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橋本千尋
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中学の同窓会が昼からあるので久しぶりにあの頃を思い出していた。
中学時代、私には小川一華という親友がいた。少し変わっていてクラスに馴染めずにいじめにあっていた。
私は一華のことが気になって声をかけた。そこから私たちの交際か始まった……。
でも一華は私たちが3年生に上がる前……春休みに引っ越してしまった。
私にも何も告げずにいなくなってしまった。
理由はお父さんが失踪した後にお母さんが亡くなったと聞いていた。
母方の実家で暮らすということ以外、場所も連絡先も私を含めたクラスメイトの誰も知らなかった。それ以来、一華とは音信不通になってしまった。
どこにいったのか誰も知らない……。
中学以来、交流している友達もいるが、その後も誰一人として一華の行方を知らなかった……。
やはり、いじめられていたという事実は思い出したくもない過去なのかも。
私たちと一緒にいたということも忘れたいのかも。
私は一華と連絡が取れなくなったことをそう結論付けていた。
私の前から一華は消えてしまった。
あれから13年。私は結婚して、姓も矢島から橋本になった。
中学時代に打ち込んでいたバスケも高校に入ってからはやらなかった。
新たな友人もできたり、活動範囲も変わったり、私を取り巻く環境はどんどん変わっていった。
高校から大学に進学した私は公務員になり、そして異業種交流会で知り合った証券会社に勤務する橋本明と結婚して今に至る。
唯一変わらないのは趣味の家庭菜園だ。
今も家の庭でトマトを育てている。
これだけは小学校時代から変わらない。
結婚して家庭に入ったのも、公務員を続けていては家庭菜園ができないからだ。
昔は一華と二人で実家の庭にあるトマトに水をやったりしたこともあった。
水を止めて、水滴を落とす真っ赤なトマトを一つ一つ手に取り観察する。
これはダメ……この子はいい感じで育っている。
この子も……これも良いかも。
こっちのはダメ……これも。
順調に育っていくトマトを見ていると心が安らぐ。
全部同じように見えてもこの子たちはそれぞれ違うのだ。
欲しがる栄養も、水の量もそれぞれ違う。
それらを観察しながらノートに記録して少しの変化も見落とさないようにする。
それだけやっても残念な結果になってしまう時もある。
そういう時、私は鋏で不出来なトマトを切り落とす。
それまでどんなに心を砕いて育てたものでも、そのときには何も感じない。
もはや異物となったものをゴミ箱に放り込むと、日課の観察記録をリビングでつけはじめた。
分厚いファイルから記録するトマトのページを開く。
このトマトはご近所の石坂さん……こっちのトマトは2丁目の坂下さん……どれも順調に育っている。
他にもいろいろ名前を付けている。
人の名前を付けるとなんとなく愛着が増すものだけど、こんなこと他人には言えない。
私の内に秘めた楽しみだ。
新しい気付きもあれば書き込む量は日毎に増えていく。
「あっ……。そろそろ出かける準備しなくちゃ」
いけない、いけない。夢中になりすぎて時間がすぎるのを忘れていた。
同窓会に行く準備をしなくては。
明さんにこれから同窓会に行くことをラインで送る。
日曜日にもかかわらず明さんは会社に行っている。
夫が仕事に励むことを殊更に貶すような人もいる。
しかし私はそう思わない。
こうして明さんが働いてくれるから私は今の生活を維持できる。
時間があれば家事も手伝ってくれる。
私も明さんが気持ちよく仕事ができるように思いつくことはなんでもする。
人間関係…… 結婚生活は相手を尊重しなくては成り立たない。
私はそれを家庭菜園から教わった。
支度を終えた私は家を出ると、クラスメイトに今から向かうことを報せた。
中学時代、私には小川一華という親友がいた。少し変わっていてクラスに馴染めずにいじめにあっていた。
私は一華のことが気になって声をかけた。そこから私たちの交際か始まった……。
でも一華は私たちが3年生に上がる前……春休みに引っ越してしまった。
私にも何も告げずにいなくなってしまった。
理由はお父さんが失踪した後にお母さんが亡くなったと聞いていた。
母方の実家で暮らすということ以外、場所も連絡先も私を含めたクラスメイトの誰も知らなかった。それ以来、一華とは音信不通になってしまった。
どこにいったのか誰も知らない……。
中学以来、交流している友達もいるが、その後も誰一人として一華の行方を知らなかった……。
やはり、いじめられていたという事実は思い出したくもない過去なのかも。
私たちと一緒にいたということも忘れたいのかも。
私は一華と連絡が取れなくなったことをそう結論付けていた。
私の前から一華は消えてしまった。
あれから13年。私は結婚して、姓も矢島から橋本になった。
中学時代に打ち込んでいたバスケも高校に入ってからはやらなかった。
新たな友人もできたり、活動範囲も変わったり、私を取り巻く環境はどんどん変わっていった。
高校から大学に進学した私は公務員になり、そして異業種交流会で知り合った証券会社に勤務する橋本明と結婚して今に至る。
唯一変わらないのは趣味の家庭菜園だ。
今も家の庭でトマトを育てている。
これだけは小学校時代から変わらない。
結婚して家庭に入ったのも、公務員を続けていては家庭菜園ができないからだ。
昔は一華と二人で実家の庭にあるトマトに水をやったりしたこともあった。
水を止めて、水滴を落とす真っ赤なトマトを一つ一つ手に取り観察する。
これはダメ……この子はいい感じで育っている。
この子も……これも良いかも。
こっちのはダメ……これも。
順調に育っていくトマトを見ていると心が安らぐ。
全部同じように見えてもこの子たちはそれぞれ違うのだ。
欲しがる栄養も、水の量もそれぞれ違う。
それらを観察しながらノートに記録して少しの変化も見落とさないようにする。
それだけやっても残念な結果になってしまう時もある。
そういう時、私は鋏で不出来なトマトを切り落とす。
それまでどんなに心を砕いて育てたものでも、そのときには何も感じない。
もはや異物となったものをゴミ箱に放り込むと、日課の観察記録をリビングでつけはじめた。
分厚いファイルから記録するトマトのページを開く。
このトマトはご近所の石坂さん……こっちのトマトは2丁目の坂下さん……どれも順調に育っている。
他にもいろいろ名前を付けている。
人の名前を付けるとなんとなく愛着が増すものだけど、こんなこと他人には言えない。
私の内に秘めた楽しみだ。
新しい気付きもあれば書き込む量は日毎に増えていく。
「あっ……。そろそろ出かける準備しなくちゃ」
いけない、いけない。夢中になりすぎて時間がすぎるのを忘れていた。
同窓会に行く準備をしなくては。
明さんにこれから同窓会に行くことをラインで送る。
日曜日にもかかわらず明さんは会社に行っている。
夫が仕事に励むことを殊更に貶すような人もいる。
しかし私はそう思わない。
こうして明さんが働いてくれるから私は今の生活を維持できる。
時間があれば家事も手伝ってくれる。
私も明さんが気持ちよく仕事ができるように思いつくことはなんでもする。
人間関係…… 結婚生活は相手を尊重しなくては成り立たない。
私はそれを家庭菜園から教わった。
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