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診療時間になるから、と転移魔法でグレイシアたちが帰ったタイミングで、国からの返事が返ってくる。
漆黒の魔力。おいおい、トップ直々に伝え鳥飛ばしてんじゃねぇよ……。
【こちらの受け入れ態勢を整えた。セントラルへ来い。転移魔法は事情により使えない。その間の護衛は金曜日の魔術師に一任する】
「あの、セントラルってどこですか?」
「この街から東に向かって、そうだな。馬車つかって丸一日くらいか。くそ、転移魔法なら一瞬なのに、なんなんだよ事情って……」
フライディがユウイチの前に地図を出して、今いる場所とセントラルの場所を指差して知らせる。
「セントラルっていうのは、この国の中心にある街のことっす!あっちこっちの人や物が集まって賑やかで楽しい街なので、きっとマンディのマスターも楽しめると思うっす!」
「そ、そうですか……。ええと、そこに俺は連れていかれて、その間はその…ユラさんがいてくれるってことですよね…?」
眉唾ではあるものの、俺はユウイチはこの世界に突然連れてこられた、という前提を置くことにした。その前提からいくと、ユウイチを取り巻く環境は一日の間にまあ随分と変わったことだろう。そう思えば、下がったままの眉も、仕方のないことだと思える。
だから、イライラするのは表には出さず、「そうだな」と返した。
「出発の時期は書いてねぇな。なら…、出発は明日にするぞ。フライディ、こいつの着る物と明日一日の旅支度を整えろ。マンディの顔を隠せるようなものも。ああ、十時の馬車の手配も頼む」
「イエス、マイマスター。でも、服はマスターのじゃダメなんっすか?」
「サイズがあわねぇだろ。こんな華奢な男」
身長も体重も、見た目からすると俺の方がだいぶでかい。
「わかったっす。マンディのマスター、マンディ、二人のサイズ、簡単に測っていいっすか?」
「え、あ、はい」
「じゃ、失礼するっすー!」
フライディはさくさくとユウイチのサイズを測ると、「じゃあ行ってくるっす!」といつもの外出スタイルで出かけていった。
おそらくフライディがいることで俺との空間を耐えていたのであろうユウイチが黙ったままどうしたらいいのか、と顔をしている。
「おい」
「は、はい!?」
「ビビんなよ。とりあえず、護衛するにあたって、お前の魔力やらマンディの力やらを軽く確認したい。お前、魔術は使ったことないっていってたな。喧嘩の経験は?」
守る、と言ってもいろいろある。
全くの非戦闘員を守るときでも、その護衛対象がどれくらい動けるのか確認するのは俺にとっての基本だ。どれだけ走れるのか知っているだけでもだいぶ違う。
「喧嘩、はないですけど……」
「けど?」
「陸上部だったので、体力はそこそこあるほうかな、と……」
リクジョウブ?…ああ、陸上、か?
「それはどういうもんだ」
「え⁉︎ええと、こう、走る競技とかをする…学生の放課後活動というか……」
なんで走る競技が『陸上』なんだ?
まあいいか。
「他に得意なことは?」
「と、くにはないですね……」
「マスターは大きいよ」
俺との会話にマンディが口を挟む。
「大きい?何がだ」
まさかナニか?と頭の中で変換されたが、マンディの言い分は魔力のことらしかった。
「マスター、いっぱい持ってる。漏れ出てるくらい。だから、塊ができたし、俺はマスターがきたとわかった」
「漏れ出てる?そんなことあり得ンのか」
魔力というのは基本体内で循環するものだ。漏れ出る、なんて血を垂れ流し続けているようなもんじゃねぇか。
普通に考えて、動ける状態のはずがない。
だが、あの魔力の塊や、ユウイチが魔力の扱い方を知らないことを考えると半信半疑ではあったが、確認はしておくべきだろう、とは思う。
「おい、ユウイチ」
「はい」
「悪いが、お前の魔力読ませてもらうぞ」
ああ、また疑問符を浮かべているような顔してやがる。
畜生。こっちの常識が当たり前に伝わらないというのは、面倒臭すぎる。
しかし今は解説を放り投げられるフライディはいない。
くそ。俺は頭をがしがしと掻いてから、「魔力を読むってのは」と説明を始めた。
「相手の魔力がどれくらいあるのか、どんな流れ方をしてるのか、を見る魔術のことだ。本来それらはかなりプライベートなことだからな、見ないのが普通で、……そうだな、股間にぶさらがってるソレの長さを教えろって聞くくらい失礼なことなんだよ」
俺の言葉にユウイチは思わずというように股間に手をやってそれを隠した。
うっかり、くくっと笑ってしまう。
「だから、悪い、と言ったンだよ」
俺が笑ったのが意外だったのか何なのか、ユウイチはぽかんとしてから、「なる、ほど?」と言った。
漆黒の魔力。おいおい、トップ直々に伝え鳥飛ばしてんじゃねぇよ……。
【こちらの受け入れ態勢を整えた。セントラルへ来い。転移魔法は事情により使えない。その間の護衛は金曜日の魔術師に一任する】
「あの、セントラルってどこですか?」
「この街から東に向かって、そうだな。馬車つかって丸一日くらいか。くそ、転移魔法なら一瞬なのに、なんなんだよ事情って……」
フライディがユウイチの前に地図を出して、今いる場所とセントラルの場所を指差して知らせる。
「セントラルっていうのは、この国の中心にある街のことっす!あっちこっちの人や物が集まって賑やかで楽しい街なので、きっとマンディのマスターも楽しめると思うっす!」
「そ、そうですか……。ええと、そこに俺は連れていかれて、その間はその…ユラさんがいてくれるってことですよね…?」
眉唾ではあるものの、俺はユウイチはこの世界に突然連れてこられた、という前提を置くことにした。その前提からいくと、ユウイチを取り巻く環境は一日の間にまあ随分と変わったことだろう。そう思えば、下がったままの眉も、仕方のないことだと思える。
だから、イライラするのは表には出さず、「そうだな」と返した。
「出発の時期は書いてねぇな。なら…、出発は明日にするぞ。フライディ、こいつの着る物と明日一日の旅支度を整えろ。マンディの顔を隠せるようなものも。ああ、十時の馬車の手配も頼む」
「イエス、マイマスター。でも、服はマスターのじゃダメなんっすか?」
「サイズがあわねぇだろ。こんな華奢な男」
身長も体重も、見た目からすると俺の方がだいぶでかい。
「わかったっす。マンディのマスター、マンディ、二人のサイズ、簡単に測っていいっすか?」
「え、あ、はい」
「じゃ、失礼するっすー!」
フライディはさくさくとユウイチのサイズを測ると、「じゃあ行ってくるっす!」といつもの外出スタイルで出かけていった。
おそらくフライディがいることで俺との空間を耐えていたのであろうユウイチが黙ったままどうしたらいいのか、と顔をしている。
「おい」
「は、はい!?」
「ビビんなよ。とりあえず、護衛するにあたって、お前の魔力やらマンディの力やらを軽く確認したい。お前、魔術は使ったことないっていってたな。喧嘩の経験は?」
守る、と言ってもいろいろある。
全くの非戦闘員を守るときでも、その護衛対象がどれくらい動けるのか確認するのは俺にとっての基本だ。どれだけ走れるのか知っているだけでもだいぶ違う。
「喧嘩、はないですけど……」
「けど?」
「陸上部だったので、体力はそこそこあるほうかな、と……」
リクジョウブ?…ああ、陸上、か?
「それはどういうもんだ」
「え⁉︎ええと、こう、走る競技とかをする…学生の放課後活動というか……」
なんで走る競技が『陸上』なんだ?
まあいいか。
「他に得意なことは?」
「と、くにはないですね……」
「マスターは大きいよ」
俺との会話にマンディが口を挟む。
「大きい?何がだ」
まさかナニか?と頭の中で変換されたが、マンディの言い分は魔力のことらしかった。
「マスター、いっぱい持ってる。漏れ出てるくらい。だから、塊ができたし、俺はマスターがきたとわかった」
「漏れ出てる?そんなことあり得ンのか」
魔力というのは基本体内で循環するものだ。漏れ出る、なんて血を垂れ流し続けているようなもんじゃねぇか。
普通に考えて、動ける状態のはずがない。
だが、あの魔力の塊や、ユウイチが魔力の扱い方を知らないことを考えると半信半疑ではあったが、確認はしておくべきだろう、とは思う。
「おい、ユウイチ」
「はい」
「悪いが、お前の魔力読ませてもらうぞ」
ああ、また疑問符を浮かべているような顔してやがる。
畜生。こっちの常識が当たり前に伝わらないというのは、面倒臭すぎる。
しかし今は解説を放り投げられるフライディはいない。
くそ。俺は頭をがしがしと掻いてから、「魔力を読むってのは」と説明を始めた。
「相手の魔力がどれくらいあるのか、どんな流れ方をしてるのか、を見る魔術のことだ。本来それらはかなりプライベートなことだからな、見ないのが普通で、……そうだな、股間にぶさらがってるソレの長さを教えろって聞くくらい失礼なことなんだよ」
俺の言葉にユウイチは思わずというように股間に手をやってそれを隠した。
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