the Dool and the Dool

名もなき萌えの探求者

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 ヤンが俺のそばにとことこ歩いてきて、はい、と杖を俺に渡す。

「今度こそ杖ちゃん大事にしてよね?」

 念を押すヤンに、短く返事を返して、杖に魔力を込めた。以前よりスムーズに流れているのがわかる。

「また調整し直したのか」
「うん。杖ちゃんがいかに楽できるかが僕の仕事だからね」

 ここで魔術師が、と言わないあたりがコイツの変態さをあらわしているとおもう。

「で、こっちがきみのぶん」

 目を閉じているユウイチに「そのままでいいから握って」とヤンが杖を握らせる。

「あとでもう一回調整してあげるけど、とりあえず使ってみて。いま循環させようとしてる魔力を、杖ちゃんにも通すの。体から手、手から杖ちゃん、杖ちゃんに巡らせた魔力をまた手に戻す感じだよ。ほら、杖ちゃんが待ってるから、やってみて。呼吸に合わせて。そうそう。杖ちゃん上手、いいこだね」

 杖じゃなくてそこはユウイチ褒めろよ、と突っ込みたくなったが、杖の補助がうまく効いたのか、球体への魔力供給が止まった。
 これならイケる。
 念のため先ほど張った結界をもうひとつ重ねて、その二つの中に俺の魔力で作った球体を放り込んだ。結界のなかで魔力と魔力がぶつかって火花のような光が何度も弾けていく。

 5分ほどだろうか。ぽひゅ、というまの抜けた音がして、魔力の塊が消えた。
 ふぅ、と息をはいてユウイチをみると、たいてい下がっている眉がまたへなへなと下がっている。

「す、すみませんでした……」
「あ?何がだよ」

 俺が眉を寄せて返すとユウイチの眉はさらに下がった。

「迷惑を…かけてしまって…」
「ああ?あれくらい迷惑でもなんでもねぇよ。つーか、お前は怪我は?倦怠感とか、吐き気とか、そういうのはねぇか?」 

 いきなり魔力の暴走が起きたのだ。体に不調が出てもおかしくない。反射的に大丈夫ですと返しそうになったユウイチに「隠すなよ?」と念押しすると、ユウイチは自分の体を見てから「ちょっとだけ、だるいかも、です?」と言った。
 とりあえず、家に戻るべきか、と考えていると、ユウイチに渡した杖をみていたヤンがしみじみと言った。

「いやあ、君に負けず劣らず面白い魔力の使い方する子だねぇ、月曜日。師弟って似るのかな」

 は?

「俺らは師弟じゃねぇよ」
「そうなの?でもさっき魔術教えてたじゃない」
「必要に迫られただけだ。こいつの師匠になる気なんてねぇよ」
「うーん、…なんだかんだ言って金曜日はやると思うよ、その子の師匠」

 ヤンはそれだけ言うと、「それにしても、うーん、杖ちゃんよく頑張った!偉かった!すぐ調整してあげるからねー」とユウイチの杖を持って奥へ消えていった。
 ユウイチの杖を持っていかれてしまったので帰るに変えられず、しばらくしてからチューズディが「マスターから、もしセントラルに呼ばれてるの僕も一緒にいくから、馬車の人数増やしておいて、と伝えるように申しつけられました」と言いにきた。

「は?なんでまた」
「マンディのマスターの特殊な魔力に馴染む杖を調整するためにしばらく観察したい、だそうです」
「……まじかよ」

 まじかよ。
 そう思うものの、護衛として魔術師、それもドール持ちが増えるのは、まあ心強いといえば確かにそうだ。
 専門が杖作りといっても、ヤンはそこそこ強い。チューズディもだ。
 強さのランクはあるにしても、そもそもドールは総じて戦闘力の強い道具。
 道中、下手すると数時間ぶっ通しで杖談義を聞かされるかもしれないことを思って気は重くなるが、強く断る理由にはならなかった。
 よくわからないことばかり起きている、ユウイチの護衛だから余計に。

「ああ、そうだ」

 戦闘力で思い出した。

「マンディ、お前の実力と戦闘スタイルが知りたい。フライディと模擬戦闘はできるか?」

 どうせ、杖がヤンから帰ってくるまでここから動けない。

「マスターがいいなら、可能」
「え、ええと……」

 困ったように俺を見るユウイチに、「命令してやれ。お前だって、マンディの実力知りたいだろ」と返した。「いや、俺は別に…」と聞こえたがそれは無視する。
 あえて無視されたことには気づいたらしいユウイチが、おずおずと「マンディさん、フライディさんと模擬戦等をしてください」と命じる。

「イエス、マイマスター」

 マンディは嬉しそうに笑った。
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