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翌朝、なんだか眠そうなユウイチと、スッキリ満タン!と嬉しそうなマンディが部屋から出てきて、思わず笑ってしまった。
お前ら、そんなあからさまに「ヤりました」って顔してると性格悪い奴らに揶揄われるぞ、と思ったが、まあ、それも一つの経験だろうと忠告するのはやめた。
朝食を終えて馬車乗り場に行くと、くると宣言していた火曜日コンビと、なぜか水曜日コンビまで待っていた。
「なんでお前がいるんだグレイシア」
「ちょうど仕入れたい薬があったのよぉ。一緒に行ったら楽しいかしらと思って」
グレイシアはのんびりと笑ってみせた。
ドール持ちの魔術師は、それなりに有名人だ。俺や火曜日は顔が知られるとまではいかないが(隠しているわけではないが公の場が嫌いだからだろう)グレイシアは片手で数えるほどしかない女医でもある。そして美人だ。目立つ、とは思ったが、まあ、いいだろう。いざとなれば戦力になる。
「あれあれ、マンディ満タンだね。ヤッたの?そういうこと平気なタイプなんだね。ちょっと意外。まあどうでもいいか。杖ちゃんね、バッチリ調整したからさ、ちょっと魔力流してみてよ。昨日の感じだとできるでしょ。ほら早く。ああもうまどろっこしいなぁ、杖ちゃんが待ちくたびれちゃうでしょ」
一気に早口で捲し立てられ、ユウイチはヒィと小さく悲鳴をあげて後ずさる。
「マスター、マンディのマスターが引いているわ」
チューズディが一応、というふうに声をかけたが、ヤンはそんなの知らないと一蹴する。
急かされるまま魔力を出そうとしたユウイチを俺は止めた。
「ゆ、ユラさん?」
「焦るな。お前はまだ魔力の扱いに慣れてねぇんだから、落ち着いて、深呼吸。ほら」
「は、はい」
ここで暴走なんてされたら溜まったものじゃない。
心を落ち着けているためだろう、目を閉じたユウイチを目の端で確認して、火曜日水曜日コンビに道中はユウイチとマンディの正体は隠すことを伝える。
「ユウイチという名前はまあ、珍しいが東の端にはそういう感じの名前のやつらがいるからそのままでかまわん。マンディのことは『ルナ』と呼んでくれ」
「ルナ?」
「ああ、ユウイチが決めた名だ。月を示す言葉だとかなんとか」
グレイシアもヤンもわかったと短く頷いた。各々のドールにもそう呼ぶように伝え「イエス、マイマスター」との返事もきこえる。
こんな会話をしている間に準備が整ったらしいユウイチが「いきます」と杖に魔力を通し始めた。
「視るぞ」と声をかけると「お願いします」と返ってくる。
他にバレないようにユウイチの魔力を視ると、体から手、手から杖、そしてまた手にもどし体を通す、完璧な循環をしていた。
改めて、とんでもねぇなこいつ。
昨日の一瞬でこの才能に見合う杖を用意したヤンも大概だが。
「うん、問題ないね。綺麗に巡ってる。さすが僕の杖ちゃん!」
ユウイチが魔力を通した後の杖をみてヤンは満足そうに微笑む。
ユウイチは無事にできたことにホッとしているようだった。
「ユウイチ、お前はどうだ。使いにくいとかなかったか」
「はい。昨日よりずっと手に馴染む感じがありました。す、すごいですね、ヤンさんの杖」
「そうだよ!なんてったって僕の杖ちゃんは世界一だからね!」
褒められたことに嬉しそうにヤンが笑う。
その様子を、少し離れたところからまた少し嬉しそうにチューズディが見ていた。
その視線にヤンが気付いて振り返ると、チューズディはぷいっとそっぽを向く。
こいつらの距離感は、俺にはいまだによくわからない。
お前ら、そんなあからさまに「ヤりました」って顔してると性格悪い奴らに揶揄われるぞ、と思ったが、まあ、それも一つの経験だろうと忠告するのはやめた。
朝食を終えて馬車乗り場に行くと、くると宣言していた火曜日コンビと、なぜか水曜日コンビまで待っていた。
「なんでお前がいるんだグレイシア」
「ちょうど仕入れたい薬があったのよぉ。一緒に行ったら楽しいかしらと思って」
グレイシアはのんびりと笑ってみせた。
ドール持ちの魔術師は、それなりに有名人だ。俺や火曜日は顔が知られるとまではいかないが(隠しているわけではないが公の場が嫌いだからだろう)グレイシアは片手で数えるほどしかない女医でもある。そして美人だ。目立つ、とは思ったが、まあ、いいだろう。いざとなれば戦力になる。
「あれあれ、マンディ満タンだね。ヤッたの?そういうこと平気なタイプなんだね。ちょっと意外。まあどうでもいいか。杖ちゃんね、バッチリ調整したからさ、ちょっと魔力流してみてよ。昨日の感じだとできるでしょ。ほら早く。ああもうまどろっこしいなぁ、杖ちゃんが待ちくたびれちゃうでしょ」
一気に早口で捲し立てられ、ユウイチはヒィと小さく悲鳴をあげて後ずさる。
「マスター、マンディのマスターが引いているわ」
チューズディが一応、というふうに声をかけたが、ヤンはそんなの知らないと一蹴する。
急かされるまま魔力を出そうとしたユウイチを俺は止めた。
「ゆ、ユラさん?」
「焦るな。お前はまだ魔力の扱いに慣れてねぇんだから、落ち着いて、深呼吸。ほら」
「は、はい」
ここで暴走なんてされたら溜まったものじゃない。
心を落ち着けているためだろう、目を閉じたユウイチを目の端で確認して、火曜日水曜日コンビに道中はユウイチとマンディの正体は隠すことを伝える。
「ユウイチという名前はまあ、珍しいが東の端にはそういう感じの名前のやつらがいるからそのままでかまわん。マンディのことは『ルナ』と呼んでくれ」
「ルナ?」
「ああ、ユウイチが決めた名だ。月を示す言葉だとかなんとか」
グレイシアもヤンもわかったと短く頷いた。各々のドールにもそう呼ぶように伝え「イエス、マイマスター」との返事もきこえる。
こんな会話をしている間に準備が整ったらしいユウイチが「いきます」と杖に魔力を通し始めた。
「視るぞ」と声をかけると「お願いします」と返ってくる。
他にバレないようにユウイチの魔力を視ると、体から手、手から杖、そしてまた手にもどし体を通す、完璧な循環をしていた。
改めて、とんでもねぇなこいつ。
昨日の一瞬でこの才能に見合う杖を用意したヤンも大概だが。
「うん、問題ないね。綺麗に巡ってる。さすが僕の杖ちゃん!」
ユウイチが魔力を通した後の杖をみてヤンは満足そうに微笑む。
ユウイチは無事にできたことにホッとしているようだった。
「ユウイチ、お前はどうだ。使いにくいとかなかったか」
「はい。昨日よりずっと手に馴染む感じがありました。す、すごいですね、ヤンさんの杖」
「そうだよ!なんてったって僕の杖ちゃんは世界一だからね!」
褒められたことに嬉しそうにヤンが笑う。
その様子を、少し離れたところからまた少し嬉しそうにチューズディが見ていた。
その視線にヤンが気付いて振り返ると、チューズディはぷいっとそっぽを向く。
こいつらの距離感は、俺にはいまだによくわからない。
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