the Dool and the Dool

名もなき萌えの探求者

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「あ、れ、ここは…?」

 目を覚ました男は、キョロキョロと周りを見回す。
 黒髪黒目、不安そうに垂れた眉。
 軍服に近い詰襟は、きっちりと上まで締められていた。

「天国?」
「違うよ、ここは現実」
「うわぁ!?」

 マンディがその男の顔を覗き込み、それに驚いた男が大袈裟に後ずさる。

「マスターは、この世界から呼ばれて来た。俺はマスターに呼ばれてここにいる」
「は?え?なに、どういうこと?」

 男は動揺し、マンディの言葉に俺たちも首を傾げる。
 世界によばれた?
 なんのことだ。

「なんかよくわかんないっすけど、とりあえず自己紹介するのはどうっすか?」

 訪れた沈黙を破るようにフライデイが明るくそういった。
 こいつのこういうところ、普通にすげぇな、と思う。

「まあ、そうだな。俺は金曜日の魔術師、ユラ。こっちは俺のドール、フライディ」
「フライディっす!よろしくっす!」
「え、あ、は、…ええと、俺は、調(ととのい)裕一、です…」

 黒髪の男、もといユウイチはまた不安そうに眉を下げたまま、おずおずと続ける。

「あの、ここ…日本じゃない…ですよね…?それになんか動物の耳生えてたり、ドールとかマスターとか曜日?魔術師?とか…なにがなんだか…」

 ニホン?聞き慣れない地名に俺は眉を寄せる。
 マンディが世界に呼ばれたという言い方をしたのが気になる。
 ……まさかとは思うが、別の世界線からやってきたとかいうやつか?
 いや、あれは御伽噺だろ。現実に起きるとは考え難い。
 黙り込んでしまった俺をフライデイがたたいた。

「って!何すんだフライデイ」
「マスターの顔がいつも以上に怖くなってるっす!ほら、マンディのマスターも怯えてるっすよ!」
「ああ?」

 言われてユウイチの方を見ると、たしかにさっきより眉が下がって目線が泳いでいる。

「っち、面倒くせぇなぁ。フライデイ、さっきのこいつの質問に回答してやれ」
「イエス、マイマスター!」

 フライデイは右手をピンとあげてから、ユウイチににっこりと笑いかけた。

「まず、ニホンというのが何なのかはわからないっすけど、ここはドーリアントという国っす!魔術師とは、自らの魔力を使い様々な事象を引き起こすことのできる者の名称。で、僕らはドール。世界に7体存在する、魔術師の忠実な僕であり、道具っす」
「ドールは、人、じゃない?」
「人じゃないっす。ドールはドール。そこの金髪のもドールっす!マスターというのは僕らの持ち主のことを指すので、貴方はそこのマンディの持ち主ってことになるっす!」

 テキパキと説明を続けるフライデイ。

「え、でも俺はその、魔術?なんて使ったことないし…」
「それに関しては僕らもよくわからないっす。ただ、マンディは国が保管してて、誰も起こすことのできなかったドールなんっす。だから、マンディが貴方の魔力で起きたというなら、マンディのマスターは貴方で間違い無いと思うっす」

 そこまで聞いて、ユウイチの顔は泣きそうに歪む。

「わけが、わからない…」

 俺も同じ気持ちだわ、と心の中だけで呟く。
 見ている限り、嘘をついているようには見えない。
 とりあえず、これは国に連絡する案件だ。

「おい、ユウイチとやら」
「ひっ」

 ひってなんだよ、ひって。
 声かけただけだろうが。

「とりあえず、こいつらの言う魔術がどんなものなのか見せてやる」
「え?」

 俺はユウイチが起きるまでに包帯でぐるぐる巻きにされた腕で、もう一度杖を握る。
 うわ、杖もだいぶガタがきてやがる。
 メンテナンスださねぇとな、と旧知の魔術師の顔を想像してから、俺は集中を杖に向けた。
 まわりの光を集めるように、杖の先端に光の球体が出来上がり、それがやがて小鳥の姿に変化する。伝え鳥という伝達魔法だ。
 魔力の塊のこと、マンディのこと、ユウイチのことを簡単に言付けて、俺は伝え鳥を国付きの魔術師のもとへと放った。これで、また上から指示が降りてくるだろう。

 ふぁんたじー、とユウイチは呆けたようにそれが飛んで行く方向を見ていた。
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