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「あの……」
朝食の途中、スープを飲み干したユウイチが口を開いた。
「ドールって、結局なんなんですか?」
「ドールはドールっすよ?」
問いに答えたのはフライディだが、ユウイチはそうじゃなくて、とうまく説明できないような顔をして視線を泳がせる。
「フライディの言う通りだな。お前のそれは人間ってなんなんですか、って質問に近い。ただまあ、お前の聞きたいことを想像して答えるなら、……知能と感情をもつ道具ってところか」
「道具……?」
ユウイチは納得いかないようにマンディを見た。
「そう、最初にフライディが言ってただろ。忠実な僕、道具。マスターの言うことしか聞かず、マスターがいないと活動も出来ない。ドールは人間と同じような食事や睡眠という活動はできるが、必須ではないし、逆にマスターからの魔力供給がなくなれば眠ってしまい、動けなくなる」
そういえばこいつ、普通の魔力供給がセックスだって知ってンのか?
今はマンディは俺が移した魔力で活動してるが、それが切れたら動けなくなるはずだ。いや、ユウイチがこの世界に来た時点で動いていたから、微量ずつ勝手にマンディに流れてるのかも知れねぇな。規格外のことばかり起きているんだからそう言うこともあるだろう。
ちゃんと魔力の流れを視たわけじゃねぇから、まあよくわからんが。
「あの」
「あん?」
「え、あ、ええと……」
俺の返事にいちいちビビんなよ、面倒くせぇな。
「普通は、どんなふうにマスターになるんですか……?」
「普通は、そうだな。強奪が多いか?グレイシア」
パンケーキを頬張っていたグレイシアはのんびりとそれを飲み込んでから「そうねぇ」と小首を傾げる。
「さっき、マスターを害していいのはドールを欲しがる魔術師だけって話したでしょう?」
「あ、はい」
「ドールを譲渡する方法は二つあってね。一つは、前の持ち主から魔術的な手続きを経て受けとること。もう一つが、マスターが死んでから、最初に犯すこと」
「犯す⁉︎」
ユウイチが目を見開く。
あ、やっぱり知らなかったか。
「そぉよぉ。ドールへの魔力供給は基本セックスなの。だから、前のマスターとの繋がりが切れたあとに最初に魔力供給をした魔術師が次のマスターになるの。だから、マスターを殺して、ドールを犯す。そのやり方が一番多いかも知れないわねぇ」
「ええと……」
「ああ、私は違うわよぉ?師匠から譲り受けたのぉ」
グレイシアがそう言ってウェンディを呼びキスをする。唐突なその行動にユウイチが固まった。
「マスター。マンディのマスターの動きが止まりましたが」
「あらぁ?」
「悪ノリはその辺にしておけ。しかし、国で裁かれることはねぇが、マンディが起きたとなると、マスターであるユウイチが狙われる可能性はあるな」
狙われた時、ユウイチがマンディに「自分を守れ」と命じれば守るべく動くだろうが、百年単位で眠ったままだったマンディの体はまだ本調子じゃないだろうし、(眠ることをフライディは仮死状態のようなものだと言っていたしな)そもそもの実力すらわからない。
狙われる、殺される、という言葉にユウイチは青くなる。
ま、一般人ならそんなもんだろう。
「大丈夫よぉ。少なくとも、ユラとフライディがいるならそうそう危ないことにはならないわぁ」
グレイシアが言う。
「おい、俺が護衛するみたいな流れにするんじゃねぇよ」
反論はするが、多分、そうなるんだろう。
まだ帰ってきていない返事を思う。
やっぱりクソ面倒くせぇことになりそうだな…。
朝食の途中、スープを飲み干したユウイチが口を開いた。
「ドールって、結局なんなんですか?」
「ドールはドールっすよ?」
問いに答えたのはフライディだが、ユウイチはそうじゃなくて、とうまく説明できないような顔をして視線を泳がせる。
「フライディの言う通りだな。お前のそれは人間ってなんなんですか、って質問に近い。ただまあ、お前の聞きたいことを想像して答えるなら、……知能と感情をもつ道具ってところか」
「道具……?」
ユウイチは納得いかないようにマンディを見た。
「そう、最初にフライディが言ってただろ。忠実な僕、道具。マスターの言うことしか聞かず、マスターがいないと活動も出来ない。ドールは人間と同じような食事や睡眠という活動はできるが、必須ではないし、逆にマスターからの魔力供給がなくなれば眠ってしまい、動けなくなる」
そういえばこいつ、普通の魔力供給がセックスだって知ってンのか?
今はマンディは俺が移した魔力で活動してるが、それが切れたら動けなくなるはずだ。いや、ユウイチがこの世界に来た時点で動いていたから、微量ずつ勝手にマンディに流れてるのかも知れねぇな。規格外のことばかり起きているんだからそう言うこともあるだろう。
ちゃんと魔力の流れを視たわけじゃねぇから、まあよくわからんが。
「あの」
「あん?」
「え、あ、ええと……」
俺の返事にいちいちビビんなよ、面倒くせぇな。
「普通は、どんなふうにマスターになるんですか……?」
「普通は、そうだな。強奪が多いか?グレイシア」
パンケーキを頬張っていたグレイシアはのんびりとそれを飲み込んでから「そうねぇ」と小首を傾げる。
「さっき、マスターを害していいのはドールを欲しがる魔術師だけって話したでしょう?」
「あ、はい」
「ドールを譲渡する方法は二つあってね。一つは、前の持ち主から魔術的な手続きを経て受けとること。もう一つが、マスターが死んでから、最初に犯すこと」
「犯す⁉︎」
ユウイチが目を見開く。
あ、やっぱり知らなかったか。
「そぉよぉ。ドールへの魔力供給は基本セックスなの。だから、前のマスターとの繋がりが切れたあとに最初に魔力供給をした魔術師が次のマスターになるの。だから、マスターを殺して、ドールを犯す。そのやり方が一番多いかも知れないわねぇ」
「ええと……」
「ああ、私は違うわよぉ?師匠から譲り受けたのぉ」
グレイシアがそう言ってウェンディを呼びキスをする。唐突なその行動にユウイチが固まった。
「マスター。マンディのマスターの動きが止まりましたが」
「あらぁ?」
「悪ノリはその辺にしておけ。しかし、国で裁かれることはねぇが、マンディが起きたとなると、マスターであるユウイチが狙われる可能性はあるな」
狙われた時、ユウイチがマンディに「自分を守れ」と命じれば守るべく動くだろうが、百年単位で眠ったままだったマンディの体はまだ本調子じゃないだろうし、(眠ることをフライディは仮死状態のようなものだと言っていたしな)そもそもの実力すらわからない。
狙われる、殺される、という言葉にユウイチは青くなる。
ま、一般人ならそんなもんだろう。
「大丈夫よぉ。少なくとも、ユラとフライディがいるならそうそう危ないことにはならないわぁ」
グレイシアが言う。
「おい、俺が護衛するみたいな流れにするんじゃねぇよ」
反論はするが、多分、そうなるんだろう。
まだ帰ってきていない返事を思う。
やっぱりクソ面倒くせぇことになりそうだな…。
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