the Dool and the Dool

名もなき萌えの探求者

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 俺たちが向かったのは、この街のはずれにある魔術師の杖を専門に扱っている店だ。
 完全紹介制なため、初心者は門を潜るどころか存在すらしらないことも珍しくない。見た目もただの民家だしな。
 ベルを鳴らすと、なかからボサボサの髪をそのままにした黒衣の男が出てくる。

「金曜日?なんだよいきなり」
「杖がイカれそうだからメンテしてほしくてな」

 こいつはこれでも火曜日の魔術師。得意分野は、魔術師にとって必需品である杖の制作及び改造。
 俺が杖を見せると、男は「はあ⁉︎」と大声をあげた。

「は?はぁ⁉︎なにこれ、なんでこんなことになってんの⁉︎中の回路ボロボロじゃないか!僕の大事な杖ちゃんをこんな使い方するなんて何を考えてるんだ金曜日‼︎」
「事情があったんだよ。それも含めて説明するから、入れてくれ」

 長い前髪に隠れがちな目でこちらをぎらりと睨んでから、「納得できない理由なら僕はもう金曜日の杖は作らないからね⁉︎」と言った。
 あいつの大声にビビったのか固まってるユウイチを促して、中へ入ると、さまざまな木材の匂いが充満している。換気くらいしろよ……と思うが、その辺りは職人のこだわりがあるかもしれないからなにも言えない。
 客間に通されて、ソファに座ると、赤い髪の美人がお茶を出した。

「チューズディ、ありがとうっす!」
「どういたしまして」

 フライディの人懐っこい笑顔とツンとした美女の組み合わせはいつみても対照的すぎてちょっと笑える。

「で?何がどうして、杖ちゃんをこんな目にあわせたわけ?」

 じと、という表現が一番近い表情を浮かべて、火曜日の魔術師、ヤンは俺を睨む。

「とりあえず、こいつ見てくれ」

 ユウイチにマンディのフードを外すように命令させる。揺れた淡い金髪にヤンは目を見開いた。

「ええ⁉︎マンディ⁉︎」

 え?え?と言っているヤンに、グレイシアにしたのと同じような説明をすると、「まあ、うん。わかった」と唸った。

「どうしようもない状況で、杖ちゃんをこんな目に合わせるしかなかった、というのは納得してあげてもいい。メンテもしてあげる」

 ヤンがそう呟いたことに内心ホッとして、もう一つの要件も告げた。

「あと、こいつに一本杖を見繕ってくれ」
「マンディのマスターに?」

 怪訝な顔をするヤン。

「ああ。さっき説明しただろ。こいつ魔術師としての修行をしたことねぇんだよ。もちろん杖を扱うこともな」
「ああ、なるほど。なら僕の杖ちゃんが一番だね」

 ヤンは「なんたって、僕の杖ちゃんは世界一だから~」と言いながら、俺の杖をもって奥へと消えた。

「あの…、どういうことでしょうか」

 ユウイチがおずおずと聞く。俺はフライディに視線をやり、ちゃんと伝わったらしいフライディが説明を始めた。

「チューズディのマスターは、魔術師なんっすけど、本業は杖職人なんっす!」
「あ、うん、それはなんとなく…」
「で、杖って、魔術師の魔力の流れをサポートする役割があるんすけど、チューズディのマスターはそのサポートするための回路を組むのがめちゃくちゃ上手なんっす。僕のマスターみたいにややこしいことする魔術師や、初心者でうまく魔術が使えないときのフォローなんかをさせるとすごいんっすよ!」

 良くわかってないだろうユウイチが「そ、っかあ」と呟いたので、「とりあえずお前用の杖はあった方がいい。それに、魔術も簡易なものだけでいいから明日までに覚えてもらうぞ」と伝える。

「明日までですか⁉︎」

 ユウイチが驚いて声を上げ、フライディまで「マスター無茶っすよ」と言ってきたが、こんな魔力垂れ流し不安定な状態が何日も続くほうがよっぽど危ないし無茶苦茶だ。

「別に魔術を完璧に使いこなせって言ってるわけじゃない。自分の中にある魔力を把握して、体内で循環。初歩魔術の創り方。あと可能ならマンディに注げと言ってるんだ」

 俺の言葉にマンディがぴっと背中を伸ばした。動けると言っても、多分まだヤってねぇんだろう。満タン状態じゃないとみた。
 しかしとりあえずは、ユウイチの垂れ流しを止めるのが先決。
 その場で待機していたチューズディに裏にいるとだけ声をかけて、俺たちは店の裏に移動した。
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