【完結】あなたが幸せなら、僕も幸せ……?

カシナシ

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 ようやく教室に辿り着く。

 月明かりが差し込んでいたため、僕の鞄と教本がぽつんと取り残されていたのはすぐに分かった。


「はぁ、はぁ、……あった、よかった」


 冊子に教本に、持ち物を乱雑に鞄へ詰め込んで戻ろうとした時だった。


 ガシャンッ!


「……せん、せい……?」


 扉が、閉まっていた。それから、笑顔を浮かべたアウグスト先生。ゆっくりとこちらへ向かってくる。

 鞄を抱えたまま、後退りした。ガタガタと机や椅子に引っかかりながら、逃げ場所を探すも、無い。

 窓際に追いやられ、ダンッ!と、伸びた腕が壁を叩いた。


「ひっ……」

「全く……いつもいつも、隙がないよね。君は。そういうところも、好ましいんだけど……」


 頬に、指が触れる。さっきまで浮かべていた柔和な笑顔はなく、僕を品定めするかのような冷たい視線だ。


「私から逃れられると、思った?」


 今だっ!


「っ」


 指輪から、バチンッ!と電流を放った。殿下が驚いて尻餅をついている隙に、扉に向かって走る。

 開けようとしたけど――――鍵が、かかっている!


「ふふ、なに、それ?悪い子だねぇ」


 後ろから抱きつかれ、拘束された。あっという間にテキパキと紐で縛りつけられていて、どうやら、計画的だったようだ。
 僕の防犯の指輪も、婚約指輪も取られてしまう。


「やめっ、それだけは、取らないで……っ」

「ふうん?これ、ルドルクスからもらったやつ?いらなくなるからね。すぐに」


 僕を机の足にくくりつけると、アウグスト殿下は勢いよくシャツを切り裂いた。ナイフも持っていたらしく、動けば肌が切れる距離にあった。下手に抵抗、出来ない。


「震えてるね。可愛い。ああ、流石にスラックスは無理そうだな……」

「どうして、こんな無理やり……!」


 スラックスもずり下ろされてしまう。足も固定されているので、中途半端に引っかかっている情けない姿にされてしまっていた。


「だってねぇ、私の奥さんにしたい人は、君ただ一人なんだ。ファルシュカくん。でも、君はまだ、私のことを好きになる段階じゃないらしい。それなら、まずは既成事実を作った方が早いでしょう?」

「ぼ、僕以外に、いくらでも選べる立場でしょう、あなたは!」

「ふふっ、あんな石ころに好かれたってねぇ……?比べ物にならないよ。だって……本当に綺麗だね、ファルシュカくん。最初は痛いかもしれないけど、段々良くなるから」

「い、いやだ、辞めて……っ」

「結婚してから、ゆっくり好きになってくれればいいからね。可愛い子」


 肌をなぞるアウグスト殿下は、何かを口に含むと僕に口付けてきた。

 口を開けるまいとしたが、鼻を摘まれて、やむなく、どろりとした、妙な味の液体を注ぎ込まれる。と同時に、殿下の舌も入ってきた!

 ガリッ


「……っ、ふ、ふふ、ううん……おかしいねぇ。私、これでもモテる方なんだけど」

「ぷはっ、」


 口の中のものをぺっと吐き出す。具合の悪くなりそうな変な味。いや、実際にくらくらしてきた。


「これはね、特別なジュースだよ。君は白竜人の因子を持つからほとんどの毒に耐性があるけど、これは毒ではないからね。医療用に使われるものでもあるし……これは、民間に出回っている、ちょっとしたお遊び用」

「それって……は、あ、あ、あ」

「そうだね……巷では、麻薬って呼ばれてるかもしれないね」


 なんでそんなものを持っているんだ!?

 視界がチカチカしてきた。赤や黄色や緑に紫、色んな色が飛んで混じってぐるぐるしてる。


「外の国では合法なんだよ?あー……私も、少し飲んでしまったから、いい感じになってきたよ。さあ、二人で気持ちよくなろうね」


 ゴソゴソ、かちゃかちゃと、ベルトを外す音が聞こえる。殿下も、服を脱いでいるらしい。なんでだっけ……?


 ふわふわと、思考が思うようにいかなくなる。たくさんの色味が飛んで跳ねて、模様を作って楽しい。


 体にほとんど力がはいらないし、まるで現実世界から切り離されたかのように、ぼんやりとしていた。ルドルクス様……。


「あはは、飛んでるね……かわい……安心して、ちゃんと善がらせてあげるからね」


 体を弄られている感覚と、耳元で聞こえた囁き声。

 何も聞こえない。分からない。

 意識が、無くなっていく。



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