うさぎのキスは少々苦い

名もなき萌えの探求者

文字の大きさ
1 / 19

第1話

しおりを挟む
 この国の王子の伴侶に選ばれた俺が、最初にかけられた言葉は、「可哀想にな」だった。それに対して俺が返せたのは…。
「エッッッッロ……」
「は?……え?」




 我が国の王族には、「耳付き」と呼ばれるうさぎの耳を持った子が時々生まれる。
 どういうわけか、耳付きに子ができると不吉なことが起きるといい、いつからか耳付きには同性の伴侶、そして召使いも全て同性という決まりができた。
 そして、異形の姿というのは受け入れられ難いのが世の常だ。仮にも一国の王子の伴侶に辺境の弱小貴族の末席の俺にその役目が回ってきたのだから、本当お察し。
 まあ、別に俺は家を継ぐわけでも嫁が欲しいわけでも子が欲しいわけでもなかったので軽い気持ちで了承し、(王命だしね)今に至る。
 にしても、目の前にいる王子様、フィズ殿下とお呼びした方がいいかね。びっくりするほど、エロい。
 思わず「エロ」と本音が口からぽろっとこぼれたもんだからフィズ殿下は固まった。

「あ、すんません」

 いや、でも本当に。
 成人したばかりのはずの目の前の殿下は、薄い布を数枚重ねたラフな格好で、絶妙にはだけた胸元には長く美しい銀髪が少しかかって、とんでもない色気の塊としてそこに座っていたのだ。手に持った煙管がまた、絶妙に良い味を出している。

「あまりに殿下が色っぽかったもので、つい……」

 俺の言葉に、王子は数度目をパチクリさせてから、ぷい、と横をむいた。

「馬鹿なことを」
「いや、本音です」

 素直にそう続けると、王子はそっぽをむいたままこちらを見てくれなくなった。

「……」
「……」

 そしてしばらくの沈黙。
 どうすっかなぁと頭を掻いてから、そうだ、と思いつく。

「あの」
「……、なんだ」
「さっきの、可哀想ってなんっすか」

 会うなり投げかけられた言葉。王子は、はっと自嘲するように笑ってから、そのままの意味だ、と言う。

「と、言いますと」
「こんな化け物に嫁がされるなんて、生贄に選ばれたみたいなもんだろう」
「フィズ殿下!」

 そばに控えていた、黒髪の青年が咎めるように止めるが、王子様は何も間違ってないだろう、というようにまた笑った。

「えー、っと」

 俺はぽりぽりと頬を掻いて、

「俺、殿下のお好みの顔じゃなかったっすかね?」
「……は?」

 本日二度目の「は?」いただきました。

「いや、美男ではない自覚はあるんですけど、よく塩顔とか言われますし」
「いや、おい」
「殿下は美人なので、鏡を見慣れていたら、まあ確かに俺の顔だと残念だったかなーとは思いますが」
「こら、何の話をしている」
「いえ、ご自身のことを生贄だの化け物だのと殿下が仰るので、俺との結婚がいやでわざとそんな態度をしているのかと。で、まだあったばかりなのに嫌われるとしたら、顔かなーって」

 俺がそういうと、殿下はぽかんと口を開けて、側控えの青年はぶふっと吹き出した。

「殿下、殿下この男は信頼できそうですよ」

 笑いながらの青年の言葉にハッと我に帰ったらしい殿下は、しばらく何を言うかと迷っているようにパクパク口を動かしてから、「…もういい、下がれ」と手をしっし、と俺に向けて振った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

番に見つからない街で、子供を育てている

はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。 異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。 現世の記憶は失われているが、 この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。 街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、 ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。 だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。 再会は望まない。 今はただ、この子との生活を守りたい。 これは、番から逃げたオメガが、 選び直すまでの物語。 *本編完結しました

灰かぶりの少年

うどん
BL
大きなお屋敷に仕える一人の少年。 とても美しい美貌の持ち主だが忌み嫌われ毎日被虐的な扱いをされるのであった・・・。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

敗戦国の王子を犯して拐う

月歌(ツキウタ)
BL
祖国の王に家族を殺された男は一人隣国に逃れた。時が満ち、男は隣国の兵となり祖国に攻め込む。そして男は陥落した城に辿り着く。

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

従僕に溺愛されて逃げられない

大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL! 俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。 その傍らには、当然のようにリンがいる。 荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。 高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。 けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。 当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。 居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。 さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。 主従なのか、恋人なのか。 境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。 従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。

魔王に飼われる勇者

たみしげ
BL
BLすけべ小説です。 敵の屋敷に攻め込んだ勇者が逆に捕まって淫紋を刻まれて飼われる話です。

処理中です...