婚約破棄された銀の猫は、チートスキルと激甘伴侶をゲットしました

カシナシ

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本編

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 僕はグロリアスとお父様と共に、領内を整備していた。

 例えば、領城をより堅牢に、かつ難攻不落の要塞にするとか。頭の中には、それを可能とする知識があり、それに従って土や岩を精製、組み立てていけば、1日とかからず実現出来た。

 元々広大な土地だけはあったウィンストン侯爵領。豊かな土壌を揃えれば、領内にいたスラムの人たちも職を見つけられたし、簡易的な団地のようなものも作ったので、家のない人はいなくなった。僕の『猫化』で力押しだが、今はこれでいい。いずれは僕がいなくともやっていけるようにするのが、父や弟の仕事だ。

「……シオン。すまなかったな……不甲斐ない、父で」
「お父様……、いいえ。お父様に出来ることは限られていましたから。僕は、お父様を恨んだことはありません」

「こんな……、こんなに大きくなって。……グロリアス君、シオンを、頼むよ。君には、随分と懐いているようだから」
「な、懐くって……お父様」

「はい、侯爵さま。おまかせください」

 ニコリと笑うグロリアス。確かに、グロリアスにはお世話になっているけど、ね。

 グロリアスの持つスキルは『竜化』らしい。色々な教養を学んできた僕でも知らないスキルで、分かっているのは、グロリアスがそれを使いこなしていること。

 蛇だと思っていたけど竜(小型バージョン)だったし、あらゆる竜と蛇を眷属として使役出来るし、四大元素魔法に加えて空間属性魔法も使える。
 僕の魔力が覚醒した時、あまりに強い魔力の気配に驚いて様子を見に来たのも、目や感覚を竜化させたら可能なことだとか。
 だから、神の使いではなく普通の人間らしい。

 かなりの特訓を積み重ねてきたのだろう。本当に何歳?と聞いたら、『今はまだナイショ』と言われて納得してしまった。

 普通の?人間?と疑問符が浮かぶけど、可愛いグロリアスの顔を見れば吹き飛んでしまうので、気にしないことにした。







「シオン。今日はお外にたくさんお客さんが来ているみたい」
「そっか。指示通りにしてくれたのかな」
「うんうん。蛇たちもそう報告してくれてる」
「それは良かった」

 シオンは眷属の飛龍を上空へ飛ばし、偵察させていた。そろそろ着く頃だと思っていたし、僕たちは門の所へと向かった。

 ドンッ!ドンッ!

 大砲を打ち出す、派手な音が聞こえる。

 それらは門や城壁を壊すために放たれているようで、微妙に届いていない。すべて谷底へ落ちている。まぁ、届いた所で跳ね返す魔法障壁をかけているのだけど。

 それなのに大型の大砲の上には、偉そうに踏ん反り返った騎士団長令息、クインが乗っていた。

『シオン!大人しく出てこい!さもなくば全員でヤッてやるぞ!』

『領民も巻き込みたくなければ、一人で出てこい!裸でな!』

 ……と、拡声器で叫んでいる。父親が捕まったというのに、なんて呑気な事を。いや、本気で怒っていてコレなのだろうか。この令息は、僕に乗っている時もいつでも呑気だったな。深く考える脳を持たないようだ。

 彼を見たグロリアスは、顔を思いっきり顰め、お昼に出てきた緑豆グリーンピースを見た時よりもうすーく目を細めていた。

「あれは……なんだろう?随分と、おかしな人だね」
「そうだねぇ。おかしな人だね。グロリアスは、見ない方がいいかもしれない。こっちにおいで」
「ううん、いいの。おれ、慣れてる」

 時々、グロリアスは遠い目をする。どれだけの修羅場を潜ってきたのだろう。けれど、僕ももう彼が普通の少年でないことは知っているので、ただその小さな手をぎゅっと握るに留めた。

【幻影】を使って僕とグロリアスは門の外へと出た。幻影だと歩く動作はまだ難しいので、必然的に宙に浮くスタイルとなる。【鏡反射】の膜で覆って完成だ。これが、先日騎士団を撃退したものと同じ。

 ふわりと浮いている僕たちを照準に定め、いくつもの球が降ってくる。それらを潜り抜けて、騎士団長令息の元へと辿り着いた。

「お久しぶりですね。相変わらずお元気のようで」
「はっ、自らやってくるとは殊勝なことだ。裸ではないようだが?ほら、脱げ。武器を隠しているかもしれねぇし」
「何故、あなたの要求を飲まねばならないのでしょう?」

 騎士達が飛びかかってくるも、見えない膜に弾かれて吹き飛ばされている。
 それを見てようやく、クインは眉を顰めていた。

「……やはり、スキルを獲得したのか。遅かったな!もう少し早ければ、俺たちに犯されることも無かったのに」
「ええ、そうですね」

「どうやら便利なスキルを持ったようだな。どうだ?今なら俺の妻にしてやる。王子はお前に生涯独身だと言ったが、スキル持ちなら考え直してくれるだろう」
「あなたのような男の妻、ですか?はぁ、そんな碌でもない立場になりたい者がいるんでしょうか?僕なら存在ごと消してしまいたいくらい嫌ですね」

 ピク、とクインの手が動き、僕を殴ろうとした。

 ガンッ!

 当然、勢いそのまま跳ね返された。手を酷く打ったクインは、庇いながら殺意のこもった目付きを僕に向ける。

「……ふざけるなよ……お前は、一生性奴隷だ。いいか、一晩中、朝から晩まで、俺だけじゃなく……」

「いいかげんに頭の中の妄想を垂れ流すのはおやめなさい、品性がない。先にこちらの要件を伝えますと、こちらに列挙した者を渡して頂きます。他の者は帰ってよろしいですよ」

「そんな要求っ……!」
「シオン様、お預かり致します」

 クインを遮り、リストを受け取ったのは、副団長の二人だった。裏切り者と叫んでクインが殴りかかっているが、流石副団長、難なく意識を奪っている。

 リストアップされたのは、言うまでもなく、憎い男達。副団長に指示をされて列から前へ出されて、顔を蒼白にした男ども、その数50人弱。

「シオン、話している間に、残りの人にもミニ蛇を潜ませておいたよ」
「ありがとう。……じゃあ、そういうことだから、彼らにも説明しておいて下さい。裏切れば死を。……事が終われば、解放されますから、ご安心を」
「は、はひ……」











 そうしてまた増えた捕虜は、先日と同じく研究施設へと提供した。

 しかし、騎士団長令息だけは違う。クインは権力を使って何度も何度も僕の身体を使ったし、父親の目の前で犯されたことも忘れていないのだ。







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