みんな大好き、中華料理

佐山ぴよ吉

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 一つだけ困ったのは、禁欲していても高蔵君がご飯目当てにアパートにやってくる事だった。
 まだあの動画は提出していないようだ。かと言って人の目に触れさせて欲しくはないから早く提出して欲しいとも言えない。

 引越しを勘づかれて佳奈に就職先がバレてしまうのは一番困る。だから高蔵君の目に留まるところでは荷造り出来ない。
 向こうで住む場所はネットで保証人が無くても借りれそうな所に目星をつけていた。少し割高になってしまいそうだが致し方ない。ここから無事に脱出することが最優先だ。
 とりあえず今週の日曜日──2月14日に物件探しに行く予定だ。

 佳奈には早く高蔵君の手綱をがっちり握りしめて貰いたい。そのためには、まずはバレンタインデーデートを成功して貰わなければ。

 高蔵君がトレーニングに勤しんでいるのは、相手を秒殺して早く試合を終わらせるためらしい。
 高蔵君ならやり遂げそうだけれど、本当に大丈夫なんだろうか。
 トーナメント戦なんだから高蔵君が早く終わったって相手が終わらなければ試合はできないだろう。
 しかも高蔵君はシード権があるそうなので出番は遅いらしい。早く終わらせるために早く負けてくれなんて事も言えないし……

 佳奈に試合の場所まで行って貰う?
 しかし佳奈が私の言葉を理解してちゃんと聞いてくれるのかは怪しい。それに聖クリスチアーノ・セントラルプラウド競技場なんてあの佳奈が覚えきれる訳が無い。なんであんな長ったらしい名前の競技場でやるんだ。
 待ち合わせの時間をずらせれば良いんだけど……。
 けれどもそもそも私は佳奈の連絡先を知らない。以前SNSで連絡した事はあるけれどもメッセージは読まれないままに私のアカウントは何故か凍結させられてしまった。それからは見るだけにしている。
 家に来るのはいつも佳奈の都合のいい時だけ急に来るから、次にいつ来るのかは分からない。

 でもきっと高蔵君だったら連絡先を知ってるかも。

「綾斗。あのね、お願いがあるんだけど……」

 今日は水曜日。高蔵君は今週から毎晩夕飯をお腹いっぱい食べた後、セックスはしないが私を抱き締めて眠る。
 今晩も私をきつく抱き締めて胸の谷間に顔を埋めていた。

「優勝したらプロポーズ優勝したらプロポーズ優勝したらプロポーズ優勝したらプロポーズ……ん?何か言った?」

 胸から顔を離させると高蔵君が何かずっと呟いていた。
 佳奈とはもうそんな関係まで進んでいるのか。

 佳奈はきっと優勝しなくてもプロポーズすればOKしてくれると思うけど……

 佳奈は大学を目指すよりも将来有望な旦那さんを作った方が確実に上手く行くと思うから高蔵君には是非とも頑張って貰いたいものだ。

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