最強ショタ魔王の家出録〜ショタ化した元おっさん、偶然出会った勇者と共に世界平和を目指します〜

青王(あおきんぐ)

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4章 修行編

55話 マゾスティック・サディスティック

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 ギルドを後にした俺は、早速四人がいるであろう東側の海へと来ていた。
 そして俺がいる事で修行の邪魔になってはいけないので、【透明化】を発動させておいた。
 
 これでみんなにバレる事なく、修行を観察する事が出来る訳なのだが、肝心の彼らはというと――もう既にクラーケンと対峙していた。


「これがクラーケン!? とんでもない大きさね……」

「大丈夫よ、セリーヌちゃん! あなたは昨日教えた通りにサポートに徹して!」

「はい! サディ様!」

 ――セリーヌはクラーケンの大きさに臆しながらも、しっかりと修行をしているようだな。
 ただ、サディを様付けして呼んでいるのは何故だ?
 それだけ師匠として尊敬しているのだろうか。

 
「ひ、ひぃぃぃ!! お、オイラあんな大きなイカを相手になんか出来ないよぉ……」

「狼狽えるな馬鹿者!! クラーケンは大きな図体の割に、その多くの足による攻撃は凄まじく速いし重いぞ。気を抜くな!」

「は、はい! 師匠……!」

 ――ボンズのビビり症はまだ治ってはいないようだな。
 まぁそんなすぐに性格が変わったりする事もないだろうし、ゆっくり改善していってくれればいいか。
 マッゾとも良い師弟関係を築けているようだし、何も心配はいらないだろう。
 

「よし、その意気だ、我が弟子よ! そら行くぞ!」

「ふ、ふぁいっ!!」

 ボンズは怯えながらもしっかりと目を開き、マッゾに続いてクラーケンに向かって行った。
 俺はそんな彼の姿を見て感動し、涙がこぼれそうになっていた。

 ――おぉ、あのボンズがビビりながらも自らの意思で敵に突っ込んで行った……!?
 凄いぞボンズ……!
 ちゃんと成長しているじゃないか……!

「よぉーし! そろそろ来るぞ、我が弟子よ! ……今だ! 敵さんを【挑発】するんだ!!」

「はい……! 【挑発】!」

 ボンズはマッゾの指示通り、全員の先頭に立ちクラーケンの前で大盾を構えた。

 ――ボンズの奴【挑発】のスキルまで使える様になったのか……!
 何とも逞しく、頼もしい姿なんだ……!
 かっこいい……。かっこいいぞ、ボンズ!

 しかし俺のボンズを褒めたい気持ちとは裏腹に、マッゾは声を荒らげて口を開いた。

「馬鹿者がぁぁ!!! 大盾なんぞいらんと何度言えばわかる!?」

「す、すいません!! でも――」

 ――えぇ!?
 タンクに大盾は必須だろ!?
 マッゾの奴、何を言っているんだ……?

「でも、オイラさすがに怖いですよ……! せめて大盾は持たせてください!」

「ならん!! 大盾なんぞ邪魔なだけだ! そんな物を持っていたらせっかくのご褒美が台無しになるだろうが!! 今すぐその邪魔な大盾を捨てろ!」

 マッゾはとんでもない暴論を吐き捨てるとボンズへ盾を捨てるよう指示した。
 ボンズは震えて涙を流しながら縦に首を振ると、そっと大盾を地面に置いた。

 ――あぁ、可哀想だ……。
 ボンズ……ごめん、本当にごめん……!
 俺があんなドM変態ツルッパゲに修行をつけてもらえなんて言ったから……。
 俺のせいだ……。
 俺のせいで、臆病だけどあんなに良い奴だったボンズが敵からの攻撃を『ご褒美』だと宣うド変態になってしまった……。
 本当に……ごめん。


 そしてボンズは大盾を地面に置きクラーケンに向き直ると、両手を大きく広げ後ろの三人を守るように立ち塞がった。

「来い! クラーケン……! オイラが相手だっ!!」

「いいぞ、我が弟子よ! それでこそ、漢だ!!」

 マッゾが何を言っているのかはわからんが、ボンズはたった一日しか経っていないのに、本当に見違えたように逞しくなっていた。
 昨日は相当辛い修行だったのだろう。

 するとそんなボンズの元へクラーケンの足が凄まじい速度で伸びて来る。
 そしてその足は目にも止まらぬ速さでボンズの身体を何度も打ち付けていく。

「く……っ! うぐっ……!」

 ボンズは歯を食いしばり、クラーケンの猛攻を一人で受け耐え続けていた。

 ――あのボンズが……!
 臆病で、敵を目の前にして一目散に逃げて行っていたあのボンズが……!
 丸腰で強敵に立ち向かって、必死に攻撃を受け続けている……!
 あぁ、感動だ……。
 おじさん、涙が止まらねぇよ……。

「こらぁ! 我が弟子よ! せっかく頂いたご褒美に対して、何の言葉もないのか!?」

 俺がボンズの有志に感動していると、後ろからマッゾの檄が飛ぶ。
 そして俺の涙はピタリと止まった。

 ――は……?
 このハゲは何を言っているんだ?

 するとボンズはそのままの体勢でおもむろに口を開いた。

「……とても素晴らしいご褒美を……ありがとうございまァァァすっ!!」

「よぉし、そうだ!! こちらはご褒美を頂いているのだから感謝の念を忘れるな!」

「は、はい……!! ありがとうございまァァァす!! ありがとうございまァァァす!!」

 そして俺の頬に流れた涙は、たちまち逆流し全て涙腺へと戻った。

 ――何だこれは……?
 新種の宗教か何かか……?
 ボンズは俺のせいでドM教に入信してしまったのか……?

 でも敵を挑発して攻撃を自分に集中させるというタンクの役割を果たしてはいるし、結果オーライなのか……?
 いや、でもさすがにこれは俺の良心が痛む……。
 セリーヌ達は何をしている?
 早くボンズを回復してやってくれ……!

 
 そして俺はセリーヌとサディに目を向けた。
 すると彼女達はそんなボンズを見て何やら叫んでいた。

「まだよ、ボンズ! ハァハァ……まだいけるわ!! ハァハァ……もっと傷付きなさい!」

「いいわよセリーヌちゃん! その調子でもっと彼を鼓舞してあげるのよ!!」

 ――サディ……お前やっぱりそういう性質だったのか……。
 セリーヌも心做しかいつもより興奮気味でいきいきとしているな。
 こっちもこっちで俺の人選ミスか……。
 セリーヌのドSっぷりに拍車をかける結果となってしまった。

「セリーヌさんっ……! 応援のお言葉、感謝しまぁぁぁす!! クラーケンさん! もっと、もっと叩いて下さァァァい!!」

「ぐっ……うう。 ずるい……ずるいぞ、ボンズ……! 俺もそのご褒美欲しいぃーー!!」

 必至にクラーケンの攻撃を受け続けるボンズを羨ましく思ったのか、マッゾは我慢出来ずに丸腰で彼の横に並び立った。
 そしてクラーケンの攻撃を受け歓喜の声を上げた。

「ちっ……。始まったよ、マッゾさんのご褒美タイムが……。本当に気色悪いわね。セリーヌちゃん、ボンズに回復と強化魔法を!」

「はい! サディ様! ボンズ! 私のサポートを有難く受け取りなさい! 【サンダーヒーリング】!!」

 マッゾに冷たい視線を送るサディの指示に従い、セリーヌは【サンダーヒーリング】を唱えた。
 するとボンズの周りを緑色の膜が覆い、彼の傷を癒し始めた。
 しかし中をよく見ると、稲妻の様な黄色い線のような光が無数に渦巻いていた。
 そしてその無数の光はボンズの身体を痺れさせ始める。


「ヒギィ……! ふぎゃぁ!!」

 それを受けるボンズはあられもない声を上げた。

 ――何なんだあれは……?
 セリーヌの奴、【サンダーヒーリング】って言ってたよな?
 何故味方に攻撃しているんだ?
 でも傷は治ってたし、攻撃って訳でもないのか。
 じゃあ、あの雷属性には一体なんの効果が……?

 すると俺の心の声に呼応するかのように、サディが口を開いた。

「セリーヌちゃん、さすがね。たった一日でアレをマスターするなんて。おかげでほら。ボンズの筋肉が電気の効果で引き締まって固くなっているのがわかるでしょ?」

「確かに……! いつもよりボンズが大きく見えます!」

 ――なるほど、あの雷属性は電気マッサージ的な意味合いがあるのか。
 それによって筋肉を刺激して結果的にバフをかける事に繋がると……。
 
 ……にしてもそれをする必要は果たして本当にあるのか?
 それとも、どうしてもSっ気を出さないと気が済まないのだろうか。
 いくら考えても答えが出ない。
 これは結局、そういう事なのだろう。


 その後、バフをかけられ肉体強化されたボンズと、何故か鞭を取り出したサディに尻を叩かれたマッゾによりクラーケンを倒す事こそ叶わなかったが、海の底に退ける事には成功した。

 その結果にマッゾとサディはクエスト未達成になった事に表情を曇らせ、ボンズとセリーヌは修行の成果が出た事に喜んだ。

 セリーヌはサディのせいでドSっぷりに磨きがかかり、とんでもなく恐ろしい【サンダーヒーリング】という付与魔法を習得した。
 そしてボンズはマッゾのおかげで【挑発】というタンクには必須のスキルを習得したが、副産物として特殊な癖に目覚めかけていた。

 俺は色々と後悔していた。
 そしてその場をそっと後にした。
 ボンズとセリーヌの成長が、パーティーにとって良い効果をもたらす事を願って――――


 
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