the Dool and the Dool

名もなき萌えの探求者

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 ここは、杖の状態を確認したり、試すために結界が貼ってある場所だ。

「ユウイチ、手を貸せ」
「え?」
「お手をしろっていってるんだ、はやく」

 後ろでフライディが「お手ってマスター言い方ひどいっす」と突っ込んでくるが、うるせえ知るか。
 ユウイチはツッコミで冷静になったのか、素直に手を出してくる。
 ユウイチの手を軽く握って、手のひらから本の少量魔力を流した。

「っ⁉︎」

 突然じわりと熱いものが流れてきたことにびっくりしたらしいユウイチに、「いまキたのが魔力だな」と伝えて手を離す。

「本に書いてただろ。まずは、自分の中にある魔力を認識することが重要だって」
「は、はい」
「今流したときに感じた、どろっとしたものが、お前の中にもあるはずだ。まずは心臓、それから頭。体のあらゆる部位に流れてるそれを探してみろ。そうだな。目を閉じて、それに色があると思って集中してみるといい。深呼吸するのも効果的だ」

 俺の言葉に素直に従って、ユウイチは目を閉じてゆっくりと呼吸し始めた。
 ユウイチのそんな様子を、どこかそわそわしながら、マンディは見守っている。
 そして、五分ほど経ったとき、ユウイチが「あ?」と言って目を開けた。

「見つけたか?」
「はい、た、多分?」

 初めての魔力知覚というのは、大概の場合に「本当にこれか?」と自信がないものだ。ユウイチの反応は妥当だろう。

「じゃあ、その見つけたものを、意識して手のひらに集めてみろ」
「集める、ですか?」

 手のひらを見つめて首を傾げるユウイチに「ああ」と返す。

「手のひらを、さっきイメージした色で染める感じに。ゆっくりでいい。お前が良いなら。魔力の流れは視ていてやる」
「お願いします」

 ユウイチが頷いたから、俺は術式を展開し、ユウイチの魔力を視認する。右手のひらを上にむけ、左手で右手首を掴みながらユウイチはまた目を閉じて深呼吸を始めた。
 こいつ、妙に素直だからこう、…むず痒くなるな。
 しばらくして、ユウイチの魔力がじわりと手のひらに集まり始める。
 異世界人だからなのかなんなのか。なんにしてもこいつに魔術師としての才能があるのは間違いないんだろう。できるようになるのが早い。つまづくやつは知覚に何時間、何日もかかる奴だっているのだ。
 じわり、じわりと集まってくる魔力だったが、突然ぱちんとその魔力が弾けて、ユウイチの手のひらの上で球体を作り始める。
 その球体は、規模こそ違うものの間違いなくユウイチが包まれていたあの魔力の塊だ。

「わ、うわぁ……⁉︎」

 ユウイチが思わず目を開けて、制御できなくなった魔力の流出に腰をぬかす。手のひらの上から、腰を抜かしたユウイチの目の前に場所を移動したそれは、ゆっくりと、しかし確実に大きくなっていく。
 くそ面倒くせぇ。
 杖がない状態の俺がこいつの魔力を操作するのは双方にとって負担が大きすぎて、あまりよろしくない。

「フライディ、俺を守れ」
「イエス、マイマスター」

 フライディは俺の横に立つ。

「ユウイチ」
「は、はいっ」
「マンディに、お前を守るように命令しとけ」
「え、あ、でも」
「少なくとも、ドールは人間より丈夫だ」

 俺の言葉にもう少し悩んだようだったが、ユウイチは「マンディさん、僕を守って、ください」と伝え、マンディもそれに「イエス、マイマスター」と頷いて、ユウイチの前に立った。

「それから、今手のひらに集めていた魔力を、体のなかをぐるぐる巡るように意識しとけ。」

 回路を切ってもらわないと、あの球体は大きくなり続けるだけだ
 ユウイチは頷いて、目を閉じた。
 この状況で俺に任せて目を閉じられるというのは、なかなか度胸が座っているなこいつ。
 さて、このやりとりの間にまた一回り大きくなった球体。今でちょうどフライディの頭くらいか。
 とりあえず、爆発した時に少しでも衝撃が減るようにこの球体の周りに強固な結界を貼る。
 この程度の大きさなら相殺することもできるが、そんな繊細な術を使うなら杖が欲しい。そう思った時、後ろから声をかけられた。

「金曜日、できたよ」
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