the Dool and the Dool

名もなき萌えの探求者

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「なんだこりゃ」
「わかんないっす。でも、すごく強い魔力の塊。こんなことできる奴、僕知らないっす」
「そうだな、俺も知らねえわ」

 下手に手を出すのはやばい、と分かるくらいのエネルギー。
 魔力の塊は基本こちらの魔力をぶつけて相殺させるんだが、気のせいでなければ、塊の中に人影が見える。
 見える範囲では、生きてんのか死んでんのかはわからねぇが、生きていた場合、こちらの相殺させる中で生まれる衝撃で死ぬかもしれない。
 それでなくても、デカすぎるから相殺する途中で爆発する確率も高い。
 さて、どうしたものか、と考えていると、突然、固まりの横に人型が降り立った。

「マンディ?!なんで起きてるっすか?!」

 フライディがさけぶ。
 その人型は、ドール最弱と言われるマンディだった。
 このドールにはマスターがおらず、王宮で保管されていた筈だが。
 淡い金の髪を揺らして、マンディはのんびりと答えた。

「やっと、呼ばれた、から」
「呼ばれた?」

 俺が返した言葉に、マンディはゆったりと頷く。
 マンディが動いているところは初めて見た。
 ずっとマスター不在で眠っていた最弱のドール。
 起こそうと躍起になって何人もの魔術師が無理矢理コイツを犯しても、瞼ひとつ動かさなかった。壊れているのかもしれないなんて話も出るくらい長い間眠ったままで、だからこその、最弱という、評価らしいと聞いたんだが。

「マンディ」
「なあに」
「もしかしてその中にいるのが、お前のマスターか」
「そうだよ」

 間髪入れず頷くマンディに、思わずため息が溢れた。
 ドールがマスターを選ぶなんて話聞いたことねぇぞ。
 そして、中の人影が生きている可能性がグッと上がった。
 ああ、くそ。
 なんか、すげえ面倒くさいことに巻き込まれそうな予感がする。

「マスター?」

 心配そうに俺を見上げてくるフライデイの頭をポンと撫でて、マンディに尋ねた。

「その魔力の塊は、お前のマスターの魔力か」
「うん」
「お前が起きて動けるのは、その魔力をなんらかの方法で享受しているから、で間違い無いか」
「うん」
「この状態で、中のマスターを取り出す方法はお前は知ってるか」
「俺の中に魔力いれればいい」

 は?というのがいちばんの感想。

「どうやって」
「わからない。でも、多分近くに行けば勝手に吸い取る」

 そう言ってマンディは魔力の塊に手を伸ばすか、じゅう、という音と共に手が焼けた。

「あ…」
「わあ?!」

 あわててフライディがマンディを魔力から引き離す。
 直接触れるのは不可能。
 だが、吸い取る、吸収するのは多分いう通りなんだろう。原理はわからねぇが。
 とにかく、この魔力を少量ずつマンディに近づけることができれば良いってことだろうと見当をつける。
 どっちにしろ、このままじゃ爆発する。

「その魔力の塊を全部お前の中に突っ込んだらどうなる」
「ちょっと処理に時間はかかるけど、問題ないよ」
「わかった」

 はあ、とため息をついて、俺は折りたたみ式に改良した杖を腰のホルダーから取り出して組み立てる。

「マスター!まさかこの魔力動かす気っすか⁈だめっすよ!こんな大きなのマスターの杖と体がどうなるか分からないっす!」
「しゃあねぇだろ。何がどうなってんのかさっぱりわからねぇが、こんなでかい魔力の塊、ほっといたら爆発するぞ。緊急性がないなら俺だってやりたくねぇよ」

 尚も、でもでもだって、と尻尾を丸めてるフライデイの頭をもう一度撫でる。

「おいマンディ、お前の手に、その魔力を少しずつ近づける」
「わかった」

 マンディは集中するように座って目を閉じる。

「フライディ。どれくらい時間がかかるかわからねぇが、その間、俺の護衛をしろ」
「ッ、……イエス、マイマスター」

 他者の魔力を扱うこと。それは魔術師になる為に必須とされる技術だ。
 ただ、さっきフライディがいった通り、魔術師の杖と魔術師本人に大きく負担がかかるため、基本やらない。
 正直なんのために使うんだこれって思いながら習得させられたもんだが、使い所ってあるもんだな。

「くそ、めんどくせえな…」

 個人差があるが、俺の場合は杖さえ有れば魔術の発動に詠唱はいらない。
 とん、と杖の先でマンディと魔力の塊の間をたたく。
 そうすると、バチと一瞬火花が散って、マンディの手のひらと魔力の塊は、俺を介して金の糸で繋がれた。

(うわ、キッツ)

 魔力を移動させるには俺の杖を通す必要があるのだが、まだ移動を始めてすらいないのに、杖を握る手から血がぽたりぽたりと落ち始めた。
 はあ、と、内心ため息をつくが、やり始めたものはしょうがない。同時進行で自分に痛みを感じにくくする術をかけてから、集中しろ、と自分に言い聞かせる。
 よし。

「じゃあ行くぞマンディ」

 俺は魔力の移動を始めた。



 ゆっくり、ゆっくり。
 マンディの体を壊してしまわないように、魔力を移動させていく。
 魔力を吸い取るのに性的な快感があるのか、マンディが時折甘い声をあげながら体をビクビクと揺らすもんだから、なんだこれ、3Pかよ、なんてバカなことが頭に浮かぶ。

「っぐ、う」
「マスター!」
「大丈夫だ。それより俺の血が落ちてる、周りへの警戒を強めてくれ」
「イエス、マイマスター…」

 ぼたり、ぼたりとドンドンできる腕の裂傷から血が流れ落ちていく。
 魔術師の血は、魔物を呼びやすい。
 集中の外から魔物の唸り声が聞こえてくるが、まあこの辺に住む魔物くらいなら、フライデイの敵じゃない。俺の指示がなくても問題なんてないだろう。

 そうこうしているうちに、だいぶ薄くなってきたその魔力の壁が、ぱすっという軽い音とともに弾けた。
 中には、見慣れない黒い服を着た男が倒れていて、魔力処理中で動けないマンディは動けないままだが、目を細めてその男を見つめている。
 まあなんだ、とりあえず、おわった。
 俺の体が後ろ向きに倒れたが、地面に激突する前にフライデイが俺を支えた。

「ますたぁ、死なないでぇ…」
「死なねぇよ、ばぁか」

 さて、どうやら眠っているだけのような男が目を覚ましたら、色々確認しないといけねぇな。


 ああ、面倒くせぇ…。
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