みんな大好き、中華料理

佐山ぴよ吉

文字の大きさ
13 / 77

13

しおりを挟む
 その10分後位に誰かが猛烈にピンポン連打しながらドアを叩き、外で何か騒いでいる。高蔵君の声だ。
 そういえば佳奈が来た事で忘れていたけれども、トイレから逃げて来たんだった。

 佳奈よりも恐ろしい奴が来てしまった。
 佳奈と関係していることがほぼ確実になった今、高蔵君への好意はマイナスだったものがさらに落ち込んで下げ止まる所を知らない。
 一刻も早く縁を切りたいが、卒業の為にとりあえず2月14日は駅の噴水まで行ってもらわないと。
 鍵を開けてドアを開けると、珍しく息を切らした高蔵君が勢いよく襲いかかってきた。

「琴子っ!!滅茶苦茶探したんだよ!女子トイレにも、学校にも居ないし!」
「探さなくてもいいのに」
「そんな訳に行くかよ!琴子に、嫌われたかと思って……研究室で勝手に皆にばらしたこととか、昨日まで琴子の事1回もイかせられなかったこととかっ!」

 そんな事玄関で大声で言わないで欲しい。
 あと高蔵君の事は今日嫌いになったんじゃなくて1週間前から嫌いになっているから安心して欲しい。
 高蔵君は器用にも涙を潤ませて捨てられた子犬のような表情になっている。大きな体で厳つい顔のくせに。このギャップできっと数々の女の子のハートをキュンっとさせてきたのだろう。
 さすがの私でも慰めたくなってしまう。

「大丈夫だよ。高く、」
「綾斗」
「……綾斗」

 優しい口調で言おうとしたのに射殺さんばかりの視線で遮られて言い直される。高蔵君の腕に力が入り、背骨がミシミシ言っている。

「あ、綾斗、とりあえず、ご飯作るから離して」
「もうちょっとこうしてたい。琴子、琴子……琴子、俺の事嫌いにならないで」
「……うん。大丈夫だよ。綾斗の事、嫌いにならないよ」

 高蔵君への好感度はもう既に地よりも深く落ちているので恐らくこれ以上嫌いになる事は無いだろう。

「本当に?琴子……俺の事、嫌いにならない?」
「うん、本当だよ」
「琴子、大好き。卒業してもずっと一緒だよ」

 はいはい。そんな嘘はもうお見通しなんだよ。

 心の中で勝ち誇ったように独りごちるが、体は恐怖で引き攣ったままだ。
 高蔵君が私を抱き締めたまま軽々と抱えてソファーベッドに向かう。

「どうしてあんな所から逃げ出したの?」

 高蔵君が座って私の肩を抱きながら聞いてくる。

「えっと、ちょっと用事思い出して……」
「ふーん。なんの用事?」
「その、色々、就活とかで……あっ!綾斗は、今就活中だよね?どこ目指してるの?」

 無理やりだが話題を変えよう。

「琴子と同じ会社に行きたい……琴子はどこに内定貰ったの?俺まだ聞いてないんだけど」
「……そうだったっけ」
「誤魔化さないで。琴子の妹にも聞いたけど、もしかしてまだ決まってないの?」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

つかまえた 〜ヤンデレからは逃げられない〜

りん
恋愛
狩谷和兎には、三年前に別れた恋人がいる。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

女の子がほとんど産まれない国に転生しました。

さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。 100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳 そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。 当面は2日に1話更新予定!

思い出さなければ良かったのに

田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。 大事なことを忘れたまま。 *本編完結済。不定期で番外編を更新中です。

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

17歳男子高生と32歳主婦の境界線

MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。 「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく…

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

処理中です...