the Dool and the Dool

名もなき萌えの探求者

文字の大きさ
8 / 25

8

しおりを挟む
 診療時間になるから、と転移魔法でグレイシアたちが帰ったタイミングで、国からの返事が返ってくる。
 漆黒の魔力。おいおい、トップ直々に伝え鳥飛ばしてんじゃねぇよ……。

【こちらの受け入れ態勢を整えた。セントラルへ来い。転移魔法は事情により使えない。その間の護衛は金曜日の魔術師に一任する】

「あの、セントラルってどこですか?」
「この街から東に向かって、そうだな。馬車つかって丸一日くらいか。くそ、転移魔法なら一瞬なのに、なんなんだよ事情って……」

 フライディがユウイチの前に地図を出して、今いる場所とセントラルの場所を指差して知らせる。

「セントラルっていうのは、この国の中心にある街のことっす!あっちこっちの人や物が集まって賑やかで楽しい街なので、きっとマンディのマスターも楽しめると思うっす!」
「そ、そうですか……。ええと、そこに俺は連れていかれて、その間はその…ユラさんがいてくれるってことですよね…?」

 眉唾ではあるものの、俺はユウイチはこの世界に突然連れてこられた、という前提を置くことにした。その前提からいくと、ユウイチを取り巻く環境は一日の間にまあ随分と変わったことだろう。そう思えば、下がったままの眉も、仕方のないことだと思える。
 だから、イライラするのは表には出さず、「そうだな」と返した。

「出発の時期は書いてねぇな。なら…、出発は明日にするぞ。フライディ、こいつの着る物と明日一日の旅支度を整えろ。マンディの顔を隠せるようなものも。ああ、十時の馬車の手配も頼む」
「イエス、マイマスター。でも、服はマスターのじゃダメなんっすか?」
「サイズがあわねぇだろ。こんな華奢な男」

 身長も体重も、見た目からすると俺の方がだいぶでかい。

「わかったっす。マンディのマスター、マンディ、二人のサイズ、簡単に測っていいっすか?」
「え、あ、はい」
「じゃ、失礼するっすー!」

 フライディはさくさくとユウイチのサイズを測ると、「じゃあ行ってくるっす!」といつもの外出スタイルで出かけていった。
 おそらくフライディがいることで俺との空間を耐えていたのであろうユウイチが黙ったままどうしたらいいのか、と顔をしている。

「おい」
「は、はい!?」
「ビビんなよ。とりあえず、護衛するにあたって、お前の魔力やらマンディの力やらを軽く確認したい。お前、魔術は使ったことないっていってたな。喧嘩の経験は?」

 守る、と言ってもいろいろある。
 全くの非戦闘員を守るときでも、その護衛対象がどれくらい動けるのか確認するのは俺にとっての基本だ。どれだけ走れるのか知っているだけでもだいぶ違う。

「喧嘩、はないですけど……」
「けど?」
「陸上部だったので、体力はそこそこあるほうかな、と……」

 リクジョウブ?…ああ、陸上、か?

「それはどういうもんだ」
「え⁉︎ええと、こう、走る競技とかをする…学生の放課後活動というか……」

 なんで走る競技が『陸上』なんだ?
 まあいいか。

「他に得意なことは?」
「と、くにはないですね……」
「マスターは大きいよ」

 俺との会話にマンディが口を挟む。

「大きい?何がだ」

 まさかナニか?と頭の中で変換されたが、マンディの言い分は魔力のことらしかった。

「マスター、いっぱい持ってる。漏れ出てるくらい。だから、塊ができたし、俺はマスターがきたとわかった」
「漏れ出てる?そんなことあり得ンのか」

 魔力というのは基本体内で循環するものだ。漏れ出る、なんて血を垂れ流し続けているようなもんじゃねぇか。
 普通に考えて、動ける状態のはずがない。
 だが、あの魔力の塊や、ユウイチが魔力の扱い方を知らないことを考えると半信半疑ではあったが、確認はしておくべきだろう、とは思う。

「おい、ユウイチ」
「はい」
「悪いが、お前の魔力読ませてもらうぞ」

 ああ、また疑問符を浮かべているような顔してやがる。
 畜生。こっちの常識が当たり前に伝わらないというのは、面倒臭すぎる。
 しかし今は解説を放り投げられるフライディはいない。
 くそ。俺は頭をがしがしと掻いてから、「魔力を読むってのは」と説明を始めた。

「相手の魔力がどれくらいあるのか、どんな流れ方をしてるのか、を見る魔術のことだ。本来それらはかなりプライベートなことだからな、見ないのが普通で、……そうだな、股間にぶさらがってるソレの長さを教えろって聞くくらい失礼なことなんだよ」

 俺の言葉にユウイチは思わずというように股間に手をやってそれを隠した。
 うっかり、くくっと笑ってしまう。

「だから、悪い、と言ったンだよ」

 俺が笑ったのが意外だったのか何なのか、ユウイチはぽかんとしてから、「なる、ほど?」と言った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

灰かぶりの少年

うどん
BL
大きなお屋敷に仕える一人の少年。 とても美しい美貌の持ち主だが忌み嫌われ毎日被虐的な扱いをされるのであった・・・。

後宮の男妃

紅林
BL
碧凌帝国には年老いた名君がいた。 もう間もなくその命尽きると噂される宮殿で皇帝の寵愛を一身に受けていると噂される男妃のお話。

番に見つからない街で、子供を育てている

はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。 異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。 現世の記憶は失われているが、 この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。 街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、 ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。 だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。 再会は望まない。 今はただ、この子との生活を守りたい。 これは、番から逃げたオメガが、 選び直すまでの物語。 *本編完結しました

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

敗戦国の王子を犯して拐う

月歌(ツキウタ)
BL
祖国の王に家族を殺された男は一人隣国に逃れた。時が満ち、男は隣国の兵となり祖国に攻め込む。そして男は陥落した城に辿り着く。

処理中です...