魔力が多すぎても足りなくてもエッチしたくなる世界での、とある夫婦(どちらも男性)の話。

名もなき萌えの探求者

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本編

夫婦のはじまり

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俺は性欲が強い。
常にえっちなことを妄想し、日々1人で前も後ろもいじっているくらいに、強い。(でも諸事情で他者とはしたことない)
俺が特に強いというのはあるけれど、基本的にはこれは種族的なものだ。
魔力が多ければ多いほど性欲が強いのは常識だけど、俺たち兎人は、獣人と呼ばれる種族の中でも魔力量がとても多いのだ。いや、魔力量というか、正確に言うと魔力を貯める器がでかいのと、俺たち兎人は特殊な体質で他者の魔力を吸い取りその身に溜められる。

と、ここまでが大前提。

で、この街で屈指の性欲の強さを持つ俺、マルスは何故かお貴族様の屋敷へ連れてこられている、のが今。
庶民の俺には、なんか高そうな調度品があちこちに置いてあるのがどうにも落ち着かない。

「貴方は、非常に魔力の器が大きい、というのは事実ですか?」

狼人の、執事の格好(だと思う知らんけど)をした男の鋭い目が俺を見つめる。
なんだか品定めされてるみたいだ。

「そっすね。常にすけべなこと考えてるくらいにはデカい方かと」
「承知しました。道中、まともな説明もできず失礼いたしました。単刀直入に申し上げますと、我が屋敷の主人の、配偶者となっていただきたく貴方をお連れしたのです」

ほとんど強制的に連れてこられただけでも何でじゃ、と思っていたのに、配偶者になれ?ってどゆことなの。

そのあと、執事さんの説明をまとめるとこんな感じだった。

まず、この屋敷の主人さんは、魔力量が多すぎて、たびたび小さな暴走を起こすこと。
そのため、不定期に魔力を外に出さないと命に関わることもあること。
だが、主人さんは日常的に使う魔法についてまったく才能がなく、戦時中でもなく周辺の森には穏やかな魔獣しか生息していないいま、戦闘系の魔法を使う機会もほとんどないこと。今は特殊な道具を使って放出しているものの、それだけでは間に合ってない現状があること。
他者の魔力を吸い取れる兎人なら、この主人の魔力を吸い取って、暴走を抑えられるのではないか、ということ。
主人さんの魔力量を考えると、生半可な器では器の方が耐えられない可能性があり、色々あって、俺に白羽の矢が立った、ということ。

「それ、俺も無理だった場合死ぬんじゃないですか?」
「可能性はありますね」
「まじかよ」

なんにしても、そう言う経緯で、あれよあれよと言う間に俺は主人さん、…トール様と言うらしいの寝室に放り込まれたのだった。




「あいつらは本当に…」

熱い吐息を堪えながら、ベッドの上でトール様が唸る。
放り込まれた後、早口で執事がこの状況と俺のことを説明し、あとはごゆっくり、と扉を閉められた。
流石に鍵を閉めたりはしなかったみたいだが。
そして、トール様のつぶやきに戻る。

「マルスと言ったか。すまない、私の屋敷のものが勝手なことを…」

トール様。
とんでもなく良い声。
低くて甘い声に、おそらく魔力の暴走を抑えているのだろう、熱い響きが混ざって、とてつもなく色っぽい。

「あ、や、いえ、あの」

声だけで、勃ちそう。なんて。

「俺、配偶者とか言われたんですが、トール様男性ですよね。お世継ぎとかは大丈夫なんですか」

俺の言葉に、トール様が目を数度パチパチと瞬いた。
まつ毛長っ。
というか、声もだけど、メチャクチャ整った顔してるなこの人。

「…とりあえず、貴族の決まりでは魔力過多の人間は子を成すことは許されない。だから同性の配偶者をあてがうことを決められている」
「え、なにそれ、貴族様って大変なんですね」
「まあ、決まりは、多いな」

ちり、とトール様の魔力が俺の頬を撫でた。
魔力が魔力だけで漏れ出すとか、普通はありえない。
本当にこの人とんでもない魔力量なんだな。
そして、その漏れ出ている魔力を、うっかり取り込んでしまった俺の体も、ちょっとやばい方向に進んでしまった。

「、っぁ」
「マルス?」
「すみません」

俺は、性欲が強い。
正確に言うと、器がデカすぎて俺自身が生成できる魔力に合っていない。常に魔力の飢餓状態と言い換えても良い。
俺みたいなのを魔力欠乏症個体という。
他者の魔力を取り込むことのできる兎人には、たまにそう言う個体が生まれるため、俺はずっと“そういう魔力欠乏症個体用に作られた魔力を補充できるすけべなおもちゃ“でどうにかしてきた。
俺のような個体は、直接セックスしたら魔力を吸い尽くして相手を殺してしまう可能性があるため、基本、一生童貞で処女だ。

で、いま。
昨日からここに連れてこられて魔力の補充をできてない状態で、こんな極上の魔力に触れたのだから、もうたまらなかった。

「マルス、お前まさか、魔力欠乏症個体か」
「あ、はは。よくご存知で…」

トール様の魔力が俺の肌を撫でるたび、たまらない快感が突き抜けた。
魔力が多すぎても、魔力が足りなさすぎても、体はすけべなことを求める。
そして兎人は魔力を取り込むと快感によがる。俺は経験ないけど、魔力を吸い取られてもキモチイイらしい。
変な仕組みだよな、と、身体の熱さを逃すために思考をずらしてみたものの、あまり効果はない。

「魔力過多に魔力欠乏症をぶつけるなんて、聞いたことないぞ…」
「まあ、どっちもそこそこ、レアです、し」

うっかり喘いでしまわないように、ギリッと奥歯を噛んだところで、トール様が俺に手を伸ばして、そのままベッドの上に押し倒してきた。

「え、ちょ」
「魔力欠乏症は、魔力の充填をしないと、ずっと発情状態なのだろう?」
「まあ、そうです、ね」

近づいたせいで、トール様の魔力も近くなり、どんどん取り込んでいる感覚があった。
離れなければ。
流石に漏れ出ている以上の魔力を吸い取るようなことは無理だけれど、このままエッチでもしたら、いくらトール様が魔力過多でも、俺はセックスでどれくらい相手の魔力を吸い取ってしまうかもわからない。
殺してしまうかもしれない。
自分が死ぬかも、というより、自分の体質で誰かを殺してしまうほうが、本当はずっと怖い。

「どれくらい、いるんだ」
「っ、へ?」
「魔力」

変わらず熱を堪えている吐息混じりに、そんなことを聞かれた。

「このくらい、魔力が、足りてないなら、たぶん、ソレ用ディルド、6~7本くらい、かと」

言ってから、お貴族様の、魔力過多の人が、魔力欠乏症の補填用すけべ道具のことなんて知ってるわけねぇだろって思ったけれど、なぜか、トール様は知ってたらしい。
ふむ、と頷いてから、それなら、と続けた。

「私が、お前の魔力の器を壊してしまうことも、お前に食い尽くされることも、無さそうだ」
「え…?」

いうが早いか、押し倒された姿勢のまま、唇を奪われる。
舌と舌が絡まった瞬間、がくがくと体が跳ねるほどの快感と魔力が注がれる。
熱い。

「すまない、唇を先に奪ってしまった」
「えぇ…?」
「その、一目惚れ、と言ったら引くか?」

トール様がポツリと言った。
顔が赤い。そして目はガチだ。冗談でこんなこと言うタイプにも思えない。
なんで先に押し倒されたのかは少し腑に落ちないが、魔力暴走を抑えているなら超ムラムラ状態だ。媚薬をわんさか盛られているのと変わらないだろう。
なら、そういうこともあるのかもしれない。
トール様の一目惚れ発言に、俺はなんとか言葉を返す。

「引き、ません、けど、俺、こんなですよ?」

庶民で、魔力欠乏症で、特別ツラがいいわけでもない、年中エロいことしか考えてないような、そんな男だ。

「魔力過多と魔力欠乏症だ。こんなというなら私だってそうだろう」
「いやでも、トール様は、顔も声も超良い」

俺の本音に、トール様は、ははッと笑った。

「このまま交わって、配偶者になってくれるか?」

正直にいうなら、あなたを殺す可能性がないのであれば、いやもう俺に拒否権ないっしょ、というところだ。
が、拉致られ、押し倒され、ファーストキスまで奪われたと言うのに、トール様に嫌な感情も持っていない。
そして、なにより、もう、とにかく俺は。

「なります。なりますから、はやく、満たして…ッ」

身体の疼きが限界だった。




そして、朝。
なにこれ、と目が覚めた俺は呟いてしまう。なんというか、体がものすごく楽なのである。
すけべな気持ちが完全に満たされてる。
1ミリもエッチしたくない。

これが、魔力が足りてる状態…。
物心ついてから初めての感覚にポヤポヤしていたが、ふと横を見ると、非常に顔の良い、俺の配偶者様がスヤスヤと寝ていた。

トール様、顔色が良い。
溢れ出ていた魔力もない。
穏やかなその顔を見ながら思う。
もしかしなくても、俺たちめちゃくちゃ相性が良い?
正直えっちも、凄く、ものすっごく、よかった。

「起きていたのか」

少し眠そうな目を数度瞬いてから体を起こしたトール様は、自分の手を2度ほどグーパーして、驚いた顔で数秒固まった。
おそらく、俺と同じ感動を味わっている。

「凄いな」
「体軽いっすよね」
「ああ、魔力過多だと診断された頃から数えて初めてだ、この快調さ」
「同じくです」

なんとなく目があって、お互いすこしへらっと笑ってしまう。

「今後ともよろしく、お嫁さん」
「あ、俺が嫁なんっすね」
「そうなるな」

また少し笑い合って、すけべな気持ちはないはずだけれど、どちらともなくキスをした。

そして、俺たちの夫婦生活はここから始まるのだった。
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