みんな大好き、中華料理

佐山ぴよ吉

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 まな板を洗いながら無言でドーム状に盛り付けられたチャーハンにレンゲを入れる佳奈を横目で見る。
 こうしてご飯をせびるだけならばただの可愛い妹なのに。
 佳奈は中華料理が好きらしいけれども、彼氏にはあまり連れて行って貰えないらしい。それよりも高級フレンチやビストロやホテルの夜景が綺麗なBARなんかによく行っているようだった。佳奈のSNSにはその様子が良く載っている。
 そんな所に行けるんだったら高級中華料理店にでも連れて行って貰えばいいと思うのだが、佳奈が食べたいのは中華料理の中でも大衆食堂で出るような唐揚げや焼きそばのような脂ぎっていてニンニクと胡椒の効いたジャンクな味付けのものらしい。一人で堂々と大衆中華食堂に入れない佳奈は私に中華をよくせびるようになった。

 そんなのが好きでも週一でサロンに通って艶々の髪とネイルでモリモリの爪、そして綺麗な透明感のある肌を保っていられるのは凄い努力の結果だと思う。全部親の人のお金だけど。

「ねえ、お姉ちゃん」
「なに?」

 お皿を洗っていると、頬杖を付きながらスマホを弄っていた佳奈がおもむろにこちらに話しかけてきた。
 嫌な予感しかない。内心ビクビクしながら返事をする。

「お姉ちゃんの大学って偏差値30ぐらいでも行けるんだよね」
「うんっ!?ンンっ?ど、ど、どうかな、努力次第かな」
「あたしは今年入りたいの。来年は、卒業しちゃうから……」

 卒業?誰が……?
 佳奈の新しい彼氏かな?

「そ、そう。出願はもう始まってるんじゃないかな。後期だったらまだ確実に間に合うと思うけど……」
「もう出願はしてるに決まってるでしょ。お姉ちゃんってバカだよね。やっぱり勉強しなくてせーかいだったかも。パパとママも言ってたの。お姉ちゃんが行ける所なんて目指す価値もないって。でもそれって、逆に言えばあたしなららくしょーってことだよね」

 私の大学の偏差値は私が受験した年は50位だったと思う。私は推薦で受かっていたので詳しくは知らないが。
 偏差値30ぐらいだと言う佳奈がそれでも受けたいと思うぐらい本気の彼氏なのか……うちの大学で、今3年生の……?

「……あっ!そっか。もしかして、高蔵君と同じ大学に入りたいの?」
「お姉ちゃん、綾斗君のこと知ってるの!?なんでっ!?」

 知ってるも何も、佳奈がけしかけてきたんじゃないか。

「なんでって……まぁ、空手で有名だし。同じ研究室だし」
「ケンキューシツって何?怪しいコトしてそう。お姉ちゃん、あたしの綾斗君に変なコトしないでよ!」
「頼まれたってしたくないよ……」

 逆に変な事してくるのはあっちの方だ。
 お陰でこの2週間、いつあの鋭い蹴りで首を狩られるのか冷や汗ものだったのだ。
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