異界冒険譚シリーズ【ミラ編】-少女たちの冒険譚-

とーふ(代理カナタ)

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第20話『……天斬り』(第三者視点) 2/5

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「ありが、とう。ございます。でんか。では、私の、いのちを、うばってください」

「っ! な、何を言っているんだ! ミラ!」

「あの、ドラゴン、は。私の力によって、生み出されたもの。今も、繋がっております。であれば、わたしの命をうばう事で、消し去る、ことができる」

「バカな!! そんなバカな話があるか!! 君を、私の手で殺めろだと……? 出来るはずが無いだろう!!」

「出来ますよ。殿下なら。あのドラゴンを止めねば民の命が失われます。国も、世界も。であれば、どうする事が正しい事か。殿下にもおわかり、でしょう?」

「……っ! 出来ぬ! 私には、出来ぬ!!」

「でんか」

「例え、それが為政者として間違えているとしても、愚かな人間だと罵られたとしても、それでも、私には……」

セオドラーがミラの訴えに首を振りながら叫んでいる時、セオドラーの言葉を遮る様に、雪が舞い上がった。

そして中から黒い鎧に包まれた男が、怒りの眼差しで飛び出してくる。

「どけ……俺がやる」

「オーロさん」

オーロは抵抗するセオドラーを投げ飛ばしミラを奪うと、そのままミラを雪の上に寝かせる。

「っ! や、止めろ! ミラは!」

「ちょっと痛いかもしれねぇが、我慢出来るか?」

「はい……お願いします」

オーロは懐から一本の小さなナイフを取り出すと、振りかぶる。

その動きは迷いが無く、フレヤもハリソンも騎士たちも止める事は出来ず、またフレヤ達に阻まれていた天霧宗謙やアダラードもまた目を見開きながら、叫ぶばかりであった。

そして、オーロは小さな子供の命を奪うのに十分な威力を秘めたナイフを、真っすぐにミラへ突き立てた。

「ミラ!!!!」

「……っ、あ、アレ? いたく、ない?」

セオドラーの叫びにミラは目をキュッと閉じて、痛みを耐える様に身を固くしていたが、想像していた痛みが来ない事に驚き、自分の体へ目を向ける。

「これは」

「話は雪の中で聞いていた。このペンダントが全ての原因なんだろう?」

オーロはニヤリと笑うと、ナイフが突き刺さり、どす黒い魔力の漏れるペンダントを握り締めた。

そして遥か上空で苦しみながら、ギロリと地面にいるオーロとミラを睨みつけるドラゴンを見て、笑う。
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