the Dool and the Dool

名もなき萌えの探求者

文字の大きさ
16 / 25

15

しおりを挟む
 翌朝、なんだか眠そうなユウイチと、スッキリ満タン!と嬉しそうなマンディが部屋から出てきて、思わず笑ってしまった。
 お前ら、そんなあからさまに「ヤりました」って顔してると性格悪い奴らに揶揄われるぞ、と思ったが、まあ、それも一つの経験だろうと忠告するのはやめた。
 
 朝食を終えて馬車乗り場に行くと、くると宣言していた火曜日コンビと、なぜか水曜日コンビまで待っていた。

「なんでお前がいるんだグレイシア」
「ちょうど仕入れたい薬があったのよぉ。一緒に行ったら楽しいかしらと思って」

 グレイシアはのんびりと笑ってみせた。
 ドール持ちの魔術師は、それなりに有名人だ。俺や火曜日は顔が知られるとまではいかないが(隠しているわけではないが公の場が嫌いだからだろう)グレイシアは片手で数えるほどしかない女医でもある。そして美人だ。目立つ、とは思ったが、まあ、いいだろう。いざとなれば戦力になる。

「あれあれ、マンディ満タンだね。ヤッたの?そういうこと平気なタイプなんだね。ちょっと意外。まあどうでもいいか。杖ちゃんね、バッチリ調整したからさ、ちょっと魔力流してみてよ。昨日の感じだとできるでしょ。ほら早く。ああもうまどろっこしいなぁ、杖ちゃんが待ちくたびれちゃうでしょ」

 一気に早口で捲し立てられ、ユウイチはヒィと小さく悲鳴をあげて後ずさる。

「マスター、マンディのマスターが引いているわ」

 チューズディが一応、というふうに声をかけたが、ヤンはそんなの知らないと一蹴する。
 急かされるまま魔力を出そうとしたユウイチを俺は止めた。

「ゆ、ユラさん?」
「焦るな。お前はまだ魔力の扱いに慣れてねぇんだから、落ち着いて、深呼吸。ほら」
「は、はい」

 ここで暴走なんてされたら溜まったものじゃない。
 心を落ち着けているためだろう、目を閉じたユウイチを目の端で確認して、火曜日水曜日コンビに道中はユウイチとマンディの正体は隠すことを伝える。

「ユウイチという名前はまあ、珍しいが東の端にはそういう感じの名前のやつらがいるからそのままでかまわん。マンディのことは『ルナ』と呼んでくれ」
「ルナ?」
「ああ、ユウイチが決めた名だ。月を示す言葉だとかなんとか」

 グレイシアもヤンもわかったと短く頷いた。各々のドールにもそう呼ぶように伝え「イエス、マイマスター」との返事もきこえる。
 こんな会話をしている間に準備が整ったらしいユウイチが「いきます」と杖に魔力を通し始めた。

「視るぞ」と声をかけると「お願いします」と返ってくる。
 他にバレないようにユウイチの魔力を視ると、体から手、手から杖、そしてまた手にもどし体を通す、完璧な循環をしていた。
 改めて、とんでもねぇなこいつ。
 昨日の一瞬でこの才能に見合う杖を用意したヤンも大概だが。

「うん、問題ないね。綺麗に巡ってる。さすが僕の杖ちゃん!」

 ユウイチが魔力を通した後の杖をみてヤンは満足そうに微笑む。
 ユウイチは無事にできたことにホッとしているようだった。

「ユウイチ、お前はどうだ。使いにくいとかなかったか」
「はい。昨日よりずっと手に馴染む感じがありました。す、すごいですね、ヤンさんの杖」
「そうだよ!なんてったって僕の杖ちゃんは世界一だからね!」

 褒められたことに嬉しそうにヤンが笑う。
 その様子を、少し離れたところからまた少し嬉しそうにチューズディが見ていた。
 その視線にヤンが気付いて振り返ると、チューズディはぷいっとそっぽを向く。

 こいつらの距離感は、俺にはいまだによくわからない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

灰かぶりの少年

うどん
BL
大きなお屋敷に仕える一人の少年。 とても美しい美貌の持ち主だが忌み嫌われ毎日被虐的な扱いをされるのであった・・・。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

後宮の男妃

紅林
BL
碧凌帝国には年老いた名君がいた。 もう間もなくその命尽きると噂される宮殿で皇帝の寵愛を一身に受けていると噂される男妃のお話。

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

番に見つからない街で、子供を育てている

はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。 異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。 現世の記憶は失われているが、 この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。 街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、 ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。 だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。 再会は望まない。 今はただ、この子との生活を守りたい。 これは、番から逃げたオメガが、 選び直すまでの物語。 *本編完結しました

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

敗戦国の王子を犯して拐う

月歌(ツキウタ)
BL
祖国の王に家族を殺された男は一人隣国に逃れた。時が満ち、男は隣国の兵となり祖国に攻め込む。そして男は陥落した城に辿り着く。

処理中です...