the Dool and the Dool

名もなき萌えの探求者

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「あらぁ、その子がマンディのマスター?」

 ホテルに到着すると、筋肉隆々の化粧をした男性が立っていて、ユウイチは固まった。
 そんなユウイチの背中をぽんと叩く。

「大丈夫だ。こいつはドール、サタディだ。怪しいものでも怖いものでもねぇよ」
「あらやだフライディのマスター、失礼しちゃうわね」

 口調こそ怒っているものの、サタディは本気で気分を害したわけでもなく、こっちがお部屋よ、と案内を始めた。
 案内された部屋には、ソファの上に柔らかく微笑む男と仏頂面のイーサンによく似た男が座っていた。

「微笑んでいるのがエリオット、むっとしているのがサンディよぉ」

 グレイシアがユウイチにそう説明すると、エリオットが座ったまま「はじめまして、マンディのマスターくん」と言った。サンディはユウイチやマンディをチラッとみた後、すくっと立ち上がりイーサンに抱きついた。

「ひどいよひどいよ、僕を置いて行くなんてマスターのばかっ!寂しかっただろ!」
「ごめんよサンディ、でもキミの怪我が心配だったんだって知っているでしょ?」
「それは知ってる。怪我したのは僕のミスだ。ごめんなさい」
「いいんだよ。愛してるよサンディ」

 茶番、そして濃厚な、ディープキス。
 サンディも変わらねぇな…と思いつつ、ユウイチをみると、また赤面して固まってやがる。やることやってもウブだなこいつ。

「さぁさ、とりあえずみんな座りましょうよ。ワタシお茶をいれてくるわ。ウェンズディ、フライディ手伝ってもらえないかしら」
 ぱんっと一つ手を叩いてサタディがそう言った。同時にウェンズディとフライディがそれぞれのマスターを見たので、
「お手伝いお願いねぇ」
「手伝ってこい」

 と伝えると、二人は「イエス、マイマスター」と微笑んで、サタディに着いて行く。

 程なくして運ばれてきたお茶がテーブルに置かれたのをきっかけに、イーサンが「困ったことになったんだよねぇ」と切り出した。

「そもそも、僕のサンディが怪我で動けないなんて、普通に考えたらありえないのわかるでしょ?」

 イーサンの言葉に、魔術師たちは全員黙って頷いた。
 サンディは現時点で最強と言われているドールだ。扱える魔力量、コントロール、剣術体術に至るまで、比べては悪いがフライディでは全く歯が立たない。
 そして、ドールは総じて人間よりもずっと回復能力が高いため、長期間動けなくなるなんていうのは、魔力切れ以外に早々あるものではないのだ。回復能力は、そのドールの能力に依存するため、サンディはドールの中でも回復スピードがずば抜けて速いはず。

「サンディ、怪我のところ見せてあげてくれる?」
「イエス、マイマスター」

 イーサンの指示通りにサンディが袖と裾を捲り上げる。
 腕と足には焼き爛れたような傷が出来上がっていた。

「これは、魔力焼け?でもなんでドールに……」

 グレイシアが眉を寄せてその傷を観察する。
 魔力焼けは、体内外の魔力によって火傷のような症状が出ることをいう。
 主に自分の力量を見誤って実力以上の魔術を使おうとした時や、魔術師の才能のある幼い子どもがうまく使えずに魔力を暴走させた時などにできるものだ。あとは他者の魔力を操るのを失敗した時か。
 なんにせよ、ドールはもともとマスターから魔力を供給されそれを扱う。内包できる魔力量もドールごとに決まっていて、扱える魔力量も決まっている。それの魔力量を満たせるかどうかはマスターの能力に依存するが、基本的に暴走させることはないし、マスター以外の魔力を扱うこともない。つまり、ドールが【魔力焼け】を負うことは、基本的にはあり得ないのだ。

「ユウイチ君が現れたと同時ぐらいにね、聖女の宮に、魔力の塊が現れたんだよね。あ、ユウイチくん、聖女の宮っていうのはこの世界における魔術師の開祖と言われている女性を祀っている場所のことだよ。いつも思うんだけどさ、この世界ですごく権利を持つ僕ら魔術師の開祖が女性なのに、なんでこの世界の女性って地位が低いんだろ。不思議じゃない?不思議だよね。いやまあ、今はそれはいいか。とにかく、そんな大事なところに突如原因不明の魔力の塊が出たものだから、まあ、結構な騒ぎになったわけだよ。で、たまたま動けたエリオットと僕がドール連れて見に行ったんだけど」

 イーサンはお茶を一口飲んだ。

「その魔力の塊がね、サンディを襲ったんだ」
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