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「十時出発のお客様、どうぞご乗車くださーい」
今日の行者は若いな。成人したばかりだろうか。少し幼さののこる顔をした行者が、馬車の入り口でチケットの確認をしている。
「ユウイチ君、貴方の世界での馬車がどんなもんだったかはしらないけれど、ここの長距離用馬車の馬は魔物なのよぉ」
馬車に繋がれている通常の馬の二倍近い大きさの馬に目を開いていたユウイチに、グレイシアがニコニコと話しかける。
「だからね、行者もテイマーっていって、魔術師の一種なのよぉ。今日の子はかなり若いけれど、きっと優秀なのねぇ」
「そう、なんですね」
ユウイチはまだ少し呆けた顔で、まだ馬を見ている。怖がっているわけではなさそうだ。
「マスター」
「なんだ、フライディ」
「マスターって、自覚ないかもしれないっすけど、過保護っすよね」
「あ⁉︎」
フライディがにや、と笑う。
「僕、マスターのそういうなんだかんだで世話焼きなとこ好きっすよ!あっいた!なんで叩くんすか⁉︎」
「わかったような顔で阿呆なこというからだ」
こちらの会話はユウイチ達には聞こえてなかったらしく、グレイシアとユウイチは俺を見て不思議そうに(グレイシアは微笑んだまま)首を傾げていた。
***
「にしても、ユウイチくんの魔術の才能ってすごいわねぇ。そっちの人はみんなそうなのかしらぁ?」
動き始めた馬車の中で、グレイシアがそう言ったが、ユウイチは困ったように「」ええと……」と返す。
「比較対象外ねぇからな。そっちじゃユウイチの周りで魔術使うようなやつはいなかったんだろ?」
「はい。……それに、俺に、才能があるのかというのも、正直、自覚も自信もないので……」
基本のところを本で読んでいるからか、自分が比較的習得が早い方だというのは理解はしているようだが、この二日で思うに、どうにもこいつは自分に対して【自信がない】傾向が強い気がしている。元の世界で何かあったのか、もともとの性格なのか、この世界に連れてこられたからなのか。
「そのさぁ、体に纏った『僕なんか』っていう思考やめてくんない?」
ヤンが突然不機嫌そうに言った。お前さっきまでこっち向かず杖と楽しそうに語り合ってたんじゃねぇのか。
「え、と」
「僕の杖ちゃん使うんだよ?しかも君用にカスタマイズしたスーパー杖ちゃんだよ?もっと俺は天才ですくらいの気概でいて欲しいもんだね」
杖を適切に扱わない魔術師が大嫌いだとヤンは公言している。それにはどうやら自信ないまま使うというのも含まれているようだ。
「まあまあ。ユウイチくんはこっちにきたばかりで、まだ生活基盤だって不安定なんだからぁ。魔術だって使ったばかりでしょぉ?もう少し猶予があってもいいと思うわぁ」
グレイシアの言葉に、ヤンは「それとこれとは別だね」と言ったものの、それ以上はユウイチに何か言うわけでもなく、また杖との世界に戻っていった。
ユウイチは、俯いたまま、手を組んで黙っている。
「ねぇ、答えたくなければ答えなくても構わないのだけれど」
そんなユウイチにグレイシアがいつものようにおっとりと声を掛けた。
「ユウイチくん、前いた場所で何かあったのぉ?」
「え?」
「本を読むスピードも、それを理解することも、魔術を扱うこともね。私からすると、ユウイチくんはかなり優秀な部類にはいるのよぉ。けれど、ユウイチくんはどうしても自分に自信がなさそうだから、何かあったのかしら、と思って」
ユウイチは、また困ったように眉を下げたが、あの、その、と少し言い淀んだ後に、「オタクって、こっちにもある言葉ですか?」と聞いてきた。
今日の行者は若いな。成人したばかりだろうか。少し幼さののこる顔をした行者が、馬車の入り口でチケットの確認をしている。
「ユウイチ君、貴方の世界での馬車がどんなもんだったかはしらないけれど、ここの長距離用馬車の馬は魔物なのよぉ」
馬車に繋がれている通常の馬の二倍近い大きさの馬に目を開いていたユウイチに、グレイシアがニコニコと話しかける。
「だからね、行者もテイマーっていって、魔術師の一種なのよぉ。今日の子はかなり若いけれど、きっと優秀なのねぇ」
「そう、なんですね」
ユウイチはまだ少し呆けた顔で、まだ馬を見ている。怖がっているわけではなさそうだ。
「マスター」
「なんだ、フライディ」
「マスターって、自覚ないかもしれないっすけど、過保護っすよね」
「あ⁉︎」
フライディがにや、と笑う。
「僕、マスターのそういうなんだかんだで世話焼きなとこ好きっすよ!あっいた!なんで叩くんすか⁉︎」
「わかったような顔で阿呆なこというからだ」
こちらの会話はユウイチ達には聞こえてなかったらしく、グレイシアとユウイチは俺を見て不思議そうに(グレイシアは微笑んだまま)首を傾げていた。
***
「にしても、ユウイチくんの魔術の才能ってすごいわねぇ。そっちの人はみんなそうなのかしらぁ?」
動き始めた馬車の中で、グレイシアがそう言ったが、ユウイチは困ったように「」ええと……」と返す。
「比較対象外ねぇからな。そっちじゃユウイチの周りで魔術使うようなやつはいなかったんだろ?」
「はい。……それに、俺に、才能があるのかというのも、正直、自覚も自信もないので……」
基本のところを本で読んでいるからか、自分が比較的習得が早い方だというのは理解はしているようだが、この二日で思うに、どうにもこいつは自分に対して【自信がない】傾向が強い気がしている。元の世界で何かあったのか、もともとの性格なのか、この世界に連れてこられたからなのか。
「そのさぁ、体に纏った『僕なんか』っていう思考やめてくんない?」
ヤンが突然不機嫌そうに言った。お前さっきまでこっち向かず杖と楽しそうに語り合ってたんじゃねぇのか。
「え、と」
「僕の杖ちゃん使うんだよ?しかも君用にカスタマイズしたスーパー杖ちゃんだよ?もっと俺は天才ですくらいの気概でいて欲しいもんだね」
杖を適切に扱わない魔術師が大嫌いだとヤンは公言している。それにはどうやら自信ないまま使うというのも含まれているようだ。
「まあまあ。ユウイチくんはこっちにきたばかりで、まだ生活基盤だって不安定なんだからぁ。魔術だって使ったばかりでしょぉ?もう少し猶予があってもいいと思うわぁ」
グレイシアの言葉に、ヤンは「それとこれとは別だね」と言ったものの、それ以上はユウイチに何か言うわけでもなく、また杖との世界に戻っていった。
ユウイチは、俯いたまま、手を組んで黙っている。
「ねぇ、答えたくなければ答えなくても構わないのだけれど」
そんなユウイチにグレイシアがいつものようにおっとりと声を掛けた。
「ユウイチくん、前いた場所で何かあったのぉ?」
「え?」
「本を読むスピードも、それを理解することも、魔術を扱うこともね。私からすると、ユウイチくんはかなり優秀な部類にはいるのよぉ。けれど、ユウイチくんはどうしても自分に自信がなさそうだから、何かあったのかしら、と思って」
ユウイチは、また困ったように眉を下げたが、あの、その、と少し言い淀んだ後に、「オタクって、こっちにもある言葉ですか?」と聞いてきた。
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