずま
ファンタジー
安藤舞は、専業主婦である。ちなみに現在、三十二歳だ。 朝、夫と幼稚園児の子供を見送り、さて掃除と洗濯をしようとしたところで――気づけば、石造りの知らない部屋で座り込んでいた。そして映画で見たような古めかしいコスプレをした、外国人集団に囲まれていた。 「我々が召喚したかったのは、そちらの世界での『学者』や『医者』だ。それを『主婦』だと!? そんなごく潰しが、聖女になどなれるものか! 役立たずなどいらんっ」 「いや、理不尽!」 初対面の見た目だけ美青年に暴言を吐かれ、舞はそのまま無一文で追い出されてしまう。腹を立てながらも、舞は何としても元の世界に戻ることを決意する。 「主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから」 ※※※ 専業主婦の舞が、主婦力・大人力を駆使して元の世界に戻ろうとする話です(ざまぁあり) ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

合成師

あに
ファンタジー
里見瑠夏32歳は仕事をクビになって、やけ酒を飲んでいた。ビールが切れるとコンビニに買いに行く、帰り道でゴブリンを倒して覚醒に気付くとギルドで登録し、夢の探索者になる。自分の合成師というレアジョブは生産職だろうと初心者ダンジョンに向かう。 そのうち合成師の本領発揮し、うまいこと立ち回ったり、パーティーメンバーなどとともに成長していく物語だ。

処理中です...