みんな大好き、中華料理

佐山ぴよ吉

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 上手く行けば高蔵君のしなやかな筋肉が上手いこと佳奈を丸め込んでくれると思っていたがそう上手くはいかないみたいだ。

 でも待てよ。これは好機でもある。
 高蔵君が大好きな佳奈の嫌がらせは、その高蔵君が結婚を考えている女の人に矛先が向くかもしれない。その人には申し訳ないが私の代わりに佳奈の標的になってくれはしないだろうか。

 そんな事を考えていると、高蔵君は私の目の前にスマホの画面を押しつけた。

「琴子。証拠に、これ見て」

 表示されているのはメッセージアプリのトーク画面だ。
 相手のアカウント名は『♡kana♡』となっており、真夏の日差しの白い砂浜で白い水着を着た清楚系美人の佳奈の写真がアイコンになっている。

 間違いなく佳奈のアカウントだ。

 高蔵君は私の目の前で、迷いなく佳奈に『もう連絡しないで下さい。ブロックします』と送り付けた。

「えっ……えっ!なんで!まって!」

 すぐさま佳奈の既読が着いた。
 高蔵君のスマホを取ろうとして手を出すと、逆にその手を握りしめられる。

「高蔵君、やめて。今からでも取り消せるよ!既読着いたけど、ちゃんと説明すれば……」

 お構いなしに高蔵君がブロックボタンを押そうとした矢先、スマホに着信が来た。佳奈からメッセージアプリを通じての着信だ。
 高蔵君はチッと舌打ちしてから通話ボタンを押した。
 とても不機嫌そうな声で電話に出ている。

 ダメだよ、高蔵君!その子は未来のお嫁さん候補なんだから、もうちょっと愛想良く!

 叫びたいけれども私が高蔵君と一緒にいることがバレたら卒業妨害だけではきっと済まされないだろう。

「……ああ。……駄目だ。……いや……いや。何回も言った筈だけど、君とは無理だ。もう会いたくない。連絡もしないでほしい。これ以上付き纏うようなら警察に相談させてもらう」

 高蔵君が今まで聞いたことの無い位冷たい声で言い放った。スマホの通話スピーカーから佳奈の声が少しだけ聞こえてくる。すすり泣いているようにも聞こえる。
 そしてとどめと言わんばかりに、私の手を握りしめる力を強めてこう言った。

「ちゃんと前にも言ったけど、俺は君のお姉さんの琴子さんと結婚するつもりだ。だから君とは付き合えない。じゃあ」

 ──コトコサントケッコンスルツモリダ。

 ──『琴子さんと結婚するつもりだ』?

 佳奈からの返事を聞くこと無く高蔵君は通話を切った。
 そしてぽかんとしている私の目の前で佳奈のアカウントをあっさりとブロックした。

「そういう訳だから。もう琴子の妹とは何も関係ないよ。他のメッセージ系アプリも使ってないし。もう何も問題ないよね。だからこれ……受け取って欲しい」
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