願いの物語シリーズ【願いを叶える話】

とーふ(代理カナタ)

文字の大きさ
1 / 10

第1話『あなたが諦めなくて、本当に良かった』

しおりを挟む
例えば生涯に受け取れる幸運の量が決まっていたとして、私は今この瞬間にその全ての幸運が訪れたのなら、これからの人生全てが不幸でも構わないと胸を張って言えるだろう。

神様か、悪魔か。もし私の願いを叶えてくれる存在が居るのならば、今すぐこの命を差し出したって良い。

裕太が助かるのなら、今すぐ地獄に落ちたって構わない。

だから、どうか。裕太を助けてください。と私はいるかも分からない超常の存在へと祈った。

ただ祈る事しか出来ない無力なこの身が憎いが、祈ることしか出来ないのなら、祈ろう。

そんな事をしたところで何も変わらないかもしれないけど、それでも、何か変わるかもしれないと、私はただひたすらに両手を合わせた。

しかし、現実には何も変わらず、私はただ一人孤独に、先生が裕太の無事を知らせてくれるのを待つ事しか出来ない。

「貴子!!」

「……っ、あなた」

「裕太は」

「分からない。まだ、何も」

「……そうか」

私の言葉に公人さんは、唇を噛み締めながら閉ざされた扉の向こうを睨みつけた。

見たことのない表情だ。

怒っているか。悲しんでいるのか。

いや、きっと私と同じ、色々な気持ちが混ざって、どうにも言葉に出来ない感情が渦巻いているのだろう。

公人さんは少しの間、そのまま扉を睨みつけていたが、少し冷静になったのか私の横に座り込んで、両手を組みながらそれに額を合わせた。

ただ奇跡を祈る様に。

あの子が、裕太が何事もなく無事に帰ってくる様にと、ただひたすらに祈っている様に見えた。

私も公人さんに寄りかかりながら、目を閉じて、何事もなく、朝の様に笑顔の眩しいあの子が帰ってくると信じて、祈った。



しかし、長い時間が経ち、私たちの前に現れたお医者さんの顔は、あまり良い物では無かった。

言葉にしなくても分かる。

どこか申し訳なさそうな表情をして、口にする言葉を選んでいる様に見えた。

無事ならば。何事もなく助かったのならば、そんな顔はしないだろう。

言葉を選ぶことだってしないはずだ。

しかし、それをするという事は、つまりはそういう事なのだろう。

どこか冷静な頭で私はそんな事を考えながら、それでも何かの間違いかもしれないとお医者さんの言葉を待った。

「……手術は成功しました。命に別状はありません」

「それじゃあ!」

「ただし、命こそ助かりましたが、裕太さんの意識は回復しない可能性があります」

「……どういう、意味ですか」

「眠ったまま起きない可能性があります。という話です」

公人さんが私と同時に息をのんだのが分かった。

なんだ。それは。どういう事だ?

意味が分からない。眠ったまま起きない? なんで。

「……んで、手術は成功したって言ったじゃないか!!」

私は怒りに飲まれたまま目の前に居る男に掴みかかろうとして、公人さんに体を掴まれてしまう。

いつもなら公人さんの方がずっと力持ちなのに、私はそんな公人さんの腕を振り切って、男に詰め寄ろうとしていた。

しかし、そんな私を行かせまいと公人さんは私を押さえつけようとする。

「貴子。落ち着け!」

「落ち着けるわけない!! 落ち着ける訳ないじゃない!! なんで裕太がこんな事になるの!? なんで裕太が起きないのよ!! ハッキリ言いなさいよ!!」

「私共も最善は尽くしました。しかし、こんな形になってしまった事を申し訳なく思います」

「そんなの良いから裕太を戻してよ!! 裕太を返してよ!! まだ十歳なのに! 何が駄目なの!? 教えてよ!!」

私はゆっくりと襲い掛かってきた絶望に、頭の中をめちゃくちゃにされ、両手で顔を覆いながら涙を流し、叫んだ。

もう限界だった。

これが悪い夢なら早く覚めてほしい。

いつものベッドで目を覚まして、こんな怖い夢があったんだと公人さんと話をして、裕太を起こして……。

今朝まであった日常を返してほしい。

どうして裕太がこんな目に遭わなくてはいけなかったの? 何が悪かったの? こんな目に遭わなければいけない様な悪いことをあの子がしたの?

教えて。誰か。私に教えてよ。

「妻が申し訳ございません」

「いえ。こちらこそ力及ばず、申し訳ございません。ただ、こんな時で申し訳ないのですが、今後の事をお話させていただきたく」

「分かりました。では……」

公人さんがお医者さんと話をはじめ、私はゆっくりと、立ち上がり、近くの椅子に座り込んだ。

頭が重い。吐き気がする。気持ちが悪い。

私は最悪な気分の中で、ただ目の前で話している公人さんとお医者さんの話を、遠いテレビの向こうの出来事の様にただ、眺めていた。

あぁ。これが悪い夢なら、よかったのに。

私は暗く重く沈んでいく底なし沼のような世界で、ただ静かにそう思うのだった。



裕太が事故に遭った日から一か月が経った。

しかし変わらず裕太は目覚めていない。

本当にただ眠っているだけの様に、ベッドで目を閉じて眠り続けていた。

あれから一瞬たりとも目を覚ますことは無かった。

私は毎日、面会可能時間になれば裕太の病室に来て、裕太に話しかけ、終わりの時間がくれば公人さんと帰宅する生活を送っていた。

そして面会している間はずっと裕太に話しかけているのだが、裕太に反応は無かった。

お医者さんから話を聞いたという公人さんの言葉では、もしかしたら目覚める事もあるかもしれない。というが、その可能性はかなり薄いらしい。

でも、それでも、可能性が少しでもあるなら、私は裕太に話しかけよう。

そう思うのだった。

「ねぇ。裕太。今日はね。お客さんが来てたのよ? なんとビックリ。あなたが助けた子よ」

「一つ下の女の子で、名前は絵里ちゃんって言うそうよ。とっても可愛い子だったからお母さん驚いちゃったわ」

「でも、裕太が守ってくれたお陰で、ちょっと手を擦りむいただけで、無事だったそうよ。良かったわね」

「裕太はきっとあの子のヒーローになれた。でもね。知ってる? 裕太。一番格好いいヒーローっていうのは、事件を解決した後に家族のところへ帰ってくるのよ」

「笑顔で帰ってきて、お母さんの作ったハンバーグを食べて、お父さんにとびっきりの冒険を話すものなのよ」

「だから。まだ裕太には、やることがあるの。このまま眠ったままじゃあ、お母さんも、お父さんも、裕太の事、よくやった。凄い子だって褒められないでしょう?」

「ねぇ。裕太。だから、目を開けて」

「今起きたら、裕太の大好きなハンバーグだって、スパゲッティだってカレーだって、お母さん全部、全部用意するんだから。毎日だって構わないわ」

「もういらないよー。って裕太が言うまで、好きな物をずっと食べていいのよ?」

「あ。そうだ。起きたら、遊園地に行きましょう。普通の土日じゃあお父さん疲れてるかもしれないけど。きっと一緒に行ってくれるわ」

「ね。楽しみでしょう? 裕太はどんな乗り物に乗りたい? ジェットコースターかな? 観覧車かな」

「お母さんは怖いのはちょっと苦手だから、お父さんと一緒に乗ってもらう事になっちゃうかもしれないけど、代わりに写真をいっぱい取ってあげるね」

「お父さんてば、あぁ見えてお母さんと同じで怖いのが苦手だから、裕太が手を握っててあげればきっと怖くないわ。でも面白い写真が取れちゃうかもね」

「遊園地の他には、どこへ行こうか。温泉とかも良いかもね。でも裕太には少し退屈かな」

「ね。裕太。どうかな?」

私は笑みを浮かべたまま裕太に語り掛けた。

しかし、裕太は変わらず眠り続けたままだ。何も、何も変わらない。

それがただ悲しくて、苦しくて、どうしようもなくて、私は胸の奥がかき回されている様な苦しさを感じながら、裕太の手を取った。

温かい。

まだいる。裕太はここに居る。でも、なら、なぜ起きてくれないのか。なんで裕太がこんな目に遭わなきゃいけないのか。

どうして世界はこんなにも苦しいのか。

私はのたうち回りたくなる様な苦しみを抑えながら、ただ裕太の手を両手で握り、額に当てながら涙を流した。

そして、いつかの時と同じ様に、祈る。

こんな行為に何の意味も無いかもしれないが、それでも奇跡があるのならばと。

裕太が目覚める様な奇跡が舞い降りればと、祈った。

『聞こえますか?』

ふと、暗闇の中で手を伸ばすような私の祈りが通じたのか。はたまた私の頭がいよいよおかしくなったのか。

私と裕太しかいない病室で誰かの声が聞こえた。

いや、聞こえたんじゃない。頭の中に直接投げ込まれたような感覚だ。

「誰!?」

『いえ。名乗る程の者では無いのですが、その、お困りかと思いまして』

困っているかと聞かれ、私は思わず笑ってしまいそうになった。

あぁ。困っている。困っているさ。これ以上の事は無いくらい、困っている。

『あぁ。やっぱりそうなんですね。なら良かった』

その少女の声が聞こえ、意味を理解した瞬間、私は一気に怒りが噴き出した。

裕太が目覚めないのが、よかっただと!? どこの誰か知らないが、なんて事を言うんだ。

「あなた!!」

『あなたが諦めなくて、本当に良かった』

「……え?」

私は少女の声が言っている言葉の意味が分からず、ただ聞き返した。

しかし相手は私の反応など知らぬとばかりに話を進めてゆく。

『えー。ではですね。ご協力いただきたいんですが、良いですか?』

「あなた、何なの?」

『いや、名乗るほどの者じゃないんですが、しいて言うなら、そうですね。奇跡を、届けに来ました』

「き、せき」

『では、今から私も願いますので、奇跡を願ってください。あなたの目の前にある困難が、消え去る様にと、願ってください』

何処からか聞こえてくる声の言っている意味は分からない。

ただ、この声の主がやらせたい事は分かった。

祈れと言っているのだ。奇跡を。裕太が目覚めるという奇跡を祈れと、そう言っている。

信じるか。信じないか。そんな問答など一切行わず、私はすぐに両手で裕太の手を優しく包み、祈った。

もしかしたら嘘かもしれない。でも、試してみたい。

もし、その代償が私の命だとしても、裕太が起きるのなら、それでいい。

どうか。裕太を目覚めさせてください。

元気に笑っていたあの頃の様に。私たちのところへ返してください。

どうか。どうか……!

『あぁ。聞こえましたよ。お母さん。奇跡は、叶う……!』

先ほどよりも遠くなっている様な声が私に届くが、そんな事はもはやどうでも良かった。

だって、私の手の中で裕太の手が微かに動いたから。

驚き、目を開いた先で、裕太の瞼が微かに動き、そして目を開こうとしているから。

「あ、あぁ……あぁ! 裕太! 裕太!! 誰か、誰か! 来て、裕太が!!」

私は必死にナースコールを押しながら、裕太の体に触れ、その名を呼ぶ。

何が何だか分からないのだろう。視線をさ迷わせている裕太に私は必死に声を掛けながら、駆け込んでくるナースさん達に裕太が目覚めた事を伝えた。

奇跡が起きたのだ。あの声の言う通りに。

私は、誰かも分からぬ声に、せめて感謝だけは伝えようと、周囲を見渡したが、もはや何の声も聞こえる事は無かった。

ただ奇跡だけを運び来た声の主に私は感謝を告げながら、今はただ、裕太が目覚めたという喜びの中で泣き、笑うのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

子持ち愛妻家の極悪上司にアタックしてもいいですか?天国の奥様には申し訳ないですが

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
胸がきゅんと、甘い音を立てる。 相手は、妻子持ちだというのに。 入社して配属一日目。 直属の上司で教育係だって紹介された人は、酷く人相の悪い人でした。 中高大と女子校育ちで男性慣れしてない私にとって、それだけでも恐怖なのに。 彼はちかよんなオーラバリバリで、仕事の質問すらする隙がない。 それでもどうにか仕事をこなしていたがとうとう、大きなミスを犯してしまう。 「俺が、悪いのか」 人のせいにするのかと叱責されるのかと思った。 けれど。 「俺の顔と、理由があって避け気味なせいだよな、すまん」 あやまってくれた彼に、胸がきゅんと甘い音を立てる。 相手は、妻子持ちなのに。 星谷桐子 22歳 システム開発会社営業事務 中高大女子校育ちで、ちょっぴり男性が苦手 自分の非はちゃんと認める子 頑張り屋さん × 京塚大介 32歳 システム開発会社営業事務 主任 ツンツンあたまで目つき悪い 態度もでかくて人に恐怖を与えがち 5歳の娘にデレデレな愛妻家 いまでも亡くなった妻を愛している 私は京塚主任を、好きになってもいいのかな……?

短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜

美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?

処理中です...