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二人に捧げる福音を-Side:誠実-
▲09▼ それでいいじゃないですか
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「っ!? ……誠実!?」
驚いてもがく、くららをさらにぎゅっと抱きしめる。
「姉さん! 姉さんはいろいろと考え過ぎです!!」
無我夢中で、思いの丈を叫ぶ。
「え……?」
「人によって想いの強さが違うのは、当たり前です。オレの好きも、兄さんの好きも多分全然違います」
「……誠実」
くららの気持ちは誠実にも痛いほど分かる。かつて、自分も同じような葛藤をしていた。
今朝だって、自分よりもくららは兄である灰時を好きなのではないかと、不安になったばかりだ。だけどあのとき、くららは、はっきりと否定してくれたし、今だって、こんなにも一生懸命自分たちのことを考えてくれている。
それが、とても嬉しい。それが、答えなのだ。
──だから、誠実もこの想いに覚悟を決めた。
「でも……、想いが違っても、姉さんを愛しているっていうのは、二人とも同じです」
「っ……!」
「姉さんも、そうでしょう? オレと兄さんを愛しているのは、間違いないのでしょう?」
くららが顔をそっと上げ、誠実を見つめる。
「うん……」
つぶやかれた一言に、思わず笑みが漏れた。
「だったら……、それでいいじゃないですか」
きっとその想いは、中途半端なんかじゃない。こんなに、悩んで二人のことを想ってくれているのだ。それが何よりの証拠だろう。
「で、でも……」
「確かに、いろいろと問題はあるかもしれないけど、でもそれって、悩んで解決するようなものじゃないでしょう?」
「そ、そうだけど……」
「だったら、悩んでもしょうがないと思いませんか?」
そうだ。しょうがないのだ。言いながら、自分にも言い聞かせていた。自分もずっと悩んで、悩んで、悩んで。でも、まともな答えなんてでなかった。何も解決なんてしなかった。むしろ悪い方に進むばかりだったのだ。
だったら──、きっともう悩まない方がいい。ありのままを受け入ればいいのだ。
「誠実……。誠実は、悩むことないのか……?」
くららが不安そうな顔で聞いてくる。
「……悩みますよ。もちろん。だから、今朝もあんなことを聞いてしまったし……。それに、この想いは叶わないものだと思っていたから、悩んだ末に距離を置こうとして、姉さんにも兄さんにも酷い態度を取ってしまったこともありましたよね……」
自分でも本当にいろいろ酷かったと思う。どんなに覚悟を決めて、自分の想いに蓋をしたって、二人の姿を見て嫉妬して──。その行き場のない感情を二人にぶつけてしまったこともあった。
正直今だって、しょっちゅう不安になる。だけど──、
変わりたい。そんな自分から。
「っ……」
くららが何か言いたそうな顔で、誠実を見つめる。きっと、今までのことを思い出しているのだろう。
「だけど、今朝、姉さんの言葉を聞いて、何だかいろいろ吹っ切れました。姉さんが、本当にちゃんとオレのこと愛してくれてるって分かったから……。そしたら、なんかすごく心が軽くなって……」
「誠実……」
「だから、姉さんも、吹っ切ってみてはどうですか? オレは、いつも元気で、楽しげに笑っている姉さんが好きです。……悩んでいる姿なんて、似合いません! どうせ、解決しない問題なら、とりあえず今は考えずに、自分に正直に、心の赴くままに、生きてみたらいいんじゃないでしょうか?」
こんな考えは、逃げだろうか。でも、散々考えて、悩んで、それでもどうしようもないことだって世の中にはあるのだ。だったら、せめて好きな人には笑っていて欲しい。
「…………」
「す、すいませんっ! 何か偉そうなこと言って……! でも、オレっ、姉さんの辛そう顔は見たくないんですっ! 本当はいつも、どこか辛そうなこと、知ってました……。けど、オレじゃ、どうすることも出来ないのかなって、いつもどこかで諦めてて……。でも、オレ、やっぱり、姉さんには、笑っていて欲しいんです……!」
これが、誠実の本当の気持ちだった。
くららに辛い思いをさせているのは、自分だというのは分かっている。でも、そんな風に自分を責めて欲しくない。だって──。
「……だって『僕』は、姉さんの笑顔に、恋したんだから」
そう、いつも笑って、見守ってくれるくららの優しい笑顔に恋をした。何か失敗をしたときも、明るく笑い飛ばしてくれる笑顔に恋をした。つらいことがあっても、くららの笑顔を見ていれば、何とかなる気がした。
そうやって、想いが少しずつ、少しずつ降り積もって、愛しさになって──。
『愛している』になった。
「愛して、います……。くらら……」
くららの頬をそっと撫でる。
「っ……! 誠実っ……!」
くららの目には再び涙が浮かんでいて、今にもこぼれ落ちそうだ。
「うん……! おれっ、おれもっ、愛してるっ……!」
そのまま、くららは誠実の身体をギュッと抱きしめ、本格的に泣き出した。くららから伝わる体温と、身体に染みていく涙が、とても愛おしかった。
驚いてもがく、くららをさらにぎゅっと抱きしめる。
「姉さん! 姉さんはいろいろと考え過ぎです!!」
無我夢中で、思いの丈を叫ぶ。
「え……?」
「人によって想いの強さが違うのは、当たり前です。オレの好きも、兄さんの好きも多分全然違います」
「……誠実」
くららの気持ちは誠実にも痛いほど分かる。かつて、自分も同じような葛藤をしていた。
今朝だって、自分よりもくららは兄である灰時を好きなのではないかと、不安になったばかりだ。だけどあのとき、くららは、はっきりと否定してくれたし、今だって、こんなにも一生懸命自分たちのことを考えてくれている。
それが、とても嬉しい。それが、答えなのだ。
──だから、誠実もこの想いに覚悟を決めた。
「でも……、想いが違っても、姉さんを愛しているっていうのは、二人とも同じです」
「っ……!」
「姉さんも、そうでしょう? オレと兄さんを愛しているのは、間違いないのでしょう?」
くららが顔をそっと上げ、誠実を見つめる。
「うん……」
つぶやかれた一言に、思わず笑みが漏れた。
「だったら……、それでいいじゃないですか」
きっとその想いは、中途半端なんかじゃない。こんなに、悩んで二人のことを想ってくれているのだ。それが何よりの証拠だろう。
「で、でも……」
「確かに、いろいろと問題はあるかもしれないけど、でもそれって、悩んで解決するようなものじゃないでしょう?」
「そ、そうだけど……」
「だったら、悩んでもしょうがないと思いませんか?」
そうだ。しょうがないのだ。言いながら、自分にも言い聞かせていた。自分もずっと悩んで、悩んで、悩んで。でも、まともな答えなんてでなかった。何も解決なんてしなかった。むしろ悪い方に進むばかりだったのだ。
だったら──、きっともう悩まない方がいい。ありのままを受け入ればいいのだ。
「誠実……。誠実は、悩むことないのか……?」
くららが不安そうな顔で聞いてくる。
「……悩みますよ。もちろん。だから、今朝もあんなことを聞いてしまったし……。それに、この想いは叶わないものだと思っていたから、悩んだ末に距離を置こうとして、姉さんにも兄さんにも酷い態度を取ってしまったこともありましたよね……」
自分でも本当にいろいろ酷かったと思う。どんなに覚悟を決めて、自分の想いに蓋をしたって、二人の姿を見て嫉妬して──。その行き場のない感情を二人にぶつけてしまったこともあった。
正直今だって、しょっちゅう不安になる。だけど──、
変わりたい。そんな自分から。
「っ……」
くららが何か言いたそうな顔で、誠実を見つめる。きっと、今までのことを思い出しているのだろう。
「だけど、今朝、姉さんの言葉を聞いて、何だかいろいろ吹っ切れました。姉さんが、本当にちゃんとオレのこと愛してくれてるって分かったから……。そしたら、なんかすごく心が軽くなって……」
「誠実……」
「だから、姉さんも、吹っ切ってみてはどうですか? オレは、いつも元気で、楽しげに笑っている姉さんが好きです。……悩んでいる姿なんて、似合いません! どうせ、解決しない問題なら、とりあえず今は考えずに、自分に正直に、心の赴くままに、生きてみたらいいんじゃないでしょうか?」
こんな考えは、逃げだろうか。でも、散々考えて、悩んで、それでもどうしようもないことだって世の中にはあるのだ。だったら、せめて好きな人には笑っていて欲しい。
「…………」
「す、すいませんっ! 何か偉そうなこと言って……! でも、オレっ、姉さんの辛そう顔は見たくないんですっ! 本当はいつも、どこか辛そうなこと、知ってました……。けど、オレじゃ、どうすることも出来ないのかなって、いつもどこかで諦めてて……。でも、オレ、やっぱり、姉さんには、笑っていて欲しいんです……!」
これが、誠実の本当の気持ちだった。
くららに辛い思いをさせているのは、自分だというのは分かっている。でも、そんな風に自分を責めて欲しくない。だって──。
「……だって『僕』は、姉さんの笑顔に、恋したんだから」
そう、いつも笑って、見守ってくれるくららの優しい笑顔に恋をした。何か失敗をしたときも、明るく笑い飛ばしてくれる笑顔に恋をした。つらいことがあっても、くららの笑顔を見ていれば、何とかなる気がした。
そうやって、想いが少しずつ、少しずつ降り積もって、愛しさになって──。
『愛している』になった。
「愛して、います……。くらら……」
くららの頬をそっと撫でる。
「っ……! 誠実っ……!」
くららの目には再び涙が浮かんでいて、今にもこぼれ落ちそうだ。
「うん……! おれっ、おれもっ、愛してるっ……!」
そのまま、くららは誠実の身体をギュッと抱きしめ、本格的に泣き出した。くららから伝わる体温と、身体に染みていく涙が、とても愛おしかった。
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