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二人に捧げる福音を-Side:誠実-
▲08▼ 隣、座って
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誠実は自室で、学校から出された課題を終えた後、さらに予習・復習に励んでいた。
学校の寮に帰る準備はもう済ませてあるので、あとは勉強道具さえ片付ければ、いつでも帰れる状態である。
と、ふいに、扉をノックする音が聞こえてきた。
「誠実。おれ……、くららだけど。今入ってもいいか?」
「姉さん……! もちろんいいですよ」
そう言って入ってきたのは、半分だけ血の繋がった姉、くららだった。
姉であり、今は恋人でもある。愛しい人の登場に思わず頬が緩んだ。
「姉さん、何か用ですか?」
もちろん、誠実としては用などなくても、いつでも大歓迎である。
「用っていうか、その……」
なんだか恥らっているみたいで、なかなかその続きが聞けない。まぁ、その恥らっている姿も、とても可愛いので見ていて飽きないのだが。
「朝食を食べてるときにさ……、二人っきりで……って、話をしてただろ……? だから、誠実、夕方にはもう帰っちゃうし、今しかないかなって……」
「っ……!! そ、それって……!」
忘れもしない。あの言葉は、本当に衝撃的だった。
──『今度は二人っきりで……、ちゃんとベッドの上でいろいろしよ……?』
そう、くららに耳元で言われたのである。正直、本当に理性が一瞬飛んだ。
(いろいろって、やっぱり……。そういうこと、だよな……)
いろいろな妄想が駆け巡るが、つまりは途中で中断してしまった、朝の続き……をしようということだろう。そのときのことを思い出し、思わず体が熱くなる。あのときのくららは、本当に可愛くて、自分でも歯止めがきかなかった。
自分の解釈が間違っていたら、かなり恥ずかしいのだが、顔を真っ赤にしているくららを見ると、あながち間違ってもいないようだった。
「と、とりあえず、何か話でもしようか……!」
そう言いながら、くららは誠実のベッドに、勢いよく腰掛ける。そして、その横をぽんぽんと、手で叩いた。
誠実が、その様子を見ながら動けずにいると、
「あ~、えっと……。隣、座って?」
相変わらず、顔を赤らめたくららが、隣に座るよう促した。
とりあえず、言われたとおり隣に座ってみる。
「…………」
「…………」
──どうしよう。いざとなると、何を喋っていいのか、全然分からない。一生懸命、会話の糸口を探していてると、先にくららが話しかけてきた。
「あのさ……、誠実」
「は、はいっ! 何でしょう!?」
いろいろ緊張していたせいで、思わず声が上擦ってしまう。
「いきなりだけどさ……。その……、おれのこと好きになってくれて、ありがとな」
「えっ?」
予想もしなかった言葉に、思わず面食らう。しかし、くららの顔は至って真剣だ。
「い、いや、本当いきなり何だ、って話だよな……!」
誠実の困惑に気付いたのか、くららは慌てたように、付け加える。
「いえっ、そんなことは……!」
誠実も慌てて否定するが、遮るようにくららは言葉を続けた。
「……おれさ、正直二人に好きになってもらうような資格、ないと思うんだ……」
「へッ!?」
またしても、予想外の言葉に思わず変な声が出てしまった。くららは思い詰めたような様子で、話を続ける。
「だ、だってさ……。灰時や誠実がおれのこと好きだって気持ちは、すごく伝わってくるよ。でも、おれは……、二人と同じくらいの気持ちを、ちゃんと返せてるのかなって思って……」
「姉さん……」
それは初めて聞く、くららの本音だったのかもしれない。
「確かに、最初は半ば強引に流されたかな~と思うところもあったけど、今は二人のこと、本当に好きだし……。でも、二人を同時に好きなんてさ……。それって本当に好き、ってことなのかなって……、時々不安になるんだ」
そう言って、俯いてしまう。
「好き……だとしても、二人の想いには全然敵わないんじゃないかって……!」
肩を震わせながら語るくららから、一筋の涙が零れた。
「っ⁉ 姉さん……!」
その様子を見て、誠実は思わず慌てる。何故なら、くららは普段、ほとんど泣いたりしないからだ。元気よくカラッと笑っているか、ツッコミながら怒ったりしていることが多い。
「あ、あれっ? おかしいな。 こ、こんな泣くつもりじゃなかったんだけど……!」
くららが慌てて目元を拭う。だが、溢れ出る涙は、くららの小さな手では足りないほどだった。
「本当、ごめん……! こんな中途半端な気持ちじゃ、申し訳なくて……! だけど、自分のことなのに、自分じゃどうしようも出来なくて……!」
「姉さんっ……!」
気付けば、誠実はくららを思いっきり抱きしめていた。そうせずにはいられなかった。
学校の寮に帰る準備はもう済ませてあるので、あとは勉強道具さえ片付ければ、いつでも帰れる状態である。
と、ふいに、扉をノックする音が聞こえてきた。
「誠実。おれ……、くららだけど。今入ってもいいか?」
「姉さん……! もちろんいいですよ」
そう言って入ってきたのは、半分だけ血の繋がった姉、くららだった。
姉であり、今は恋人でもある。愛しい人の登場に思わず頬が緩んだ。
「姉さん、何か用ですか?」
もちろん、誠実としては用などなくても、いつでも大歓迎である。
「用っていうか、その……」
なんだか恥らっているみたいで、なかなかその続きが聞けない。まぁ、その恥らっている姿も、とても可愛いので見ていて飽きないのだが。
「朝食を食べてるときにさ……、二人っきりで……って、話をしてただろ……? だから、誠実、夕方にはもう帰っちゃうし、今しかないかなって……」
「っ……!! そ、それって……!」
忘れもしない。あの言葉は、本当に衝撃的だった。
──『今度は二人っきりで……、ちゃんとベッドの上でいろいろしよ……?』
そう、くららに耳元で言われたのである。正直、本当に理性が一瞬飛んだ。
(いろいろって、やっぱり……。そういうこと、だよな……)
いろいろな妄想が駆け巡るが、つまりは途中で中断してしまった、朝の続き……をしようということだろう。そのときのことを思い出し、思わず体が熱くなる。あのときのくららは、本当に可愛くて、自分でも歯止めがきかなかった。
自分の解釈が間違っていたら、かなり恥ずかしいのだが、顔を真っ赤にしているくららを見ると、あながち間違ってもいないようだった。
「と、とりあえず、何か話でもしようか……!」
そう言いながら、くららは誠実のベッドに、勢いよく腰掛ける。そして、その横をぽんぽんと、手で叩いた。
誠実が、その様子を見ながら動けずにいると、
「あ~、えっと……。隣、座って?」
相変わらず、顔を赤らめたくららが、隣に座るよう促した。
とりあえず、言われたとおり隣に座ってみる。
「…………」
「…………」
──どうしよう。いざとなると、何を喋っていいのか、全然分からない。一生懸命、会話の糸口を探していてると、先にくららが話しかけてきた。
「あのさ……、誠実」
「は、はいっ! 何でしょう!?」
いろいろ緊張していたせいで、思わず声が上擦ってしまう。
「いきなりだけどさ……。その……、おれのこと好きになってくれて、ありがとな」
「えっ?」
予想もしなかった言葉に、思わず面食らう。しかし、くららの顔は至って真剣だ。
「い、いや、本当いきなり何だ、って話だよな……!」
誠実の困惑に気付いたのか、くららは慌てたように、付け加える。
「いえっ、そんなことは……!」
誠実も慌てて否定するが、遮るようにくららは言葉を続けた。
「……おれさ、正直二人に好きになってもらうような資格、ないと思うんだ……」
「へッ!?」
またしても、予想外の言葉に思わず変な声が出てしまった。くららは思い詰めたような様子で、話を続ける。
「だ、だってさ……。灰時や誠実がおれのこと好きだって気持ちは、すごく伝わってくるよ。でも、おれは……、二人と同じくらいの気持ちを、ちゃんと返せてるのかなって思って……」
「姉さん……」
それは初めて聞く、くららの本音だったのかもしれない。
「確かに、最初は半ば強引に流されたかな~と思うところもあったけど、今は二人のこと、本当に好きだし……。でも、二人を同時に好きなんてさ……。それって本当に好き、ってことなのかなって……、時々不安になるんだ」
そう言って、俯いてしまう。
「好き……だとしても、二人の想いには全然敵わないんじゃないかって……!」
肩を震わせながら語るくららから、一筋の涙が零れた。
「っ⁉ 姉さん……!」
その様子を見て、誠実は思わず慌てる。何故なら、くららは普段、ほとんど泣いたりしないからだ。元気よくカラッと笑っているか、ツッコミながら怒ったりしていることが多い。
「あ、あれっ? おかしいな。 こ、こんな泣くつもりじゃなかったんだけど……!」
くららが慌てて目元を拭う。だが、溢れ出る涙は、くららの小さな手では足りないほどだった。
「本当、ごめん……! こんな中途半端な気持ちじゃ、申し訳なくて……! だけど、自分のことなのに、自分じゃどうしようも出来なくて……!」
「姉さんっ……!」
気付けば、誠実はくららを思いっきり抱きしめていた。そうせずにはいられなかった。
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