みんな大好き、中華料理

佐山ぴよ吉

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琴子視点

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 産む産まないの選択肢は私1人にある。
 高蔵君とはもう関わらないと決めたのだから。
 真理恵さんとも約束したのだから。

 今の所堕ろすつもりも、認知して貰うつもりも無い。

 だって、高蔵君と行為をする時点でこうなるかもしれないなんて事は分かっていた。

 この先私が男の人と付き合うことは一生無いと思う。それは、井口先輩に以前個室居酒屋で好きだったと言われた時にそう思った。あんなに尊敬していた先輩に好意をぶつけられても気持ち悪いとしか思えなかった。
 けれどもその事は抜きで子供は欲しいと思っていた。どのみち私は恋愛しないまま子供を作っていただろう。
 それが少しだけ早まっただけだ。

 私だけの、たった1人の家族。
 産みたい。

 けれども心配なのは、私にもしも何かあったらどうするかという事だ。
 出産の時点で何事も無いとも言いきれないし、幼い子供を育てるのがどんなに大変かはよく聞く。

 でも今はシングルマザーなんて珍しくも無いしなぁ。
 皆どうやって育てているんだろう?

 誰かに相談出来ればいいのに。

『琴子ちゃん、病院どうだった?』

 遼子さんからメッセージが来ていた。
 病院の帰りに公園のベンチに座り、砂場で遊ぶ小さな子供達をぼうっと眺めている私は不審者さながらだ。

『少し貧血気味なだけでした。ご心配をおかけしました』

 遼子さんの周りになら、もしかしたら相談できる人もいるのかもしれない。けれども直ぐに職場の人に妊娠の事を話すのは躊躇われた。

『本当に?もしかしてだけど、おめでただったりしないの?』

 最初の病院は遼子さんが連れ添ってくれたので、私が産婦人科に紹介されたのはもう知られてしまっている。

『すみません』

 本当の事を言ってもいいのか分からなくて、けれども嘘をついてしまったことが後ろめたくてただそう送った。

『どうして謝るの?琴子ちゃんは何も悪い事してないでしょ!それに、おめでたなんだったら私も嬉しい!私、こう見えても子供いるのよ。旦那とは死別してシングルマザーなんだけど』

 遼子さんが、シングルマザー。
 確かにそうであっても可笑しくない年齢ではある。
 でも、結婚していたのすら知らなかった。

『私、どうしたらいいのか分からなくて。相談させて貰ってもいいでしょうか?』
『なんでも相談のるわよ。今晩私の部屋にいらっしゃい』


 遼子さんのマンションには中学生の息子さんがいらっしゃった。
 お邪魔した時には丁度夕飯が終わったところだった。

「初めまして。琴子オバさん」
「は、初めまして……」

 一応まだ22歳だけれども中学生にとってはオバさんだよなぁ……。
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