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第1話
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この国の王子の伴侶に選ばれた俺が、最初にかけられた言葉は、「可哀想にな」だった。それに対して俺が返せたのは…。
「エッッッッロ……」
「は?……え?」
我が国の王族には、「耳付き」と呼ばれるうさぎの耳を持った子が時々生まれる。
どういうわけか、耳付きに子ができると不吉なことが起きるといい、いつからか耳付きには同性の伴侶、そして召使いも全て同性という決まりができた。
そして、異形の姿というのは受け入れられ難いのが世の常だ。仮にも一国の王子の伴侶に辺境の弱小貴族の末席の俺にその役目が回ってきたのだから、本当お察し。
まあ、別に俺は家を継ぐわけでも嫁が欲しいわけでも子が欲しいわけでもなかったので軽い気持ちで了承し、(王命だしね)今に至る。
にしても、目の前にいる王子様、フィズ殿下とお呼びした方がいいかね。びっくりするほど、エロい。
思わず「エロ」と本音が口からぽろっとこぼれたもんだからフィズ殿下は固まった。
「あ、すんません」
いや、でも本当に。
成人したばかりのはずの目の前の殿下は、薄い布を数枚重ねたラフな格好で、絶妙にはだけた胸元には長く美しい銀髪が少しかかって、とんでもない色気の塊としてそこに座っていたのだ。手に持った煙管がまた、絶妙に良い味を出している。
「あまりに殿下が色っぽかったもので、つい……」
俺の言葉に、王子は数度目をパチクリさせてから、ぷい、と横をむいた。
「馬鹿なことを」
「いや、本音です」
素直にそう続けると、王子はそっぽをむいたままこちらを見てくれなくなった。
「……」
「……」
そしてしばらくの沈黙。
どうすっかなぁと頭を掻いてから、そうだ、と思いつく。
「あの」
「……、なんだ」
「さっきの、可哀想ってなんっすか」
会うなり投げかけられた言葉。王子は、はっと自嘲するように笑ってから、そのままの意味だ、と言う。
「と、言いますと」
「こんな化け物に嫁がされるなんて、生贄に選ばれたみたいなもんだろう」
「フィズ殿下!」
そばに控えていた、黒髪の青年が咎めるように止めるが、王子様は何も間違ってないだろう、というようにまた笑った。
「えー、っと」
俺はぽりぽりと頬を掻いて、
「俺、殿下のお好みの顔じゃなかったっすかね?」
「……は?」
本日二度目の「は?」いただきました。
「いや、美男ではない自覚はあるんですけど、よく塩顔とか言われますし」
「いや、おい」
「殿下は美人なので、鏡を見慣れていたら、まあ確かに俺の顔だと残念だったかなーとは思いますが」
「こら、何の話をしている」
「いえ、ご自身のことを生贄だの化け物だのと殿下が仰るので、俺との結婚がいやでわざとそんな態度をしているのかと。で、まだあったばかりなのに嫌われるとしたら、顔かなーって」
俺がそういうと、殿下はぽかんと口を開けて、側控えの青年はぶふっと吹き出した。
「殿下、殿下この男は信頼できそうですよ」
笑いながらの青年の言葉にハッと我に帰ったらしい殿下は、しばらく何を言うかと迷っているようにパクパク口を動かしてから、「…もういい、下がれ」と手をしっし、と俺に向けて振った。
「エッッッッロ……」
「は?……え?」
我が国の王族には、「耳付き」と呼ばれるうさぎの耳を持った子が時々生まれる。
どういうわけか、耳付きに子ができると不吉なことが起きるといい、いつからか耳付きには同性の伴侶、そして召使いも全て同性という決まりができた。
そして、異形の姿というのは受け入れられ難いのが世の常だ。仮にも一国の王子の伴侶に辺境の弱小貴族の末席の俺にその役目が回ってきたのだから、本当お察し。
まあ、別に俺は家を継ぐわけでも嫁が欲しいわけでも子が欲しいわけでもなかったので軽い気持ちで了承し、(王命だしね)今に至る。
にしても、目の前にいる王子様、フィズ殿下とお呼びした方がいいかね。びっくりするほど、エロい。
思わず「エロ」と本音が口からぽろっとこぼれたもんだからフィズ殿下は固まった。
「あ、すんません」
いや、でも本当に。
成人したばかりのはずの目の前の殿下は、薄い布を数枚重ねたラフな格好で、絶妙にはだけた胸元には長く美しい銀髪が少しかかって、とんでもない色気の塊としてそこに座っていたのだ。手に持った煙管がまた、絶妙に良い味を出している。
「あまりに殿下が色っぽかったもので、つい……」
俺の言葉に、王子は数度目をパチクリさせてから、ぷい、と横をむいた。
「馬鹿なことを」
「いや、本音です」
素直にそう続けると、王子はそっぽをむいたままこちらを見てくれなくなった。
「……」
「……」
そしてしばらくの沈黙。
どうすっかなぁと頭を掻いてから、そうだ、と思いつく。
「あの」
「……、なんだ」
「さっきの、可哀想ってなんっすか」
会うなり投げかけられた言葉。王子は、はっと自嘲するように笑ってから、そのままの意味だ、と言う。
「と、言いますと」
「こんな化け物に嫁がされるなんて、生贄に選ばれたみたいなもんだろう」
「フィズ殿下!」
そばに控えていた、黒髪の青年が咎めるように止めるが、王子様は何も間違ってないだろう、というようにまた笑った。
「えー、っと」
俺はぽりぽりと頬を掻いて、
「俺、殿下のお好みの顔じゃなかったっすかね?」
「……は?」
本日二度目の「は?」いただきました。
「いや、美男ではない自覚はあるんですけど、よく塩顔とか言われますし」
「いや、おい」
「殿下は美人なので、鏡を見慣れていたら、まあ確かに俺の顔だと残念だったかなーとは思いますが」
「こら、何の話をしている」
「いえ、ご自身のことを生贄だの化け物だのと殿下が仰るので、俺との結婚がいやでわざとそんな態度をしているのかと。で、まだあったばかりなのに嫌われるとしたら、顔かなーって」
俺がそういうと、殿下はぽかんと口を開けて、側控えの青年はぶふっと吹き出した。
「殿下、殿下この男は信頼できそうですよ」
笑いながらの青年の言葉にハッと我に帰ったらしい殿下は、しばらく何を言うかと迷っているようにパクパク口を動かしてから、「…もういい、下がれ」と手をしっし、と俺に向けて振った。
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