モラハラ幼馴染から逃げた先は雪国でした〜先祖返りした雪女は引きこもります

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3章 夏:再会篇

12 恋の手ほどき③

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「害虫?」

パワーワードに驚いて、ゆきと美咲の声が重なる。
まりなはしたり顔で、説明する。

「そうよ。正さんの周りをウロチョロ飛び回ってるの、知らないの?」

誰のことを言っているのだろう。
ゆきは首をかしげる。

「ゆきちゃんも会ったって聞いてるんだからね。真紀って女、知ってるでしょ?」
「真紀さんが害虫なの?」
「正さんに彼女ができそうになるとさりげなく邪魔してくるって評判だよ。自分が浮気して別れたくせに、まだ正さんが自分に未練があるって思ってるの、マジで笑えるわ。最近はゆきちゃんと正さんが行動を一緒にしてるって噂になってて、焦ってたみたいよ? かき氷専門のカフェの氷で氷室氷なんて今まで使ってたことないくせに、わざわざ正さんの氷室から取り寄せたりして接点持とうと必死らしいし」
「……ちょっと情報量が多くて追いつけないんだけど、真紀さんはまだ正さんが好きってこと?」

ゆきの頭がぐるぐるする。
まりなは肩を竦めた。

「顔だけ男に連れられて、ゆきちゃんもかき氷専門店に行ったんでしょ? 牽制されたんじゃない?」

言われてみれば、元彼女だと言ってきたのは真紀だったかもしれない。
それに、話に最初はまぜてもらえなかった気がしたのも、気のせいではなかったのか。

(真紀さんが正さんを好きって、正さんは気づいているのかな? 知ったらよりを戻したいと思うのかな?)

ゆきは胸がきゅーっと苦しくなった。

正と真紀が付き合ったら、きっと一緒に出かけることもできなくなる。
正さんが構ってくれるこの日常が壊れてしまうことに、足元がぐらぐらするような恐怖を覚えた。

「ゆきちゃん、真っ青だよ? 大丈夫?」

美咲がゆきの手を握ってくれる。
まりなも仕方ないなあという顔で近づいてくる。

「本当にゆきちゃんって正さんのことだけは、表情豊かだよね。ねえ、わかった? 正さんは誰のものでもないからって高をくくってると、後悔することになるんだから。気合入れなさいよね!」
「ちょっとまりな。ゆきちゃんにはゆきちゃんのペースがあるから」
「えー? でも、泣くのはゆきちゃんだよ? だいたい、私、あの女きらーい」
「なんでよ。接点なんかないでしょ?」
「狩場が一緒なんだよね~。消防署の若手と遊んだ時に聞いたんだもん! 消防所や町役場とか結婚相手によさそうな相手とだいぶ合コンしてるんだって。正さんが優しいのをいいことにキープしてるくせに、よくやる」

ゆきはまりなをすがるように見つめる。

「キープってことは本気では好きじゃないってこと?」
「さあ? 今のところ正さんに元さやに戻る気はないっぽいけど、真紀のことは知らないわよ。ただ、ゆきちゃんがのんびりしてると、ねえ?」

脅してくるまりなに、ゆきは黙る。

「ゆきちゃん、だからこそだよ! 完膚なきまでに撃退してやろうよ」

こぶしを突き上げるまりなに、呆れた声で美咲がいなす。

「まりな、それ、私情が入ってない?」
「別に~。でも男は全部自分に惚れるっていい女ぶってるのが気に入らないだけ~」
「ゆきちゃん、まりなの話はおいておいても、確かに元彼女が好きな人のそばにいるのは嫌だよね」

美咲がしみじみと言う。
でしょ、とまりなが便乗した。

「だから、盆踊り大会でいぶりだそう!」
「……それって、銭湯で企画しているイベントのこと?」

ゆきが思い当たったのは、大樹が近々有志で行うイベントのことだった。
結構、近隣の町からも若者がくるので、夏の大行事らしい。

「真紀さんを盆踊りに呼んで、どうするの?」
「まずは、正さんに動いてもらって、未練ないところをわからせなきゃでしょ」

まりなの中では、正が真紀に興味がない前提らしい。
本当にそうなのだろうか?
これがきっかけで、仲が深まってしまったらと思うと、怖かった。

「でも、正さんも真紀さんのこと、まだ好きかもしれないよ」
「ないない。あんなに毎日一緒にいるのはゆきちゃんでしょ。真紀が遊びにこいっていってたかき氷屋にも、わざわざゆきちゃん連れて行ったのは、たぶん、真紀さんが鬱陶しくて、今好きな子を見せるためだと私はみるね~」

ゆきがびっくりしていると、美咲が食いついた。

「なにそれ! 詳しく!」
「美咲ちゃんも正さんが気に入ってもない女の子車に乗せておしゃれなお店に入るなんて、想像できないでしょ? でも、ゆきちゃんには自然とやってるんだよね~。けっこう、正さんは肉食だと思うんだ。だから、ぐいぐい来られてもなかなか付き合ったりしないんだけど、ゆきちゃんには自らいっているから。確定でしょ?」
「たしかに、想像できない。俺不器用でできてますって感じだもんね。えー、そうなのかー。じゃあ、お邪魔虫な真紀さんにはたしかにアピールしないといけないかもね」

当人の意思を無視して、美咲とまりなはうんうんと頷きあった。

「そうと決まれば、優にもにおわせてこよっと」

機嫌よさそうに、まりなは階下におりて行ってしまう。
階段の先に消えると同時に、何やら言い争っている声がしだした。

(……まだ、優君、近くにいたんだ)

どうやら、2階に続く階段の近くで陣取っていたらしい。
トイレは1階にしかないので、待てば来ると予測していたのだろう。

優と離れてからすでに1時間以上がたっている。
幼馴染の執念深さを感じて、ゆきは大きくため息をついた。
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