ショートショート【朗読台本用】

神山叶花(さゆか)

文字の大きさ
3 / 5
「間違えた告白」(5分程度、ギャグ、女性目線)

間違えた告白

しおりを挟む
バレンタインの朝、私は決めた。
「今年こそ、告白する!」
相手は、会社の隣の席の高橋さん。
いつもお菓子を分けてくれるし、八重歯が見える笑顔が、もう反則レベルに可愛い。

でも私は、恋愛に関しては超初心者。
チョコを作るのも、告白するのも初めてだ。



昨夜、キッチンで3時間かけて作ったチョコは、まるでCMみたいに可愛くラッピングされて…いるはずだった。
…けど、今朝、ふと見たらリボンがほどけてた。
慌てて結び直したら、なんか…不格好に。

まぁいい。気持ちが大事だ。
そう自分に言い聞かせ、会社に向かった。



午前中、心臓はずっとドラムみたいに鳴ってた。
「いつ渡そう…昼休み?それとも帰り?」
隣で高橋さんがパソコンを打つ音が、やけに近く聞こえる。
たまに視線が合うと、私は慌ててモニターに目を戻した。

そして昼休み、ついに決行。


「…あの、高橋さん」
「ん?」
「これ…作ったんです」
震える手で紙袋を差し出すと、彼は目を丸くして笑った。
「ありがとう! …えっと、佐藤さんだよね?」

…佐藤?
私、斉藤なんですけど。



頭の中が真っ白になった。
え、私、今、名前間違えられた?
もう帰って布団にくるまりたい。

けど、高橋さんは気にする様子もなく、紙袋を開けて言った。
「わぁ、美味しそう! あ、そうだ。今夜、これ一緒に食べない?」

…え?一緒に?なんで?どうして?

「えっと…なんで、ですか?」
「いや…ほんとは俺から誘うつもりだったんだ。でも緊張して…名前、間違えた」
耳まで真っ赤になって、視線を落とす高橋さん。

…なんだそれ。
ずるいじゃん。



夜、二人でカフェに入った。
私は持ってきたチョコをテーブルに置く。
「じゃあ…一口目はどうぞ」
高橋さんは、一口食べて目を輝かせた。
「これ…めちゃくちゃ美味しい」
その笑顔に、私の胸もとろけた。

帰り道、ふと彼が言った。
「来年も、また…作ってくれる?」

私は少し笑って答えた。
「名前を間違えなければ、ね」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

妻の遺品を整理していたら

家紋武範
恋愛
妻の遺品整理。 片づけていくとそこには彼女の名前が記入済みの離婚届があった。

坊主女子:学園青春短編集【短編集】

S.H.L
青春
坊主女子の学園もの青春ストーリーを集めた短編集です。

身体の繋がりしかない関係

詩織
恋愛
会社の飲み会の帰り、たまたま同じ帰りが方向だった3つ年下の後輩。 その後勢いで身体の関係になった。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

刈り上げの春

S.H.L
青春
カットモデルに誘われた高校入学直前の15歳の雪絵の物語

処理中です...