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章1
レッツゴー異世界 ハローヒーロー(4)
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それから、勝宏にルールの詳細を聞いた。
たとえば、普通に人間を殺すだけではポイントにはならないこと。
各転生者はレベル15になると、ステータス画面に「勝利条件」というのが表示されるようになる。
勝利条件はプレイヤーによってさまざまだ。
暗殺――つまり必ず誰にも気付かれず殺す必要があるというのが勝利条件だったり、剣で倒すのが勝利条件だったりするらしいが、酷いと「歌いながら戦う必要がある」や、「戦闘において豆腐の角を敵の頭にぶつけなければならない」なんて条件もあるそうだ。
まず戦闘で豆腐ぶつけないといけない人って、まさか戦う以前に豆腐作りから始めないといけないのか。
その勝利条件を満たした上で相手を倒すことでポイント変換が開始するため、勝利条件「剣で倒す」の転生者が他者を魔法で倒しても無意味らしい。
「ちなみに、俺の勝利条件は”カードバトルで勝利する”こと」
「カードバトル……え、それってつまり」
「うん、無理じゃん? この世界カードゲームないし、戦闘中にカードゲームに付き合ってくれとか言えるわけないし。神様が言うには基本的に持ってるスキルと関連する条件が付くって話だったんだけど、手違いかなあ」
関連する条件と言われてふと、豆腐が条件の人は豆腐関連スキルなんだろうか、それでどうやって戦うんだろう、とまたいらんことが脳裏を過ぎった。
「ま、正当防衛の範囲で戦ったつもりが相手消滅させちゃう、ってなるより、条件の満たしようがない方がマシだけどさ」
ヒーローと、カード。というと浮かんでくるのはカードバトルに命をかけている番組のアニメキャラだが、あれはヒーローに該当するのだろうか。
透はさほどそちらの方面に明るいわけではない。しかし、女の子向けのアニメで一作品だけ思い至った。魔物をカードに封印したり戦闘でそのカードを使ったりする魔法少女漫画が原作のものだ。
「……ねえ、勝宏の好きな漫画や特撮のキャラクターに、カードで戦うヒーローとかいないの?」
「ほへ? うん、いるっちゃいるけど……」
「それって、そういうキャラになって戦えば、その戦闘は”カードバトル”に含まれるんじゃないかな」
「あ……ありそう」
となると、あれとあれは駄目か、覚えておかないと。勝宏がぶつぶつ呟いて、空中をパントマイムし始めた。
今、ステータス画面でも弄ってるのかな。
「分かった。じゃあ、カードで戦う系のヒーローは選ばないことにする」
「え?」
「だって条件を満たして勝ったら、負けた転生者の魂はポイント変換されちゃうだろ。できれば誰にも死んでほしくないし」
別に縛りプレイをさせたくて言ったわけではなかったのだけれど。むしろ、そういうことを気にして戦って万一にでも他の転生者たちに彼が敗れてしまうことの方が不安だ。
心配しなくとも、ドラゴンを相手取っていた時点で勝宏は一般人の自分よりずっと強いと思うけど。
「そっか……。購入できるスキルって、どういうのがあるの?」
「ああ、そっか……メニューが開けないってことは、透は勝利条件もわかんないし、スキルのポイント購入もできないのか」
「……あ、待ってあのね、俺」
「開示設定にできるよ。ステータス画面見る?」
俺、実は転生者じゃないんです。今なら言える、と思った言葉はまた遮られてしまった。
自分から質問したばかりだったから、仕方ないといえば仕方ない。
「う、うん……でも、いいのかな」
「秘匿したいなら自分のスキルのことだって黙ってるって。透は弱点見つけたとたん襲い掛かってくるようなやつじゃないよ」
出会って間もないというのに信頼されている。信頼、恐ろしい言葉だ。
信頼を得ることが出来れば好意的に接してもらえるが、信頼にじゅうぶんに応えられる人間でなければ、好感度は一瞬にしてマイナスに逆転してしまうトラップでもある。
勝宏が引き続き、空中のステータス画面らしき位置を手で触る。ややあって、SF映画などでよく見かけるホログラムのように謎原理でステータス画面が浮かび上がってきた。
「わ、見えた」
「ゲーム感すごいでしょ。レベルにステータスにスキル欄、装備品名にアイテムボックスタブ」
「アイテムボックスとかあるんだね」
「転生者は皆持ってるよ。透にも用意されてるんだろうけど、ステータス画面開けないんじゃ使えないよな」
転生者ではないので持っていないし用意してくれそうな神様も自分にはついていないが、それよりもステータス内容だ。
<ステータス>
マサヒロ(18)
Lv:28
HP:6205
MP:665
攻:402
防:561
速:1391
スーパースキル:<英雄>思い描いた英雄になれる。ただし時間制限があり、使用可能時間はMP値依存。
スキル:HP補正/速度補正/成長率補正
「すごい。転生してから、一年も経ってないんだよね? レベル28……」
「ギルドとかで残りものの依頼を片っ端から受けると、難度高めのとこ潜ったりするからだな」
「変身したら、ステータスはどうなるの?」
「変身するキャラによって違うけど、試しにさっきのに変身してみせようか」
<英雄>スキルがヒーローになれるスキルなのだろう。スキル説明にはMPで制限って書いてあったけど、今使って大丈夫なのか。
スマホの写真を見せる程度の気安さで、勝宏が先ほどドラゴンと戦った時の特撮ヒーローに変身した。
なんだろう、この宝石モチーフのデザイン、見覚えはあるんだけど。5、6年くらい前に。
<ステータス>
マサヒロ(18)
Lv:28
HP:6205
MP:660
攻:5402(402+5000)
防:4561(561+4000)
速:4391(1391+3000)
スーパースキル:<英雄>思い描いた英雄になれる。ただし時間制限があり、使用可能時間はMP値依存。
スキル:HP補正/速度補正/成長率補正
MPが若干減っている。そして見せてもらっている間にも、じわじわとMPが1ずつ減少しているようだ。
なるほど、これでMPが尽きたら変身強制解除となるわけか。
プラスステータスの数値がすごい。攻撃力なんかは元の約13倍になっている。
普通にレベルを上げた冒険者がLv28で攻撃力数百となるのが一般的なら、このスキルは結構なチートだ。
これひとつあれば、MPにさえ気を配れば確かに強敵であっても転生者を追い払うくらいはできそうである。
リアル異世界チート物語に感嘆していると、変身を解除した勝宏がステータス画面を閉じて話を切り出した。
「透、俺と一緒に来ない?」
「え」
たとえば、普通に人間を殺すだけではポイントにはならないこと。
各転生者はレベル15になると、ステータス画面に「勝利条件」というのが表示されるようになる。
勝利条件はプレイヤーによってさまざまだ。
暗殺――つまり必ず誰にも気付かれず殺す必要があるというのが勝利条件だったり、剣で倒すのが勝利条件だったりするらしいが、酷いと「歌いながら戦う必要がある」や、「戦闘において豆腐の角を敵の頭にぶつけなければならない」なんて条件もあるそうだ。
まず戦闘で豆腐ぶつけないといけない人って、まさか戦う以前に豆腐作りから始めないといけないのか。
その勝利条件を満たした上で相手を倒すことでポイント変換が開始するため、勝利条件「剣で倒す」の転生者が他者を魔法で倒しても無意味らしい。
「ちなみに、俺の勝利条件は”カードバトルで勝利する”こと」
「カードバトル……え、それってつまり」
「うん、無理じゃん? この世界カードゲームないし、戦闘中にカードゲームに付き合ってくれとか言えるわけないし。神様が言うには基本的に持ってるスキルと関連する条件が付くって話だったんだけど、手違いかなあ」
関連する条件と言われてふと、豆腐が条件の人は豆腐関連スキルなんだろうか、それでどうやって戦うんだろう、とまたいらんことが脳裏を過ぎった。
「ま、正当防衛の範囲で戦ったつもりが相手消滅させちゃう、ってなるより、条件の満たしようがない方がマシだけどさ」
ヒーローと、カード。というと浮かんでくるのはカードバトルに命をかけている番組のアニメキャラだが、あれはヒーローに該当するのだろうか。
透はさほどそちらの方面に明るいわけではない。しかし、女の子向けのアニメで一作品だけ思い至った。魔物をカードに封印したり戦闘でそのカードを使ったりする魔法少女漫画が原作のものだ。
「……ねえ、勝宏の好きな漫画や特撮のキャラクターに、カードで戦うヒーローとかいないの?」
「ほへ? うん、いるっちゃいるけど……」
「それって、そういうキャラになって戦えば、その戦闘は”カードバトル”に含まれるんじゃないかな」
「あ……ありそう」
となると、あれとあれは駄目か、覚えておかないと。勝宏がぶつぶつ呟いて、空中をパントマイムし始めた。
今、ステータス画面でも弄ってるのかな。
「分かった。じゃあ、カードで戦う系のヒーローは選ばないことにする」
「え?」
「だって条件を満たして勝ったら、負けた転生者の魂はポイント変換されちゃうだろ。できれば誰にも死んでほしくないし」
別に縛りプレイをさせたくて言ったわけではなかったのだけれど。むしろ、そういうことを気にして戦って万一にでも他の転生者たちに彼が敗れてしまうことの方が不安だ。
心配しなくとも、ドラゴンを相手取っていた時点で勝宏は一般人の自分よりずっと強いと思うけど。
「そっか……。購入できるスキルって、どういうのがあるの?」
「ああ、そっか……メニューが開けないってことは、透は勝利条件もわかんないし、スキルのポイント購入もできないのか」
「……あ、待ってあのね、俺」
「開示設定にできるよ。ステータス画面見る?」
俺、実は転生者じゃないんです。今なら言える、と思った言葉はまた遮られてしまった。
自分から質問したばかりだったから、仕方ないといえば仕方ない。
「う、うん……でも、いいのかな」
「秘匿したいなら自分のスキルのことだって黙ってるって。透は弱点見つけたとたん襲い掛かってくるようなやつじゃないよ」
出会って間もないというのに信頼されている。信頼、恐ろしい言葉だ。
信頼を得ることが出来れば好意的に接してもらえるが、信頼にじゅうぶんに応えられる人間でなければ、好感度は一瞬にしてマイナスに逆転してしまうトラップでもある。
勝宏が引き続き、空中のステータス画面らしき位置を手で触る。ややあって、SF映画などでよく見かけるホログラムのように謎原理でステータス画面が浮かび上がってきた。
「わ、見えた」
「ゲーム感すごいでしょ。レベルにステータスにスキル欄、装備品名にアイテムボックスタブ」
「アイテムボックスとかあるんだね」
「転生者は皆持ってるよ。透にも用意されてるんだろうけど、ステータス画面開けないんじゃ使えないよな」
転生者ではないので持っていないし用意してくれそうな神様も自分にはついていないが、それよりもステータス内容だ。
<ステータス>
マサヒロ(18)
Lv:28
HP:6205
MP:665
攻:402
防:561
速:1391
スーパースキル:<英雄>思い描いた英雄になれる。ただし時間制限があり、使用可能時間はMP値依存。
スキル:HP補正/速度補正/成長率補正
「すごい。転生してから、一年も経ってないんだよね? レベル28……」
「ギルドとかで残りものの依頼を片っ端から受けると、難度高めのとこ潜ったりするからだな」
「変身したら、ステータスはどうなるの?」
「変身するキャラによって違うけど、試しにさっきのに変身してみせようか」
<英雄>スキルがヒーローになれるスキルなのだろう。スキル説明にはMPで制限って書いてあったけど、今使って大丈夫なのか。
スマホの写真を見せる程度の気安さで、勝宏が先ほどドラゴンと戦った時の特撮ヒーローに変身した。
なんだろう、この宝石モチーフのデザイン、見覚えはあるんだけど。5、6年くらい前に。
<ステータス>
マサヒロ(18)
Lv:28
HP:6205
MP:660
攻:5402(402+5000)
防:4561(561+4000)
速:4391(1391+3000)
スーパースキル:<英雄>思い描いた英雄になれる。ただし時間制限があり、使用可能時間はMP値依存。
スキル:HP補正/速度補正/成長率補正
MPが若干減っている。そして見せてもらっている間にも、じわじわとMPが1ずつ減少しているようだ。
なるほど、これでMPが尽きたら変身強制解除となるわけか。
プラスステータスの数値がすごい。攻撃力なんかは元の約13倍になっている。
普通にレベルを上げた冒険者がLv28で攻撃力数百となるのが一般的なら、このスキルは結構なチートだ。
これひとつあれば、MPにさえ気を配れば確かに強敵であっても転生者を追い払うくらいはできそうである。
リアル異世界チート物語に感嘆していると、変身を解除した勝宏がステータス画面を閉じて話を切り出した。
「透、俺と一緒に来ない?」
「え」
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